第12章 行楽地での警察業!

秋の寒さが身に沁みてくるそんなある日

愛香は中学校にいた。今は昼休み中である

意味もなくいつもは行かない階段を降りていた。

階段を降りていると、壁に貼られていたチラシに目が行った

「キャンプか…皆で行きたいな…」

壁にはキャンプのチラシが貼られていた。元々山育ちの愛香は、山が好きで、キャンプとかそういうのが大好きなのである


放課後、親友の千洋ちゃんと結ちゃんと3人で集まった。みんな部活動があるけど、行く前に少しだけ話すのが日課なのである。

「皆で私キャンプ行ってみたいな」

「行きたい!楽しそう!」

「ええ、私もそういうところで楽しんでみたいと思います」

二人共乗り気

「いつか行きたいなっと思ってさ。このメンバーであんまり遊びに行ったことないじゃん」

「私はいつでも行けるよ!」

「私今週は土日両方とも用事で行けないので、来週からなら助かります」

「分かった。伯母さんに相談してくるね」

この後別れた。部活動に行って異少課に行って、その後家へと帰った


「伯母さん。キャンプ行きたい」

「いいわよ。いつがいい?」

「それで、友達二人と一緒に行きたいんだけど、いい?」

「もちろん。愛香の頼みなんだし、断るわけないよ」

伯母さんが優しくてよかった


「空気が美味しいー」

「そんなに叫ぶほど美味しいですか?普通な気がしますが」

「いいじゃんいいじゃん。」

というわけで伯母さんと友達でキャンプに来ています。

10日前に伯母さんとどこのキャンプに行くのかを決め、それを皆に伝えてそれで皆良かったので今来ています。

ちなみに場所は石川県の山。ここ穴場らしいです。

伯母さんの車でここまで来たけど、瞬間移動使わずに他県に来たのは久しぶりかも。今回は流石に二人がいるから瞬間移動は無理だしね。

なお異少課は休み取ってます。


「着いた〜」

川の近く。ここが今回のキャンプ地点。

「いい場所ですね。」

「うんうん。」

「じゃあ私はキャンプの準備しているからね。3人で遊んできなさい。」

伯母さんがキャンプの準備してくれるらしい。伯母さんありがとう

「河原だし川遊びがいいかな。長ズボンは邪魔だし脱ごっと」

「ちょっとちょっと、何してるの!」

「やめてください。」

「えー?どうした?」

結ちゃんが女子しかいないとはいえこの中でズボンを脱いでパンツだけになった。

結ちゃん…

「大丈夫だって、半ズボンもあるから」

「そういう問題じゃないんですよ」

千洋ちゃんがきつく灸をすえていた

ちなみに千洋ちゃんと私は長袖ズボンの裾を曲げる程度だった


「冷たっ」

11月ともなるとより水が冷たい。

「あ、魚さんだ〜」

「え、見てみたい。」

結ちゃんと一緒にお魚さんを見つけに行った

「全く二人共…いいけどね」

はしゃぐ二人をよそに、千洋ちゃんは下に気をつけて川の中を歩いた

「うわぁー…」

魚が川の中で泳いでいるのを見ていた。ピチピチしていて可愛い。

「あ、あそこにも…うわっ」

「結ちゃん!」

「大丈夫?怪我してない?」

結ちゃんが川の中を走っていると石に躓いたのかこけてしまった。派手にこけて、膝を擦りむいてしまっている

「イテテ…平気平気。」

「擦りむいちゃってるじゃない。絆創膏取ってくるから、大人しく待ってなさい」

千洋ちゃんは絆創膏を取りにキャンプ地点へと戻っていった

「ねえ愛香、前から思ってたけど、千洋って本当にお淑やかだよね〜それでいて面倒見が良くて優しい。フフッ。私とは反対だ。すごいよ」

結ちゃんは天真爛漫タイプで千洋ちゃんはお淑やかタイプ。正反対だね。私はその中間ぐらいかな。どっちでもあるしどっちでもない。

「ほら、絆創膏取ってきたわ。つけてあげる。」

千洋ちゃんが絆創膏を手に戻ってきて、擦りむいたところに絆創膏を貼り付けた。

「ありがとう千洋」

「どういたしまして。」


「あら、大丈夫?」

川からキャンプ地へと戻ると、伯母さんがキャンプの準備を終わらしていた

「大丈夫です。ちょっとこけて擦りむいちゃっただけなんで」

「そうなの。でも無理はしないでね」

日がもう少しで暮れそうになっていたので、その後キャンプの醍醐味とも言えるらしい(ネット情報)BBQをやった。

「美味しいですね。」

「うんうん。やっぱり親友と食べる飯は美味い!あとBBQ効果もあってもっと美味い!」

「BBQ効果って何なの?」

私はその言葉を知らないから質問してみた

「こういう自然のところで食べると家で食べるより美味しく感じるという効果のことを結語録ではそういうの。」

結語録って、結ちゃんだけの言葉って意味かな

「まあわからなくもないわね。」

BBQが終わると、夜は暗くて危ないのでテントに寝転がった。2つのテントが用意されていて、伯母さんは2-2で寝ようと提案してきたけども、結ちゃんが3人で寝たいというので伯母さん1人と私達3人で分けることとなった。


「ねぇ、もう寝た?」

「そもそも二人共まだ横たわってすらないんですから寝てるわけないじゃないですか。」

私も千洋ちゃんも今は座っていた。

私はスマホを弄っていた。使いすぎには注意しないと。家帰るまで充電できないから

それに対し千洋ちゃんは寝る準備をしていた

「じゃあ、私はもう寝るわ。おやすみ。」

「もう寝るの?」

「…zzz」

結ちゃんが質問したけど、それに千洋ちゃんは答えず端の方で眠った。

「寝ちゃったか。起きてたら何か話ししようと思ってたけど。起こさないように、愛香、私達も寝よ」

「うん。そうだね」

スマホの電源を落として持ってきたリュックサックに入れた。

「おやすみ」

小声で言った


深夜2時

「…何かしら、敵意を感じるわね。あの子達を起こさないようにさっさと始末しないと」

愛香の伯母の加奈子は、寝ている最中に何か嫌な気を感じて起きた。加奈子も愛香と同じ村出身なので、元忍者。敵意の感知ぐらいお手の物なのである

「あーね。なんだ普通の獣か。でも私達に喧嘩売るなら、容赦はしないよ。」

近くの森から獣達が獲物を狙ってキャンプ地の近くへと来ていた。獲物とは勿論愛香達である。

加奈子は一応こんなこともあるかと持ってきていたくないを手に取った。このくないはただのくないである。武器の力などが付いているわけではない。

でも、加奈子はくないを用いて近くの獣を倒していた。忍者らしく、戦闘には慣れていたようだ。


「はぁ…これで全部かな。ずいぶん遠くまで来ちゃったな」

狙っていた獣を倒しに深追いしていると、いつの間にか森の深くまで入っていた

「道覚えといて良かった」

ちゃんと来た道を覚えていたので特に困らなかった


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

「何?地震?くっ…」

地面が揺れていて大きな音を立てていた。確実に地震が起きていた。

近くの獣も逃げ出していた。

この場所は震度5弱。激しい揺れが続いた

地面に伏せて頭を手で覆って身を守っている。森の中で木が倒れかねなくて危ないが、揺れで動くのが難しい

「はぁ…止まった。愛香達の様子を見に行かないと。愛香…」

愛香達を心配しながらキャンプ地へと走って戻った。


「くそっ。これは不味いな」

戻ってくると、最悪な状況になっていた

地震なんて操作できるものではないが、自分だけ助かってしまったことに不甲斐なさを感じていた

目の前の川が氾濫していて、テントごと流されていた。

愛香達を探しても見つからなかった

「愛香、待ってろよ。私が必ず見つけてやる。」

自分へと言い聞かせ、川の流れる方向に探しに行った。


一方夜の愛香達は

「チャランチャランチャラン 地震です。チャランチャランチャラン…」

「え?何?」

スマホの緊急地震速報に愛香は目が覚めた。しかし目が覚めたが、この音を愛香が初めて聞いたのでテンパってしまった。他二人も起きたが愛香がテンパっていて何が起きたのか理解していなかった。

そしてこれまた運の悪いことに、震源が石川県沖だったこともあり、すぐに本震が来た

「うわぁぁぁ!」

強い揺れに驚きの声を出していた。

地震は何とか収まった。幸い誰も怪我せずにすんだ。

「地震ですよね?しかも結構大きい」

「怖いよこんなの」

「とりあえず伯母さん呼んできます。」

愛香は伯母さんを探しにもう一つのテントに行った

「待って、何で伯母さんなんでいないの?」

伯母さんがテントにいなかった。テントにいなかったのは獣討伐のためだが、そのことを伝えていなかったため愛香はテンパった。

「大丈夫?私も探すから」

様子を見に二人も出てきて、伯母さんがいないことを知った。

3人は近くで伯母さんを探しに行った。


その頃、近くの川の上流では、川は途中で2つに別れていたのだが、自身の影響で土砂崩れが起き、近くの川とは違う川が完全に閉じられた。

そのため、川の水の量が異常に多くなっていた。

そして、それだけの量が流れて何も起きないわけがなく…

「こっちにもいませんね。うん?あれは!」

川の近くを探していた千洋ちゃんが川が氾濫していることに気がついた

「みんな!」

それを伝えようとしたが、この近くの川が先に氾濫し、近くにいた3人はなす術なく流されてしまった


「……」

ここ……どこ?

「ぐっ……」

とりあえず立とうとしたが、全身を痛めていた。何とか立ったが、ズキズキと継続的に痛む。

私は泥だらけになっていた。

「そうだ、思い出した。」

昨日の夜、川が氾濫して、それで私達が流されてたんだ。流されている途中に気を失ったので、どうなってしまったのか全く分からない

近くに一緒に倒れていた二人も起きてきた。二人と別れなかったのは良かった。一人だと心細すぎるよ…

二人とも痛みが激しいみたい。立てれそうでは無かった

「私、近くになにかあるか見てくる」

そのことを伝えて、私は近くを探索した


私がいるのは川の近く。運良く流されてここに着いたっぽい。

「せめて人がいるところに行きたい」

麓に連れて行くのが一番だと思う。

川を下るか上るかすれば何とかなりそうではあるが、どちらにしろ無理そう。どちらも道がない。そしてこんな氾濫している川に入るのは危険すぎる

「あ、これ……」

草むらの中にリュックサックを見つけた。重い。

そしてその近くに洞窟があった。流石にこの中を一人で探検するのは…

その後はめぼしいものは特になかった。歩ける範囲が狭くて調べようがなかった。

「あ、二人とも何とかなったんだ。」

「愛香は逆によくあんなに歩けましたね。私ではゆっくりでしか歩けません。」

これは異少課での仕事の成果かな。異少課でよく怪我するし。なんか耐性ついたのかも。

「そうだ、これ見つけてきたんだけど」

「……あ!それ私のです。」

千洋ちゃんのリュックサックだったの。何かこの状況に役に立つもの入ってないかな。

ちなみに私と結ちゃんのリュックサックは見つからなかった。私のリュックサックの中にはあの短剣も入れてあって、それさえあれば富山県まで戻すことが可能なのに。

千洋ちゃんのリュックサックの中には、スマートフォン・ハンカチ・ティッシュ・財布そして水晶玉が入っていた

「いやなんで水晶玉?」

「毎日朝に占いをするので、それが日課となってしまっているのでね」

「てか水晶玉持って山登ってたの!?凄…」

今の状況で一番役に立つのがスマートフォン。泥水で濡れていたが、防水対策をしていたようで、電源が入った

「よっしゃ!」

小さくガッツポーズをした

「電話したいですけど…ここ、圏外ですね」

あぁぁ…

「圏外ですか…」

「ま、仕方ないか。こんなところが圏外じゃないほうがおかしいし。でも、どうする?」


「そうだ。探しているときに洞窟見つけたんだ。もしかしたらそれ通ったらどこかに繋がって、そこから帰れるとかないかな?」

「いやぁ、危なくない?それに、そこ通ったからってこのようなとこだったら意味ないよ。」

結ちゃんに一蹴された。でもよく言われてみればそうだった。ゲームとかならこういう洞窟通ったら次のところに行けること多いけど、ここは現実なんだよね。

「いや、あながち間違いじゃないかもしれませんよ。ほら、これ見てください。」

千洋ちゃんに言われるがまま千洋ちゃんのスマホを見た

スマホにはマップが映っていた。圏外だがマップは使えるみたい。

「これによると、この山の反対側から麓へと行くことができるようです。この洞窟が山の反対側まで続いていれば、帰れるかもしれません。それに、こっちも見てください。」

今度はスクリーンショットを見せてきた。ここの天気が写っている。

「この前天気調べたとき、誤タップでこのスクリーンショット撮ってしまったんです。これによると、今日の夜から大雨がこの近くで降るみたいです。川が氾濫するかもしれないので、ここに留まるのは避けたいです。」

…スマートフォンって偉大だなと、このとき改めて私は気づいた

「そっか。ここにいたほうが安全だと思ってとめてたけど、洞窟入ったほうがいいっぽいね。なら、私も洞窟行くよ。結語録にもこんな言葉があるの。迷ったらトラトラしろって。迷うぐらいならさっさと行動に移せって言葉なんだよ。」

3人の思いは一つとなった。

洞窟を抜け、3人とも無事に生還すると。


「それじゃあ、行こっか」

「待ってください。占いだけさせてくれませんか。」

行こうとしたら、千洋ちゃんに呼び止められた。

「占い?私はいいよ。千洋の占いはよく当たるしね。解決策までは分からなくても、用心するに越したことはないからね。」

「勿論私も。千洋ちゃんの占いによって助けられることもたまにあるしね。」

千洋ちゃんは占いができて、それがよく当たる。事実この前の夢事件に関しても当たっていたわけだし。

水晶玉を使って占いを始めた

「占い終わりました。」

数十秒で占いが終わった。

「ですが、私の占いによると、今日せ何か良くないことが起こります。注意したほうが良いそうです。これをよく覚えていてください。」

「油断すると終わる。そうらしいです」

「油断すると終わる…」

何が起こるかは分からないけど、油断しないように常に注意して行かないと。


ポチャン…ポチャン…

洞窟の中を歩いている。水の落ちる音が滞りなく聞こえる。

洞窟の中は暗い。スマートフォンのライトを使ってなんとか動けている。

最悪なのは、洞窟内で充電が切れてしまうこと。そうなっちゃうと、無闇に動けなくなる。確実に餓えか脱水症状で死ぬ。動いたら動いたで結局事故で死んでしまいそう。

「愛香。そこ段差あるよ。」

「うわっ。ありがとう…」

段差で躓いてこけそうになった。危な……

床には特に注意しないと。スマホのライトだと近くの床は照らせないから。穴があったら大変。


バサバサバサ

「ひゃぁ!」

「うわっ!」

近くで羽ばたく音が聞こえた。よく見ると、コウモリが羽ばたいていた。光に反応して驚いちゃったみたい

「ごめんね。コウモリさん。」

「ハァハァ…ヒャァァァ!虫!虫!」

結ちゃんがコウモリだと知って元の体制へ戻ろうとすると、近くで虫の羽音が聞こえた。

そして千洋ちゃんが確認するためにライトを結ちゃんの方にむけると、結ちゃんの手首に虫が乗っていた

「虫さん。驚かしてごめんね。わざとじゃないから」

なんとか結ちゃんは元の体制に戻った。なお千洋ちゃんは虫のとき少しだけ驚いていた

「結ちゃんって虫苦手?」

「うん。逆に愛香は平気そうだよね。虫にすらなんか声をかけていたし」

「虫さんだって命あるしね。虫だからって悪さしてないのに潰す人もいるけど、私は潰さずにそっとしてるの。悪さしてきたら倒しちゃうけどね。夏の蚊とかは」

虫が苦手な人って多いよね。なんでなんだろう。

私は山奥の村育ちだから虫と幼い頃から触れ合って生きてきたけど、こっちの方は虫があんまりいないから、その分虫に慣れて無い人が多いのかな

「愛香って優しすぎますよ。そこがいいところでもあり、悪いところでもあります。」


「ねぇ、なんか聞こえない?ガツンガツンって」

足音や水の音とは違う。少なくとも自然の音ではないような音

ガツンガツンと何かがぶつかる音。

「え?そう?」

「すみません。私にも聞こえません。」

「え?それって幽霊!?私は何も聞こえない何も聞こえない何も聞こえない!」

「落ち着いて落ち着いて」

「結。二人して落ち着かせましょう。動かないようにおさえておいてください。」


「はぁ…はぁ…」

「大丈夫ですか?愛香?」

「うん。落ち着いた」

本当に虫とか獣とかそういうのはいいの。でも幽霊に関しては無理

実体の無いのに動くなんて不気味でしょうがない。そう思ってしまう

「愛香も女の子らしいところあるんだね。いやちょっと悪いけど、なんか愛香って私達とは全然違う価値観を持ってたり、まぁともかく普通の人とは住む次元が違っているように感じてたから、なんか嬉しい」

住む次元が違うっていうのは合ってるんだよね。普通の人は瞬間移動して戦闘をすることなんてしないんだし、魔族と戦ったりもしない。それに、忍者の村から逃げた過去を持ってはいない。

「私も他の人とは違う自覚ありますけどね。愛香だけってことは思ってたより私は普通の人なんですね。」

「いやぁー、本当のことを言うと千洋も変わってるなと思ってたよ。なんか誰に対しても丁寧語で話すしさ。目上だけじゃな私達にも。まあ、そっちよりは占いできてすごいって思ってたから」

結ちゃんの笑顔に千洋ちゃんも私も笑顔になった。こんな状況でも笑顔に刺してくれるって、結ちゃんも凄いよ。


それから暫く歩くと分かれ道に着いた

道が右と左に分かれている。

「どっちにする?」

ライトで照らしてみたけど、どちらも突き当りは見えない。

といっても、暗くて見えないだけなんだけど

「じゃあ左がいいと思うよ。NK理論で」

「そのNK理論とはまた結語録の言葉ですか?」

「正解!よく分かったね」

「まあそんなことはいいとして、本当にいいんですか?」

ここで間違えたら危険な目に合うかもしれないから

でも、私はそれでいいと思う

「いいんじゃない。どうせこれ運だし。」

そう。右も左もどっちを選んでも当たる確率は同じ、それならどっち選んでもいいと思う

「大丈夫。これで間違ってたら私のせいだからさ。まあ、二人を危険な目には合わせるわけないって」

「なんでフラグを立てるんですか?まあでもそうですね。じゃあ、左に行きましょう。」

分かれ道を左に進み、そのまま真っすぐ行った。

「光だ!出口だよ!」

曲がり角を曲がると、奥から光が漏れ出ていた。これは出口だ。結構すんなり行けて良かった。

「私走ってあそこまで行くね!」

「あ、ちょっと。危険ですよ!」

千洋ちゃんの静止も聞かず、結ちゃんは出口へと走っていった


「うわぁっ!!」

走っていった結ちゃんが一瞬にして視界から消えた

「結ちゃん!大丈夫?」

千洋ちゃんと急いで結ちゃんが消えた場所まで行った。

結ちゃんは暗くてよく見えなかったけど、下に消えたように見えた。このことから考えると、結ちゃんは穴に落ちてしまったのだと思う。

落ちてしまったのだし、もう手遅れかもしれない。でも、それでも速く走らないと。一秒でも早くその場につけなければ消えてしまうかもしれない命なのだから

「結!」

千洋ちゃんと消えた現場まで来た

「痛ててて…」

「はあ、良かったですこれぐらい穴で。でも今回たまたま運がよかったから少し痛めたぐらいで済んだものの、死んでてもおかしくないんですよ!」

「ご、ごめん…」

結ちゃんは確かに穴に落ちていた。だが、運のいいことに穴の高さが2メートル程度だったのと、落ちたときに受け身を取ったらしく、少し体を痛める程度で済んだそうだ。

痛めたのに良かったなんて言っちゃだめな気もするけど、生きてて良かった。

「もう!結はいつも…」

「千洋。なんか怒ってる。怖い」

千洋ちゃんは性格的に滅多に怒らない。怒りの沸点が高い。千洋ちゃんがここまで怒ってるのは初めて見た。

でも、それほど千洋ちゃんが結ちゃんのことを想ってるからだよね。


「よいしょっと」

なんとか落ちた結ちゃんを救助して、落ちてない端を通って光が差し込んでいる場所へと行った

「出口だ!だ?」

光は確かに日光だった。つまり、ここは本当に外だった。

だけれど、目の前に川が見える。そしてその奥には山が見える。

付近からは断崖絶壁で出ることができない場所だった。

「これって行く予定だった場所?」

「いいえ、予定の場所に川はありません。多分、この川はさっきの川と同じ川かと」

「え?それって元に戻ったってこと?いつの間に?」

でも若干風景が違っていた

「それはないでしょう。私達は一度もUターンしてないです。入口一個だったので、どうやっても行くことはできません。多分似てるだけの場所なんでしょう」

「そう…なら、あそこまで戻ろう。あの曲がり角まで。それで行ってないほう進もう。それでいい?」

「いいよ。」

私は首を縦に振った。

「あれ?これ?」

戻ろうもすると、この場で千洋ちゃんがなにかを見つけたようだ。


「千洋ちゃん。何かあっ…あ、これは!」

千洋ちゃんが何かを見つけたようなのでその場所へと行くと、そこには私のリュックサックがあった

「そうなんだ。ここまで流れてきたみたいだな。良かったじゃ…」

うん。良かった…いや、中を見ないことには良かったと言い切れないのか

「リュックサックの中身大丈夫?」

「ちょっと見てみる。あ、悪いけど見ないで。ちょっと見せれないものがあるから」

見せれないものとは短剣のことである。もしものことも考えて短剣はリュックサックに入れて持ってきていたのだけれど、これを見られるわけにはいかない。

「よし、中全部あるね。」

「結……」

千洋ちゃん達何か話してる。何かは分からないけど。そんなことは気にせず短剣を念の為いつもの持ち場(ポケット)に入れた。洞窟内ならいつ獣が襲ってくるかたまったもんじゃない。

というか、これ使えば脱出できるじゃん。異世界の力をバラしてはいけないと言われてたけど、命かかっているから使ったほうがいいよね。瞬間移動すると変に思われるかもだけど、神様が助けてくれたってことにすればいいかな。実際にいつの間にか別の場所にいた神隠しは起きているんだし、それに巻き込まれたことにして。この二人なら信じてくれるよね。

「大丈夫だったよ。何も無くなってなかった。」

「そんなことより結が見つかりません!さっきまでいたというのに。もしかして、一人で洞窟に戻っていったのでしょうか。ああでも結はそんなことするとは思えないし…」

「え!?本当に?」

確かによくあたりを見渡すと、結ちゃんはどこにもいなくなっていた。

いつからいなかったっけ…全く思い出せない。

「どうします?私は洞窟戻りたいです。ライトも持たずに行くとは思えないですけど…そこしかありえませんし…結大丈夫ですよね…」

「うん。結ちゃんのことだから大丈夫と信じてる。千洋ちゃん。早く行こっ」

リュックサックを背負い、スマホのライトをつけて結ちゃんがいないか探しながらさっきの分かれ道まで戻った。


「これで…普通なら探しに来るよね。」

「久しぶりに楽しめそうだな…ありがとう。大丈夫怯えないで、君自身には用はないから。」


「ここまでの道にはいませんでした。元々通った道を戻ったのか、それともまだ通ってない未知の道を通ったのか、愛香はどっちだと思います?」

さっき通った分かれ道にいる。とりあえずここまでには結ちゃんは見ていない。

結ちゃん…どこに行ったの…

「どっちだろう。」

結ちゃんならどっちに行くか考えてみたけど、結ちゃんならそもそも誰にも言わず単独行動しないから考えても全く役に立たない。

「二人で分かれる?それでどちらも調べるとか。」

「いや、それはちょっと…ここまでは一本道ですけど、この奥がどうなっているのか分からないので、二人で行きたいです。二人で結を見つけて、結を見つけたらちゃんと怒りましょう。ここまで不安にさせた罰です。」

そっか。

千洋ちゃんだけ瞬間移動でどこかに移そうかなとも思ったけど、千洋ちゃんは結ちゃんを自分の手で見つけたがってる。こんな千洋ちゃんを瞬間移動で強制的に安全な場所に送るのもどうかと思ってしまう。


「なら、まずはこっちから探そう。」

道的に一本道の元来た道の方を進むことにした。

「いなかったです…」

「ごめん。」

最初にいた洞窟の始まりの場所まで歩いてきたけど、結ちゃんは見つからなかった。

すぐさま分かれ道まで戻る

「ごめん。私のせいで、探すの遅れちゃって…」

「愛香は本当によく謝りますね。すぐ謝れることは大事ですけど、何にでも謝ればいいってものじゃないですよ。」

私が謝るのは、私が悪いからなんだけど…

「そう…なの?でも私のせいで無駄な時間かけたんだから悪いんじゃ…」

「私のせいでってなんですか。あの状態ではただの運です。それで外したのは愛香のせいなわけないじゃないですか。そもそも、結がいなくならなければ愛香があの選択する必要もなかったんです。あれも結がいなくなったせいです。」

千洋ちゃんは私とは違う考え方を持っていた。でも、納得できる。私もそんな考え方してみようかな

「それでは、こっちに行きましょうか。」

別れ道まで着いた。まだ行ってない方向へ、私達は歩いた

「ガサガサ…」

また音が聞こえる

「動物の音ですかね。こんな状況じゃなければ動物見て癒やされることもできたのに…」

そうだよね。動物だよね。

どう考えても動物の音なのに幽霊とか考えてしまうなんて、私どうかしてるな…

もしかして最初も変な音だと二人が認知していなかったかも。それで幽霊のせいになっちゃったのかも


私達は左の道を進んだ。

「愛香…待ってください…」

それから色々と道を歩いた。2時間近く歩いている気がする。この洞窟広すぎる。

道も入り組んでいて、進むのに時間がかかりすぎた。

地図が本当にほしい。

「あぁ、ごめん。速かった?」

「速いというより…体力が持たないんですよ。愛香は疲れとか感じてないんですか?」

「え、そんなに疲れてないけど」

愛香は元忍者、人より体力がついていたのだ。そのことを自覚していないが。

「愛香凄くないですか。私もまあまあ体力には自信あったんですけど…お願いです。一回休ませてくれません?」

「千洋ちゃんが休みたいのなら休むよ。」

愛香は休む必要などこれっぽっちもないが千洋ちゃんが疲れているのを見て休むことに決めた。


近くにあった岩の上で二人で座っている。

「考えたんですけど、結ってこんな遠くまで一人で行くとは思えません。こんな危ない状態ななおさら。それで、結は無理矢理連れ去られたんじゃないかと。」

「確かに。それならありえない話ではないね。この近くに人がいたのなら。」

こんな洞窟に人がいるとは思えないけど、人がいないと言い切ることはできないからありえない話ではなかった。

「それに、愛香って幽霊の音を聞いたんですよね。もしかしたら、人の音だったんじゃないんですか。」

どのような音だったかは分からないけど。そんな感じだった気がする。足音みたいな音だと。

「ついでに占いしておきましょう。もしかしたら別のことが出てくるかも。」

千洋ちゃんはリュックサックから水晶玉を取り出し、それを使って占いを始めた。

占い終わった。今回は結ちゃんのことについて占ったぽい。

「結は理不尽に安全な場所にいるみたいです」

「どういうこと?」

「さぁ?分かりません。」

占いが外れている可能性も十分にあるけど、当たっていたとしてもよく分からない。

「よし、回復できました。」

休憩が終わり、また進んだ。


「…やばいです。充電が残り少ないです。」

スマホの明かりで何とかやっていたけど、その充電が少なくなっていた。

「大丈夫。私のスマホもあるから。」

「そういえばさっき荷物見つけてましたね。それなら大丈夫そ……」

急に千洋ちゃんが持ってる明かりのスマホが落ちた。しかもそのはずみで電源がオフになったらしく、暗闇に閉ざされた。

「あれ、なんか音した?」

シュンシュンという音が聞こえた気がした。この洞窟何かいそう。

「千洋ちゃん。はい……え?」

なんとか暗闇に慣れて手探りで下に落ちたスマホを拾って返そうとしたが、千洋ちゃんはどこにもいなかった。

「千洋ちゃん!千洋ちゃん!」

スマホの明かりで周りを照らす。だが、四方八方どこにも千洋ちゃんの姿は見えなかった。


「これで準備完了。面倒くさいことになる前に何とかする。そうしないと。」

「それにこんなことされたら普通ならやってくれるはず。楽しみだな」

「……え?あれ?」

結は今まで気絶していたが、ふと目が覚めた。

「ここどこ?誰?私は洞窟から外に出たところにいたよね?」

「ああ、起きちゃったか。悪いけど寝ててね。ちょっと起きてるとやりづらいからね。野次の声はいらない。」

何かふしぎなものをかがされ、結はまた眠った。

「さ、そんなことよりやる準備しないと。」


「千洋ちゃんも…一体どこに行ったんだろう。」

愛香は泣きそうになっていた。一人ぼっちになるのは寂しいのである。

元々故郷から一人で抜けてきた過去を持つ愛香。走って逃げているときは必死で何も考えられなかったけど、街まで逃げ切ったあとは急に寂しくなって泣いていた。始めていくところで一人ぼっちなのは、不安でいっぱいなのだ。

「でも戻ったわけではなさそう。先に進んだっぽい。」

戻る道はぬかるんでいて、普通に進むと足跡がつく。でも行きの足跡しかなかった。

「二人、もしかして魔族関係の被害にあったのかも。絶対に助けてあげる。私は異世界対策少年課の一員。市民の安全を守る警察官なんだから」

自分を鼓舞して、愛香は先に進んでいった


少し進むと開けた場所に出た。この場所は天井のほうから外の光が差し込んでいて、スマホの明かりを付けなくても明るい。

「…待ちくたびれた。ここじゃないと正々堂々じゃないから仕方ないんだけど」

「誰?」

壁の近くに人がいることに気がついた。結ちゃんでも千洋ちゃんでもない。私が知らない男。

「そりゃそうなるよな。ま、ちゃんと説明するか。自分はこの洞窟に住んでいる者…って、こんな説明はいいな。簡単に言うと、君の二人の友達を誘拐した人だ」

…え?

「本当に?」

「本当だ。第一、犯人じゃなけりゃ誘拐されたこと知らんだろ。」

「なんで二人をさらったの。二人は大丈夫なの!?」

「お、いいねいいね。二人は大丈夫だよ。ちょっと眠ってるけど。攫った理由はいいでしょ。さあ、戦おうではないか。戦って勝ったら返してやる。」

急すぎる。

戦って勝てば返してくれると。攫った理由も全く分からない。

でも戦うしかないよね。一人だけで戦うのは久しぶりだけど、大丈夫かな。


私は背負っていたリュックサックを近くに置いた。

そして、リュックサックから短剣を取り出した。

「いいもんだ。戦いがいがありそう。自分の目に狂いはなかった。」

この人の考えていることが何にもわからない。

「自分は準備できてるよ。自分は武器と言える武器なんて使わない。それが自分の戦闘スタイルだ。だから、もう準備はできている。かかってきな。」

なんにも持たず、手をグーにしていた。


瞬間移動を使って相手の近くに入る。そして攻撃を入れた。

「楽しい楽しい。能力も一流だ。」

攻撃を入れられたのに笑っていた。怖い

「さあ、受けたいんじゃないんだって。こっちも行くよ。」

攻撃を入れて向きを変えようとしていると、背中を殴られた

「痛っ!」

相手の武器は己の拳。その手で殴ることで戦うスタイルだった

「くそっ…」

「一発くらったけど平気そうだな。いやー一発で戦闘不能になるようなやつだとせっかくの強さが無駄だからな。女子なのに凄い体力だな。」


「つ、強い…」

戦い始めて数分が経過、勝負はややこちらが不利。

瞬間移動で攻撃を与えれるけど、それに対するカウンターを避けることができない。

これだけ聞くと一回攻撃したら一回攻撃されるだけだから互角のように聞こえるけど、実際には相手の攻撃のほうが強いから、全然互角なんかじゃない。

そして攻撃をくらえば当たり前だけど動きは鈍くなる。逃げられるかも分からない。

「やっぱり思ったけど、その短剣。元の世界のだ。」

…元の世界?

「あなたも突然異世界からこっちの世界に来たんですか?」

「お、異世界あることも知ってるのか。そうだな。」

やっぱりそうだったのか。そんな気がしてた。

だが、それが分かったところで何も状況は変わらない。

武器使ってないのにあれだけは強いって…

盾が欲しい。私の短剣は相性悪いわけではないけど良くもない。


「来ないのかい?ならこっちから行くよ!」

少し休憩して体力を回復していたが、相手は待ってはくれない。

「くっ。」

瞬間移動を使ってなんとか逃げている。でも今短時間でかなり多く瞬間移動をしている。

いつもら気にしてなかったけど、これだけ使うとSP切れでいつ瞬間移動が使えなくなってもおかしくない。

そろそろ攻めに転じないとな…

「目くらましか。いいよいいよ。楽しい楽しい。」

近くにあった石ころを瞬間移動で相手の顔の近くに移動させる。それに突進してぶつけているけど、大したダメージにはなってなさそう。ピンピンしている。なお目くらまし的な意図はないけど勝手に勘違いされていた

「瞬間移動が使えるのが相手と決定的に違うこと。それで何とか…」

考えているが全く打開策は出てこなかった。

逃げているせいで、全く頭が回らなかった。

「カウンターをくらわないようにすればなんとかなるんだよ。」

もう一回瞬間移動で攻撃して、すぐ瞬間移動を使うことで逃げられないか試してみたけど、逃げる前に攻撃されてしまう。

後ろからやってるのにすぐ振り向かれた。なんであんなに速くできるの…

もしかして、攻撃されたら後ろに振り向くんじゃ…

たまたま後ろから攻撃を続けていたからそれをくらっただけなんじゃないかという仮説を思いついた

「それなら、横から」

相手の真後ろではなく、右横から攻めてみた。

「お、いつもと違う場所からか。」

結論だけ言うと、仮説は間違っていた。横からでもすぐに攻撃された。

気配的な何かを読み取っているのだろうか。


「ま、どっちが先に倒れようが、実はあんまり関係ないんだけどね。」

「何か言いました?」

「別にー」

まあそんなことはいいとしても、まともに勝てそうにない。

瞬間移動が相手自身に使えれば最強だけど、瞬間移動敵対している人には使えないからな……

なんでなんだろう。

「うわっ!危な…」

考え事をしているといつの間にか相手が攻撃してきた。間一髪瞬間移動使ってなんとか助かった…

「…手さえ動きにくくすればこっちの勝ちだ。」

瞬間移動で避けるとふと気がついた。相手は拳で攻撃してくる。その手を攻撃すれば痛みで攻撃出来なくなるんじゃないか

「さあさあさあ!」

それから何度も相手の手を狙ってるけど、全くと言っていいほど当たらない。

相手がこっちに向かって突撃してくるんだもん。瞬間移動しても手という小さなところを狙うのがむずかしすぎる。

横からだと攻撃したときには少し前に進んでいる。かと言って後ろからはもちろん無理だし、前からだと突撃してくる相手にぶつかって体制が簡単に崩れてしまう。

一回前に行ったときはまず当たって次に体制崩して地面にぶつけ、最後に相手からの攻撃を受けるという酷すぎるムーブを受けた。

「痛っ…」

色々とあり凄い痛い。動きも完全に鈍い。ここまで追い詰められたのは初めてだ。

「ボロボロだな。もう辞めてもいいんだぞ。」

辞めてもいい?それは私の負けを意味する

そうすると結ちゃんも千洋ちゃんも確実に帰ってこない。

そんなのはだめだ。私がやらなきゃ。絶対に勝てない相手は存在しない。奇跡が起これば、今回の戦いでも勝つことができる。

倒れてなるもんか


「まだ、やってやる。絶対に私は勝つ。そして二人を助ける!」

「お、そうか。ならこっちも遠慮なく楽しませてもらわないとな!」

ちょくちょく言ってる言葉が気になるけど、そんなことは今どうでもいい。

とりあえず瞬間移動で攻撃しに行く。

「あ、当たった!」

今回はさっきまでと違って相手がまだ動けてなかった。瞬間移動できる身として、動けない的を狙うのは簡単だった。

手に短剣で攻撃した。

「今のは結構来たな」

心の中でようやくできたことに喜んでいたが、そもそも大事なことを忘れていた

手を攻撃すれば何とかなるというのは、手を攻撃して相手の攻撃が鈍くなる前提だと

「ぐわっ!」

鈍くはなってなかった。カウンターを決められ、立てなくなった。地面に倒れた。

私の負けだった。そのところで私は気を失った。


目が覚めると、洞窟の天井と同時にさっきまで戦っていた彼の姿が見えた

「よし、目覚めたな。この力意外と使えるんだな…あんまり好きじゃないけど」

「あれ…私…」

そうだ。私は確か戦って倒れて…それからのことは覚えていない

だがそんなことよりも先にするべきことがあった

「くっ!」

私は彼に対して敵意をむき出しにした。さっきまで戦っていたんだ。当たり前

「ちょっと待てって、俺はもう十分満足したから。もう戦わないから。」

「本当ですか?」

「ああ本当だ。そちらが戦いたいのなら戦うけど」

個人的に戦わずになんとかなるのならそうしたい。相手のほうが断然強かったし、戦いで血を流したくない。

「いいえ。戦わなくて済むならそうします。ですが、結ちゃんと千洋ちゃんは返してくださいね」

「二人ならもう少しで起きる。だからそんな心配しなくて大丈夫。それより少し話さないか。ここで暮らしていると誰とも話さないから他人と話したくなるんだよ」

言われるがまま、隣に座ってこの人の話を聞いた


「で、なんで二人を攫ったんですか」

二人が寝ているところに連れて行ってくれるらしいので、行く途中で話している

「いやな、君と戦いたかったんだよ。誰か来たなと思って様子見に行ったら、強者感漂う人がいたから、つい戦ってみたくなっちゃって。それで、君の周りにいた二人を攫えば普通なら戦ってくれるよなって思って。」

洞窟内で聞こえた音は彼の足音やらだったっぽい。

「戦いが好きなんですか?」

「ああ勿論。俺はより強くなりたいんだ。」

分からなくはないけど、やり方はどうかと思う

「ほら、ここだ」

二人が寝ているところに来た。二人はどこも怪我してはいない。本当に二人には手出ししなかったぽい。


二人が起きるまでここで話している

「本当は剣とかそういうやつ使いたいんだけどね。俺はそういう武器がまるっきし全然使えなくてさ。しかも武器適正が回復用の石なんだよ。それで拳を極めてみたってわけだ。」

「回復。私が倒れたあとにしてたのも…」

「ああ。戦った相手を回復させるのが俺流だからな。俺と戦ったことにより将来有望な芽が途絶えるとつまらないだろ。強くなったそいつを倒すことで最強になれるんだ。」

武士の心的なやつかな?


「あの、どうやったらそんなに強くなれるんですか?」

この人は強かった。私もこんなふうになりたい

「やっぱり、修行や鍛錬かな。一部には生まれ持って天才的な力を持っている人もいるけど、それはそれだ。基本敵に鍛錬しなきゃ強くなれないのは当たり前だと思うぞ。あとは…そうだな。敵の情報をよく知るとかか?」

「そうですか…」

敵の情報を知ることはともかく、鍛錬に関しては最近全くできていなかった。外居村にいた頃、そしてこっちに逃げてすぐはちゃんと毎日鍛錬していたけど、最近は全然してなかったな…事情があってできない日ができて、それが増えて、最終的に鍛錬の存在すら忘れてしまってた。

「こんなんじゃだめだな…」

明日から、いや今日帰ってから、鍛錬しよう。


「あ、そういえば、戦ったことを二人には黙っていて欲しいんです。」

というのも、負けたとはいえまあまあちゃんと戦ったことがバレたら最悪この短剣のことがバレてしまいかねない。異世界やら魔族やらのことは基本話してはいけない。そういうことになっている

「いいのか?でもそれなら俺は行かないほうが良さそうだな。というかまず理由があったとはいえ襲った人と一緒にいたくはないだろうし。」

「……」

言い分も分かるけど、やっぱり謝ってほしいような…

私はいいけど、眠らされる被害にあったのは二人だし、二人もなんで眠らされたのか分からないのは怖いと思いそう…

「いや、悪いですが二人に謝ってほしいです。私がいいとはいえ、二人がどう思うのかは分からないんですし、勝手に巻き込んだんですし。自分が眠らしたことだけ伝えてほしいです。」

一人遠くへ行こうとする彼に言った

「……そうだな。まあでも、眠らした理由を正直には話せないな。話すと君が困るんだろ。」

「あ、はい。」

理由が私と戦いたかったからだもんね。

「ま、なんとかするさ。」


「んぁー…」

あ、二人共目が覚めた。

「えーっと…私何してたんだったっけ?」

「確か私は愛香と歩いていて…その後の記憶が全く思い出せません」

二人共眠らされていたことは覚えてないっぽいかな?

「すみません。自分がやりました」

「?」

「えーっと…どちら様ですか?」

これは…結構説明が面倒くさいことになりそう

「自分が二人を勝手に眠らしたんです。すみませんでした」

誤ってくれてはいるんだけど、そもそも二人が被害に気づいてないせいで二人が混乱している。

「あ、思いましました。誰かに眠らされたんです」

「そうそう。なんか眠ってたんだよね。そして目が覚めたと思ったらもう一回寝ちゃったんだった。もしかしてその犯人さん?とりあえず、なんで眠らしたの?」

結ちゃんがいつもより強気だ。被害にあってるから強気なのも仕方ないけど

「…その理由については言えない。致し方ない理由があるんだが、理由に関しては言えない。」

致し方ないのかな?勝手に戦いたいから眠らしたんだよね?もしかしたらそうなのかな

「言えないって何?被害にあってるから、あんまり許せはしないんだけど」

「結ちゃん。許してあげてくれない?」

「愛香が言うなら、許す」

「え?見事なまでの掌返しですね。」

まさか一瞬で許してもらえるとは。

「まあ、私は眠らされただけで特に被害にはあってないので、二人がどうするかに委ねようとしていたので、二人がそうなら私も許しますよ。元から憎しみの感情あんまり抱いて無かったのもありますが。」

千洋ちゃんもそうしてくれた。謝って許してくれるのが一番いいと思う。


「こっちの道を通ったらこの洞窟から出られるぞ。」

「おじさんはここから出ないの?」

「自分はここの中が気に入ってるから、いいんだ。」

結ちゃんが質問してたけど、あの人はここから出ないつもりらしい。人の生き方は人それぞれ。自分でそうしたいと思ってるならそれでいいと思う。

「では、さよならです」

手を振って別れ、洞窟を更に進んだ。


鍛錬…

道を進みながら考えていた

今思ったけど、他の異少課の人達は鍛錬とかしているのかな?鍛錬で思ったけど、やるならみんなで鍛錬したい。

神代先輩から夏に肝試しに行ったら戦闘して、結構負けかねないて戦いになったって聞いた。最近ギリギリ勝ってることが多い気がする。負けないようにするために、全員を強化したほうがよさそう。

できないか頼んでみようかな。


「出口だー!」

「だから走らないでください結!あのときのこと忘れたんですか!」

言われたとおり道沿いに進んでいると、光がまた出てきた。結ちゃんがそこへ走って行って、すかさず千洋ちゃんがその後を追いかけた。私は一人で歩きながら追いかけた。走ろうと思えば走れたけど、今日一日の出来事で疲弊していたので、あんまり走りたく無かった。

私が出口に差し掛かった頃、二人が話していた。

「ほら、だから大丈夫だったじゃん。そんなに怒らないでよ千洋」

「怒るのは当然です!全く…今回は何とかなりましたけど、前は怪我したんですよ!結果が良けりゃいいってもんじゃないんです。危険なことしないでください。」

「ご、ごめん」

すごい既視感ある光景だった。

あのとき結が穴に落ちたときの光景と瓜二つだった。


「ようやく叱られ終わった…」

「結ちゃん…」

今回も結ちゃんの身を案じただけで、千洋ちゃんは悪くないんだよね。結ちゃん。気をつけて行動してよ…私が言えたことかというと微妙だけど

「それはそれとして、ここからどうするんだったっけ?」

「ここから真っ直ぐ進むと山道に当たります。そこから降りれば麓に付くはずです」

千洋ちゃんのいった通りにまっすぐ進んだ


その頃、愛香達がいるところから少し上辺りでは。

「なああそこ、あれ人だよな。助けに行かないと」

「確かにそうですね。あれは獣とは違いそうです。」


私達が歩いているのは獣道ですらないところ、1m進むのも難しいところ。植物が生い茂ってる分、洞窟内よりも格段に進みづらい。

「あっ…」

「どうかしましたか?」

「私、踏んじゃ行けないもの踏んだ気が…」

結ちゃんの方を見ると、大きな獣がいた。結ちゃんが尻尾を踏んでしまっていたみたいだった

「結ちゃん!」

「結!」

種類は分からないけど、安全ではないことは感覚で分かった。結ちゃんが襲われる可能性があると思い、咄嗟に短剣を取り出した

「死ね!」

二人に短剣がバレることをいとわず、短剣で倒そうとしたら、その前に獣が光を出して爆発?した

どこかで見たことあるような感じだった。獣は爆発をくらって倒れていた。生きていそうにもない。

「やはり所詮獣は脆弱だな。まあ、我がそれほど強いという訳でもあるのだが」

「今回はちゃんとしてたよ。でも言うね。面倒くさいからそれ辞めて」

「断る」

聞いたことのある声が聞こえてきた


「丸岡さんに鏡さんにブラッドさん。」

「あれ、君は確か……ああ、思い出した。こんなところで会うとは奇遇だな」

「愛香の知り合い?」

「うん。ちょっとね。」

そう。私達を助けてくれたのはこの前のスポーツ大会で少し知り合った石川県異少課の3人だった

「あ、あのありがとうございます。」

「あなた達が助けてくれたんですか?助けてくれたならありがとうございます。」

「人共からの礼など良い。我は吸血鬼。好き勝手に暴虐を繰り返すまでだ」

「へ?」

相変わらずの変わった話し方……

「ブラッド。それでも凄かったよ。だって俺だったら絶対あんなことできないもん。」

仲良いんだねこの二人。ある意味丸岡さんが可哀想

「てか、ここで遭難したのって波山達だったのか?」

「うん。」

「なら話は簡単だな。誰も怪我してなさそうだし。麓に連れて行くだけで終われる。」


「ところでさっきから気になっていたのですが。あなた達はなんでここにいたんですか?」

山道へと連れて行ってもらっていると、その間に千洋ちゃんが話してきた。

「え…ああたまたま」

「本当ですか?」

私は小声で聞いた

「いや本当はここらへんで土砂崩れが起きたらしいから遭難者の救助の仕事していた。」

まあそんな感じがしてた。異少課の人達は警察で、救助するのかはちょっと気になるけど。まあ警察だから救助に出てるのかも。異少課は並のレスキュー隊より救うの得意そうだし。武器の力のおかげで


「あともう一つ。さっきのなんですあの爆発したやつ。」

まあ普通はそう思うよね。多分あれはブラッドさんの武器の力だと思うけど。でもそう伝えることはできない。どう伝えるんだろう

「はっはっはっ!我の力に目をつけるとはお主も見る目が良い。特別に教えてやる。我が神より授かった天啓的な力。その名も光槍。我の血の破壊力の前に、皆消え失せるのだ。」

大丈夫?一部言ってはいけないこと言ってた気がする。

名前とかもろに言っちゃってるじゃん。

「あ、はい……」

あ、バレてなさそう。良かった。一般人の二人をこっちの戦いに巻き込みかねない。

なおこのとき、千洋は

(あ、この人話通じないタイプの人だ)

と思っていた。正解である。

「かっ、かっこいい!」

結ちゃんはブラッドさんのことをかっこいいと感じたみたいだった。

「ですよね。ブラッドはかっこいいです。」

こっちの二人、結ちゃんと鏡さんも仲良くなっていた。


それから20分ほどかけて、麓へと降りてきた。

「あ~。登ったときもここ見たな。」

「それじゃあ、またな。」

「さらばだ皆の衆。」

「またね。」

石川県異少課の3人はどっかに行ってしまった。多分また遭難者の救助のために動いたんだろうな。3人共仕事熱心に感じた。


それから十数分後

「伯母さん!」

「皆。良かった…生きてて。川に流されたときはどうなるかと思ってたの。」

たまたま降りてきていた伯母さんと会った。意外と早く出会えて良かった…伯母さんがどこにいるのかは分かってなかったから、もう会えないんじゃないかと不安になりながら待っていた。

「ふふっ。愛香の泣き顔。珍しいかも。」

「やっぱり家族って大事だよね。」

私は伯母さんと再開を分かち合っていた。結ちゃん千洋ちゃんはそのとき少し遠くから見守っていた。

「それじゃあ、家に帰ろう。」

「うん!」

私は珍しく心から笑顔になった。

駐車場にある伯母さんの車に全員で乗って、富山県へと帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る