第3話
ローズエデンに着き歓楽街の終わりにあるバーの扉をカランと鳴らして入る。
「あれ、リベルテ君いらっしゃーい。どうしたの今日いつもより早いね。もしかして、俺に会いたくなっちゃった?」すっかり砕けた間柄だからなのか単純にテンションが高いのかはわからないけど客が来てないみたいだから迷惑にはならないのか。
「いえ、気が向いただけです。」
「つれないねぇ。ま、そんなとこも好きなんだけどね。」ナフキンとかを補充しながら言われたけどリップサービスとして受け取ろう。
「エヴァーオーナー?仕事してくださいよ!」厚底ブーツにTheゴスロリの服を身に纏いロングのツインテールを下げる地雷系みたいな人がキッチンから出てきた。
「やだなぁリンカちゃん俺ちゃんと仕事してるよ?ねぇリベルテ君?」急に僕に話題振らないでよ。
まだメニュー見てないんだから。
「僕から見たら仕事してないも同然ですが彼なりにしているようです。」僕の発言によってエヴァーさんは説教コースになりそう。
「バイトの私に仕事任せないで下さいよ。あなたの店でしょう?」この子の雰囲気はどことなくフランに重なる。このうるさい感じと面倒くさいところ。
でもリンカさんの方が話聞いてるからまだ良いな。
「ごめんって、そんな怒んないでよ。」1回りは離れているであろう人にペコペコしてるのは見てる分には面白い。
カランと入店の合図が鳴る。するとさっきまでと打って変わってにこやかな営業スマイルに変わる。
「「いらっしゃいませ。どうぞごゆっくり。」」
綺麗に重なった声に笑いそうになる。
「あっ!オリバーまだ仕事中でしょ?」リンカさんの友人オリバー・ロペス。23歳で国家騎士所属、仕事中にバーにきているが有能そう。
「はは、まぁそうだけどさ先輩もいるし大丈夫。」
「僕に押し付けるつもり!?やだよ?僕怒られるの嫌いなんだけど?」この騒がしい男はレイ・ローゼット。32歳の国家騎士団、第6隊長を勤めている。
「2人とも声うるさいからね?」
それから少し静かになり時間が過ぎて行く。
気がつけばそろそろ約束の時間だ。
「ではまた、ここに置いておきますね。」2560リトぴったりを置いて席を立ち扉を開ける。カランと鳴らして外へ出る。隣を見れば少し肌寒そうにしているフランがいた。
「お待たせしました。」まだ時間丁度ではあるがきっと時間前に来てくれたんだろう。
「ほんとよ。寒空の下女性を待たせるだなんてどんな神経してんのよ!」彼女の商売道具の入ったキャリーケースを預けてくる。まあ、最近だいぶ寒くはなったから言い返しはしない。
「はぁ、では未使用の手袋使います?」バッグの中から洗い立ての手袋を出す。
「あら、気が利くじゃない。っていうかこれ血がつかないようにする為の手袋じゃない。ま、いいわ。」お気に召さなかったらしいがおとなしく使う。文句を言うなら使わなくていいんですよ?でも面白いから黙った。それから2人で街灯の下を遠目から見れば恋仲に見えるであろう距離で歩く。これは静寂の中聞かれたくない話をするためであってそれ以外の感情は特に無い。
「ここね。…今日はどうするの?」フランが僕を見上げながら面倒くさそうに聞いてくる。
「10分経っても戻って来なかった場合はあなたは家に戻ってください。それ以外はいつもと同じです。」
「注告もいつもと変わらないじゃない。分かった大人しく待ってるわ。早く戻ってきて頂戴ね。」フランは偉そうな態度でキャリーケースに少し腰を掛ける。
キミはフランの隣にいて。僕は目的の人に会いに向かった。
「ねぇ、そこにいるんでしょ?リベルテが隠そうとしてるのは知ってるわ。」周りから見れば1人で話すただの痛い女なのは分かってる。けれど何故かそこに人がいる自信があった。けれどしばらく経っても返事がない。私を苛立たせるには充分。時計を見るとまだ3分しか経っていなかった。私は何もすることがなくなったから時計を見ることにした。4分、4分半、5分、5分半、6分、6分半、7分を過ぎそうな頃後ろでカツンと音が鳴った。振り返ると、リベルテがいた。いつもより遅くて少し心配したけれど直接言えるような素直さは持ち合わせてない。
「遅かったじゃない。すっかり冷えきってしまったわ。」リベルテは返り血のついたままの顔で優しい笑顔を浮かべた。それから普段よりも少し柔らかな声で「お待たせしてすみません。」と一言呟いた。
「私あんたの歩いてきた場所片付けてくるわ。先に帰ってる?」フランはその辺りの女性の様な夜道で危ない目に遭うことは無いだろうが主人が面倒くさそうなので待つことを選ぶ。
「いえ、待ってますよ。あと、袋か何か持ってますか?」汚してしまった靴を予備のに履き替えたい。
「だと思った。袋とお気に入りの靴持ってきたわよ。あと、ロングコート。血みどろ過ぎるから隠してちょうだい。ほら、使いなさい。」キャリーケースの中から一式出してくれた。
「ありがとうございます。」僕が受けとるとフランはすぐに掃除に向かった。
「さてと靴、これピンヒールじゃない?ま、履ければいっか。キミはもうすぐ目が覚めてしまうね。ほら、体が透けてきているでしょ?目が覚めたらきっと僕らの事は忘れるよ。じゃあね、1夜の友人。」重力にしたがって落ちるマントを掴み、着替えを再開する。フランはあとどのぐらいで来るのかな。
目覚ましの音で目が覚めた。
何だか長い夢を見ていた気がする。
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