アラサー無職の俺の部屋に、異世界返りの幼なじみが女子高生としてやってきた。しかも俺も若返らせてしまったので、これから一緒に『イチャラブ』学園生活を送ります
イベント2 異世界帰りの幼なじみと登校するらしい。なお、下着はつけていない模様②
イベント2 異世界帰りの幼なじみと登校するらしい。なお、下着はつけていない模様②
「さっそくだが、たーくんにクエストを行ってもらう」
アパートから出て30メートルぐらい歩くと、唐突に
ちなみに、今の彼女は例の裸エプロンから高校の制服に着替えている。
裸エプロンのまま登校するのはNGぐらいの常識はあってよかった。
「……なんだって?」
俺は梢に聞き返す。
「クエスト名は『転入生と出合い頭にごっちーん☆ なぜか胸がときめいちゃった♡』だ。わかりにくかったら、クエストという単語をミッションに置き換えてもらってもいい」
「ぜんぜんわかりやすくなってねえし、なにをやるのか1ミリも伝わってこないんだが……」
梢は、絶世の美少女顔を3割ぐらい台無しにする、鋭利な刃物のような眼差しで、前方のT字路を見据えた。
「あそこで道が交差しているな?」
「だな」
「私が、あちら側の道から走り出てくるから、たーくんはこちらの道を全力で突き進み、私と正面衝突して欲しい」
「いや、わけわかんねえんだけど」
怪我するだろ、普通に。
「……なんのためにそんなことをするんだよ?」
「私の青春を取り戻すためだ」
梢は内ポケットから、ボロボロにすり切れた羊皮紙を取り出した。
表面と思しき方を、俺に向けて突き出す。
そこには、正方形の物体を
羊皮紙の余白には、漫画っぽい吹き出しも記されている。
いわく、
女の子『いやーん、転校初日に遅刻しそうだから食パン咥えて走ってたら、ぶつかっちゃった~☆』
男の子『うぜえよ。でも、なんでだろう、こいつの顔を見た途端、急にドキドキし始めた』
「…………なにこれ」
実直な感想を述べる俺。
「たーくん、これは典型的な転入時のイベントだぞ?」
そんなことも知らないのか、というニュアンスを含んだ口調で、梢がこたえた。
彼女は、腕を組んで、滔々と語り始める。
「私は、異世界に飛ばされた直後、こういう絵をいくつも描いたんだ」
「なんのために?」
「首尾よく日本に戻れたとき、為すべきことを忘れないために」
俺はもう一度、くだんのイラストを眺める。
………絶対ほかに描くべきことがあったろ。
「それらの絵をクエストとみなし、一つずつ達成してゆく。それが私の願いである、理想の『恋人との』学園生活を送る最短ルートであると、私は考えている」
「その第一歩が、これってわけか」
「そう」
我が意を得たりと、大きく頷く梢。
「異世界で辛いときは、自分の絵を見て心の支えにしてきた。『最後の絵はたーくんが私に告白するシーンだ! 絶対達成するから!』」
「ところどころアースガルド語(だっけ?)が混じっててよくわからなかったけど、まあおおよそは理解した」
俺は幼なじみに告げる。
「じゃあ、そのクエストとやらをさっさとやっちまおう。急がないと遅刻するぜ」
「わかった!」
梢は疾風のような速さで前方の角を折れていった。
「たーくん、準備できたー?」
T字路の向こうから、そんな声が届く。
「ああ」
「じゃあいくよー、さん、に、いち」
カウントダウンとともに、誰かが駆けてくる、たったったっ、という音が響き始める。
俺もその足音に合わせて、小走りに進み始めた。
どうでもいいけど、出会い頭って、こうやってわざと作った場合も言うのかねえ……。
曲がり角の先から影が落ちる。
俺はタイミングを合わせて、飛び出した。
「きやああああああ」
棒読みにしか聞こえない悲鳴を上げつつ、俺に激突する梢。
――いや、普通に痛てえんだが!?
地面に尻餅をついたまま、かろうじて幼なじみの様子をうかがうと、彼女も同じく尻餅をついて、天を見上げていた。
いつの間に持ってきていたのか、例の雀の串焼きを咥えているのは、食パンの代わりだろうか。
……もう面倒くさいから突っ込まないでおこう。
「いやあん、転校初日に遅刻しそうだから食パン咥えて走ってたら、ぶつかっちゃったあ」
大根役者も裸足で逃げ出すような、お経読みで告げる梢。
なにかをうながすように、じっと俺の方を見つめてくる。
あ、続きを言えってことか。
ええと――
「うぜえよ。でも、なんでだろう、こいつの顔を見た途端、急にドキドキし始めた」
――で当ってたかな?
俺の発言を聞いた梢は、なぜか顔を赤くする。
『た、たーくんが私にドキドキして!? こんなに簡単にフラグが立ってしまうなんて……』
異世界の言語でなにやらブツブツ呟いていたが、その時、俺はある恐ろしい事態に気付いた。
「おい」
『こう見えて、私の異世界でのクエスト達成率は99、9%を超える』
「おい、梢」
『とくにフラグの立ったイベントは、一度も取り逃したことはない。ふふ……これはもう
「俺の声、聞こえてる?」
そこでようやく、彼女は我に返り、瞬きしながら俺の方を見つめた。
「……すまない、なにか言ったか?」
「その、見えてるぞ」
歯切れの悪い声でそう伝える俺。
彼女の目が、尻餅をついたままの自分の体に移る。
体育座りで足を開いた体勢だ。スカート丈がかなり短く作られているため、いわゆる『中身』が完全に御開帳されている。
「…………失礼」
少しだけ気まずげな顔で、静かに足を閉じる梢。
――この薄いリアクションってことは、こいつ、たぶん気付いてないよな…………
俺は思い切って、その事実を告げた。
「おまえ、パンツはいてないぞ」
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