アラサー無職の俺の部屋に、異世界返りの幼なじみが女子高生としてやってきた。しかも俺も若返らせてしまったので、これから一緒に『イチャラブ』学園生活を送ります
イベント3 異世界帰りの幼なじみと一緒に自己紹介するらしい。それはいいけど、恋人っぽく匂わせるなよ? ③
イベント3 異世界帰りの幼なじみと一緒に自己紹介するらしい。それはいいけど、恋人っぽく匂わせるなよ? ③
「
その女子生徒は、丁寧に頭を下げつつ名乗った。
小柄な子だ。身長はたぶん150㎝もないだろう。
三つ編みにしたおさげを体の前に垂らし、顔に不似合いなぐらい大きな眼鏡をかけている。
器量はけして悪くないのだが、同じクラスメイトの
「その節は世話になった」
彼女の対面に腰かけた
場所は校内の食堂。
俺たちは部屋の中ほどにある4人掛けのテーブルに座っていた。
俺と梢が並んで座り、その対面に樹里と今しがた自己紹介してくれた長谷景子が着席している。
室内には多くの生徒たちがひしめき合い、あるいは喋りながら、あるいは黙々と昼食を取っていた。
つまりなにがいいたいかというと――
「今朝は良いパンツをくれて、感謝する」
大声で、長谷に告げる梢。
――こいつのこういう言動が怖いから気を付けよう、って言いたかったんだよね。まあもう遅いんですけどね……。
「は、はあ……どうも……」
顔を赤くして、ぼそぼそこたえる長谷。
「あの女子、パンツとか言わなかったか?」
「俺も聞こえた。パンツをくれて~とか」
周囲の生徒(特に男子)に好奇の眼差しを向けられ、長谷は怯えた小動物のように椅子の上で身を縮めた。
俺は慌てて、梢のつま先を上履きでちょんちょん、つつく。
(おい! もっと気を使えよ)
小声でそう伝えると、彼女は怪訝そうな目をこちらに向けたが、やおら、はっと何かに気付いた表情を見せて、椅子の上で居住まいを正す。
「……失礼。今朝方は貴殿の所有物である、洗い立ての清潔なパンツを快く譲ってくれて、ありがとう。ほどよく使い込まれていたためか、とても良いはき心地だ。あまりに尻に馴染み過ぎて、いまだにパンツをはいていないのではないかと、錯覚するぐらいだよ」
胸に手を当て、最大限の謝意を示す梢。
周辺の生徒たち(今度は女子も)が一斉に『え゛』といった表情で動きをとめる。
「洗い立てのパンツて……使用済みの下着をプレゼントしたのかよ」
「しかも、パンツをもらう前は、ノーパンだったってこと? いったいどういう状況だったのかしら?」
「やばい……なんかエロいわ。わたし、鼻血出てきた」
方々から上がる声に、長谷はいよいよ身を固くする。
彼女は、頭からしゅうううう、と湯気が出そうなぐらい赤面していた。
…………うん、俺が悪かった。
「
にっこり営業スマイルを浮かべて、幼なじみに伝える俺。
――こうやって、一から教えないと、こいつには理解できないに決まってるよな
「そうだったのか」
いつものむっつり顔を、心なししょげさせる梢。
「しかし、なぜ苗字呼びになる?」
「あはははははは、やばい、二人ともおもしろーい!!」
一人、樹里だけが大うけして、馬鹿笑いしていた。
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私はいたく感動していた。
「うまい」
うどんを食べるのは、実に20年ぶりだ。
私の転移先の異世界には、麺類の料理は存在しなかったのだ。
このつるつるとした食感。喉ごし。
思わず、目頭が熱くなる。
「え? そんな泣くほどうまい?」
対面の三上樹里が言う。
「ああ」
「そりゃよかった! 学食に連れてきて正解だったね!」
にこにこ告げる彼女。
ちなみに、たーくんは水のお代わりを取りに、離席している。
ストレスでやたら喉が渇くと言っていたが、大丈夫だろうか。心配だ。
「で、景ちゃんの方からちょっと話があるんだよね?」
三上に話を振られた長谷景子が、慌てて伏せていた顔を上げた。
「は、はい」
彼女は眼鏡を片手でくいっ、と持ち上げる。
「実はわたくし、クラス委員をやっているんです。それで、放課後にお二人を校内案内するよう、先生に言い付かっておりまして」
「おお! それはありがたい!」
「一つよろしくお願いします」
「了解した。こちらこそよろしく頼む!」
どうやら彼女は、この件を伝えるために同行したらしい。
話が終わったので、私は再びうどんをすする作業に戻った。
三上がそんな私をにこにこ眺めながら、口を開く。
「それで、梢ちゃんとたっちゃんは付き合ってるの?」
「ぐぼおおおを!!!???」
気管にうどんを詰まらせかけ、軽く白目をむく私。
なんだこの女!? いきなりなにを――
「……ち、違うが?」
「そうなんだ。一緒に転校してきたし、なーんか親しげだったからさ」
三上は、組んだ両手の上に顎を乗せ、覗き込むように私の目を見つめる。
「でも、梢ちゃんは、彼のことが好きだよね?」
こいつ――――!?
私は動揺を気取られまいと、彼女から目を離してコップを手に取った。
手が震え水が机に跳ねるが、かまわず口までグラスを運ぶ。
落ち着け。とにかくなんでもない風を装うんだ――
「別に? そんなことはないが?」
「じゃ、私が告っちゃってもいいよね?」
――ばちゃばちゃばちゃばちゃ
私の口元から、盛大に水が飛び散る。
長谷景子が無言でずずっと椅子を引き、距離を取った。
「あははははは、冗談だって!」
「ぐ――――たーくんはな、私の幼なじみで『最愛の人』だ。わかったか!」
「お! やっぱり好きなんだ!」
「まあ、貴女にはアースガルド語は理解できな――え?」
私はマジマジと彼女を眺める。
「……貴女は、アースガルド語の素養があるのか?」
「ないけど、なんとなーく勘で、ね。最愛の人みたいな意味かなあ?」
「な――――」
絶句する私。
「いやいやその反応、白状してるようなもんじゃん~~~」
ケラケラ笑う彼女に、私は戦慄をおぼえる。
――この女、私に一杯食わせるとは、ただものではない。これほどの攻撃を受けたのは、魔王戦以来か……
「はぁ…………放課後、大丈夫でしょうか…………」
長谷が嘆息をもらしつつ何事か呟いたが、眼前の強敵に集中していた私の耳には、当然届かなかった。
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