第4話 子会社の悲哀
俺はしがない会社員♪ 何にもできない平社員♪ 肩書きなんぞ何処にある♪ しかもうちの会社は子会社さぁ♪ 親会社の下っ端さぁ♪
最近は、部品のディスコンが早い。
あっという間に始まって、あっという間に終わります。その名も○○半導体♪ あっという間、あっという間、あっという間、ぶーひーん、んーんー、んーんー。
ある製品を作っているとする。1年や2年は大丈夫だったりするのだが、5年も経つとかなり危うい。その製品の中に使用されている部品(主に半導体)がディスコン(生産終了)になって購入ができなくなる(そういや、電源もディスコンになったなぁ)。
購入できなくなると大変だ。別の部品を使用するか、とりあえず、最終ロットということで在庫を大量に持つかどっちかだ。在庫を持つことは金利が発生するし、品質保証の点からはあまり長い期間保有できないし、危険だ。別の部品を使用するのも試験のやり直しが発生して大変なのだが、使用できるだけマシだ。
一番、大変なのは、購入も代替品も不可で再設計。そりゃ、自分で設計したものなら再設計できますが、そんな技術ありません。なんてったって、会社のお荷物、粗大物。
というわけで、うちの製品も生産中止にしましょうか。となるわけだ。で、お客さんという立場の親会社に連絡をするわけ。
「すいませーん。生産中止になりました」
「はぁ? 誰だお前。○○(←弊社部長)だせ」
「いや、〇〇は不在でして……」
「じゃぁ、折り返し電話させろ」
てな感じで親会社に怒られて渋々部長の下に頭を下げに行くと、
「部長。すいません。xxの製品を生産中止にしたいと親会社さんに電話をしたのですが……」
「あー、駄目だよ。ちゃんと相談してくれなきゃ。明日営業を呼ぶから、作戦会議。後、他の人にもディスコンするときの話を聞いておくように」
★ ★ ★
翌日、会議の席で……。
「すいません。Aさん。親会社納入製品をディスコンしたいんですけど……」
「あー、それねー、無理。俺も別件名で、事業部長まで担いでやったんだけど、結局、工場長判断で継続になっちゃった。そういや、別部署の情報関連機器も10年は安定供給しろって言われて死んでいたなぁ」
「はぁ」
Aさんのつれない返事に項垂れている俺を見て部長がBさんに問いかける。
「B、お前のときはどうだったんだっけ?」
「はなくそ」
Bさん、一体何があったの……。Bさんは頼りになりそうにないので、再びAさんに話を振る。
「Aさん、他には……」
「しょうがないから、高めに値段を取ってなんとかしようとするんだけどさぁ。これまた、資材部のごっついのが出てきてさぁ、交渉することになるわけ。で、しょうがないから、1割くらい下げるとさぁ。1回で1割だから、5回やれば、半額だな。交渉時間が無駄だから、半額にしろ。とか、無茶苦茶言うんだよな」
「ハナゲ」
Bさん、だから何があったんですか……。
「というわけで、ディスコンするのも大変だし、売るのも大変だけど頑張ってね」
親会社とは、こうも恐ろしい物かと知った今日この頃であった。
★ ★ ★
その後、その製品は重要でなかったのか、無事に生産終了品となった。
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