ループして六属性を極めた魔術師、七周目で極めるのは【淫】
稲荷竜
第一部 男爵になるまで
一章 成人までの十五年間
第1話 今回選ばれた属性はこちら
『闇属性を極めた貴様の肉体は、この魔王の依代としてふさわしい……! さあ、体を開け渡せ……!』
これが六回前の人生の最期。
そして、
『炎属性を極めたお前の体こそ、炎龍王たる我が現世に蘇るのにちょうどよい依代よ。さあ、我が再びこの大陸に覇を唱えるための第一歩となれ!』
これが五回前。
んで、
『水属性を極めましたね』『風属性を━━』『地属性』『光』
なんで魔術属性を極めるたびみなさん寄ってくるんです?
俺はただ魔術の深奥にいたりたいだけなのだが?????
七回目の人生です。おぎゃあ。
どうして自分が死ぬたび人生を最初からやり直せるのかはわからない。むしろそれを知りたいがために魔術探求への欲求はぐんと増したとさえ言える。
そのために六属性の
人生七回目の合計百八十歳ぐらいの赤ちゃんとして産まれ直した俺はおっぱいの吸い方もちょっとしたもんですよ。慣れたくねぇな、母ちゃんのおっぱいの吸い方。
極めてスムーズに授乳を終えて、今までの人生について検証してみる。
するとどうだろう、やはり浮かび上がってくるのは絶望的な事実。すなわち━━
『魔術の深奥を極めようとしてはいけない』
耐えられるか!!!
魔術。
六つの『
『この世の始まり』にかかわるものであり、多くの人がその恩恵にあずかっているけれど、その本当のところは誰にもわからない。
『この大いなる謎を解き明かしたい!』というのは俺が生まれつきもっていた衝動であり、俺にはこの『魔術』というものの深奥にいたれるだけの才覚もあった。
というか、それ以外の才覚がなかった。
魔術師以外のことは何もできない。
さすがに三回も肉体を乗っ取られた時には俺も『魔術方面はヤバい』と気付いて他の人生を模索したのだが、無理だった。
体力がないので肉体労働ができない。事務仕事ができないので文官の道もない。かといって男が家庭におさまるのは世間の風潮が許さない上に相手もいない。
なので四回目の人生も結局魔術師を志して、三回ほど体を乗っ取られて死に、今、こうなってる。
まさか大属性六つ全部極められるし、全部で乗っ取られるとはね。乗っ取る連中暇なの? 死んだならきっちり死んでてほしいんだが? 未練ごと消え去れ。
というわけで今回から小属性を極めていきたいと思いまーす☆(やけくそ)
すべての人族は心の中に『樹』を持っていて、魔術属性や剣術などを極めるという行為は、その『樹』の根に経験という名の水をやり、幹を太くし枝葉を広げていく行為にあたる。
その枝葉がどこまで伸びるのかは育ててみないとわからないので、『樹』の育成は人生を賭けた博打とも言えるが……
最初の方に、ある程度わかることもある。
それは経験を注ぎ込んでも伸びが悪いなというものは、たいてい、成長しにくく上限も低いということ━━すなわち『その才能がない』ということ。
そして【炎】【水】【風】【地】【闇】【光】の大属性ではない━━
『小属性』は、最初からその項目が『心の樹』に存在しないものは育てることができない、ということだ。
つまり、小属性は最初から『できる』『できない』がはっきりしている。
もちろん『できる』小属性でもそれがどこまで育つかは育ててみないとわからない。
中には伸びが悪い小属性をがんばって育て上げたすえに世界で二人といない強者に至った人もいるのだが、人生は短いので、そこまでの経験を積めるかどうかも含めて博打になる。さすがに真似するようなものではない。
そもそも基本的に伸びの悪いものは上限も低い。その人はいろんな意味で特例だ。
そして俺が『魔術師以外できない』というのも、生来の魔術以外への興味の薄さもまあそのまったく無関係とは言えないこともないかもしれないと言う表現も不可能ということはないが……
魔術系以外の枝葉がとことん伸びない。
そういう事情があってのことだ。
なので魔術師になるしかないし、魔術師でいたい。
そもそも、なんで太古に死んだヤバい連中のせいで好きなことあきらめないといけないんですか? 俺は魔術を極めるぞ。邪魔すんな。
そういうわけで、今回の人生は大属性ではなくて小属性を極めていきたいと思います。
さっそく授乳によって得た経験(戦いや食事、あるいは道具作成などで経験は溜まる)を注ぎ込む先を探していく。
本来『樹』を意識できるのは十五歳で成人の儀式をされてからなのだが、さすがに人生も七回目なのでそこまで待つこともない。
そして探して、探して……
え、こんなにないの小属性? まさかまた大属性育てるしかない?
というところまで探して。
ようやく、見つけた小属性がこちらになります。
『淫』
俺、今生は淫属性の魔術師をやります。
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