11.カーラの作戦 その3 もう作戦はない


「すまないね。カーラさんを付き合わせてしまって」


違うのですよ!

私がソフィア様を巻き込んだのですよ!


けど、そんな事わざわざ言わないわよねっ! これはチャンスよ!


母の教え その3

チャンスは逃すな。だが、がっつくな。


難しくない?!

ねぇ、お母さん、この教え無理じゃない?!


エリザベスお嬢様を見習って、母の教えをノートに書いた。さっきも出かける前に読んできた。もう全部覚えてる。母に教わってる時は、凄いと思ってけど、改めて思い出すとかなり難しいわよね?!


母の教えは、これでおしまい。あとは母の武勇伝を聞かされただけだったのだと気が付いたのは、たった今だ。


私は、お母さんみたいに恋多き女じゃないのよ!

こんなアバウトなアドバイスでいけるかぁ!!!


ってか、お母さんの話を聞くだけじゃなくて、もっと質問しておけば良かったよぉ!

具体案、具体案が欲しい!


いきなり憧れの人と2人きりになるなんて、想定外だよぉ!


どうすんの?!

ソフィア様ぁ! 助け下さい!


そ、そうだ! ソフィア様のところに行こう!


「あ、あの……! ソフィア様を追いかけませんか? 私は一応ソフィア様の護衛ですし……」


「……ああ、確かにそうだね。カーラさんもノートが欲しいの?」


あ、あれ?!

なんで?! なんで不機嫌そうなの?!


え、私何か間違えた?!


「……どうしたの? ソフィアの所に行きたいんでしょう?」


リアム様の口調に棘がある。なんでよ!


「あ……あの……リアム様はお忙しいでしょうし……」


何言ってるの?!

あーもう! 意味わかんない!


どうするのが正解なのよ!

母の教えは思い出せない。リアム様にアプローチした女性達の真似なんてしたら嫌われる。ソフィア様ぁ! 助けてぇ!


「……カーラさんは、なにか買いたいものはないのかい?」


「え、えっと……、と、特には……」


エリザベスお嬢様の誕生日プレゼントはもう用意してある。生活に必要なものは支給されるから買う必要はない。増えたお給金は、あまり使い道がなくてたまっていく一方だ。だから、今日は何があっても良いように多めにお金を持って来ている。


「あ、あの! お財布は持って来たのでなにか買い物を……!」


そう言って、お財布を出したのがまずかったんだろう。私の財布を奪おうと数人の少年少女が群がって来た。


「お姉さん! お金ちょうだい!」


「ずるい! 俺にもくれよ!」


「僕も!」


「私も!」


こんなの、見た事ない。

うちの領地は確かに貧しかった。みんな、食べるものに困る暮らしをしていた。けど、子どもが物乞いをするなんて事……なかった。私が産まれる前はもっと酷かったと聞いてるから、以前はあったのかもしれない。でも、私の記憶では……一度もない。


弟や妹と変わらない歳の子達が、お金をくれと群がる。その光景は衝撃的で、気が付いたらお財布の中身は空っぽになっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る