第23章 少年達の警察業!

「じゃあな」

12月27日。異少課の女の子だけのパーティーに参加するため、警察署に置いてあるゲートで静岡県に行った2人を見送った。

2人共楽しそうな顔をしていて、それを見るとこちらまで嬉しくなってしまう。良いことだ。

「いるか?」

「何か用ですか?石山さん?」

異少課の部屋でいつも通りに過ごしていると、ドアがノックされた。

「任務だよ単純に。魔族が暴れてるなんて情報得たからな。位置的に集落の近くだって言うから早く行こうと」

「それで、魔族の情報は」

「武器持て。そこらはパトカーに乗ってからだ。こういうことになると、瞬間移動の使い勝手の良さが身に染みるな」

愛香と繁はパーティーに行ってて今はいない。残りの3人でしなければいけない。

「場所は山の中、といっても街中のあの山だから、かなり危ない。現状そこの交番から適当な理由を付けて山の封鎖をしてるといった状況。発見場所は丘陵の途中。そいつの情報は現状不明だが、襲ってきたため敵対性はあり」

パトカーを運転しながら、魔族の情報を伝えてくる。この感じ、最初の任務を思い出す。

「はい」


「さ、行って来い」

目撃場所近くの駐車場にパトカーを停め、そこで降ろされる。

「いたぞ」

「じゃあ、一気に行きましょう。いつものように。」

「これがあるから、俺も少しは加勢する」

凪はこの前博士から貰ったピストルを手に持つ。あの後凪は隙間時間を使ってそこそこ練習したのだと。いずれ自分が使うからなんて、真面目に取り組んで。

「うぁぁ!」

「おっとバレたか……」

「師匠!こちらへ!」

「俺だって!」

先制攻撃を入れようとは思ったがバレてしまった。念のため今は盾の後ろへといるが、動きはそんなに速くはない。

「電磁は……効かないのか」

「空気球したほうがいいですかね?」

「とりあえず!」

「うぁぁぁ!」

こいつがどんなに攻撃力が高いからって、これほどの攻撃速度なら避けられる。

「これで!」

胴体を剣で攻撃し、身体を切り離して終わらせた。

「良かった。まだ誰もいないここらへんで」

「終わったか新?」

「やっぱり師匠強いですね。惚れますよ」

「いやいやいや、そんな趣味ないから」

とりあえず簡単に終わったということで、いつものように死体の回収やらを石山さん達に任せて、俺達は警察署へと戻った。


「いや……これは」

「ちょっと待て。思い込みは誤った結果をもたらす、その結果を出すのはちゃんと調べてからだ」

「分かりました。調べてきます」

「やっぱりそうです。これは……」


「防犯カメラの映像……ん?何だこれは。」

「怪しいな。何かありそうだな」


この任務が、割と大きなことに繋がってると、このときの俺達は知る由もなかった。


次の日

俺達は警察署内にある講堂へと呼ばれていた。

俺達というのは俺、翔、凪だけではなく……。

「翔、よっ。」

「僕、大丈夫かな。準備あんまりしてないけど……」

「ただならぬ雰囲気だな……あっ丹、落とし物してる」

「ありがとう。でも、本当に何があるのかな」

「露里のパーティーのせいか男子ばっかだな」

色々と呼ばれていた。長野県のホク。石川県の鏡さんと丸岡さん。山梨県の平良君。静岡県の野宮さん。

静岡の方で行われているパーティーの関係で男子しかいない。

適当な椅子に全員が座ったところで、スライドを移して石山さんが話を始めた。


「本日はよく集まってくれた……なんて堅苦しい挨拶は抜きだ。早速本題に入るが、各県で今月に起きたとある魔族の件に共通点があった話だ。うぁぁと声を上げた人型の至るところが緑に汚染された魔族だ」

これって確か昨日のやつ。

「初めは静岡県、その後山梨県、長野県、石川県、富山県と相次いで発見された。同じ種類の魔族がこんなにも発見されるなんて不自然だからな。裏で色々と調べていたんだ」

ちゃんと仕事してる。いやそれが普通なんだけど、石山さんがこんなことをすると珍しい感じが否めない。

「死体を調べてたらな、どれもほぼ同じ注射の跡があった。誰がやったか分からんが、意図的にやったってことは確実ってことだ」

「でも、なんでそんなことを……実験施設から逃げ出してきたーとかじゃあないよね?」

「まあ動機なんか分からん。で、昨日富山で起きたのを監視カメラを調べたら怪しいトラックが見つかったんだ」

「通報時間の前に山の中へと入り、通報されて少しした頃に山から出る。何より、行くときは荷台にシートがかけられたものが置いてあったのに、帰るときは荷台のシートの中が無くなってるってもんだ。怪しいしかないだろこんなもん」

「つまりその場所で荷台の荷物を置いてきたかなんかしたと」

考えてたこと言われた。

「それで、監視カメラを辿っていったら、アジトがありそうな山を見つけたってことだ」

複数の県にまたがって起きた魔族の事件、一体誰がなんのために。

でもなんかやりそうな組織は知ってるが。そいつらなら喜んで潰す。


「なんか質問でもあるか?といっても、今言ったこと以上に掴んでる情報なんてまあないが」

「犯人に関する他に情報ってないの?」

「正直あんまりってところだ。他県の事件も調べたが目ぼしい情報なんてない。監視カメラに映ったトラックぐらいだ」

トラックの画像を一応送ってはくれたものの、改造車ってわけでもないごく普通な感じのトラック。ナンバーは分かったけど……。

「ちなみに調べた感じアジトはかなり大きな1階建ての建物。壁が白い。遠くから調べたやつによるとそうらしいぞ」

情報あってほしかったけどな……。情報はあって困らない。


パトカーに乗ってその場所へと向かっている。いつもと違って人数が多いので3台のパトカーで向かっている。

富山県の3人が乗るタクシーにて

「人数的には8人もいるし大丈夫だと思うが。相手の人数も分からないから気をつけろよ」

「石山さん。アンダス団関係じゃないですかね今回の件」

「どちらとも言えない。ありえはする。少なくとも普通じゃない」

普通の感性してたらまあやらないもんな。

「アンダス団……」

「思うのは勝手だが、気を揺らぐなよ」

「石山さんなんでこんなにちゃんとしてるんですか?」

「うるせぇなぶっ飛ばすぞ」

いや、あの……常日頃の態度が……。

もしやこれがヤンキーがたまに優しくする現象の亜種か?


七頭の研究施設に現在異少課が向かっている。早く伝えて証拠を隠滅して必要なものを持って逃げるように伝えてくれ。あそこの電話番号が分からないのでお前だけが頼りだ。

誰かがメールを書き、送信ボタンに手を当てた。

(既読付かないな。まだあの仕事終わってないのか。他の方法……。……にも送ったがいつものように寝てやがるなこれ)

そこそこの時間が経ち、でもメールの既読が付いていないことにちょっと焦りを感じていた。

(俺一人でこの人数相手にするのはいくら俺でも無理だな。最悪バレないように機密情報消すか?何とかして遅らせたいが……なかなか難しそうだな)


「この山の中だ。これ以上はパトカーじゃどうしようもない。ここで待ってるから任務終わったら帰ってこい」

山の近くの駐車場に3台のパトカーが止まり、もう一度念のため説明する。

「こんな人数でやるのは始めて。いつもとは全然違う感じなのかな」

「平良君って山梨県か。山梨県の平良君以外に知らないけど、1人でやってるのか?」

「うん。僕1人。誰か他にいたらいいなって思うけど、なかなかいい人を見つけられないんだって言ってた」

異少課の条件厳しいよな。子供であったり異世界の武器を何らかの方法で手に入れられていたりある程度の身体能力があったり魔族や悪い人間とちゃんと戦うことができたり……

常に人数不足に悩まされているのかも。富山県は他より圧倒的に多く5人だけど、殆どのとこは2か3人。

仕事もかなりばらつきがあったりするけど、それでも回すのはきつい人数だよな。

「1人って、それでよく任務できるよな。俺が亜美に仕事を全て押し付けられたときなんて……2週間全身ずっと痛いままだったんだから」

「押し付けられるって、何やったんだよ」

「…ヤンチャ?」

これって……あのホクが壊した警察署を直したあとの話だろうか。確かあのときに仕事を押し付ける話してた気がする。

勘違いしていたとはいえそれに関しては自業自得だからなぁ。実際に1人で仕事をしないといけない被害をあっちの人も被ったみたいだったし。

「たまにきついけど、でも頑張れてるよ。いざとなったら上司の羽崎さんが助けてくれるから!」

平良君は頑張り屋さんだ。その笑顔にこっちの感情が動かされそうだった。


「はぁ……はぁ……」

獣道を登って20分ほど、一人他の人達から少しずつ離れていっている人がいた。

「大丈夫か丹?さっきからずっとはぁはぁ言ってるけど」

「だ、大丈……いや、ごめん。ちょっと休ませて……」

「おーいみんな。丹の調子悪そうだから止まってくれ」

遅れる丹を見て心配になっていた日向が、丹の様子を見てみんなを止める。

「地図見た感じあと5分ほどで目的地着くけど、そこまで先に行くのって無理?」

「あっ……じゃあ、俺……そこ……まで……」

「無理だと」

そんな言葉は一言も言ってない。でも日向はそうあたかも言ったかのように嘘を付く。

見ただけで隠してることが分かる。といった感じだろうか


動くのを止めて皆で腰を下ろす。

「俺……無理なんて……まだ言ってな……」

「丹との付き合い長いんだから。分かるっての。自分のことを誤魔化して無理に取り繕うとしてただろ。ほい、水筒。持ってきてないんだろ?」

「あ、ありがとう」

丹は水筒の中身を一気に飲む。水筒の中身の半分ほどを一気に飲んだ。

「疲れはどう?」

「本当のことを言うと……まだまだ。昨日ちょっと色々とあって……」

「丹はもうちょっとわがままになっていいと思うよ。周り、特に吹に合わせすぎ。吹ほどにわがままな自由人はただ疲れるだけだからやめてほしいけど、それでももう少し自分のために生きようよ。自分の人生でしょ」

「ちょっと頑張ってみる」


休憩時間の間、ホクも交えた4人で話していた。

「ホクってそういえば凪と同じあっちの世界の住人だったんだよね」

「まあね。といっても2年以上前の話、今の俺とは全然違う感じだよ。ここに来て重役としての柵がなくなったーというか」

「そういえば、ホクってあっちの世界帰りたいの?」

あっそれ聞いちゃうのね。聞こうとはしたけどちょっと躊躇ったのに

何かあんまり踏み込んじゃ駄目な話題な感じがして

「どっちでもかな。あっちに大切なものがあるのと同じぐらい、こっちにも大切なものができたんだから」

甲乙付け難い、が今の状況に合うんだろうな

「俺は……」

「帰る方法が分かるまでは、そんなの考える必要なんてないから今考えたけど」

凪がこの世界と前の世界のことを考えていたのが、ホクのその一文で全て消え去った


一方その頃。場所はかなり変わって静岡県。

「……そこの拠点がなくなるのは惜しいが……致し方あるまい」

誰かが30分ほど前に電話番号が分からないからそっちから伝えてくれといった内容で送ったメール。それがようやく既読となった。

メールの内容を見て、すぐに電話をした。

電話をした相手、それは新達が今行こうとしているその研究施設だった。


「おいみんな聞けー」

先回りされた

「ここに警察の犬どもが来やがるから、さっさと重要なものを消して逃げろとの令だ。上田はいつ来るかを見張っとけ。他のもんはさっさと書類を燃やせ。ゴミ箱のレシートや個人的な紙も消せよ。何一つ掴ませるな」

「「はっ」」

電話相手の、この研究施設での地位は高そうな男がてきぱきとそこの人に指示をする。

「あの野郎……」

怒りに震え自分の爪を噛む。少し噛んでから、命令したように焼却炉へとどんどんに入れていく。

「燃えないものは持って逃げろ。くれぐれも焼却炉に入れるなよ。掴まれるぞ」


「……うわっ……もういた」

先程上田と呼ばれた男が麓の方を覗くと、パトカーの存在を確認した。

しかも1台ってわけではない。どう考えてもここへと来ているパトカーなのは明らかだった

「これは早く戻って報告しないと」

「緊急報告!もう麓の駐車場にパトカーが止まってます!」

「チッ……時間の問題か。おいこら時間ないことが判明!見られたらヤバいもの持って直ちに逃走しろ!裏の斜面を下の方を見ながら降りてけ。捕まるんじゃないぞ」

まともに消す時間もないと分かってしまうと、捨てるのに必死で逃げられなくなってしまうことを恐れて早く人員が逃げるよう急かす。誰かが捕まるだけで、そいつがここのことをバラしかねない。下っ端にそんな大事なものは渡してないが、それでも危ない。万が一がある。


「何なんだよもう。仕事がいいとこまで行ったってのに……」

「異少課の奴らがここに来たみたいだな。アイツラは悪魔だ」

研究施設の中、そこで働いていた下っ端の2人がちょっと駄弁っていた。

「もう俺は出るぞ。逃げ遅れたって知らんぞ」

「主任もいなくなったか。なんでアイツラのせいでこんなに被害食らわないといけないんだが」

愚痴がずっと出ている。警察を本当憎んでるみたいだな

「そういえば、昇進に興味ない?異少課って上層部も手を焼いてる問題だろ?俺たちがそれを倒したら……」

「なるほど、いいな。でも、俺が倒せるか?攻撃できる武器はあるけど……」

「大丈夫だ。お前は負けイベントのパターンを知ってるか?HPが無限にあるーとか、ダメージが全て無効化されるーとか。そういうやつ。それを俺が擬似的に起こせば、相手に取っては負けイベントだ。どういうことかというと……」

「本当お前冴えてるな。まじ頼もしいわ」

逃げるという選択を取らない、下っ端がそこにはいた


「ゴホッゴホッ」

「本当に大丈夫か丹?風邪なら一旦山下りて駐車場に止まってるパトカーで寝かしてもらおうか?1人減るけど……多分大丈夫。こんだけ人いるんだから」

「ごめん。でも大丈夫。風邪ぐらいで休んじゃだめだから。ほら、熱ないでしょ?」

丹は日向の手を取って自分の額へとその手をつける。心配されているけれど、大丈夫だと証明している。

「あ、それと俺もう大丈夫。疲れも多分取れたから、休憩させてくれてありがとう」

「そうか、さっきも言ったけど、もっとわがままになっていいんだぞ。疲れてないのに休憩してわざとサボっても、丹ならいいかなって思ってるんだから。吹が同じことしたらぶっ飛ばすけど」

「サボるなんて、やらないよ。そんな駄目なこと」

遠目からその様子を眺めていたけど、仲が良さそうな二人だ。ギスギスしてるより、全然こっちのほうがいい。


「丹の疲れも大分とれたみたいだし、登るの再開しよ」

「おけ」

休憩時間も終わり、またその碌でも無いアジトへと歩き始める。

「いまさらだけど、アジト見つけてからどうすりゃいいんだ?突入して全員捕まえるってのは分かってるけど、具体的にどうやって」

「普通に突入したら行けないか?俺達の人数、それに皆武器を使いこなすエキスパートなんだから」

「でも、敵の人数も強さも分かってないんでしょ?僕ただ突入するのは危険に感じちゃう」

ホクの純粋な問いに翔や平良君が答えをしている。でも確かにまだ決めてはいなかったな。

「何にしろ、実物を見ないと分からんだろうな。どういう構造してるのか、そこに分からない状態で考えたものなんて全く机上の空論じゃん」

「偵察はいるんじゃないか?相手の人数とかがわかれば突撃はまあできるんだよな?」

「偵察……偵察に向いてそうなのあるか?無策で偵察に言ったら捕まるから武器の力でなんとかしないと……でもそれっぽいもの……」

それぞれが自分の意見を述べてある1つの質問に1番良い答えを示そうとしてくる。


「見えたな。まああの建物だろうな」

「1階建てで白い建物。ほぼほぼ確定してそうかな。でもどうする?迂闊に進んだらこっちもバレちゃうんじゃ……」

先頭を進んでいた日向と丹がようやく目当ての建物を見つけたよう。石山さんからの情報とも一致するし、間違いないだろう。

「でもここで止まるのは何も意味ないだろ。そもそもここは山だ。木を使えば気づかれないように近づくのはできる」

「バレにくいとは思うけれど、それで大丈夫かなぁ。ここに8人もいるんだよ。隠れきれないんじゃない?」

「調べるのを少数で行うのがいいかな。多量にしても、あんまり結果は変わらない」

各自それぞれが意見を出し合い、どのように攻略するかを決めていく。

慎重に、逃さないように。

「それはありとは思う。調べるのは2〜3人が良さそう。1人だと勘違いが起きかねないし、それ以上だとこちらのことがバレかねない」

「まあそうだけれど、誰がその役やるんだ?」

うーん……

そこはあまりな……

「今更だけど、全員がそれぞれ使える武器の力確認してみない?それから決めようよ」

「言われてみればそこの情報共有できてなかったな」


というわけで一旦全員の武器の力を確認する

「僕は風力って言って、色々な風を自由自在に吹かせられる力だよ」

「俺のは御籤、最初に籤を引いて、それで出た能力が使えるって感じ。一度籤を引いたら一定時間はその能力だね。完全に運だから本当に使いにくいんだよね」

「えっと俺が不触だな。使ったものを他人が触れられなくするって能力。トリッキーだけど、以外と使えるんだなこれが」

「俺は治癒。近くの人の痛みを時間をかけて徐々に取り除いたり疲れを取ったりできるんだ」

「俺のは復活で、力尽きた魔族を復活させて戦わせられる」

平良心、野宮陸、丸岡日向、鏡丹治、ホクの順番でそれぞれ説明していく。

勿論俺達富山の3人も同じ感じにこれの説明をした


正直あんまり潜入に役に立つ力は持ってないか。やっぱり適当に選ぶのがいいのか?

「結局、誰も同じ感じ。めちゃくちゃ使えるーとかがあればそいつに任せようとしてたけど、これじゃ誰も同じかな」

「誰かやりたい人いない?同じならやりたい人がやったらいいんじゃない?」

より良いものを考えるのも大事ではあるけど、それで時間を使いまくってしまうと本末転倒ということだ

「じゃあ俺がやるから。さっき休憩させて迷惑かけたお詫びも兼ねてね」

「丹が行くなら俺も行こうかな。丹が無茶しないか、監視もしたいから。丹ならちょっと頑張りすぎちゃいそうだから」

結果的に、石川県の2人が調べてくることに決まった。3人いたほうが良いような気もしたが、2人いれば十分というのと他に立候補者がいなかったということでこの2人だけとなった。

「絶対良い情報掴んでくるから」

「あぁ」

木の陰に隠れながら、その建物へと近づいていく


「窓があるとはいえ、カーテンで中は見えないな」

「こっち側じゃ意味なさそう?別の方向から見る?」

丹と2人でその建物を見張っている。少しでも何か使えそうなものがあれば良いのだけれど。

ここまでは木を使うことで問題なしに来た。

「でも2手に別れる?それとも同じところで二人で見る?どっちがいいかな」

時間を取るなら2手に分かれた方がいい。でも正確さを取るなら同じ方がいい。

「どうする?」

「分かれるか」

丹なら信用できる。吹も丹ほどに信用できてほしい。やる気はあるけど中二病で台無しにしている感


「電気はついてないのか」

最初見た面から右の面を俺が、左の面を丹がやると決め、その面へと隠れながら偵察を続ける。

右の面から見るとカーテンが開けっ放しの窓があった。目を凝らしてその場所を深く注目する

「誰も居ない」

その部屋のドアは開いていたけれど、角度的に廊下が見えない。机とか椅子とかがあるけど、あんまり情報自体は得られなさそう。


「あそこにいるのは誰だ」

こっちの面にも大したものが無かったとなって、最初の反対の面へと行く。

そっち側に入口があるのは見えた、そしてその入口の前に人が立っているのも。怪しい。

絶対関係者。あたりをキョロキョロ見回して何かを監視しているよう。

「これ以上……どうするか。やめたほうがいいよな」

これ以上行くと、たとえ森に隠れていてもバレてしまう。木から木へとの移動は丸裸。その視線は遮れない

反対側を見ると、ちょうど丹が見えた。止まっているのは多分俺と同じような理由。

(一旦戻ろう)

言いたいことをハンドサインで伝える。伝われー

「よし」

伝わった。丹は来た道を戻っていった。俺もそれを見て元へと戻る。


「丹。収穫あった?」

「えっと、左に駐車場があったんだけど、その駐車場に止まってる車が2つあった」

「2つ……最大8人といったところか」

こんなところに車無しに行く人なんてあんまりいないだろう。でも8人といったが実際には4人ほどか。思ったより少ない。朗報だ。

「良くやったな。丹」

「攻めるときは外にいたあの人から倒すべきかな」

「でも、この施設の大きさにしては少なくないか」

降りてる最中で気がついた。最大の8人としても。大部分は逃げられたのか?

足を滑らさないように、整備されていない山の斜面を降りていく。目の前に見えた皆の場所まで


「その人数だったら、普通に突入して倒すのでもいいかも」

「出口はそこだけ?なら逃さずに全員捕まえられるのかな」

「俺がそこにいたら窓から出るな。一網打尽にするのなら全面見たほうがいいかもな」

「先に玄関にいる人を倒す?それとも窓から中に侵入する?」

活発な議論がここでは行われている。その得た情報から、作戦を練っていく。ここにいるのは異少課、経験豊富な人達なのだ。

「窓から侵入するのは難しいって。割れた音で玄関のやつが動くだろうから意味ないだろうから」

「でも陽動作戦を使えば、中に入るのはできるんじゃないか?2チームに分けて1チームが戦って、もう1チームが中に入るとか」

「中に入る意味あるかな。先に倒しておいたほうが安全なんじゃ」

どっちがいいのかな。ここにいる全員で玄関前の一人を倒して中の調査をするのと、中と外で分けて戦うの。

「分けたほうがいい。だって分けないと外で戦ってる間に他の人が大事な証拠を消してしまいかねない」

「俺それに賛成」

なんやかんや色々と考えが出つつも、最終的には2チームに分かれてという感じに決まった。

外チーム 凪、翔、平良君、ホク

中チーム 新、丹、日向、陸

「さてと、乗り込むか」

アジトへと足を進めた


「ここで怪しいことをしていると情報が入った。調べさせてもらう」

「お前らが異少課どもか。誰がお前らの言う事を聞くもんか。俺の昇進のために死んでもらおうか」

やっぱり戦うことになるのか。戦わずにすめたのならいいなとは思っていたけど

「異少課って……なぜ分かった」

「聞いてたからな異少課が来るって。上層部が手を焼いてる異少課を倒して、昇進しようって算段よ。ハーハッハッハ!」

高笑い。俺は好かん

「さぁてほら来いよ。もし来てくれたら苦しまないように殺してやるよっ……」

「僕たちに怪我させようとするなら、容赦しませんからね!」

平良君風を飛ばしたのかな。転んでいる

「さっさと殺してやるよ!」

「望むところだ」

陽動も上手く行ってそうだな。中チームの師匠達のためにも、玄関の方に注意が向かないように戦って見せる


「闇だほら、さっさと死んでみせろよ」

「まだ、これぐらいなら全然問題ない」

黒い何かを放って攻撃してきた。でも、俺の盾で防げてる。少し衝撃を受ける程度。これぐらいなら全然問題ないけど、油断なんてできない

「アイツを倒すの手伝って」

「この風で吹き飛ばすから!」

「今回は、俺もこれを使って応戦するからな」

ここにいる、4人がそれぞれの力で戦う。ホクは死んだ魔族を復活させて戦わせ、平良君は強風を吹かせ、いつもは薬作るぐらいしかやることがない凪もこの前の博士から貰った奴で応戦している。


「闇波動で、みんな苦しめてやるよ」

「これは!みんな後ろに!」

その闇波動っていう大技。黒い闇が使った場所から放射線状に襲いかかってきた呼びかけたけど見てから呼びかけてももう遅かった。たまたまそのとき後ろにいた凪以外にはもろに食らわしてしまった

この盾でできるだけ守らないと

「ちょっと苦しいけど、全然問題ないね」

「もっと戦ってもらえる魔族を復活させて、多くの仲間で倒さないと」


「アイツ疲れを見せないな。体力だけはあるタイプか」

「攻撃力が少ないとしても時間かかるなそれ。それまで耐えれる?」

「風どこに飛ばせばいいとか分かる?」

「薬なら少し作れそうなもの作ってるから」

そこそこにくらわしてるのに、その片鱗をも感じさせない。これはなかなかに長期戦になりそう

「よしっ」

遠くを見ると、中チームの3人が玄関から中へと侵入しているところが見えた。キョロキョロしながら、今玄関を通った

誘導作戦問題なく成功できた。それに小さく呟いて盾の後ろでガッツポーズをした


「はぁ……」

敵の体力バカさが恨めしい。なんでこんな体力あるの。そこそこに攻撃してるんだぞ。だというのに疲れる素振りも痛がる素振りも何も見えん。

「なぁなぁ、ただ一言参りましたーっていえば、さくっと終わらしてあげるんだからさ、早く降参してよ」

この喋り方も喋る内容も、何もかも気に食わない

「これ当たってると思うんだがな」

「傷一つ見えないな」

「ねぇおかしくない?ここまでやってるのに全く調子変えてないの。もしかして何かからくりがあるんじゃない?」

凪のピストルから打たれた光線も、ホクが呼び出した魔族による直接攻撃も、平良君の風による攻撃も、どれも当たってるはずだ。なのに

「御名答、RPGの負けイベントのようなからくりだよ。どんなからくりかっていうと、おっとこんなこと敵に言ったら阿呆の極みだな。まあよいさ、俺には勝てないんだから諦めてしまえよ」

「くっ……きつっ……」

さっきから5秒ぐらいの高頻度であの闇の攻撃をしてきてる。盾があるったってこの頻度はきつい

盾ってのは完全にダメージをなくすんじゃなくて減らすだけ。衝撃とかは防いでもそのまんま当たってくる

「凪……」

「すまんまだ時間かかりそう」

「耐えれるかな……」


「からくりって」

どういうからくりなんだ。口を滑らした分にはRPGの負けイベントのようなからくりらしいけどさ。

無理だこれ。分からん。凪とかに任せよう。俺は頭で考えるのは下手なんだ

師匠がいてくれたら何か思いついてくれるんだろうけどなぁ……少なくとも中を調べ終わるまでは来てくれないんだよな

「凪も無理かこれ」

薬作りしてて考えれないか。ホクと平良君。あんまりわからないな

「もしかしてその闇以外に力がある?」

「見たことがある、武器の力としては1つだけど、その1つの力に複数の能力がある場合を」

だからといってなぁ。その力なんだ。ありそうな防御系か?それか回復系か。補助系一応あるか?

何にしよきついこと変わらないのか

「相手の想像を超えれれば、勝てると思うんですけど」

「凪、なんか戦闘不能にできる薬とか作れないか?」

「時間の問題があるな、厳しい。難易度も高い。そして材料がない。無理だな」

「この風で遠くに飛ばせないかな」

「体力があっても気絶させてしまえば終わらせれるのに」

色々な方法を試していても、あまり効果はなさそう

俺もなにかしたいけどこの攻撃を受けてる間は無理だ盾をやめた途端ボコボコにされる


「よし全員来たな。」

「思ったより楽に侵入できたね。もうちょっとあれかとも思ってたけど」

見張りの気を引いてくれたおかげでこの中へと入れた。早めに探索を終えて加勢したいけど、まだこの中には少なくとも1人はいるだろうからどうなるか。流石に車が2台止まっているなら2人はいるだろうから。

「それぞれの部屋で別々に探そうか。中にいる人を捕まえたらそれでいいんだよね」

「中の証拠を探すのはここを完全制圧してから下にいる警官達にやらすのが良いだろうからな。じゃあ俺は左を」

「日向、2人で右探そうか」

「よし」

「となると俺は右か」

「あ、あとあんまり声出さないほうがいいかも、外の人にバレちゃうとちょっと事故りそうだから」

「うん」


(いなさそうか?でもあの音で誰かが近づいていると気がついて隠れているのもあり得るか?)

それぞれ別々に部屋を確かめていく。とりあえずパッと見で調べていく。

「……っ、誰だ!」

「いた。1人」

最後に調べる部屋へと入ると、中に1人見つけた。部屋の窓近くからこちらを見つめている

「無駄な抵抗はやめて大人しくしなさい」

「なるほど、囮を使って中に入れたってわけか。1人でここまで来たのだな」

「1人じゃないな。仲間もいるよ」

「いたか?」

反対側の部屋を探していた野宮さんも加わった今のところ2対1、しかもこっちにはあと2増える余地がある。

じわりじわりと近づいていく。もちろん武器を持って脅しながら。

「なるほどね!」

「っておい!逃げるな!」

やられた。存在がバレてから少しずつ窓の鍵を開けて窓を開けられて、そして今窓から逃げられた。

「邪魔だなこれ!あーもう」

「行きづらいな」

その部屋は倉庫のような場所、棚やら色々とあって通りづらい。逃してたまるものか

「何かあったのか?」

「右側はパッと見誰もいなかったよ。」

右側を調べていた2人もこっちへと来た。簡潔に先程起きたことを伝える。

「分かった。窓から出たあとはどこに?」

「普通に考えたら逃げたんだろうけど……」

俺を見て急いで逃げてたから証拠隠滅とかはまだ行ってなさそうだけど、でも捕まえておきたいな。こういうやつを捕まえとくことで中枢へと繋がれるんだ。


「痛っ……いきなり?まさかあっちでなにかあったのか?」

外での戦い。まぁまぁこちらも疲弊してきた。この盾を構えるのもどれほど持つか…

なんて考えてたら、何でなのかは分からないけどいきなり攻撃くらったときに痛がりだした!さっきまでが嘘かのよう

「効いてそう!」

「もしかしたら中の人達が何かしてくれたのかも。今なら倒せそう!」

「何だったんださっきまでのは……でも、今のは演技とかじゃなさそうだな。まあいい。今のうちに倒せれば更に良い」

疲労と変わらない状況により段々と気力が下がっていた4人共が、状況の変化に最初のとき以上にやる気が出てる。

トリガーも分からないけど、でもトリガーが分からなくても、元に戻るまでに倒せばいい。

やらないと。いつ終わるかもわからないから。

「この闇で!」

向こうもさっきまでよりも本気出してそうか?でもそれぐらいどうってことない。

「飛んで行け!」

「絶対に当てる!」

「皆いっけー!」

「昇進がかかってるんだ。金がかかってるんだ。俺達のためにも、大人しくみんな死んでしまえ!」

金のため金のため。愚かだなぁ。

金の大事さは分かるけれど、金買えないものもあるんだから。

強さはそういう類だろ。


「ふぅ……ふぅ……。諦めない。金持ちになるチャンスを諦めれるか」

口だけは達者だが、身体はそこまでついてきてなさそう。本気の俺達が4人で戦ってるんだ。よくまだ戦ってられるよ。その執念だけは評したい。執念の理由はクソだけど

っ誰!

横からこの戦いへともう一人の男が駆けつけてくる。男は目の前の男と同じ向き。敵だろうな

「ちょっ……お前どうしてここに。裏切ったか!?」

「なわけ無い。俺が金を諦めるとでも?見くびらないでほしいね」

こちらも少し作戦会議

「援軍か?」

「でも先にさっきまで戦ってた人を倒したいかも。かなりダメージを負わせたんだから」

「あっちの男がどんなことをしてくるかにもよるな」

誰なんだ。……そういえば俺達って言ってたな。そういうことか

「心配するな。ちょっと忍び込まれたから逃げてきただけだ。まだここでも同じことをできる」

「っ!止めないと!」

「邪魔をするな。全く。意外と手こずってたな」

凪か急に銃から光線を撃つ。急に撃った理由は俺もわかる。

さっきまで与えていた傷が、あの男の傷が、少しずつ癒えていたんだ。あざ笑うかのように

「ごめんね。逃げてる間はできなくってさ。じゃあ、続けようか」


「いた」

「今思ったけど皆で来て大丈夫だったかな。他の人探さないで」

「いやまあいいだろ。とりあえずこいつ捕まえとかないと」

男が来た方向から、中チームの4人が来た。

中終わったのか?いやまあ助かる。

師匠ならこの件の打開策出してきそう。いつも敵が使う色々なギミックを作戦で打開しているもん。

「何かあったの?」

「中でこいつを見つけて今追いかけてきたってとこだ。もう逃げられないぞ。こんな人数がこちらにはいる」

2対8、普通に考えて圧倒的有利

だけれど、でも色々と事故ってる。4人いれば普通のやつなら手こずらないはずなのにめちゃくちゃ手こずってる。

「もちろん逃げないよ。皆殺らないと昇進できないもん」

「お前が裏切らなくて本当に良かったよ。っと、話してる途中に攻撃してくるなよ」

「戻ってるのか。痛がってない。なんかまたあの状況にしないと終わらないなこれ」

やっぱりそうなるか……薄々そうなんじゃないかとは思ってた。

「また何か変なものを使ってくるのか?」

「はい。実はこいつ全然攻撃しても全くくらう素振りをみせn…っ……」

話してる最中に攻撃された。盾を構えてなかった。敵を目の前にして油断したなぁ。

「流石にやられたらやり返すよ。どんどん苦しんでいけよ。4人増えたって変わらないさ。むしろ殺れる人が増えて……これ、もしかしたら幹部クラスまで昇進できるんじゃあないか?幹部が手こずってる異少課を8人も消したなんて最高だろ」

「で、こいつは攻撃してもなんかまともにくらってるように見えなくて、でもそこそこ前からついさっきまで普通に攻撃が入って、でも今はまた戻ったってことです」

今度は盾を構えながら。同じ轍は踏まない。

考えるとやっぱり今来た男がヒント握ってそう。あ、そこそこ分かったかも

無敵な技……ってことだろうか。さっきくらったのは中チームに見つかって逃げてて力を使えなかったからだろうから。

……だとしてどうしよう。無敵なんか使われたら詰む気が……

「色々な技使えばいけないかな。ダメージを与えられなくても動かなくさせれば捕まえることできるから」

「これで、いけないか」

平良君が今言った言葉を参考にして、師匠がいつもの電磁の技を使っていた。動けなくさせようと。


「っ……なんだ……これ」

「足が……痺れてるな。あのアイツがやってるんだろうな。そいつからまずは殺るとしよう」

「なるほど。足が動かせないったって、手は動かせるんだな。」

足の動きは何とか止めれてそう。だけどでも手が止めれてないならあんまりかも……。

今までもあんまり動いてなかったから。

「うん!?ギッ……ガハッ……」

「最大火力出そう。ここにいるので全員だろうさ。こいつらさえ倒せば終わりなんだ。チキるんじゃないぞ」

これはきつい。さっきまでもまだ最大の本気じゃなかったってことか。これ防ぐのはきついぞ

より威力が高く、より多く攻撃をしてこられる。全然守れてない。

「ようやく明けた……今日のは……1人の回復とダメージを変換する……。また使いづらそうなやつかよ。いやそこそこ使えそうか。めちゃくちゃダメージくらったらそいつに使うなこれを」

「不触で何かできそうだけどな……今回のようなやつだとこれがあんまり生かすのがな……」

「ダメージを食らっても徐々に回復するから!でも……時間がかかっちゃう……」

「これ以上電磁使っても無駄かもな。でも何か動きそうだけど……」

中チームもそれぞれ自分の力を使って色々としているけど、中々に打開策が生まれてくれない。

「とりあえずお前からだな!」

「ふざけたこと抜かそうというのなら本当に苦しむのだぞ?どうせ死ぬのなら楽に死ねたほうがいいだろう?」

「この量は……きつい……盾の後ろから離れるなよ」

「は、はい。この力付けておきますね。これで」

敵は1人ずつ一転撃破作戦に転じたのか、色々な方向へと撃っていたその技を一点に集中させて使ってくる。

狙われている陸だったかのためにも、盾で防げるものは防いでいるけれど……これが防げるのも限界はあるな……

「治癒の力は皆に使ってるから。」

「でも、この強さだと焼け石に水、暖簾に腕押しか?何かできないか本当に!」


でも何でかちょっと疑問。さっきの話からして師匠を最初に襲うかと思ってたけど……

その理由に勝つヒントがありそうだな

「武器の力……さっきの声だと聞こえててもおかしくないんだよね。この力を恐れてる?」

回復とダメージを反転。確かにこれがあれば1人をどうダメージを与えても倒せなくなるから?

いや、なんか違いそう……

ハッ…!もしかして……


負けイベントのようなからくりだって口を滑らしてた。負けイベントのからくりは敵からの攻撃を全て無効化させるだとか一定ターンで強制的に終了させるだとか体力が∞だとかあるけど、HPの自動回復がその一種。

もう一人の奴が常に回復をさせてたなら、受けた傷も痛みもすぐに癒えて、それを感じずに戦い続けられる。

「その反転するその能力、あいつに使って」

「ん?あぁ、そういう」

小声で伝える。さっき集中的に狙ったのも、これが使われるとその回復作戦がおじゃんになってしまうから。HPがずっと回復するのなら、それをダメージに変換させてみる。

「うっ……ぐっ……おい。何だ急に」

「おいどうした!」

効いてる!予想が当たったんだ!

「何かわからないけど、今がチャンスだな」

「今の間に倒して見せる!」

「頑張っちゃうよー!」

「いや待てよ。なるほどそういうことか。トリックがわかった上でそのトリックを反転させると。お前に言ってるんだよそこのやつ。」

「まあな。回復させる力を使ってずっと回復させてたってわけだろ。この反転させる力があれば、お前のそのトリックも使えない。どのみちお前らの負けだ」

流石に気づくよね。でも気づいて回復を止めたとしても、もう回復させることができないのなら、あとは俺たちが攻撃して倒すだけ。

勝ちを確信した

「まだ終わらんさ。立て、早く倒せ。」

「なんの!」

新が剣で、凪が光線で、他の人も各々の攻撃手段で一斉に狙う。最後の大仕上げといったところ。

だけれど、どんなに攻撃しても一向に痛むようには見えなかった。

「まだかよ……これで回復はできないんだろ?」

「回復はできない……あ、でもダメージも反転ならどうやっても倒せないかも……」

「ようやく分かったか。倒せないんだよお前らじゃ。どんな技を使ってもな」

そうだそうだ。ダメージを反転してしまうんだ。どうする?いい作戦だと思ったのに……

「師匠、なんかいい方法ありません?」

「えっ?えっと……」

自分じゃこれ以上思いつかない。師匠にやっぱり投げよう。打開策を考えるのは役目じゃないんだ。

「大丈夫。ならこうするだけ。攻撃の瞬間一瞬だけ力を切って、また使ってってやる。だから皆行って」

あぁなるほど、そうすればいける。ダメージは反転されず、回復は反転される。

「オッケー!」

「わかったぞ。頼むぞ。」

「皆頑張って。後ろから見てる。」

さっきのような感じをもう一度出して、皆でもう一度攻撃をする。一人が反転を操ってダメージを与えていく。

「まだやられてたまるか!」

「もう見切ったからその攻撃も」

悪あがきに闇の攻撃をしてきたけど、そんなもの盾で防いで見せる。

「ぐっ……っ……」

「この回復があるのに……」

今度こそ、いけt

ドカーン!

「えっ?何?」

「爆発?誰かやった?」

「あ、あそこ!あそこが燃えてる!」

今敵の後ろにあるこの建物。それがさっきの爆発のせいか、燃えていた。火が少しずつ燃え広がっていた。


「お、おいどういうことだよ聞いてねぇぞこんなの」

「いやでも好都合だ。今の間に逃げるぞ。流石に諦める。もう無理だ」

「誰が逃がすと?」

「吹き飛ばしちゃうから」

爆発の方にほぼ全員が気を取られていたが、そのスキを見て逃げ出そうとするのを凪と平良君は気がついていた。

「もうこれで動けないだろ」

「手錠かけちゃわないとね。うんしょっと。これでよし」

貰っていた手錠でとりあえずこの2人は拘束する。たとえ目が覚めて動けるようになっても、武器は奪っておいたから抵抗できない。

「そんなことより、これどうする?」

火は建物を少しずつ焼いていく

「俺下の人達に終わったこと伝えてくる。ついでに消防呼んでくる」

「そうだ、僕の風で消してみるよ」

「ダメ、平良君。蝋燭とかなら風で燃えるものを吹き飛ばして消せるけど、こんなガッチリとした建物に風を送っても意味ない。むしろ酸素が送られて火が燃え広がってしまう」

「少し離れようよ。危ないから。皆消せないならここにいても意味ないよ」

「あれ?人数が足りない……翔とかどこ?」


「そうだ凪、凪ので消せるよね」

「そうそう!海のときにやったやつ。今できる?」

「できるな。だけれど翔、やるからその盾で俺を隠してくれ。魔族だとバレないためにも」

凪は自分が魔族だとはあんまりバラしたくないよう。バレてしまったらちょっと変わってしまいそうで。魔族を退治するのが仕事の異少課にそんなのがいると知られたくなくて

「水の精霊よ、我に力を授け、我にその集いを授け給え」

凪が魔法で大きな水の球を作り出し、それを建物へとぶつけた。

「え?何?」

「雨?熱っ」

「あ、火が……消えてく」

「さっきから何が起きてるんだ?」

大きな水は建物の壁を覆い、ついていた火を消していった。

「分からないけど、火事は収まったってこと?」

「一体誰が?ここにいないあの3人か?」


「あ、いたいた。皆なんでここに?」

「うわっ!?ってホクか」

「あぁ……もしかして魔法使ってさっきの消したってこと?お疲れ様です」

ホクは凪が魔族だと知っている。そもそもホク自身も魔族だ。魔法のことも知っている。

「いやでも、無事に火が消えてよかっt」

「待って!火がまだついてる!」

「え?本当だ。どうしよう?」

「とりあえず何もできない人は退避しよう。日向が消防呼んでるから」

火は消えたはずだったのに、今見たらまた建物に火がついていた。

消えてなかったとでも言うのか?建物の中までは水が行かなかったとか。

「凪もう一度さっきのは?」

「魔法を2度すぐ使うなんて余程の熟練者でも無理。それほど魔法は身体への影響が凄まじいんだから」

「凪を俺が背負うから、一旦俺達も逃げないと」

「分かりました師匠」

「資料とかも燃えるのかな。魔族に関する研究資料があるかもと思ってたというのに……」


「建物は全焼してた。資料とかもまぁ燃えてて、元々の魔族の事件の方向へとに関してはその場所からはなんの手がかりも得られなかったと。何かの研究施設だろうってことはわかったみたいだが」

建物が燃えてしまった後日、異少課にて先日の事件の顛末を石山さんから聞いている。

あの後全員で山を降りて、これ以上俺達にはどうすることもないと帰ることとなった。

「あの2人は何か言ってなかったのか?」

「そっちは少し。あの2人がアンダス団という組織に入っていること。あの研究施設では魔族に関する研究が進められていたことなど。とはいったものの、組織の末端でその組織に関することは何も分からないの一点張りだったらしいぞ」

アンダス団。やっぱりか。

「打つ手なしという?」

「残念ながらそうなるな。これ以上の手がかりは本件から手に入れるのは期待薄だろうと」

建物さえ燃えてなければ、その組織のことを芋づる式に分かるかとも思ったのに。

「先輩達そんなことがあったんですか?」

「帰ったあと石山さんに聞いたら重要な任務中だって言ってたけど、そういう」

「そうだ私達もパーティーしてたら襲われて武器を奪われたけれど、それもアンダス団が関わってるのかも?」

「その件については静岡の警察が調査中とのことだ」

「はーい」

「そういえば何で火なんかついたんだろう」

それは俺も気にはなっていた。爆発の音がして出火……

「出火原因は今のところ不明のようだな。最初にお前らが火を見たあの場所が出火箇所だと断定していたらしいがな。あと爆発の音の原因も不明らしい」

「出火箇所が分かるなら出火原因分かるんじゃ……」

「出火箇所に出火しそうなものがないんだよ。自然発火なんてする温度じゃなかったし。ってことで武器後から使ったんだろうと読んでる」

「だとしてもなぁ……それでも全然犯人も何もわからないな……」


「はぁ……何とか証拠隠滅できたみたいだな。」

「俺がやったこともバレてない。一度火を消されたが、二度は消せなかったようだぞ。」

「でも、2人が異少課の手に捕まったんだってぇ?」

「まぁ大丈夫だ。イライラするがな……。末端のやつだし放っておいて大丈夫だろ」

「それよりぃ?情報を手に入れて異少課を大量に殺そうとしていたのにぃ?失敗したんだってぇ?」

「あれはどうしようもなかったんだよ。減給やら始末書やら……イライラする……」

「とりあえず今日はここまでとする」

「「「アンダス団に栄光あれ」」」

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