第24章 探って疑る警察業!

3が日が終わり、また皆働き始めた1月4日

異少課も3が日はお休みである。今年は変な魔族の発生もなくちゃんとお休みのまま3が日を乗り切れた。

「新しい年になったね。さて、今年こそは変な魔族も現れず平和でいたいわね」

「そうできたらいいですね本当に」

「じゃあ私はこれで……」

岐阜県の異少課でも、年が明けて初めの仕事の日でそんな話をしていた。

「なんだけれどね。ちょっと異少課に関する重大な事件が起きてるみたいでね。その仕事頼みたいんだけど……あの2人が来るまでちょっと待ってて」

「玲夢、起きろ仕事だぞ」

「はぁい……ふわぁ……寝たい」

この短時間でさえ寝ている玲夢。よくこんなに眠れるよ。ここまでくると病気疑うんだけど

「ごめーんね。風が怪我しちゃって。風大丈夫?痛くない?」

「だから撫でるな。子供扱いするな!そんなに子供に見えるの?」

「ほっとけないとか、庇護欲風は掻き立てられるの!守ってあげたいな〜ってね。」

少しして、いつもの協力者2人が出てくる。いつもと同じ。変わらない。

「2人も来たから、仕事の内容言うね。この前幸が他県の異少課の中にスパイがいるんじゃないかーって話あったじゃない?」

「えっと……あ、あのスポーツ大会のときに調査しろなんて言われたあれ。でもあれって夢で見ただけの眉唾ものの情報だったんじゃ……」

スポーツ大会で他県の異少課と会うときに怪しい人がいないか探ってこいなんて言われてた。調べはしたけど怪しい人なんていなかった。最終的に夢って言われて怒ってその話は終わったんだ。今全部思い出した。

「そうなんだけどね。ほら幸の豪運の力、それが働いて'運良く'現実で起きてることを夢を通して伝えたのもありえなくはないってことで、他県の事件も色々と調べてたの」

豪運なのはわかるけど、それが運として出るかは別問題な気もしなくもなくもないんだよな。未来予知とかならともかく、運が良くて未来予知ができるのは違うような。

「そしたら、年末に怪しい事件が2件起きてて、もしかしたらスパイがいるんじゃないかかなって思ってね。皆の見解も聞きたいと思って呼んだの。もしスパイがいるなら、正式にスパイを捕まえる任務も出さないとね。」

「それで、その事件ってのは」

「この2つ」

静岡県で異少課達のパーティー中に武器の窃盗未遂が起きた事件、富山県で起きた連続魔族事件の犯人達のアジトがバトル中に爆発した事件。

「静岡のって、玲夢、やっぱりあれだよね」

「あれって?」

「ほら、1週間ぐらい前に届いた招待状。あれ静岡県のパーティーの話じゃなかった?」

「多分そう。ふわぁ……」

あくびしてるがまぁ起きてりゃいい。今回の事件結構重大そうなのは感覚でわかる。


「静岡の窃盗未遂は武器だけが目的だったけれど、そうだとしたら武器を持ってることが分からないと盗むも何も無いじゃない?それに、皆瞬間移動でそこに行ったみたいなの。だから、その普通に尾行したとしてもどこでパーティーしてるか分からないとはずなの」

「それってつまり、招待状を見た人の誰かが……ほら、やっぱりスパイいるんだよ!」

「スパイが居ることを喜ぶなよ。で、2つ目の事件は?」

「こっちは確証を持ってるわけじゃないけど、もしかしたら私達の動向を知っててそれで証拠隠滅のために火を放ったんじゃないかって。その前からバトルしてた人な話だとアンダス団が絡んでるって話で、上の人は武器の窃盗未遂もアンダス団絡みだと考えてるみたいで」

「2個目の事件はスパイじゃない可能性もある。隠れてた人が燃やしたとか。でも、1個めの事件は確実だろうな」

「やっぱり風もそう思う?あ、箕乃、現異少課の名簿ってある?」

「はい。そう言うと思ってね。これで怪しい人を探していく?」

「うん。」


「まず1個めの事件から。そこにいた人達は全員知ってて当たり前だから、スパイの容疑者だよね」

「女の子しかいないな。そういうパーティーだったのか?」

「うん……異少課の女子達でパーティーだって書いてあったよ。私は寝たかったから行ってないけど」

「ってことは、そこにいない女子も知ることはできた」

「あー!そういえばあのとき玲夢と沖で話してたよね!だったら、女子がいる県の男子も知れたのかも。パーティーの話を盗み聞きしたのなら」

盗み聞きって、俺は盗み聞きじゃないけど。でも、ありえない話ではないか。

「盗み聞きじゃなかったとしても、招待状を盗み見たのなら行ける。でも、招待状が届かなかった県には、必ず無理。」

「愛知県の明石湊さんと山梨県の平良心さんは容疑者から除外しよう!」

「でも残りの人数も多いけど、容疑者絞れる?」

「少しずつ、少しずつ条件を足していけば、全ての条件に当てはまるものは徐々に減ってくから」

容疑者リストは、まだまだ人が載っている


「2個目の事件、これがまず絡んでいるか分からないとだよね」

「スパイが絡んでいるとして、そうしたらまず知れたのはその場所にいた子達だね。」

「他に知れた子達いる?1個めのとは違い富山県の異少課で集まって内容を伝えたのなら、その場にいないと知れないはずだよ」

「となると、容疑者は大分絞れるけど、でも絡んでなかったとしたらこの絞りが意味なくなるんだよな」

「正確に絞れれば……。でもこれ以上絞れないのか?」

「でも、容疑者をここまで絞れたら大丈夫。他のところも使えばもう少し絞れるかもだからね」

そうは言ってるものの……もやもやする。

「待って、私はこれ以上思いつかない。だけど彼女なら、私よりも圧倒的に推理力が高い彼女ならもしかしたらいけるかも」

「彼女って?」

「山井さん。富山県の異少課の私達みたいなポジションの探偵。この前より仲良くなったんだけど、凄いの推理力が。」

「幸とは違って正統派の探偵で、ズバズバと異少課の事件を解決したみたいで、頼るの良さそう」

「決まりだね、よし今から行こーよ!」

「えっ?私も行くの?今すぐしないといけない仕事はないから大丈夫だけれど……」

「決まりだね。今回のスパイ事件、岐阜の皆で解決しないとじゃない。玲夢も箕乃も、仲間なんだから」


ピーンポーン

「頼もーう!」

瞬間移動を使って、地図を頼りにその探偵事務所へと向かった。そこの探偵、山井さんに協力してもらうために。

「はーい。えっとどちらs」

「あっ、久しぶり〜!山井さんいる?」

「あのときの。純様、こっちに。呼ばれてます。」

「はい、なにかご用……」

「山井さーん、ちょっと用事があってきちゃった」

「えっと……幸だったっけ?とりあえず中入れ。連れの方?も」

「お邪魔します」

靴を綺麗に並べて、家の中にあるソファに腰掛ける。

「寝るなよ」

「流石にしないよ。こんな場所じゃ」

不安だけど、玲夢を信じよう。裏切るんじゃないぞ


「それで?どんな用だ?」

「斯々然々でねー」

「依頼、受けてもらえませんか?これぐらいお支払いしますので。金欠なので、あまり大きなお金は出せないけれど。」

異少課としてやっていくのも大変だな。警察に充てられるのは税金だけれど、異少課用の税金はあまり多くはないのだとか。

「あの、どちら様で?この前あった2人は分かるんですけど……」

「あ、私が飛騨箕乃、彼女が観音玲夢で、彼が任田沖。この子達が岐阜県の異少課で働く2人で、私がその子達の上で働いている人ってとこ。」

「あ、どうも。」

「どうも」

軽く会釈をする。玲夢もちゃんとしていた。


「依頼の内容は分かった。それで、スパイがいるってのは本当か?」

「えぇ、多分。こちらが2つの事件の内容で、それで私達の考えが……」

「なるほど。」

写真やら、表やら。そういった情報をじっくりと眺めて、推理をしていた。今初めてあったが、The 探偵というのを感じ取った。

「第一の事件に関しては、スパイがいないと知り得れないですよね?」

「私も同じだ。夢で見たなんてものをただそれだけで投げようとしてるのなら一度しばくところだったが、ガチみたいだな。あの異少課にスパイか」

「スパイだなんて……。でも第二の事件って関わってるんですか?異少課が来ていることにその場所から気づいていて遠隔の爆破装置を置いたなんてこともあり得るんじゃ」

「いや、たしかにそれはあり得るが、異少課が来る情報を前々から知っていたはずだ。」

ん!?

こっちの結論が絡んでるか分からないだったのに対し、絡んでるに違いない。これが探偵と一般人の違い?こっちにも探偵いるとはいえ。

「車が2体だけしか止まってなかったとのことだが、これを見てみろ。この駐車場の大きさなら20台は止められる。2台だけしか止まってないなんて年末を加味しても普通おかしい」

「あ、さらに焼跡の状況を見るにかなりビーカーやらフラスコやらが散らばってた話を踏まえて、その日異少課が来ることを知って慌てて逃げたってことですか?」

「そうだろうな。車を隠すことを考えると、前もって知ってたと考えたほうが有り得そう。焼跡からは証拠のようなものは何一つ出なかったという話だが、燃えないものの資料も少しはあるはず。大方、バレないように持っていったという所か?」

「ってことはやっぱり誰かが行くことを伝えていたことと」

「そういう話だ」

探偵により、どんどん奥へと話が進んでいった。


「で、肝心のスパイの容疑者か。2つ目の事件を知れたのは本当に本人だけだったのか?」

「あれ?純様、この子ってもうひとりの子は呼ばれているのにどうして呼ばれてないんでしょうか?人数の関係ってことでもなさそうですし」

「言われてみれば不自然。箕乃理由聞いてる?」

長野県の名村亜美。もう一人の長野県異少課軟木北が行ってるのに、こっちは来ていない。しかも玲夢と同じくパーティーを休んでいる。

「理由によっては最大手の怪しさだねー」

「確かに怪しいと言われたらそうだが、確証はない。それに、最も怪しいだけで他の人の可能性がないわけじゃあない」

「じゃあ今から聞いてくる?そこの三条さん、私の携帯電話に番号入っているんだよね」

「できるだけ怪しまれないように、スパイを探ってることをそのスパイに知られたら不味いことになるから」

「分かった」

箕乃が携帯電話をかけている間、こちらは更に推理を重ねていた。

「待てよ。このパーティーが終わったのってこの時間。事件の内容を知って移動している時間か、なら」

「パーティーに行った人達ももしかしたら知れた?」

「うん。例えば〇〇はどっか行った?とか聞けば、事件の内容を知ったとしてもおかしくない」

「確かに、そうしたらこの容疑者リストも……」


「電話終わったよ。ちょうどその時数日間帰省していたんだって、それでその次の日まで異少課には来ていなかったみたい」

「帰省か……」

「武器窃盗未遂事件に巻き込まれないように無理矢理口実を作ったのはありそう。自分が盗まれないと怪しまれるし、自分のも盗まれたことにするのならスパイとして致命的。この異少課で武器を持たないのなら異少課を続けるのは無理」

「そうだ箕乃、箕乃はその2個めの事件の前の5つの県の異少課の集まりがあったことは知ってたの?」

「いや、私は知らなかったね。基本的に同じ異少課でもその県に関係ないのなら伝えられはしないから。私がこの事件を知ったのも後だったからね」

「箕乃、後ででいいから山梨以外のその4つの県の箕乃ポジションの人に事件のことを話してないか聞いてきて。もしかしたらその人達が自分の異少課の子達に話して、そこから伝わったかもしれないから」

「分かった」

「とりあえず、少なくともこの5つ以外の県は容疑者リストから外していいよね?」

「いいと思うな。」

時間の関係もあり、今日はここで別れた。


2日後、またしても山井探偵事務所において2日前に集まったメンバーが再集結していた。

「箕乃、聞いてきて結果どうだった?」

「うん。富山県は紙に重大な任務に行くと書き置きを残し、静岡県は本人に任務のことを詳細に、石川県と長野県はグループチャットで富山県で複数の県の人と集まることを送ったみたい。」

「静岡は行けるとして、他は任務の情報がそこまで載ってるわけではないから無理そう?」

「いや、複数の県のところに何県が集まるかは書いていたのか?」

「らしいよ。任務の内容は集まってから詳細に伝えると書いていたみたいだけど」

「ならいけるな。この事件は魔族の連続発生事件が発端だ。集まる県が魔族の連続発生事件が起きたところだと知っていたのなら、異少課がそこに近づいているかもしれないから一旦逃げろと送ることはできる」

「でも富山県は無理そうか?重大な事件からそれを推測するのは」

「かなり難しいと思うよ。この前にパーティーにいて、そこは圏外で警察を呼べてない。電話ができてないのなら、その発端となった富山県の魔族事件を知らない可能性が高いからね。」

「となると、流石にあの子2人は容疑者から消して、その5県の異少課の人が容疑者ってことでいいですね?」

「それでいいと思うな。あ、山梨県のは第一の事件で外されているから、残ってるのは……10人。」

「減らせたとはいえ、まだ多そうか」

「だね。10人全てを調べるのも骨が折れそうだからね」

かと言っても、これ以上できそうか?

「やっぱり当事者に聞いてもう少し当時の状況を詳細に教えてもらいたいな。調書があるとはいえ調書には細かいところまでは乗らん。そこに誰かのアリバイの手がかりがあるはず」

「聞くしかないか。なぁ、よく絡む他県の異少課とかあるか?」

「長野県のホクとは偶に会うけど、でもその他の異少課とはほぼ絡んだことないです。」

「そうか……なら富山県のに世間話がてら聞くのが良さそうってとこか。」

「富山県でいいんです?確かにあの子達とは仲良いですけど……」

「スパイにスパイを探ってることがバレると危ないことも、富山県の3人は容疑者位置なことも分かってる。ただ、知ってる人のほうがいろんなことを喋ってくれるだろ?それに、あそこはどちらも2人以上いて偽装することもできない。最適な場所だよ」

「でも、いきなりそんな話をすると怪しまれるんじゃないか?なんでそのこと知ってるのかって」

「そこなんだよ。私達から聞くと聞き出しやすいけどそうなるからな。だからちょっと迷ってるんだ」

「あ、それならこの子達が聞くのはどう?私事情があっていけなかったけど、どんな感じだった?って。これなら自然に聞き出せそう!」

箕乃は俺と玲夢2人を指して言った。


「割りとありだな。でも……私達と君達が同時にあの子達のところにいるのは、割かし無茶があるか?」

「富山県の子達を玲夢達に自然に会わせるのはできるんだけどね。魔族の出現情報でっちあげちゃえばね」

「……それ、大丈夫〜?」

「まあね、ちょっと気が痛むけど、あえて悪魔になるのも大事だって分かってるからね」

悪魔か、悪魔……

「でっち上げたとしても、任務に私達を連れて行くのは無理だろうからな。」

「じゃあいっそのこと、魔族退治じゃなくて、警察署での仕事の人手が足りないって理由で呼び出すの!どう?」

「その作戦、良さそう」

「へっへ〜、どうだ〜!」

「じゃあそれで行くね。理由に関してはこっちで考えようね。あっそうそう、メール交換しておいてと。じゃあ後でメールするね」


「だめだ……良いの思いつかないね」

「なんかいいもの……」

岐阜県異少課の部屋にて、探偵達とは別れて今は箕乃さんと2人でどうやって呼ぶのか考え中。玲夢は床で寝てる。

なかなかいい案が出ない。案は出るも自然かと言われたら微妙なものばかり。

「なんかのことに対して、学生さんのアイディアがほしい。これでどう?ふわぁ……」

「玲夢ナイスアイディア!確かにそれなら行けそう!ありがとう玲夢」

「お前寝たふりか本当に寝てるのかわからんな」

それぐらい寝てる。

ともかく、なんとか呼び出す方法は決まった模様。


そしてまた次の日、及び作戦決行日。

「あ、みんな。あのときはありがとう。」

「山井さん達、どうしました何か用です?」

「いや、ただの息抜きをしようとしてここへ。いつも仕事ばかりだと詰まるからな。少し会話でもしないか?」

「あ、いいですよ。じゃあえっと……」

作戦通り、なるべく自然な理由を装って異少課のところへと来た。ここまでは警戒されることはないだろう。ここから先も警戒心を抱かせず、自然に聞き出さねば。

「そうなんです。その時の純様が本当に可愛らしくて……」

恋が話を続けているとき、見られないようにスマホをいじってこの前交換したメールで送る。元から書いておいた、「今、異少課にいます。」といったメールを。

「あ、山井達来てたのか。まぁゆっくりしておけ」

石山さんもこんな感じ、忙しすぎてメールに気づかないのはないだろう。


「山井さんからメール来たから、私、お仕事の依頼出してくるね。」

「うん。玲夢、起きてる?今から始まるんだぞ」

「失礼な。ちゃんと起きてるよ」

このあと仕事のために富山県のが来る。俺達がやるのは、自然に2つの事件の話にして情報を聞き出すこと。俺には結構高度な技だから、情報聞き出す部分は探偵の方達に任せる。

「私は準備できてるよー」

「幸の手助けならする。でもあんまりやったことないけど、幸大丈夫か?」

「いざとなったら、助け舟出してもらうから」

「……分かった。待つか」


「おーいお前ら、任務だ。」

「山井さん達どうします?任務の内容によっては私達全員行っちゃいますけど」

「気にしないでくれ。後で帰るから」

「うん。私達は気にしなくていいよ」

「で、任務の内容だが、岐阜県の異少課からの依頼だな。えっと、交通安全の標語を考えてほしいのだと。県の異少課達にも考えてもらったけどいい案はでない。大人の警察官のはなんか固っ苦しくいから純粋な若々しい学生のアイディアをもらいたいのだと。人数は多ければ良いとも書いてあるから……全員でいけ」

「交通安全の標語って、異少課の仕事にしては魔族も何も関係ないやつだな」

「たまにはそういうのもあるさ。警察祭の準備とかもそういった類いのものだったろ」

ちょっと変に思われてはいるが、これぐらいなら問題ない。ほんのり違和感を感じる程度で、大きな影響は起き得ない。

「じゃあ早速行きましょう」

「待って、その任務私達も行かせてくれない?最近異少課の手伝いが出来てないし、私達今日暇なんだ」

「私はいいと思うけど……でもいいのかな。勝手に依頼に増やしちゃって」

「いいとは思うぞ。異少課への依頼といいつつ標語。学生のアイディアが欲しいってなら、私達がいても問題ない。人数は多いほうがいいとも書かれてあるしな」

「確かに。じゃあ一緒に行きましょう。そういえば、ワープの場所分かります?」

よし、任務にくっつくことまでは成功した。


「来てくれたのね。ありがとう。こっちに来てね。部屋まで案内するからね。あ、私は飛田箕乃。岐阜県の異少課の上司ってとこね」

岐阜県にて、私達のことも少し話していかにも本当にたまたまついてきただけ感をこの子達に感じさせる。

「はい、ここに入って待ってて。私その仕事に必要なものとか取ってくるからね」

聞いていたとおりに事は運ぶ。私も描いていた通りのことをするしかない。


自己紹介やらを少しして、そうして

「そういえば玲夢って年末のパーティー誘われてたのに行かなかったよな」

「そう言われてみれば来てませんでしたね。名村さんと2人が休みだったのであっていたっけ?」

「うん。そうだよ愛香」

「だって私仕事があったから……」

「ただ寝ることは仕事って言わないぞ謎に見栄を張るな」

「はーい」

「寝る子は育つって言うからね〜」

「いやそれでも寝すぎだと」

「仲良いんですね」

「当然当然!この4人で色々とやってるからね~」

話がちょっとズレてしまいそうだな。今のうちか

「パーティーなんかやってたんだな。どんなやつだったんだ?」

「静岡県の若木さんの持っている山小屋で異少課の女の子が集まってパーティーしたんです。楽しかったんですけど、でも……」

「夜の間に泥棒が武器を盗んで、途中からみんな気持ちが下がって……」

「そんなことがあったのか」

もとから知っていたとはバレていなさそう。私の演じる力は高いんだ。それを知らないと演じきってみせるよ。


「でも、必死になって戦ってくれたブラッドさんと黒子ちゃんと白子ちゃんのおかげで取り戻せたんですよ!私達は武器盗まれて何もできなかったから、本当に感謝してます」

「ブラッドさん私達が不安定な気持ちを落ち着かせようとトランプしていたときから武器を盗んだやつのことを探していたみたいだったから、本当に凄かったよ」

この感じ、ブラッドこと石川県の日柱吹はなさそうか?スパイならそこまでして探すのは不自然。

「ブラッドちゃんってすごいんだね〜」

「うんうん。ブラッドさんでもその時怪我しちゃって武器を取り返したあと病院で治療受けてたんですよ。打ちどころが良くてまだ良かったです」

「打ちどころが良かったなんてよく知ってたな」

「解散した後で事件のことを伝えたあと夕方ぐらいにお見舞い行ったんです。その時医者の方から聞いたんです」

これは無理だろうな。病院内では基本的に電子機器は使えない。異少課があの場所へと行こうとしていることを知ることも送ることもできない。見舞いに行ったときにいたのなら抜け出すのも無理。

容疑者として残ってる人の中でパーティーに参加しているのは静岡県の若木露里、パーティーを開いた張本人か。

武器を盗ませるためにパーティーを開いたと考えるとありえなくはない。だが自分の分まで盗まれているのが気にはなる。怪しまれないようにするためと言っても

「それにしても武器帰ってこないと本当にどうしようとなってたよね。瞬間移動でその山小屋まで来たから」

「一応若木さんの家族が、帰る日になっても帰ってこなかったら何かあったと来るだろうと言う話にはなっていたけれど、確実じゃあないからね」

瞬間移動で来た。そうか、自分のが盗まれたとしてもその後で回収し、用意していた車なんかの帰る手段で自分だけ帰り、他の人を置き去りにすれば……ありえるのか。異少課の人を大量に使えないようにして

盗ませる理由はもしものときに怪しまれないようにするため。そう考えたら頷ける。トランプは探索に行く人を引き止めるためか?

「そういえばなんで武器を盗まれなかった人がいたの?その流れなら全員盗まれてもおかしくないのに」

「盗んでる途中でブラッドさんが起きてそれに驚いて逃げたって。」

なるほど。特に関係はなさそうか?


「そういえば私28日異少課行ったけど誰もいなかったんだよね。女の子達はそのパーティー行ってたけど……男の子達は?任務?」

やっぱり恋はなんかちょっとまだまだな感じだな。ちょっと無理矢理感があるというか……怪しまれずに知らないのを装うのがそんなに上手くない。これからも私がフォローしてあげないと。

「あ、任務ですよ。異少課の人達が色々と集まって任務に当たってたんです」

とはいったともの、普通に行けそうなこの流れならいいか。異少課といえどもそういう本職じゃあないんだから。

「普通にその話聞きたいな」

「あ、俺も聞きたい。異少課が集まるなんて珍しいし」

「えっと確か各県で魔族が発生して、それでその魔族が発生した県の人達が集まってその魔族が発生した元凶となる施設の調査をしにいったんです。山の中にある施設でやっとの思いで着いたんですけど、そこには怪しい人がいて、そいつを囮の4人が引き付けている間に残りの人で中に入ったんです」

「ほう」

「それで中に入って別れて探したら中にもうひとりいて、その後施設から出られて合流して8対2のバトルとなったって感じです」

「8対2なら普通に考えたらそんなにきつくはなさそうだけど……」

「それがかなりきつくてな。1人が普通に攻撃してくるのはいいとして、もう1人がずっと欠かさずそいつのことを回復させてたんだ。」

「えっ?じゃあどうやって勝ったの?」

「静岡県の野宮さんが御籤っていう色々な能力からランダムに1つ選べるって感じの能力で、それを使うことで敵の回復効果が使えなくなって勝てたと言う感じです。翔がその作戦考えたんだよな」

「そうですよ師匠。俺だってやりゃあできるんですよ!」


その野宮ってのの技が打開策になったのなら犯人らしくはないとはいえ、作戦を考えたのがそいつ本人じゃないのなら微妙なラインか。スパイでいることとその場所を守ることのうちスパイでいることを優先したのならそうやったとしてもおかしくはない。

その組織のその施設の重要度。そいつら2人の重要度。流石にこれから求めるのは不可能か。ここを守るぐらいなら少しは大事なのだろうが。

「それで倒してそいつらを捕まえて、警察達がそこを調べたってことでいいんだよな?」

「あ、いや戦ってると突然爆発音が聞こえて、それでその後その施設が燃えちゃって。だからそこの大事なものとかも基本的に燃えて全然繋がれなかったんです。繋がれたら芋づる式に中枢の奴らを捕まえられるとも思ったというのに」

「あれってやっぱりあいつらが裏で爆弾仕掛けててそれを爆発させたのかな。自分に関わるものが出ないようにって」

「でもあいつらは知らなかったみたいだったぞ。分からないけどこれ使って逃げようって」

嘘の可能性もあるが状況を考えても本当のよう。となると他の人が証拠を出さないように仕掛けたと

「でもそれちょっと変だったんだよな。一旦火を消したのにまたついて」

「火を消した?」

「うん。凪が一度技を使って鎮火させたんだけれど。でも消したあとまた日がついてどうしようもできなくて逃げてきたんです」

「それってちゃんと消えて無かったってこと?」

「そうなんだろうけどなんか違う気がして、消えて無かったと考えても自分が見ていたとこが燃えるのが速すぎて」

となると、証拠隠滅のために2度火を付けたのが濃厚か。

でも火を2回ってかなり近くにいて状況を見てないとまず無理だよな。

「そういえば、2回めって爆発音は聞こえなかったの?」

「あ、言われてみれば何も聞こえなかったような。」

「俺も聞いてないです。ホクに言われて逃げようとしてたから聞こえなかったのかも」

1個めと2個めの出火原因は違う。そしてそうなると2個めの出火場所はこの子達が見ていた場所らへん。

「そういや中って何もなかった?爆弾とか仕掛けられてない?」

「仕掛けてはなかったような……でも中にいる人を見つけるのが目的だから結構雑に探してたから見忘れたかも」

「中って全部の部屋見たのか?」

「一人一人別々になってそれぞれで探してました。ちょっと広そうだったので」

「そういや中チームなのって?君は確定だろうけど他の人は?」

「確か俺以外は……外チームが凪、翔、平良君、ホクで中チームが俺、鏡さん、丸岡さん、野宮さん」

「合ってるよ師匠。外チームにいた人と」

一応メモろう。

どちらかといえば中チームが爆弾らしきものを仕掛けられそうだけど、でも他の人がやってたら話は終わる。

これ以上絞るのはきつそうか?少年達も絞りはしたいが。


調査完了

机の下でスマホのメールでそれを送る。

「本当にごめんね。取ってこようとしたら色々とあってね」

この速さ、部屋の外でずっと待ってたな。もう少し早めに終わらせてあげたほうが良かったか。

「それで、私が頼みたいのは交通安全の標語だね。それでこれが今までの交通安全標語の一覧で、これを軸に考えてもらいたくてね。それで……」


交通安全標語の方も終わり、今帰路についている。

「あ、そうだ。そういえばさっきの事件についてもうちょっと聞きたいんだけど」

「さっきの事件?」

「少し前に起きたらしい異少課が色々と集まった事件。その事件の首謀者のことって結局分かったんだっけ?」

「アンダス団が関係しているってことまでは突き止められたらしいんですけど……それ以上は無かったみたいです。あのときしかり今回しかり、中枢まで踏み込めそうになっても踏み込めないんです」

「あのとき?」

前にもそんなことあったのか?……あ、そういえばあのときの、恋が悪夢に苦しんだときのやつが同じアンダス団だったっけな。

「あ、前に学校の異世界で戦ったんです。学校の異世界で魂の石だったかを集めてたアンダス団の人を倒したんです。その時も捕まえはしたけどあんまり情報が得られなかったんです。」

「その話、もっと詳しく!」

「本当に!?もっとそのこと聞かせて!」

「えっうわっとっとっと。あーはい。なんか急に凄くないですか?」

「それはいいから。」

このことちゃんと聞かないと。もしかしたら、大きく進めることになるかもしれないから。

「えっと……確か中学校で七不思議を調べてて、その最後の七不思議の赤い階段の神隠しを調べてたら、元の似たようで少し違う学校の異世界に飛んだんです。」

「へぇ飛ぶ。武器の力関係なく?そんなことが?」

飛ぶ理由も気にはなる。知れば有効活用して使えそうだけれど、でもとりあえず今は話の続きだ。


「それで魂の石を探して持って来いって言われて、それで探して持ってきたら一悶着あってそこを根城にしていたアンダス団の研究者と戦ったんです。それで……どんな感じだったっけ?」

「あっち側は大量の魔族を引き連れて襲わせようとして、それで一度は倒れそうになるけど俺と繁が何とか助けて、その後繁が銃使うことで一気に倒したんじゃあなかったか?多分そう。」

「あのとき俺結構取り乱してたなぁ。昔と今の違いを感じる」

「まああんまり変わってない気もするけどな、それでも少しは変わってるけど」

「そしてその後そいつから手帳を取って手帳の通りに『開け塩』って言ったら帰りのドアが開いて帰ったんだよな。その後は俺あのときまだ異少課入ってなかったから分からないんだけど」

「開け塩……なんで塩?え?」

「開けゴマもゴマの意味ってなんだって話ですから、意味も無いんじゃないかと思います。」

「開けゴマ?」

「そういう扉を開ける呪文があるんですよ」

ふーん。深く考えたら負けってことか。

ま、これは今はいい。

「それで?その後は?」

「その後は普通に帰っただけですね……、手帳によると、魂の石を何個か集めてエネルギーを集めるのが任務だったらしいんですけど、結局良くわからなかったんですよね。その時の魂の石を一つ持ち帰りはしたんですけど、それも盗まれちゃいましたから」

「あのときの魂の石ってそれか。あの怪盗アヤが盗んだやつ」

「それですそれです」

「まぁ、なるほどな」

これはちょっと、予想外の収穫だな


「聞いた話から推測するに、石川県の日柱吹さんはアリバイがあり無理です。あと静岡県の野宮陸さんは完全に白ではないけど白目って感じですね」

「ありがとうね。本当に感謝してるからね。それで、またそのスパイの情報が入ったら相談してもいい?」

「私はいいですよ」

「ありがとうね。じゃあ、またいつかね」

電話で調査内容を伝えて、とりあえずその件はこれで終わり。

「電話終わりました?」

「今終わったところ」

さてと、新たな件の方をしなければ。

「中学校の異世界とやら、そこの話をしよう」

「はい。やっぱり純様もその話を……メモを取る準備はできてますよ」

チラシの裏の白い部分を置き、取ってきたボールペンを置き、メモを取る準備は十分にできていた。


「私あの中学校に新聞部の仕事でよく入ってるから、そこで仲良くしている子達に聞いてきますね」

「そうだな。でも今は冬休みで行けないだろうから、冬休み終わってから……聞けるのは11から、私達が行くのはさらにその後となるな」

「予定大丈夫ですよ。新聞部の活動も今はあまりない感じですから……ちゃんと行ければいいですね。その異世界に」

「その事件が起きたのが怪盗のときの前、かなり昔だから変質してる可能性もある。でも、あってほしいものだ。あれば本当に……。そういえば、その時は恋はどうするんだ?家に戻るのか?」

「いや、ここで2代目探偵兼助手としてやろうかなって。ここの居心地良いんですから。やめたくないですよ。一人になっても」

「そうか。何か色々とすまないな。今まで」

「そんなこと言わなくていいんですよ純様。それに、上手くいってからですよ」

恋はいつもよりも笑顔に、心から笑ってみせた。

「ふっ。そうだな」


「場所恋が聞いてくるしか知る方法は無さそうか」

「ちゃんとあの子達から聞いてきますね」 「聞いてくるついでに窓のカギを開けといてくれるか?学校に入るときに使う。」

「はい。純様。……そうだ、今日パーティーしましょうよ。食材買ってきますね」

「パーティーか。私も行くぞ。」

「私一人で買ってきますよ。荷物持ちもしなくていいですよ?」

「もう少しで私はここからいなくなるかもしれないんだ。何か一緒にいたくてな」

「純様!純様〜!」

「恋、ちょっとはしゃぎ過ぎだぞ」

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