アラサー無職の俺の部屋に、異世界返りの幼なじみが女子高生としてやってきた。しかも俺も若返らせてしまったので、これから一緒に『イチャラブ』学園生活を送ります
イベント6 異世界帰りの幼なじみと勉強会をするらしい。参加者が俺以外、全員女子なんだが ③
イベント6 異世界帰りの幼なじみと勉強会をするらしい。参加者が俺以外、全員女子なんだが ③
そういえば――
俺は思い出す。
――あの上司も
「あーその件につきましてはですね、私もいま確認中でして」
あまりの不意打ちに、足の止まった俺の耳に、元上司の声が届く。
どうやら誰かと電話中らしい。
そういや以前、年の離れた妹がいるとか聞いた気がする。
しかし、たまたま一緒のクラスになった生徒の家に来たら、その家族が元上司とか、いったいどんな偶然なんだ……
『とにかく彼を連れ戻せ』
通話音量が大きいのか、相手方の声まで俺のところに聞こえてきた。
――できればもうこの上司とは顔を合わせたくなかったし、このままずらかろう
俺は、そっとその場を去ろうとしたが、次に入ってきた言葉に、またしても足を止めてしまう。
「わかりました部長!
――え?
いま、俺の名前を言わなかったか?
上司はぺこぺこしながら電話を切ると、即座にスマホを操作する。
よほど焦っているのか、俺がドアの隙間からガン見していることにも気づいた様子はない。
――プルルルルルッ
上司の携帯が鳴り始めると同時に、俺のポケット内のスマホが振動した。
取り出して、画面を確認する。
『長谷主任』
俺に当たり散らすのを日課にしていた男の名前がスマートフォンに表示されている。
無言で画面を眺めていると、ほどなく留守電に切り替わった。
「あー、もしもし木島くん? ちょっと話したいことがあるから、至急折り返してくれないかな? 色々誤解もあったみたいだから、僕も説明させて欲しいからさ」
部屋の中で上司がうわずった声を上げる。
電話を終えると、彼は疲れた顔でどさっと椅子の背もたれに体を投げた。
「……なんでこんなことになってしまったんだ!? アイツさえいなくなれば、職場がうまく回るはずだったのに……」
上司は机に肘をついて頭を抱える。
すると
――プルルルルルッ
再び上司の携帯が鳴った。
今度は着信らしい。
スマホ画面を確認した途端、彼の顔が目に見えて真っ青になる。
「し、社長!?」
慌てて、身を起こし、両手でスマホを抱え込む上司。
「は、はい、長谷です」
「……君、なんか苦情がたくさん来てるんだけど、どうなってるの?」
相手方は、挨拶も抜きに不機嫌な口調で話し始めた。
「この前辞めた人……ええとなんていったっけ、そう木島くんだ。『なんで木島さんを辞めさせたんですか?』って色んな人が訴えにきてるんだよ」
「そ、そうでしたか」
「そうでしたか、じゃないって。僕のところに直接言いに来るぐらいだから、よっぽどだよ。なんか君がパワハラで辞めさせたとかいう噂も出てるけど、そこのところどうなの?」
「ま、ま、まさかぁ! わ、わ、私がそんなことをするはずがないじゃないですかぁ~」
スマホを持つ手をブルブルさせて、そう告げる上司。
嘘の下手な子供のように、目があちこちに泳いでいる。
「とにかく早く彼と連絡を取ってよ。今度は非正規じゃなくて正規で雇用するって伝えといて」
「わ、わかりました!」
上司は、床の上に正座してこたえた。
通話を終えると、再び頭を抱え込む。
「ああ、くそ! ボクの部署の成績が落ちたのは、ボクのせいじゃないのに。ぜんぶ無能な部下と彼らを入れた人事のせいなのに……」
他責極まる発言を平然と垂れ流す上司に、俺はそっと嘆息をもらした。
……そうやって、一緒に働いている仲間を見下しているから、誰もついていかないし、相談事があっても、あんたじゃなくてみんな俺に相談していたのだが。
俺は苦悩する上司をその場に残し、廊下を立ち去った。
――まあ、今までは俺がこの人と他の社員の間を取り持っていたけど、それが余計なことだと言ったのはこの人だし、俺はもう若返っていて、しかも高校に通っているんだから、いまさら職場に復帰してくれと言われても無理なんだよな
俺は留守録の記録を、そっと削除した。
――さて、早く戻って、
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