ある女神の転生
むかしむかしのはなしです。
女神様がある者を召喚しました。
その名は勇者と言いました。
しかし勇者は召喚されてすぐに死んでしまいました。その原因は魔王に呪いをかけられたせいだったのです。
勇者の死体を前にして、女神は嘆き悲しみました。
「ああ!なんという悲劇!」
次に異世界から強そうな者を召喚しました。しかしその者もすぐに死してしまいます。女神はその者の死体の前で涙を流しながら叫びます。
「ああ……なんて事でしょう!!」
そうして勇者と似たような者を見つけては殺させてを繰り返すこと10万回。ついにその勇者を召喚した時の女神は疲れ果てていました。
そんな彼女をみて神は言いました。
「お前ももう休め」
女神は何も言わずただ静かに涙を流すだけでした。そしてそのまま倒れ込むように眠りについたのです。
100000回の召喚で女神の魔力はほぼ尽きており、彼女が次に目を覚ます時はきっと自分が死んだ後だろうと悟りながら。しかし彼女の願いは届きませんでした。
女神が死んだ瞬間、世界の全てが消えてしまったからです。召喚される者は死に、召喚される事のない者が生きる世界。それは言うなれば輪廻転生そのものと言える世界でした。
「ここは……」
真っ暗な空間の中で目覚めた彼女の前に現れたのは一人の男でした。その男は黒いローブを纏っており、その顔には白い仮面がついていました。まるで死神のような格好の男を見て彼女は呟きました。
「貴方は誰?」
それに答えたのは目の前にいる不気味な男ではなく声だけが何処からか聞こえてきました。
『初めまして、私の名前は…………そうですね【管理者】と名乗っておきましょう』
「かんりしゃ?貴方は何をしている人なのかしら?」
『何もしていませんよ。私は世界の全てを見守るだけの存在です』
「ふーん……じゃあ貴方は神様みたいなものなのかしら?」
『さぁどうでしょうか?』
曖昧な返事に女神はいらだちを覚えました。この世界に神がいない事は知っていたのですから無理もない事でしたが。
「なら教えてちょうだい、私はどうしてここにいるのかしら?」
女神が尋ねると【管理者】はゆっくりと話し始めました。
『残念ながらそれはお伝え出来かねます』
「何でよっ!?」
思わず叫んでしまう彼女に管理者はあくまで冷静に対応しました。
『申し訳ありません。私の口から伝えるわけにはいかない決まりになっているのです』
「…………」
それを聞いて怒りよりも疑問を感じてしまうのはこの場では仕方がないと言えたでしょう。何故言えない事があるのだろうかと考え込んだところで、一つ気になる事を尋ねました。
「ねえ、私がここに居る理由はわからないけれど、貴方がいるってことは私はまだ生きているのよね?」
『はい、貴方は生きています』
「つまりまた何かの目的で誰かが呼び出すかもしれないってことかしら?」
その言葉に少しの間があった事に違和感を覚えるも続けて質問しました。
「でも誰が私を呼び出したの?」
しかし返ってきた言葉は意外なものでした。
『それを話す事も禁じられております。どうかご容赦下さい』
「そう……」
それから暫く沈黙が続きましたが、やがて女神の方が我慢出来ずに話を始めようと口を開きかけたその時でした。
突然暗闇の中から光が溢れ出してきたと思ったら女神のすぐ前に一つの扉が現れたではありませんか。これには流石の女神も驚きを隠しきれず呆然としてしまいました。
『それが次の人生への扉となります』
管理人は淡々とそう告げました。その言葉を耳にしてハッとした女神は急いで反論します。
「ちょ、ちょっと待ちなさい!まだ話が終わっていないわ!!」
しかしその言葉を無視しつつこう言い残していました。
『次に会う時を楽しみにしております。良い旅を』
……ここまで読んだ少女はあることに気づいて思わず激昂する。
「にゃによ、ここから先のページ破られてて、おはなし終わってるじゃにゃい!」
「しー、図書館は静かに」
「あ、ごめんなさいにゃ」
キングズ・ロー図書館 今村広樹 @yono
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます