アラサー無職の俺の部屋に、異世界返りの幼なじみが女子高生としてやってきた。しかも俺も若返らせてしまったので、これから一緒に『イチャラブ』学園生活を送ります
イベント2 異世界帰りの幼なじみと登校するらしい。なお、下着はつけていない模様③
イベント2 異世界帰りの幼なじみと登校するらしい。なお、下着はつけていない模様③
「おまえ、パンツはいてないぞ」
朝。
登校中にその事実を
人気のない住宅街を一陣の風が吹き抜ける。
梢は最初きょとんとした顔で俺を見つめていたが、徐々にその頬が赤くなってゆく。
彼女は勢いよく立ち上がると、スカートの中に手を突っ込み、手探りする。
「
絶望に満ちた声でそう告げる。
「はくのを忘れていた……」
「なんでだよ!?」
「異世界では下着をつけるという習慣がなかったんだ。だから、こっちに戻った時に完全に忘れていた」
…………マジかよ。
「とりあえず、シャレになんないから、学校に行く前になんとかしないと」
転校初日にノーパン登校とか、校史で語り継がれる伝説になってしまう。
「わかった。クエスト内容を『パンツの捜索と装備』に変更する」
そう宣言すると、彼女は周囲に素早く目を走らせた。
T字路の先にある民家に視線を止める。
「ちょうどいい、あれを接収しよう」
梢のほっそりとした指が示しているのは、物干し竿に吊るされたピンク色のパンツだ。
「……おまえ、まさか」
俺が止める間もなく、彼女はひらりと道路と民家を隔てる塀の上に飛び乗った。
「まてまてまてまて」
さすがに声を張り上げる。
「なに?」
くるりと振り返る梢。
「おまえ、いくら切迫してるからって盗みは駄目だろ?」
「盗みではない。ただ、持ってゆくだけだ」
「同じだろ!」
梢は腕を組んで俺を見下ろす。
「勇者には他人の家の物を自由に入手する権利が与えられている。常識だぞ?」
「どこの常識だよ!」
言われてみれば、たしかに、ド○クエの勇者とかは、人の家のタンスを漁ったり壺を叩き壊したりして、アイテムを手に入れてるけど、日本では普通に犯罪だから。
あと、そのポーズで塀の上から俺を見下ろすと、モザイクが必要なレベルで丸見えですから。あなたいま、はいてませんので。
「きゃっ!?」
短い悲鳴が上がったのは、その時だった。
俺と梢は同時に声のした方へと目を向ける。
10代半ばぐらいとおぼしき少女が、窓辺に立ち尽くして梢を見ていた。
どうやら、梢が不法侵入しようとしている民家の住民らしい。口元に手を当て、目には明らかな怯えの色を浮かべている。
そりゃそうだろう。なんの脈絡もなく、自宅の塀の上にノーパンの女が仁王立ちしているんだから。
「ど、どなたですか!?」
「私か? 名は依知川梢という」
少女の問いに、相変わらず腕を組んだポーズでこたえる梢。
「わけあって、パンツを必要としている。そこに干してある物を一枚いただけないだろうか?」
彼女は『これでいいんだろ?』という目を、ちらりと俺に向ける。
頼むから、他人のふりをさせてくれ。
「わ、わかりました」
少女はそうこたえると、ベランダに降り立ってピンチハンガーからパンツを取り外した。
おっかなびっくりという感じで腕を差し伸ばし、下着を梢に手渡す。
「感謝する」
そう告げて、その場でパンツをはき始める梢。
はち切れんばかりの健康美を誇る太腿を上げ下げして、パンツの穴に足を通すが、塀の上でそんなことをやったら、俺の方からは丸見えだって言ってんだろ……。
「で、では失礼します」
少女は、そそくさと室内に戻る。
その後ろ姿からは、一刻も早く不審者から遠ざかりたいという気持ちが滲みでていた。
「首尾よく目当てのアイテムを手に入れることができたな」
塀から降り立った梢が、俺に告げた。
「では、クエスト再開といこうか――」
最後まで聞かずに、俺は幼なじみの手を取り、叫ぶ。
「いいからさっさとこの場を離れるぞ!」
「なぜ?」
「警察がきて逮捕されるからに決まってんだろ!」
説明する間も惜しいので、俺はそのまま梢の手を引っ張って一緒に走り始めた。
まったく、なんていう朝だろうか……。
「クエスト失敗だな」
せめてもの皮肉を込めて俺がそう告げると、幼なじみは俺の顔を見たのち、繋がれた手に、じーっと視線を落とした。
『ぜんぜん失敗じゃない』
「なんだって?」
「別に」
どこか満足げな声で、短くこたえる梢。
――なにニマニマ笑ろとんねん、こいつ……
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