同棲している彼女が包帯を巻いて迫ってきたが、焚火から引火してえらいことになった件

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

第1話

「トリックオアトリート!」


 同棲している俺の彼女が突然そう叫んだ。

 そうか。

 今日はハロウィンだったか。


「お菓子は……。あいにく用意していないな」


 うっかりしていたぜ。

 そういえば、テーブルの上にはカボチャの焚火が用意されている。

 

 しかし……。

 彼女の姿はやたらと扇情的だ。

 体に包帯を巻いているが、おそらくその下には何も付けていない。

 全裸に包帯だと思われる。


「じゃあいたずらだねっ! はい、これを引っ張ってみて」


 渡されたものは、彼女の体に巻かれている包帯の端っこだった。

 え?

 これを引っ張れと……?

 むしろ、俺がいたずらをする側じゃねえか。


「い、いいのか……?」


 ゴクリ。

 俺はつばを飲み込む。

 彼女は楽しそうな笑顔で答えた。


「うん。遠慮せずにいいよー」


 俺たちは同棲しているが、まだこういうことには慣れていない。

 俺は意を決して、その端っこを引いた。

 シュルッ………… なんとも言えない感触とともに、彼女の体から包帯が取れていく。


「あ~れ~」


 彼女がその場でくるくると回る。

 楽しげな様子だ。


「よいではないか、よいではないか」


 なんだかハロウィンとは趣旨が違う気がする。

 しかし、これはこれで素晴らしい。

 俺と彼女が仲良く楽しんでいた、そのとき。


 ボッ!

 テーブルの上に置かれていたカボチャの焚火から、包帯へ引火した。


「ちょっ! ひゃああっ!」


「消火だ! 消火ーー!!!」


 幸い、もとが包帯なので大して燃え広がらず、火事にはならなかった。

 しかし、彼女が巻いていた包帯は全て燃え尽きた。


「あちゃあ……。失敗失敗」


 彼女が可愛く微笑む。

 包帯の彼女も魅力的だったが、一糸まとわぬ今の姿も魅力的だ。


「ふふふ。燃えてきたぜ」


 俺は、先ほどの意味とはまた別の意味で燃えてきた。


「もうっ! しょうがないなあ……。今夜は楽しもうね」


 彼女もそれに応えてくれる。

 俺たちの夜はまだまだ始まったばかりだ!

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