第31章 チョコレートは秘められて

「ふぁぁ……ん……えっと5時、起きないと」

ここは富山県の都会の方から離れた山の近く。そこに居を構えていたのは翔。

今日は2月14日、時刻は朝の5時。普通の人なら二度寝でもする時刻に布団から出て家を出て、そしてとある場所へと向かっている。

「来たか翔くん。それじゃあ始めようか」

「はいっ!」

翔の家の近くにある道場。そこに翔はかなり長い間通い続けている。この道場は普段は子供たちに柔道を教えているのだけど、この時間だけは別。

「じゃあまずはいつもの模擬練習から。全部受け止めてみなさい」

ここで盾の使い方を翔は教わっている。ここの道場の主、哀川津雲は翔の親との繋がりがあり、かつ鍛えていたのもありそういう特訓ができるとのことでこんなことになっている。

このあたりでは山からの獣害に悩まされていた。そこそこの頻度で荒されてしまい、ここに住む人はずっと苦労しながら過ごしていた。

ある日、翔がこの盾を拾って、この盾に特殊な効果があるなんてことが判明してからは獣害に対抗するためにも戦おうということになり、そうなのならばと強くなる手伝いを申し入れてくれたのでここで盾を上手く使えるよう頑張っているという流れ。

新に弟子入りした理由も、途中上手く盾が扱えなくて悩んでいたときにたまたま見つけた異世界の武器を上手く扱っていた新を見つけたからなんてこと。それで異少課に入ってどんどん盾を上達させて行っているのが翔だ。


「うむ。どんどん上達しておるな。教えることがなくなる日も近いかもしれん」

「本当長かった。ようやくここまでこれたという感じです」

「こら。まだだ気が早い。ちゃんと努力を怠らないように」

(本当、ここまでこれたんだ……。なら……)

「本日はここまで」

「ありがとうございました」

朝の特訓も終わり、家へと帰る。学校の準備をして、学校へと向かった。


「やっほー翔。あのテストどんな感じどんな感じ?できた感じ?」

「いやー難い。勉強したのに全然思い出せんくて」

「そうそう。私テストのとき思い出そうとしたらずーっと昨日たまたま目に入ったチラシの電話番号頭に出てきてさ、そんなん覚えんなー!ってなったわ」

学校へと登校。学校への最短距離を無視して先に行くのはさっきの道場の家。

翔が一緒に通う彼女の名前は哀川崎。家も近い年齢も近いということで子供の頃から仲良かった翔の幼馴染の1人。

「あれ。今日の授業必要な物あったっけ」

「おーいおい。まったく、鈍感系は面倒くさがれるぞ」

「あぁそっか。今日その日だったか」

「そんな心配なさんなって。翔にもあるから。今やると学校に不要物はーなんて面倒くさいことなるし、帰りに渡したるから」

2人で話しながら次に向かうのは学校……ではなくその斜向かいの家。そこの前で雑談しながら出てくるのを待った。

「お兄ちゃんこれ、必要だって言ってたのに忘れてるよ!」

「そうだありがとう。他に忘れ物は……ないよな」

それから少し、ドアを開けて出てきた2人。

「やっほー京先。麻依」

「おはよう。2人共」

「おはよう」

この2人は末永京、末永麻依の兄妹。この2人も崎と同じく翔の幼馴染である。麻依と崎、翔が同級生で、京が2年上。京とは学校も違うのであんまり関わらないはずだけど、通う学校が翔の学校の近くなので少なくとも行きは一緒に通っている。


「じゃあな」

「お兄ちゃんテストなんだよね。頑張って」

「おうよ。留年だけはせんから。ちゃんと覚えてる」

道が分かれるところで少し話し込んでる兄妹。その様子を少し遠くから眺めるこちらの2人。

「いやさ、いいよねこいつら。クラスの子曰く兄弟なんて全然仲良くない一人っ子の方が断然良いらしいけど、もうなんかこれが語ってるよそれは嘘だー」

「喧嘩したとこも見たことないというか。微笑ましい本当」

「分かる。この2人の仲いいイチャイチャを遠くから眺めるだけでご飯三杯行けそう感ある」

そんなこと言ってたらもう兄の方が行ってしまったので、3人は学校へと。これがいつもの翔の朝の日常である。


「やっほー翔」

学校終わって下校の時間。3人一緒に帰ってる。

本当なら京も入れて幼馴染4人組で帰りたい気持ちもあるけれど、学校が違うと終わる時間も違ってしまうわけでして。

「よーし学校の敷地外。何やったって言われない場所ー!それじゃあ2人共これ」

「クッキーだ!美味しそう〜」

「おー、すっごい」

「喜んでもらえたようで何より。バレンタインだしあげたいじゃん。料理サイト見ながら頑張ってクッキー作ったんだー。これは味も十分いけてたよ」

「なら私も、これ」

「おうおう。じゃあ開けてー、えっ……あの、これって」

「うぇっ!?え、そ、そ……」

「えっ?もしかして私違うもの渡しちゃった!?」

麻依から渡されたのは純粋なチョコレート。そこまではいいが問題は形。少しいびつな形をしているがハートの形。しかも既製品じゃない手作り。まさかこんなものを送ってくるとは思っておらず動揺を隠しきれてない。

「あの麻依。この形……」

「うん。間違ってはいなかった。良かった」

「いやそうじゃなくて、麻依ってそうなの?本命、なの?」

「うぇっ?えっ!?いや違うよ!これは仲良い友達に送るチョコだから!」

「だよねだよね。いやこの形。こんなハート型じゃ本命だって思われても仕方ないから!手作りで頑張ったの伝わってくるけど、そういうチョコの形ハート型にするのは止めて!こっちの心が持たないから!」

「あぁぁ!ごめん。本当に何も考えてなくて」

「だ、大丈夫。なんか勝手に期待して勝手に……ちなみに崎のは」

「もちろん本命じゃないに決まってるだろ?なんだ、本命じゃないと受けられないって?チョコ全然もらってないだろつべこべ言わず受け取れそして貰った数に計上しろや!」

「そうそう。そうだこれ京先に渡しておいて。本当は直に渡してみたいけど、遅くなるんでしょ?流石にその時間まで待つのは」

「分かったよ。ちゃんと渡しておくね」

崎からクッキーをもう一つ受け取って自分の分も合わせて2つを麻依はしまった。


「へへ、良かった。幼馴染って大事だ」

帰宅後。翔の家で貰った2つを食べていた。

「それにしても、やっぱ本命、じゃなかったか。だったら嬉しかったんだけどなー」

実は幼馴染の一人哀川崎は、昔翔が告白したが振られた子なのだ。友達としてみていて、恋愛感情を持つ異性とは見れていないという理由でそのときは振られてしまったが、まだ翔は諦めていない。

魅力的になれば見てくれるかもという淡い感情胸に今哀川の道場で修行をしている。修行がは全て終わったときに、翔はもう一度告白しようと考えていて、そのために頑張って修行を毎朝行っていた。

「頑張らないと。見てもらうぞー!」

ちゃんと前向きになれるのが翔の良いところである。


「お兄ちゃんお帰り」

「うーっただいま」

「お疲れお兄ちゃん。先お風呂?夜ご飯?」

「夜ご飯で」

末永家。親の宿直やら出張やらが重なったのでここ数日は2人っきり。先に帰った麻依が今日は家事をやって、明日は休みなので京がやるというように決めているらしい。

「そうだお兄ちゃん。これ、崎から渡してって」

「え、あーバレンタインの。凄いな手作りクッキー。うんうん味もいい。ホワイトデーのお返し失礼なもの返せないな」

「うん……そうだね」

「悩み事か?俺に聞けることなら聞くよお兄ちゃんだから」

「うん。お兄ちゃんちょっと待ってて、取ってくるから」

リビングから冷蔵庫へと離れて、そこに入れてある箱を取りに行く麻依。

「これ、チョコレート。私が作った」

「こ、これって……いやこの形」

「それで、お兄ちゃん……」


次の日。

「んあぁ……ん?えあもうこんな時間!?起きなきゃ」

末永京は今、午前10時半に目が覚めた。

「麻依、起こしに来なかったな……麻依……」

昨日の夜、全然眠ることはできず考えてしまいまあ酷い夜ふかしをしてしまい、それがこの時間。今日が休みで良かったと本気で安堵した。

「ごめんな麻依。寝坊したみたい……で……」

リビングにいると思ってたけどいなかった。キッチンにはお兄ちゃんの分の朝食と『ちょっと出かけてくる。お昼までには戻るね』と書かれた書き置きがおいてあった。

「麻依……今日は俺の担当だってのに……それより俺、今日麻依と顔合わせられるかな……」

置いてある朝食を食べながらもモヤモヤした気持ちは晴れない。ずっと麻依のことを考え続けていた。

「引き延ばすのはダメだから、早く決めてあげたい。だけどやっぱり、俺は……」

他のことになんか手がつかずただ時間だけが過ぎていた。

「昼作ろう。一旦落ち着けよう。スーハースーハー」

もう昼前、とりあえず軽くできる料理を2人分。作りながら一旦気持ちを落ち着ける。このまま考えても埒が明かない。

「こういうのって直感で決めていいの?理論的じゃあないとは思うけど、直感で決めたら失礼だよね。だからといって……」

簡単な料理を2人分。作りながらも考えるのが留まることはない。

「そもそも俺は……どうなんだ。まずそこからだろ」


「麻依、遅いな」

ちょっと出かけてくる。お昼までには帰る。

もう今は昼の1時。多少の遅れで何とかなる範疇は超えている。

今まで昼までに帰るっていうときは遅くても12時10までには帰って食卓で昼を食べていた。これは明らかにおかしい。

「麻依、麻依!」

スマホでメッセージを送るも未読のまま。居ても立っても居られずに電話をかけてもただ無機質な機械音が規則的に流れるだけ。

「まさか、まさかだよな。っ麻依!」

嫌なもんを想像した京。帰ってきたのなら連絡してと書き置きだけ残して家から飛び出していった。


朝の道場も終わった翔の家。今日は異少課も休みで何もすることはなくだらだら過ごしていたら崎が来たので、一緒にゲームをしていた。

ピンポーン!ピンポンピンポンピンポンピンポーン!

「うわ何もう。はいいってら」

「誰だピンポンダッシュか?迷惑なやつ」

2人でゲームをプレイしてたら鳴り響いたインターホン。ゲームを一時停止して翔が対応へと向かう。

「はい、って京!?なんか用?」

「あぁいやそれわかってどうでもよくて、麻依見てない今日」

「今日、麻依は見てないね。昨日なら一緒に帰ったけど」

「それは分かってて。麻依が帰ってこない!」

「えっ?」

マジトーンで伝えられたらこっちもマジトーンになる。どういうこと。

「あのさ、なんか聞こえちゃって来たんだけど、どういうこと?」

中にいた崎もこっちに来て、2人に今の状況。もう帰ってくるはずなのに帰ってこないことを聞いた。

「なるほど。行った先は見当もつかないってこと?」

「分かんない。最近そこそこどっか行ってたけど、それも場所聞いていないから……この近くってだけ」

「私探すの手伝う。でも3人じゃ時間が、他にも呼んで探してもらうの良い?」

「ありがたいむしろそうしてほしい。俺は、麻依を見つけて話さないといけないから。見つけてほしい」

こんな悲痛に満ちてる京の顔始めてみた。兄と妹。家族としての強いつながりを感じる。

「じゃあ俺も呼べそうな人呼んで、それで探そう」

「おー」


「師匠!今大丈夫です?」

「急だね翔。何かあった?あと今は特になにかしてるわけでもないからいいよ」

「ありがとうございます。それで実は……」

今起きてることを簡潔に伝える。

「ということで、麻依を探すの手伝ってほしいんです。他の異少課の4人にも同じく連絡します」

「分かったいいよ。翔がそんな声出すとは珍しいから。ただ事じゃない冗談じゃないって分かったし。なら手伝うっての。連絡俺からしようか?どっちにしろ一旦会って愛香の瞬間移動でそこまで運んでもらわないと」

「そうですね師匠。じゃあ愛香にこの場所のこと伝えるので皆に連絡して合流したらまた電話してください」


「私の友達今ショッピングモールで買い物してて来れないと、しゃーなし」

「俺の知り合い呼べそう。一緒に探してもらう」

「そっか、なら手分けしてとりあえず探そー。見つけたら連絡してよ」

「麻依……」


京と崎の2人は探し始め、それに対し翔は新達を待つために探せずにその場で留まっていた。

愛香の瞬間移動で富山県異少課の皆がここへと来る。

そこそこに時間かかったのに2人からの連絡はまだ来てない。まだなんだとやっぱりソワソワビクビクしながら来るのを待ち続けた。

「電話したけどもう一回。俺の幼馴染の末永麻依がどこに行ったか分かんなくなってて、探す手伝いをしてほしい」

「その人の写真とかありますか?名前だけ聞いて探すのはかなり難しいと思うので」

「これの、右に写ってるこの子」

「見つけたら翔に連絡、そういうことでいいんだな」

「うん。早く安心したいし、崎、そして京を安心させないと」

「場所の見当とか、そうでなくてもここらへんとかの曖昧なものでも、ありませんか?」

「分からない。地道に探さざるを得ないかもも」

口々に質問してそれら全てにきちんと答える翔。幼馴染のためにめちゃくちゃ頑張れる異少課ではあまり見られないタイプの翔。

「じゃあ、探しに行きましょう。バラバラのほうが見つけやすいですよね?」

「同じ場所で探す、わざわざそれをする意味もなさそうだよな」

そしてとりあえず、皆バラバラになって探し始めた。


「麻依、ここにもいないか。この公園あると思ったのに」

京が向かったのは町の公園。ここは昔京と麻依の2人でよく遊んだ公園で、また麻依がテストの点数が悪かったりで嫌なことがあったときにその思いを吹き飛ばすためにも来ていた公園。

麻依が行くとして心当たりがあるのが幼馴染2人の家に次ぐのがここ。ここしか心当たりがない。

「やっぱり麻依が帰ってこないの、俺のせい、だよな。昨日の今日でこんなの起きて」

「うーっ!ふーっ、胸が痛い。麻依、お願いだから。悪いことに巻き込まれてないで」

祈るように呟く。本当、麻依が心配で心配で仕方ない。

「胸、痛っ……」

ちくちくと痛む胸を抑えながら公園から出ていった。不安やら心配やら。麻依が見つからない限り、胸の痛みはどんどん大きくなるばかり。


時間は少し戻って、京がまだ寝ていた頃。

「お兄ちゃんまだ起きてないなぁ。朝ごはんもできたのに」

京の寝顔を見ながら呟くのは妹の麻依。まだ家から出ていない時。

「お兄ちゃん……お兄ちゃん……、!?私、なんてことしようと……こんなことしてたら、本当にお兄ちゃんといられなくなるのに。私、昨日お兄ちゃんに……」

「お兄ちゃんは、そういうことだよね。それが普通だって分かってるけど、分かってるけど、辛い。私いてもいいよね。お兄ちゃんと別れるのは、お兄ちゃんに嫌われるのは、私絶えられないから」

部屋から出てリビングの椅子に座って、何も写ってない黒いままなテレビを見つめていた。心も憂鬱。昨日二人の間で起きた何かがこれの原因。

「あんな話しなかったら、良かったのかな。だとしたら私も変わらない日常ができて、それで平和に過ごせて。でも……」

一旦心を、落ち着かせようと他のことをしてみようにも、それでも気持ちは高ぶるだけで落ち着かない。

昨日のことがフラッシュバッグのように思い出されて、そして

「うっ……うぐっ……嫌だぁ……」

堪えてた涙を一気に放出。顔がぐしゃぐしゃになりながら目一杯泣いてた。

「お兄ちゃん……。こんな私だけど嫌わないで……ワガママだって分かってるから、いつもの日常みたいに戻らして。急に喋らなくなったり、しないで……」

一通り泣いて一旦は涙が収まった。

「あの場所、行こうかな。教えてもらおう。昨日の結果をとりあえず伝えて、どうしたら、私いいのか」

少し外出ることを伝える紙を分かりやすいところに置いておいて、そして麻依は家から出てとある場所を目指した。


翔は地道に探していって、ついに有力な情報を手に入れた。

「その子ね、知ってるも何も私道尋ねたの。迷ってたけど優しく丁寧に教えてくれて、お陰でたどり着けたの。それでその子どこで見たかって?確かここの道行って奥右に曲がって……そこの道路。それで私と会ったあとその近くのカフェのほうに歩いて行ってたよ。1,2時間前の話ね」

「ありがとうございます!」

家出手とりあえずカフェに行ってた。とりあえずそこまでの足取りはわかった。

「カフェ行ったなら定員見てるよな。どっち行ったか見れてないか?」

またこのこともメッセージに書いて、そのカフェへと向かう。


「このカフェ……うん?定休日?」

田んぼやらが広がる田園地帯にぽつんとあるちょっとした広さのカフェ。喫茶マジア。

2週目土曜日の今日は休みになってる。特別な変更なんてものも乗ってなく。

ちょっと不思議に思ったけど、向かったのを見ただけなら入ろうとしたけど定休日だから帰ったってとこか。だったら嫌だそれすなわち店員と会ってないことになるから。

「翔、どう?情報は取れてそうだけどやっぱり芳しくない?」

「師匠」

「私もいますよ」

新と愛香の2人。探してたらたまたま会って分かれようかともあったけど結局一緒に探しているのだと。

「ここ向かったと聞いたけど定休日で、見てなさそうだなと」

「定休日なの。でもここに来たってことなんだよな。行ったっていうのが気のせいだったのかな」

「うーん……あれ、普通に扉開いてますよ。もしかしたら見られてるかもしれません」

「扉開いてんの?定休日なのに?」

「気にはなりますけど一旦尋ねてみましょう。定休日の日に場所を貸してもらった、とかでしょうかね」

こっちの状況がのっぴきならない状況であるため、愛香がちょっと強引にでも知らないか質問することを勧めてくる。それを聞いた翔も聞いてみようとカフェの中に入っていった。


「……はぁ……まっ、たく」

「なんで、なんでなんでなんで!」

「ん!?君達は!?そっか外の鍵……」

「麻、麻依!あ、見つけ」

カフェの中、そこにいたのはまずある女性。そして……皆が探していた麻依だった。

どこに行ったかを知ろうとしたら本人がここにいた。思わぬうちに一気にゴールまで進んでた。

「そんな、そんなの!」

「とりあえず君達は説明できんが外へ!あぁそうだ結界が!仕方ない。椅子の後ろとか身を守れるところに隠れておいてくれ。これが終わるまで」

ただ、麻依の様子が絶対におかしい。我を失っているかのように攻撃的で、しかも

「はぁ……これはきついね。私が撒いた種ではあるけれど」

「だ、大丈夫ですか?怪我していて」

「私のことは気にしないでくれ。そんなことより君達の方だ。巻き込まれて怪我をしないように、下がっていてくれ」

麻依は異少課の人みたいな武器拾った人とは違う普通の子。当然そんな特別な力を使えるわけではないというのに、今は真っ黒い何かで攻撃をしてきている。何もかもおかしい。

「俺達、詳しくは説明できないけどそういう戦うのに慣れているというか、俺達と変わってくださいとりあえず。一般の人じゃ無理ですよアレは」

「何がどうしてこんなことに。翔さんの話ではこんなことするような人じゃないだろうし、それに目が」

「本当に麻依に何があったんだ。そのことを知っているんじゃないのか」

正直怪しい。定休日のカフェ内で麻依といる時点で、普通じゃない。なんらかが無いとそんなことになるはずがない。

「なるほど。君達そういう、"特別な武器"を持っていると。分かったよ。彼女に何があったのか。私はそれを知っている。自己紹介がまだだったな。私は夏宮恵華。ここのカフェのオーナーだ。ちょっと落ち着いては話せないが聞いてくれ。これは聞くべきだ」

「それと先に言っておくが、彼女を傷つかせるな。暴れてるのは彼女本人の意思じゃない。傷をつけなくても戻す方法はある。図々しいかもしれないが、これも彼女のため。よろしく頼む」

「麻依を傷つけるの俺は嫌なので。俺は幼馴染ですから」

「そうか。では話そう。1時間前のことだ」

攻撃してくる麻依の対処をしながら、夏宮は話を始めた。


翔達がカフェに来る1時間程前。

「あ、夏宮さん。今時間、いいですか?」

道中道を教えたりしながらカフェに来た麻依。カフェの前で植物に水をあげていた女性、夏宮恵華に話しかけた。

「あぁいいよ。ドアの鍵は開いているから、中で少し待ってて欲しい。水やりを終わらせたら私も行くよ」

夏宮は定休日のこの店に麻依を入れている。2人の仲は今日始めてあったわけではなく、そこそこに親交がある間柄。

水やりもすぐに終わらせて裏口から夏宮はカフェへと戻った。そして麻依の反対のソファに腰掛けた。


「それで、昨日の結果はどうだったんだい?ちゃんと言ったとおり、伝えたかいお兄ちゃんに」

夏宮がやっていたのは悩みの相談。麻依が数日前相談しに来てそれに対するアドバイスやらをやっていた。

そしてその後もそこそこ相談に来たので休みの時間他に客がいない時間を使って相談の続きをやっていた。

「お兄ちゃんは、わ、私に……ひぐっ」

また堪えきれずに涙を流してしまう。この話題が出るたび。それぐらいこの話題は麻依にとって辛いものだった。

「うまくいかなかった、かな?」

コクリと首を縦に振る。詳しく自分の言葉で言えるほど感情が落ち着いてない。

「すまないね。できるだけ成功するようにアドバイスをしたつもりではあったのだけれど……」

「私、もうお兄ちゃんと一緒に過ごせない……嫌われたかも……こんなのお兄ちゃんが知ったんだもん……」

「それで、辛いだろうが話してはくれないだろうか。どう、返されたのかを」

「うっ……ううっ……」

拭いても拭いても出てくる涙。感情が荒ぶってて涙も出て麻依はろくに話せていなかった。

「これでは話が進まないね。使おうかあれを。やはり辛いものがある」

あるものを取りに行くために一度カフェの奥の方へと行く。そして戻ってきた時夏宮はくすんだ色の球体を手に持ってきた。

「大丈夫。吸い込ませてもらうよ」

球体をテーブルの上に置いて起動をさせる。ただその後の光景は夏宮が予期していたものとは全く違っていた。

「あぁっ!あぁ……嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌!」

「っこれは……そうか、くそっ。保てて」

「私、私は!」

急激に自我を失い、攻撃を開始してしまった麻依。完全に事故を起こしてしまった。予定を間違えてしまった。

「くっ……ごめん。私やってしまって。一旦出られないよう結界張って、耐久しかないか。ほんと、ごめんね」

麻依に一回も反撃を与えることのないまま、荒らされていく店内で必死に耐久を始めた。


「まあ、そういうわけなんだ。聞くだけじゃ分からないところが多々あると思うが、そこはとりあえず納得してもらいたい」

語った事情をとりあえず飲み込んだ。あんまりよくは分かってはいないが、なんとなく。

「麻依がこうなってるのはあなたのせいと」

「そうだな。とにかく、彼女は私のこれのせたあであんな暴走状態になっている。私のこれは悲しみなどの辛い感情を封じ込めるものなんだが、その感情が予想以上に多かったのだろう。それで封じ込めてた感情も流れていった結果、耐えきれず暴走させてしまった」

「それで、麻依はどうしたら直るんだ」

「辛い感情を超える幸せを得ることにより相殺させる、もしくは長い間戦わせて気持ちの全部を発散させるしかない。ただ、1つ目は彼女の相談を聞いていたから分かるが、ほぼ無理だ。君達や私が何をしたところで変わらない。2つ目しかない。多分あと2,3時間ほど戦わせれば治まってくれる。ただ、わがままだとは分かるが彼女は被害者。傷を付けたくはないんだ。その上で、手伝ってもらえるか?」

「1つ目は本当に無理なのか?言葉とかで何とか。相談した内容を俺達が解決するとかで」

「分かるさ。無理だ。相談内容は君達がどんなに頑張っても変わらないものだ」

それで解決できるのなら一番早いし良い。でも行けないか。

「カフェのものは好きに壊しても良い。あとそれと、まああまり説明はできないがこのカフェには結界が貼ってあるから内部から外部には出られないようになっている。逆は行けてしまうのだけれどね。だから町の人達が危険になる心配は私が倒されない限りは無い」

「って、なら本当にこっちで後ろに下がらないと!」

「そうだね。本当すまないね君達」


その頃、別の場所では

「いた?」

「ごめん見つからなかった。誰かの家の中にいるのかな。だとしたらどうしよう」

「麻依に関連する場所、昔行った公園やよく行くスーパー。中学校なんかも行ってみたけど麻依いない。本当、どこに……」

「本当京先辛そう……ねぇ、連絡来てたあっちの方行こう?」

「あっちは任せてはいたし見つけてたら連絡来そうだから行かなかったけど、行くか。麻依、絶対見つけてやる」

「それにしてもなんでこんなことになったんだろう。麻依ってこんなことしなさそうなのに。らしくない」

「……多分、俺のせい」

「え、京先の?昨日今日なんかあったの?」

無言で首を縦に振り、少し沈黙。そして

「ちゃんと伝えないと」

崎は京先の言葉を聞いて、何も言わず首を縦に振った。


「なんで、なんで私はっ……!」

「ふぅっ……盾で防げるレベルの攻撃ですね師匠。これなら耐久戦はできそう」

「電磁、使わん方がいいよな。電気流してるから悪影響及ぼしかねん」

「翔さんの盾以外はあんまり、ですかね」

今回の戦いはいつものみたいに相手に攻撃を与えてだんだん弱らせて倒して終了なんてわけには行かない。

麻依本人には悪意はない。ただ暴走してるだけ。完全な一般人の彼女に怪我をさせたくない。

「やっぱり翔さん……」

「相手が相手だから。張り切ってる」

幼馴染であるから、絶対に直したいって思って頑張ってる。どんな状況になっても麻依に危害を加える選択肢は取らなさそう。

「というか俺達できることあるかな」

「瞬間移動もしかしたら使えるかもですけど、電磁は……そもそも攻撃はできないでしょうから」

本当守る以外はろくに使えない。いつもと変わってるから最良の選択が分からず常に考えながらの戦いである。


「どうして私は、伝えてしまった!伝え、なければ……!」

「うー……範囲が、広い。大丈夫です?」

「俺は特に」

「私も盾の裏なので」

「私は少しくらってしまったが、まあ大丈夫だろう」

盾よりも大きな闇をぶつけてきた。盾以外の部分はそのまま後ろにいってしまい壁に着弾。壁に飾ってあった時計やライトが落ちたり壊れたり。

「お、兄、ちゃん!」

「うぐっ……盾で防げたけれど反動が、もう少しでこけるとこだった」

「耐えてもらいたいそれは」

「にしても、さっきから麻依が言ってること……」

悲痛な叫び。多分これが麻依の辛さ。何があったのかはあまり分からないけど、兄妹の間て何かあったのか。でもそこに首突っ込む勇気はない。

「崎と京も麻依のこと心配してて、頑張って探してるから!」

「私が、嫌だ!」

「まあ……」

京のこと伝えたら多少治まらんかと思ったけど効果なし。チャレンジしてみたけど直すのは無理ってこと。

少なくとも京本人がいないと不可能な感じがある。何したんだ京。


「ねえ皆!」

「はぁ……どうだ今?」

「よく来た凪に繁」

新は2人にもここに来るよう連絡していた。その呼び出しを受けて今2人がこのカフェの中に入った。

「うぇぁ!?なんでこんなとこに魔……」

「それで今……あれ、サレス?」

「あぁ本当だ。俺達と同じく来てたのかこっちに」

「え、知り合い?」

夏宮さんと凪&繁。どう考えても関係性がこれっぽっちも思いつかないのにまさかの知り合いときた。

「私の昔の世界で城の守備隊長をやってたサレス」

「その感じ、もう話してはいると?」

「うん。繁が魔王だってことも俺がその兄ってこともそこら辺は全部話してある」

「そういう関係を持てたのなら、私としても嬉しいね」

「サレスと話はしたいけど、今は先に目先のことを」

夏宮さんと新と愛香が何があってるのか今どんな状況なんかを詳しく説明する。

「サレスのあれ、そのせいでそんなことに」

「暴走なんて初めて聞いたが。あっちでそんなことやってないよな」

「あちらでは吸い込んだのをすぐ発散できていたんだ。ただ、こちらは空気が違うみたいでここいらで出すことができなくてね。そのため発散させるのを怠ってしまい起こしてしまった。というわけだね」

「お兄……お兄……お兄……ちゃん!」

「はぁ……はぁ……だんだん強化されてるか?これは結構きつい」

こっちではこんな話をしている間もずっとバチバチの死闘をやっていた。

「まあ、話もおいおいあるだろうが、まずは目先のことをしないと」


「やっぱり強くなってる威力。これいつか盾持ってても防げなくなるんじゃ」

「時間が経つにつれ慣れていくんだろう。精度や技の効率なんかがどんどん上がっていっているよ」

「サレス、それの対処法とか無い?」

「無いと思う。例えあったとしても私はその方法を知らない。暴走自体が未知の領域なのでね」

「これ、翔の体力持つ?全力で戦ってたらいつか倒れてしまわないか?」

「翔さんに頑張ってもらわないとですね。翔さんが倒れたら私達にはあの攻撃を何とかすることできませんから」


「お兄ちゃん、私……嫌だ嫌だ。嫌われるの、なんて!」

「はぁ……はぁ……今のは身体にきた。はぁ……はぁ……。特訓がでも生きてるなこれ」

重たい一撃が盾を持つ翔にも大きな影響を与えた。怪我をしたというわけではないものの、少しばかりの痛みを。

「これ、大丈夫なのか?翔は。いつまで耐えれば終われるんだ?」

「マズイかもねこれは。元々の悲しみの感情が深いからか、予想以上に減っていない。かなりの長期戦になることを覚悟したほうが良いとは思うが、体力が持つだろうか。何か策を考えないといけないね」

「空気球は使わないんですし、私達が盾を使ったら何とかなりませんかね」

「盾ならサレスが」

「私は元守備隊長だからね、使い方は心得ている。ただ、私以外がそれをするのはやめたほうがいいと思うよ。盾は思っているより使うのが難しい。触ったこともない人が使うのは、危ないだけだから」

実際翔とサレス以外のここにいる人は盾を禄に使ったことがない。そこまで大きな打開策にはなれなさそうだ。

「そういえばここに出られない結界張ったんですよね。ならあの子を戻るまで結界に閉じ込めてしまえばいいんじゃないですか?」

「後で気づいたよそれは。一度店に結界を張ってしまったからそれを戻してまた結界を張る、というのは力が足りなくて無理なんだ」

「結界はサレスの魔法だから、連発するのはできなくて」

「なるほどです」

「いっそ電磁かけてしまいません?悪影響はあるかもでしょうけど、普通にやると勝ち目がないので、そこは翔さんに許容してもらって」

「あんまり麻依に怪我をさせたくない攻撃したくないというのはあるが……」

「でもただ、あれ遠距離攻撃だから電磁で移動を封じてもあんまり変わらん気がして。こちらが攻撃することもないし、そもそもあんまり移動は元からしていないから」

「あ、それなら使わないほうがよさそう、ですかね」

「最悪使うけど、とっとくよ」

効果的な策は全くでてこない。どうしたものか。


「ここだよね。翔が言ってたの」

「ここに麻依が……」

「一旦落ち着いて、京先。ね?」

カフェの前にいる2人。崎と京。

戦いに巻き込まないために今の状況なんかは伝えてなかったものの、その前のカフェに行ったってことをメッセージで送ったからそれを追って来てしまった。

「私は、お兄ちゃんのことが……ずっと……!」

「えっ………えぇっ!?麻依、ちょっと何して」

「麻依、大丈夫か!?麻依!翔も大丈夫か!?」

「えぇっと誰!?」

「びっくりした……何か急に来た」

入ってすぐに2人の目に入ったのは荒れた店内、襲いかかる麻依、必死に受け止めてる翔。

「2人共!?なんでここに」

「すまないが君達、その奥に行くのは危ない。こちらで待っていてくれ」

「私達も止めにいかないと、多分あれ、民間の人ですから」

「そうだね。こっちー!」

このままじゃ翔と麻依のもとに駆け寄ってしまう2人。危ないったらありゃしないので、夏宮さんや異少課メンバーで奥に行かないように止めておく。

「お、お兄ちゃん!お兄ちゃん!私の、こと……嫌いに!ならないで!」

「待って急に強くなった。はぁ……はぁ……」

とりあえずさっきと同じ内容。ここまでの流れなんかを解説する。魔法関係はぼやかしたりかいつまんだりしながら。2人は翔の件を知ってはいるからそこら辺はまだすんなり入れられた。ただ

「おい!お前のせいかよ。麻依を、麻依をどうしたら元に!」

妹の麻依をこんな状態にしてしまったのは私ですなんて言われたらそりゃ怒る。故意とかそこら辺は全然どうでもいい。危害を加えられたという事実ただそれだけが大事。

「落ち着いてください落ち着いてください」

「京先、気持ちは分かるけど、まずは話を聞こう。翔、ごめん1人に守らせてて」

「それぐらいなんてことはないから」


「元に戻すには時間をかけるか、麻依の悲しみを発散させるしかない……」

「悲しみ……」

大まかは喋り終えた。崎はどうやれば麻依を戻せるかを考えて、それに対し京は。

「麻依が悲しんだのは、俺のせいだ。俺が昨日」

軽い自己嫌悪に陥るもののこの状況で素に戻れた。そして前へと、翔のとこへと出る。

「危ないから」

「止めたげで。京先には何か、作戦があるんだって」

「えっ……うぅー……」

前へといかれると危なくなる方。愛香が止めようとしたものの崎に止めるのを止められた。崎にはなにかしていることは伝わった。幼馴染だから。

「麻依に伝える。このことを」


「私、本当に……お兄ちゃんのこと!」

「何かあるんだろうけど、これ以上前はやめてほしい。ちょっと危なくて」

「ごめん翔。ほんと」

盾を持つ翔の後ろ。京はそこで麻依をみつめる。

何をしようというのか、そこは京以外の皆まるでわからない。ただ京のことを見ていた。

「麻依!聞こえるか!見えるか!」

「……お、兄。嫌、嫌嫌言わないで!嫌いにならないで!」

「いった……京これ大丈夫か?さっきより激しくなってて」

「でも俺がこれを伝えれば、麻依を治めれると思うんだ。麻依の悲しみを起こしたのも、こんな事になったのも全部、俺の言ったことが原因だから」

「分かった攻撃は耐えるから、続きを」

今まで翔達が色々言っても特に反応を示さなかったというのに、京の言葉にだけは反応を示した。

京の言葉でさらに我を失うかのように暴れる麻依。翔が盾で全力で防ぐ。

「嫌いになんかなるもんか!」

「えっ?」

「あのときは急に言われて驚いて、つい保留して麻依のことを傷つけてしまったけど、俺は決めた。もう迷わない」

「それって、」


「俺は、俺も麻依のことが、大好きだよ!」

「この世のどんな女子よりも、麻依のことが愛しい。だから俺と」

「付き合ってください!」

その途端、麻依から削げ落ちるように黒いもの。悲しみが煙となって落ちて、それは次第に透明になって空気と混ざった。

どんどん落ちていく中、さっきまで暴れていたのが嘘かのようにじっとしている。そして麻依がお兄ちゃんの元へとかけていき

「うん!お兄ちゃん、大好き!」

人目を気にせず抱きついた。その麻依にさっきまでの闇は感じれない。

麻依の戦いは、京の一言で辛い感情を相殺させるほどの幸せを得たことにより、終了した。

「それって……」

「麻依と京……」

だがしかし、麻依が元に戻ったのは喜ぶべきことだが麻依の幼馴染の2人はあまり喜べない。さっきの京の言葉。告白を聞いてしまったら否が応でもほぼ分かってしまう。何があったのか。


「何とか終われたようで何よりだよ。本当にすまなかった」

皆に対して深い謝罪をする夏宮さん。故意でないとはいえこんなことをさせてしまった。

「でも私、夏宮さんのお陰ですから。お兄ちゃんとこう、なれたの。だから私、全然怒ってませんよ。ありがとうございます!」

それに対するこの回答。拍子抜けしそうなぐらい。色んなことがどうでも良くなるぐらい麻依は今、幸せだから。

「あのさ、もうこんなことは起きないんだよね」

「ああ。今回のは事故だ。事前に発散させるなどで今回のようなことが起きないよう務めるよ」

「それはいいんだけど、悪いんだけど私達4人っきりしてくれないここで。翔の友人さん達も手伝ってくれたのにこんなこと言って悪いけど、私達だけで話させて。この話はしないといけないと思うんだ私」

「ああ。そうならばここを貸そう。どの道数日は営業できないからね」

「あ、ごめんなさいこんなことして。荒らしちゃって」

「いいんだ。これらは私の自業自得だから。ただ、少しばかり、寛大に頼むよ」

「麻依、麻依は悪くないから、あんまり気を病めるんじゃないぞ」

夏宮さん。そして翔以外の異少課メンバーは結界が解かれたカフェの外へと。そして中では幼馴染4人だけ。麻依、京の二人に対峙して翔、崎が並んでいた。


「お兄ちゃん……さっきのって本当?私を治すためについた嘘じゃない?」

「本当に本当だよ。麻依がいなくなって、麻依の大事さに気づいて、麻依への気持ちが妹としてだけじゃなく恋の気持ちが含まれてる。そう気づいたから」

「そうなんだ……えへ」

幸せそうな麻依。これが普通のカップルとかなら崎も翔も素直に応援できる。

ただ、それを阻んでしまうのが兄妹という壁だった。

「それで麻依、京先。どーゆーことか聞かせて。私達の目の前であんなの見せつけたんだから、全く関係ない黙りたいーなんて言い訳使えないよ」

「正直俺も驚きやらが……まあそういうこと、なんだろうけど」

「麻依、大丈夫。握るから」

「お兄ちゃん……うん。私が話す。私から始めた物語だから」


「数ヶ月前に私、お兄ちゃんに抱いている感情の中に家族愛の他に、そういう、恋愛感情があるって私気付いたの」

「言っちゃだめだって思って、それでも気持ちは収まらなくて、どころか強くなっていって。そんなときたまたま行ったこのカフェで夏宮さんが悩み相談をしていたから、私も頼んだの。どうすればいいのかって」

「そして私は意を決して告白することにしたの。2/14、バレンタインの日に、本命チョコをお兄ちゃんにあげて……」

「あのチョコ……」

「うん。あれは失敗したのを勿体無いと思って、それであげちゃったの。余りみたいで、ごめん」

「いや、そこは私特に問題に思ってないよー。翔もでしょ?」

「チョコレートくれる事自体が嬉しいから。そこら辺の違いでそんなに変わることはないかな」

バレンタインに麻依から送られた義理チョコの形がハート形だったのも、お兄ちゃんのため。告白して、想いを伝えるため。

「お兄ちゃんに渡して、そしたらお兄ちゃんはすぐには言えないとか言ってくれた。でもそれを私は傷つかないように優しくお兄ちゃんが断ってくれたんだと思って……それで私ここに来てどうしたら嫌われないかを聞くこうとして。それで……」

その悲しみが事故を引き起こして暴走してしまったと。そしてその間違いに気づけたから失恋の悲しみを恋が成就した幸せが上回って戻った。

これが、今回の真相。


麻依の独白を黙って聞いていた翔と崎。ある程度理解は示したものの、2人共、特に崎は苦い顔をしている。無理もない。

「まあでも、驚きはしたけどよく考えたらいつも仲良さそうで、イチャイチャしてて、その延長線上?ならおかしくはないの、かな?こんなこと考えたこともないから、頭ぐちゃぐちゃしてる」

「……」

翔の意見に麻依はちょっと俯く。そしてその麻依の手を掴んで安心させようとする京。

「っ、ごめん。仲良くすることはいいと思う私は。兄妹としてイチャイチャしてる2人見て楽しんでたから私。でもだから、仲良い"兄妹"のままにしないと。そこの壁は、本当に越えちゃだめな壁だからさ」

「私は友達だから、だから間違った方向に行こうとしてるのなら、私正すよ」

「うっ……うん……」

ほろり麻依の目に流れる涙。兄妹恋愛がほぼ受け入れられない。なんてことは分かってとはいえ、喧嘩も全くしたこと無い幼馴染からのその拒絶の言葉には大きく気が沈んだ。

「でも、でも私好きなのお兄ちゃんのことが。一時の感情とかじゃなくて本気で。お兄ちゃんと一生一緒にいたい!キスもその先も全部!だから、私……」

「麻依の気持ちも京先の気持ちも本気なんだーって伝わってる。だからこそ、なんだけど……。兄妹恋愛って、当事者間が受け入れられたら良いってので終わるものじゃないんだよ。誰にも言えなくて、結婚することもできなくて、恋人になって幸せになれても、絶対不幸が襲うから」

崎も明確に拒絶の意思を見せているものの、その手は震えている。やっぱりこっちも辛い。喧嘩したことも全くないのにここまでちゃんと拒絶してしまわないといけないことが。下手すれば今後の関係にも関わってしまうそれが。

「最もだそんなこと分かってる。分かっているその上で俺は受け入れたんだ。麻依も多分そう。不幸になるし一般のカップルみたいなことも制限される。でも、その分麻依のことを愛するから、墓場に行くまで、とびっきりの愛を送るんだから」

「でも駄目。ほら他にいるよもっと素晴らしくて、兄妹みたいな障害もない人が」

「10何年も一緒にいてその心地よさの何もかもを知ってる麻依より素晴らしい人がいるもんか!能力とかそんなんじゃなくて、相性がそう。そんな学校とかで知り合った1年ちょいの関係しかない人より断然、麻依の方が良いんだよ!」

「ぅ……お兄ちゃん……」

力強く言い放つ京。その言葉に大量の涙を流して京に抱きつく麻依。2人を見ながら自分の胸を抑える崎。自分がどうすべきか決めかねてる翔。


「でもやっぱりいいんじゃ、ないかな。俺は受け入れる2人のこと。世間的とか駄目なんだろうけど、まあこれじゃあね。勝手に許したくなるよ」

「翔……ありがとう!」

「……翔もそっち側なの?うん、うん。法律で結婚できないとか世間的に認められてないとかはまあ、100歩譲って問題ないとしても、ただ倫理的に駄目だから。義兄妹じゃない実兄妹でしょ」

「何も悪くない麻依を悲しめるだけの倫理なんか存在しなくていいから。倫理なんてそんなもんだから」

「たとえそう考えてても、駄目なんだって。ウェスターマーク効果ってのがあるの。子供の頃同じ環境で育った相手は好きになりづらいっていうやつ。人間として、一緒に暮らしてきた兄妹を好きになったりしないようしてあるの。いわば2人がそうなること自体バグみたいな、おかしな状態なんだよ」

「バグならバグでいいよ!俺達だって分かってるこんなのおかしいって。でも、だからってなんとかなるもんじゃないんだ。崎が受け入れられないってのなら、俺は崎と……崎との幼馴染としてのより、麻依を選ぶから!」

「私も。崎とそうなるのは嫌だけど、でも私はお兄ちゃんと。せっかく掴めたんだから、私はお兄ちゃんと一緒にいたい。付き合いたい彼女になりたいの!」

2人の想いの全てが乗っかったその強い声。その声は崎の心の奥まで届いて、崎の考え方をも変えてくれた。

「……もー負けだよ。私。大丈夫2人共。私自身全く気持ち悪いもなーんにも思ってない。でもそれでも親とかの周りの人間は違うから。だから私は一旦止まらせようとしただけ」

「崎……」

「でも本当2人共お似合いだと思う。さっき崎が言ってたウェスターマークだったか?そういうのがあるのなら、幼い頃から家族として暮らしてその上で好きになりにくいのに好きになれるってそれが最強でめちゃくちゃもう恋人でしかないってことでしょ。もうここまで来たらね」

「翔……」

言ってることは割とめちゃくちゃにも聞こえるけど、翔がいったことを否定する人はここにはいない。この2人に限っては最強の恋人同士であることを思ったから。

「うわぁぁぁん……2人共……ありがとう……」

「本当、ありがとう。俺達のこと認めてくれて」

麻依は翔と崎の2人に抱きつく。わんわんと嬉し涙を流してて、2人の服がへちょべちょ。

「もーう私達じゃなくて京先に泣きついてあげなよー。それとごめんね。せっかく付き合えた記念日なのに私邪魔しちゃって、その上で結果変わらず付き合って。だったら私最初から認めてりゃー良かったのに」

「京さ、分かってるだろうけど一生愛すんだぞ」

「当たり前だ。こんな麻依捨てるとか誰ができるか」

こちら側の戦いは解決。とても優しい世界がここにあった。


カフェの建物から出た外。ここで夏宮さんと翔以外の異少課メンバーが集まっていた。

店の中ではあのことが繰り広げられている。

「どうなることかと思ったが、良かった。しかも、悩みの方も完結できて。でも悪いことをしたね君達には巻き込んで」

「まあ俺達は、被害にあったのはあっちだし……」

「翔さん以外、何もできずにただ見ていただけですから」

実際翔しかやってなかった。凪は薬を作ろうとしたものの完成する前に戦い自体が終わったから。

「ところでサレス、魔王城は今大丈夫?私いないけど回ってる?」

「そこに関しては大丈夫。魔王様が消えたって大騒ぎをしていたが、大臣がとりあえず臨時で政権を取って治めていたよ。にしても、まさか魔王様も同じとはね。私は武器庫で演習の道具を片付けていたときに何かに飲み込まれ、気がついたらここにいた」

「俺達が来たのと同じ感じか」

「ってか、馴染んでますねカフェなんかやってて。俺言われなかったら普通に人間だと思って気づかなかったと思います」

「私も。見た目は変わらないから」

「私は人に似ている魔族だからね。違う部分も服で隠しているよ」

凪や繁と同じタイプ。魔族こういうタイプもいれば人間と全く違う怪物タイプもいる。そこらはこちらには全くわからない。

「それにしても、魔王様はやはり元に?」

「流石に。こっちも楽しいけど、やっぱりお城を放置はできないから」

「臨時の大臣も長く続かないだろう。それに顔を見せなくては」

「思った通り。なら魔王様。一つお願いを聞いてもらえないかな」

「お願い?」

「魔王城守備隊長は辞めさせてもらいたい」

「えっ?」

「こちらの世界が気に入ってしまったようでね。あちらに帰りたい欲も消えてしまった。元々私は家族もいない。帰ってこなくて悲しむ人もいないだろうからね。地位も全部他の人に譲って、カフェして残りを過ごそうと思うんだ」

「はぁ……良かった。もしかしたら私変なことを……って心配に」

「魔王に心配をかけるな」

「久しぶりに見たねそれ。変わってないのは何よりだよ」

「とりあえず、元に戻ったら伝えておくから」

「まあ私は帰らないけれど、手伝いぐらいならしよう。情報が入れば連絡するよ。そういえば今思い出したよ、この前気になる相談があったのを」


「ざっと話すと、彼は故郷の村から逃げてきたとのことだ。それで故郷の村の近くで不思議なものを見てそこから人が来て、そいつが村の統制を奪ったらしい。やりたい放題しているらしいよ」

「来たとこに何かあるかもだが、これまずどこの村だ?」

「そこは分からないね。あまり詳しくは聞いていないんだ」

「あぁ……」

内容がホントでさえこれじゃあなんにもならない。場所どこだよ。

「その人がまた来たときにどこかを聞いておくよ」


とりあえずその日は解散。そして明後日。

「やっほー翔」

「おう。はぁー……宿題ムズい」

「お兄ちゃん、行こっ」

「そうだな。」

「えへへ……」

「麻依はどう?宿題」

2日前、あんな衝撃的なこと聞かされたというのに相も変わらず普通に接している。2人共驚いてはいたりやめるよう説得していたりしたものの、本心から嫌だ気持ち悪いとして抵抗していた訳では無い。あくまで他人は他人。2人が幸せならそれでいいと感じてはいるから。

崎がやめるよう言ったのも2人が幸せになれないから。でも2人が付き合うことで得る不幸より幸せが多いと分かってからは、応援する側に回っていた。

「ふんふーん」

「それ、いや良いけど学校の近くでやらないほうがいいかな。へーんに噂されちゃうよ」

「嬉しいだろうけど、そこは節度持って。家とかそこでやったらいいから」

「俺も麻依とイチャイチャしたいってすっごい思ってるけど、麻依、流石に学校近くではやめよう。家帰ってからキスもハグもその先もするから」

「えへへ……お兄ちゃん好きー」

デレデレに甘えてる彼女。そしてそれに満更でもないにやけ顔の彼。


「お兄ちゃん!」

「麻依!」

たまたま2つの学校が終わる時間がほぼ同じだったみたいで、帰り道も4人一緒になった。

「それでお兄ちゃんは……」

「麻依は……」

「あー……翔、私寄り道したいとこあるから行こ」

「あーね。よし行こっか」

「じゃあ私も」

「はいはい君達は帰って沢山イチャつきなさい付き合ってまだ全然なんだから楽しんでなさい愛を伝えあいなさい」

つまり、気を利かせたということである。あとこの砂糖をずっと見せられるのに流石にちょっと来たものがあるというものもある。

「じゃあ行くよ翔!」

「おう!」

というわけで2人逃げるように去っていった。


「でー翔。どーしようか。あーんなこと言った手前ちゃんと寄り道したいんだけど。なんか、理由もないんだけどね」

「ぶらつく?あ、あそことかどう?この前のカフェ」

「あーいいかも。そういえば今どうなんだろう。再開したのかな?」

そんなこんなで喫茶マジアへ寄り道。

「あーやってない?」

「みたいだな。ここ色々とあったからな一昨日」

あの戦いの際に店のものが色々と壊れたりぐちゃぐちゃになったり。とてもじゃないけどこのままオープンできるような、そんな感じではなかった。

「ん?ああ君達か。何か用かい?」

「いや特に用はないけどまあ色々とあってここに寄り道することになって」

「だから気にしないでください」

「そうか。それならいいんだが、せっかく来たんだからコーヒーを飲んだらどうだい?サービスしておくよ。店を再開するのに時間かかってるから、買った豆をどちらにしろ廃棄しないといけないんだ」

「いいんですか?」

「まあ、君達には迷惑をかけたからね。これぐらいやらないとね」

「ならお言葉に甘えよ。良かったね翔。こっち寄り道して」


「カウンターの方は比較的被害が少なくてね。こちらに座ると良い。ご注文は?」

店の中、店の椅子やテーブルが一部足りてない。壊れたから処分したんだろう。

「ならブレンドにサンドイッチ」

「パンケーキとブルーマウンテン?なんか名前かっこいいからこれにしよっ」

「ブレンドとサンドイッチ。それにパンケーキとブルーマウンテン。かしこまり」

そうして夏宮さんは目の前でコーヒーを作り始める。

「あのさ翔、私嫌われてないかな?」

「嫌われてないって誰に?あと全然嫌われるようなことしてないと思うよ」

「麻依と京先に。だって私あの子達を否定するようなあんなこと言っちゃってさー。あの子達優しいから私に見せないけど、裏で私のこと嫌ってないかなーって思っちゃって」

「全然大丈夫だって。崎があれ言ったの2人のこと考えてだろ?個人的にキモい受け入れられないからじゃないだろ?」

「まあそうなんだけど。でも私がよーやく結ばれた2人に水を指したのも確かだしー、それに2人のためーって言っても本当に2人のこと分かってないのに言っちゃったから。私すっごい反省してる」

「だから嫌うはずないから。ありがとうって言ってたでしょあのとき。本当に嫌ってたら俺が説得して嫌わないようしておくから」

「いやーありがと。うん、ちょっと気分収まったかも。なんかへラってたの。私嫌だねーこんなことして」


「ブレンドにサンドイッチ。そしてブルーマウンテンにパンケーキ。どうぞ」

駄弁っていたら注文の品が完成したみたい。自分が頼んだものをとりあえず受け取る。

誰もいないカフェ。2人ゆっくりとコーヒーを飲む。

「そーいやこのカフェって?いつか再開するんです?」

「ああ。業者に必要なものは頼んだよ。予定通り行けば、明後日には再開できるよ。自業自得とはいえ、稼がないとだな」

数日間の休みに急に出た費用。貯めてたお金も全部使って何とかといったところなのだとか。

「あそうだ、そういや麻依のこと相談乗ってたーとか。どんな流れでそんなことになったんです?」

「悩み相談は趣味で元々やってはいたんだが、彼女が見せに来たときいかにも悩んでいますという。コーヒーも全然ゆっくり飲む態度を見せられたら流石に何かあると気づいてね。声をかけてもあまり話そうとはしなかったけど強引にいかせてもらったよ」

「本当麻依が付き合えたのお陰様なんだよな。いやだけど麻依が暴走した原因でもあるけど」

「それは本当にすまないと思ってる。彼女の相談は難しかったよ。私はそんなでもないが、あまり受け入れられないものなのは承知していたからね。それでも少しずつ進めていたときにこうなってしまったけど」

「いやー結果的に翔は痛かったかもだけどそんなだからなー被害。あとそんな態度取られると許さざるを得ないというかー。もう許してるというかーとにかく、そんなもんなので」


コーヒーを飲み終わり、軽食も残り半分ほど。

「それにしても、翔もなんか色々とー遠くに行っちゃったような複雑な気分。なんか私は分かんなかったのに分かってる雰囲気出してたんだもーん」

「色々とな。この盾を扱うために頑張ってたらなんか色々とあって、新たな交友関係とか生まれて。ま、楽しいからいいんだけどさ」

「ふーん。ま、交友関係がどんだけ増えようが幼なじみは私と麻依、京先の3人だけだから。なんかあったら戻ってきていいよ。何も聞かずに受け入れる。前の件で知りたいこと山ほどあるけど忘れようとしてるから」

「それは助かる。正直話しづらくて」

盾のことは知っているけど、魔族関係やら異少課やらなんやら。話せないことをこう受け入れてくれるのは、やっぱり嬉しい。

「あと、翔が暴走する麻依を直そうと奮闘してるの、本当かっこよかったよ。見ててぐっと来た」

そのときの彼女の笑顔に胸がときめく。翔にとっての初恋の人。その想いはふられてもまた頑張って告白しようと思うぐらいには強い人。それが彼女だから


崎side

(本当、おじいちゃんと毎日毎日特訓しててさ、手に入れただけなのに理不尽ーなんて思うことなく、ずっと頑張ってて)

(おじいちゃんに認められたら、私に告白する……そう言ってた)

翔が毎朝行く道場があるのは哀川家。たまに朝早く起きた崎はどんな感じで特訓しているのかを見たことがある。そして私に恋してて、告白しようとしてることも。

(私は前にフッたのに、それでもめげずに。すごいよー翔は。そういうとこ、本当好き)

(フッちゃったのは変わることを恐れたから。好意持ってたのにそんなこと言って、どーんだけベッドで後悔したか。あの一番恋愛しなさそうだった崎があんなふうに、実のお兄ちゃんと付き合うなんてことしたんだもん。私も覚悟を決めよう)

(変わることを恐れずに、この心からの想いに身を委ねて。私から言ってもいいけど翔が頑張ってるんだから、翔がするまで待って、その時言おう)

(もちろんその時の返事は……)

「店、出よーか」

「ごちそうさま」

「また、明後日以降にでも。君達には世話になったからサービスするよ」

(うん。ずっと悩んで翔が告白するまで先延ばしにしてたの決められてスッキリした)

「うん!翔、かーえろ!」

「麻依達ももう帰っただろうからな」

スキップしながら夕日に照らされる道を帰っていった。

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