第3話

 マリアの作ったアヒ・デ・ガジーナは、黄色唐辛子やタマネギ、パン、牛乳、ブイヨンスープなどで作った濃厚ピリ辛スープに、細かく裂いた鳥肉を入れて煮込んだ料理だそうだ。ごはんと一緒にジャガイモとゆで卵が添えられてあり、彩り豊かで美味しそう。


「美味しい! このスープコクがあるね」


「じっくり煮込んだからね。唐辛子スープだから寒い日にいいのよ」


「身体の中からあったまるね」


 二人ともふーふーしながら、しばらく無言で食べ続けた。


「いけない、もうこんな時間」


 そう言うと、マリアは急いでご飯を食べて席を立った。


「私はこれからクラブに行くけど、まだたくさん残ってるから好きなだけ食べてね」


「クラブに行くの?」


「そうよ。私、クラブで踊るの大好きなの。友達と毎週クラブで踊るのよ。この夜を楽しみにして日々働いているようなものね。じゃあ、ごゆっくり」


「ありがとう」


 マリアはウィンクをすると、片手をひらひらさせて自分の部屋に戻った。


 そうか、クラブに行くための格好だったんだ。


 このアパートで人と一緒に夕飯をするのは初めてだったから、その日は幸せな気持ちで眠りについた。


―――――――――――――――――――――


 一か月が経った頃、夜中に物音がして目が覚めた。


 カルロスの部屋で人が話しているようだ。カルロスの部屋は私の部屋と壁をはさんだ向こう側にある。このアパートの壁は薄いので、ちょっとした物音でも聞こえるのだ。


 時計を見ると午前三時。こんな時間に一体何をしているのか。

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