第3話 きみたちは、雲母献上台を見たことがあるか?

 こんばんわ。


会社の下僕から解放され、おネコ様の下僕に復帰すべく帰宅したときに事件が発覚。


1階には、ネコトイレと石油ファンヒーターがあり、ヒーターのスイッチをオン。


温風より先に、すぐさま異臭に気づく。


この異臭は、よく知ったものだ。


そう、あつさんこと、あーちゃんの雲母の香り。


「また、やりやがった……」


きょうは、定時上がりとはいえ、週のはじまり月曜日、加えて寒かったので、体は疲


れている。


なのにだ。


きみたちは、雲母献上台を見たことがあるか?







 下僕がお仕えしているおネコ様三神は、我が家に降臨してからトイレを失敗したこ


とがない。


しかし、あつさん事、通称あーちゃんは、特殊な粗相をする。


あーちゃんは、なぜか、砂落としの台に99%雲母をなさる。


さながら、雲母献上台。


そう、これこそが雲母献上台。


献上してくださるのは、有難迷惑。


即座にそのトイレは、進入禁止扱いとなり、使用不可のレッテルを貼られる。


下僕に、酢か吐露の趣味はない。


ではなぜ、雲母献上台現象はおこるのか?


3年近く雲母献上台現象を観察し続けてわかったことがある。


雲母献上台の創作メカニズム。


我が家のトイレは、計4個ある。


そのうちの2個は、出入り口が1ヶ所、そこに砂落としの台がある。


あーちゃんは、トイレの奥に向かって2歩~3歩でしてしまう。


その結果、お尻はちょうど砂落とし台のうえにあることになる。


あーちゃんが世界に創造する雲母は、台の上に産み落とされる。


こうして、あーちゃんの雲母献上台が完成される。


どうしてあと1歩奥へ進めないのか?


スペースは、十分あるのに。


どうして、出入り口に無防備に背を向けたまま用をたされるのか?


ほかのおネコ様二神のプレイスタイルを見て行こう。


御二方ともトイレの中で、Uターンする。


そして、出入り口の正面に向き直る、つまり、お尻はトイレ奥にむく。


野生の世界では、用を足すときに無防備な背を向けるのは、危険な行為だ。


だから、背中は、壁際。


不意打ちはされない。


これ基本。


でも、あーちゃんは違う。


あーちゃんにとって、ペンシルパレスは、安全な場所だと思っているらしい。


そして、そこに住まうおネコ様二神や下僕は、危険な存在ではないらしい。


あーちゃんにとって、ここは、油断しまくれる場所なのだろう。


しかし、ここで疑問が起こる。


 あーちゃんはおネコ様二神が用を足している最中に高確率でちょっかいをだす。


あーちゃんは、背を向けている、いないにかかわらず、用を足しているときは、


みな等しく無防備になることを知っている。


恐ろしい


こんなあーちゃんによって創造される雲母台を、今日もお掃除する下僕。


されでもきみは、雲母献上台を見たいと思うか?






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る