第7話

 その後、二週間猶予の締め切りぎりぎりに合わせたかのように暖房がなおった。もちろんカルロスからは、マリアに暖房がなおったという連絡をすることはなかったので、私からマリアに伝えた。


 暖房が入るとアパート全体が温かくなって、擦り切れていた心も落ち着いた。


 二日後にはマリアも帰ってきて、平穏な日常が戻ってきた。



 しかし、その二週間後、夜中にすごい物音がして目が覚めた。


 ――まただ。


 時計を見ると朝の三時。カルロスが大声で話しているのが聞こえる。私の部屋のドアの隙間から明かりが見える。もうやらないと言っていたのにまたやっている。ベッドから起き上がって壁を強く叩く。


 何回も叩いたが話し声は全然止まらない。聞こえていないようだ。


 カルロスの部屋から何かを引きずりながら動かしている音がする。何だろう。声が一段と大きくなったと思ったら、玄関のドアがバタンと閉まる音がした。


 数分後、玄関のドアがまた開いた。大声で話している。


 カルロスの部屋に入ってもまだ話している。


 すると、ピンポンとドアベルが鳴った。誰かが来たようだ。友達でも呼んだのだろうか。


 耳を澄ましていると、なんだか怒っているような声がした。しばらく怒り声が続き、カルロスの「ごめんなさい」という声も聞こえた。


 ドアが閉まるとカルロスはまた自分の部屋に戻って大声で話し始めた。


 ――もう我慢できない。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る