第3章 親善試合でも警察業!

七不思議の件の次の日、手帳を調べていた

手帳はかなりのページがあった

しかし、分かったことはあの男が「イディス」というコードネームで呼ばれていたこと、そして魂の石には凄いエネルギーが秘められていることだった

特にアンダス団に関係する情報がなく、無駄となってしまった

それから数日間、いつものように任務を放課後にする生活に戻った


そんなある日の放課後、中学校のバスケ部の部室にて

「再来週の日曜日はバスケ部の親善試合だ、絶対勝てよ!」

「はい!」

このバスケ部にはこの時期に親善試合を行うという伝統がある

今回は隣の県まで行く、そこでかなりバスケが強いことで有名な中学校のバスケ部と戦う

土曜日に行き、そこで一泊し、日曜日に戦って帰る

これを俺達バスケ部はかなり楽しみにしていた

「それと、俺の子供が‥」

あ、子供自慢が始まった

顧問の先生はとてつもなく親バカなのである

「ちょっと先に失礼しますね‥」

そういってバスケ部全員が抜け出した 

このままだと、数時間子供自慢を聞く羽目になってしまうからだ


その日の警察署にて

「石山さん、再来週の土日に休みください」

石山さんに頼む、任務が入ってしまうと確実に親善試合に参加できない

だから、早めに休みをとっておくのだ

「いいぞ、てかお前も休むのか」

お前も?

「お前もって、他に誰か休むのか?」

気になって聞いてみた

「ああ、波山が土日に用事があって休んだ」

愛香も用事があるのか、まあ俺には関係ない

「俺1人なんですね……。」

お土産でも買ってこよう。


「全員揃ったか?」

顧問の先生が聞く、俺はここにいるバスケ部の人数を数え、

「はい、全員います」

そう伝えた

中学校前に止まっているバスに乗り込む少し前である

このバスで隣の長野県に行き、今日は長野県で観光などをして終わる

明日は親善試合を行い、その後帰る予定だ

「よし、皆乗れ」

バスにバスケ部全員が乗り込んだ、そしてバスは長野県に向けて出発した

俺は長野県での観光で行く場所などをパンフレットを広げて見ていた

「先輩、どこに行きますか?」

隣から話しかけてきたのは繁だ、彼女も同じバスケ部員である


「ここ行こうかなと思っている」

パンフレットの「外村通り」を指差して答えた

「ここには、古い町並みが残されているらしいから」

古い町並みには少し興味がある、そこには様々な店があり、いろいろな店を回るだけでも楽しめるだろう

それに、翔や愛香に渡すお土産となる良いものがたくさんある

「私も、一緒に行ってもいいですか?」

「いいぞ」

特に断る理由もない、一緒に行って駄目なことにはならない

それに、一人で回るより二人で回ったほうが話しながらで楽しそうだ


「そういえば‥」

ふと思い出した、この前の七不思議のことを

繁が大量の魔族を凍らしたこと

普通の人なら無理だ、どういうことなのだろう

「この前学校の異世界で大量の魔族を凍らしたのってどうやったんだ?」

気になって聞いてみることにした、しかし

「‥‥‥zzz」

その本人の繁はすでに寝てしまっていた、バスの中ってなんでこんなに眠ってしまうのだろう

繁が寝てしまった、後ろの方を見渡すと、殆どの人がすでに寝てしまっていた

このまま起きていても何もない、そう思って、このまま眠ってしまうことにした

「起きてください、先輩」

繁の声で目が覚めた、最近夜遅くまで任務をして、睡眠時間が減ってしまうことが多かったからか、よく眠れた気がする

「もう少しで着きますよ」

周りを見渡すと、都会の街から離れ、緑が多い場所だった

もう少しで着くようなので、荷物の準備などをしておいた

時計は11時をさしていた、予定ではあと10分で着くみたいだ


約10分して、旅館に到着した

今回泊まる旅館で、温泉で有名なところだ

男子と女子で泊まる部屋を分かれている、男子の部屋に荷物を置いた

「広いな‥」

泊まる部屋はかなり広い和室の部屋だ、ここに男子8人が泊まる

荷物を置いてから、6時までの約7時間が自由時間である

荷物からパンフレットや財布などの大事な物を持った

「皆はどこ行く?」

残りの7人のメンバーに聞いた、そのうち一人が

「お前はどこに行くん?」

そう聞いてきた

「外町通りに、繁と行こうと思っている」

そう答えた

すると、1人が

「俺達は近くのダム見に行くから、二人で楽しんでこいよ」

といった、他の人達もそれに賛同した

何か企んでいるように見えたが、特に気にしなかった

「じゃあ、また6時に」

そう言って別れた

「これであいつらの恋進むんじゃないか」

「あの二人全く恋が進まなかったからな」

バスケ部の他の男子の会話だ

彼らは繁が新に片思いをしているのを知っていた、それで、密かに二人の恋を応援しているのである

だから、二人っきりになれるよう、そして彼らが行く外町通りが見えるようにダムに行くと言い出したのである

「告白成功しろよ」

繁に向かって心の中で応援していた


旅館から外町通りへはバスに乗って数分の距離だ、旅館から一番近いバス停に向かって歩く

都会とは違うな‥

近くに大きな山があり、道の隣には川が流れている

のどかでいい場所だ

「先輩、待ちましたよ」

バス停に着くと、先に行っていたのか繁がベンチに座っていた

繁とはここで待ち合わせをして、それで一緒に行くつもりだった

「早くない?」

こちらも荷物などを置いただけですぐに来た、それなのに繁が先にいたんだ

「走ってきましたからね」

「あと何分?」

「もうすぐですよ」

言われたとおり、バス停に着いてそんなに待たずにバスは来た


バスの中は空いていた、俺達は乗り場の近くの椅子に座った

降りるバス停は5つ先のバス停なので、少し時間がある

「昼どこで食べる?」

今は11時、もうすぐでお昼時だ、どこで食べるか決めておいたほうがよいだろう

「私は‥」

繁が悩んでいた、俺はどこで食べてもいいので、繁が決めるまで待つことにした

バスが2つ目のバス停に着いてすぐのころ、繁はどこで食べるかを決めた

「こことかどうですか?」

繁はパンフレットに書かれている美味しそうな蕎麦屋を指差した

「じゃあ、そこにしよう」


そのとき、スマホにメールが来た、そのメールを確認する

メールは翔からのものだった


師匠がいませんが、任務を一人でこなしています

師匠の戦いを見たかったですが、その思いを今振り切っています

師匠も親善試合頑張ってください


翔は今一人で任務にあたっている、仕方ないのだが、労うためにお土産を買って帰ろう

そう思った

バスは移動を続け、見える景色はだいぶ和風なものになっていった

「次は、外町通り〜」

アナウンスが聞こえた、停止ボタンを押した

財布からバスの運賃を取り出す

バスは外町通りに着いた、運賃を払って二人は降りた


「ここが、外町通り‥」

「凄い和風の町並みという感じですね‥」

外町通りはパンフレットにも書いてあったが、江戸時代から続く町並みで、和風の建物が数多く残っている

まるで、江戸時代にタイムスリップしたかのようだ

バスの時間を確認した、6時間程がタイムリミットらしい

急ぐほどでもなかったが、焦って早足で行くとせっかくの雰囲気が崩れてしまう

雰囲気を楽しみつつ、多くのところを効率よく周るのが良さそうだ


「そうだ、ここコスプレ衣装貸し出しているみたいですよ、行ってみませんか?」

もう一度周りを見ると、ほとんどの人が和風なコスプレをしていた、店の人から観光客まで多くの人が

そこまでコスプレしたい訳ではないが、繁がやりたそうだし、ここでこの服だとかえって目立ちそうなので、コスプレをすることにした

そのほうが雰囲気的に良さそうな写真を撮れそうだ、思い出の写真は、雰囲気にあったものが良いだろう

繁に連れられ、コスプレ衣装を貸し出している店に向かう

「繁は何でそんなにコスプレしたいの?」

少し気になったので尋ねる、すると繁は、

「そっちのほうが良いじゃないですか」

そう、笑いながら言った

「ここです!」

歩いて数分、目的の店に着いたみたいだ、店ののれんをくぐって中にはいる

「コスプレ衣装を貸し出してください」

ウキウキしながら繁が言った、そんなにコスプレ衣装を着たいのか

しかし、店主はそんな繁の気持ちを180度変えてしまうことを言った

「ごめんね、今は貸せないんだ」

「どうしてですか、お願いします!」

繁が必死に懇願する、そこまで懇願するほどのことではないだろうが、繁はそこまで着たかったのだろう

「無理だ、今は衣装がない」

店主がこういった、そこで俺は納得したが、繁はまだ納得していなかった

「ここはかなりの数あるはずですが‥」

「いや、確かにかなりの数あった。でも、衣装を返さない人がかなりいて、それで衣装が少なくなってしまったんだ。」

その店主の目には、悲しみと怒りがこもっていた

貸し出しのものなのに返してもらえない、借りパクと言うものなのだろうか

店主の言葉に、流石に繁も納得したようだ

「すみません、怒鳴ってしまって」

繁は店主に深く頭を下げた

そして、店を出た


ぐぅ~

小さめだが、腹が鳴る音が聞こえた、後ろを見ると、繁が恥ずかしそうに顔を赤らめている

時計を見ると、12時を超えていた

「よし、昼食べに行こう」

外町通りを歩き、バスの中で話していた蕎麦屋に行く

ちなみに蕎麦はそこまで好きではないが、ここの蕎麦屋は美味しいことで有名なことかつ繁が行きたいので向かっている

「ここみたいですね」

蕎麦屋の前に着いた見たいだ、目の前には周りとあっていない洋風の店があった

「え、本当にここであっているのか?」

繁に確認した、繁によるとここであっているみたいだ、蕎麦屋にしては珍しい外観だな‥

「なんか、外国人向けに洋風蕎麦屋としているみたいですよ」

繁が解説した、有名だったのってこの外観で有名だったのだろうか‥


とりあえず、中に入った

店の中は混んでいた、有名な店であることは間違いないのだろう

席があくまでの間、メニューを見ていた

「どれ食べる?」

メニューにはいろいろな蕎麦が載っていた、決めるのを先にやっておいたほうが良いだろう

繁は数分メニューをじっくりと見ていた、そして頼むものを決めた

「私はこれにします」

繁はオススメと書かれているざるそばセットを指差して答えた

「オススメだからか?」

「はい、先輩はどれにします?」

メニューを少し見て決めた

「俺も同じやつにしようかな」

特に食べたい蕎麦は無かった、だから、オススメの蕎麦を食べることにした


それからニ、三分後

「ありがとうございました」

店員の声が聞こえた、もう少しで呼ばれそうだ

ふと横を見た

ん? あれ?

たった今出た客、知り合いのような感じだった

俺には長野県にいる知り合いなんていないよな‥

そのとき気づいた、バスケ部のメンバーだろうと

それならここにいてもおかしくない、男子はダムに行くと言っていたが、ここにも来たのだろうか


俺達が呼ばれた、「はい」と答える

呼ばれて席についた、注文は決めていたものを頼む

蕎麦が来る間、二人で話をした

他愛もない話をしていた、そのとき、バスの中でしようと思っていた質問を思い出した

「この前学校の異世界で大量の魔族を凍らしたのってどうやったんだ?」

あのときは繁が寝てしまったが、今なら聞ける、しかし

「今は秘密です。」

そう言われてしまった、彼女にも人には言えないことがあるのだろう、そう思い聞かないことにした

「こちらざるそば定食です」

注文のものが来た

いただきますをして、割り箸を割った

「お、きれいに割れた」

今日はいいことが起こりそうだ

そして、蕎麦を食べた

「ごちそうさまです」

繁も食べ終わった、蕎麦は味の部分でも有名だったようだ、美味しかった

代金を払い、蕎麦屋を出た


蕎麦屋を出てからは、二人で寺、神社、資料館などを観光した

そうして、3時間ほどが過ぎた

「そういえば私、一人で行きたいところがあるんです。一人で行ってきてもいいですか?」

繁が俺に尋ねた、一人で観光してはいけないというルールはないので、それに応じる

「いいぞ、じゃあ4時にここで集合な」

そう言って別れた

パンフレットを見て行くところを決める

パンフレットに、美味しい抹茶スイーツ店があることに気づいた

小腹が空いたし、そこに行こうと思った、それ以外特に行きたいところがないことも理由ではあるのだが


10分ほど歩いて、抹茶店に着いた

ここは和風で、さっきの洋風蕎麦屋とは違う雰囲気がある

中に入り、適当な席に座った

「かなりメニューがあるな‥」

抹茶スイーツと言ってもいろいろなものがあった、愛香なら全部頼みそう‥と思った

「この、抹茶ソフトを下さい」

人気No.1と書かれていた抹茶ソフトを注文した

スマホをいじって数分、注文した抹茶ソフトが届いた

「ご注文の抹茶ソフトです」

あれ、この声‥

俺はウェイターを見た、そして気づいた

「あれ、お前、愛香だよな?」

そこにいたのは愛香だった、今日は異少課の仕事を休んでいたはず、そしてここは長野県、たまたま会うのもおかしい

「あ、神代先輩。今はちょっとアレなので後で外で話しましょう」

そう愛香に言われた、愛香はすぐに席を離れて別の席にスイーツを運んでいた、忙しそうだった

抹茶ソフトを食べた、美味しかった

だが、どうして愛香がここにいるのか気になって食べることに集中できなかった


食べ終わってしばらく外で待っていた、愛香が近くに来た

「すみません神代先輩、さっきは忙しくて‥」

まあ今は3時、スイーツ店に人が集まるのも普通だ、さっきも忙しそうに働く愛香を見ていた

「いいけど、何でこんなところにいたんだ?」

「ここの抹茶店よく通うんですけど、人手が足りないらしくて手伝いを頼まれたんです」

ここ長野県だよな‥と一瞬思ったが、よく考えれば愛香は瞬間移動が使える、よく通ったとしてもおかしくはない

「仕事は終わったんで、もう話しても大丈夫ですよ」

愛香が念の為か説明する

「ところで、神代先輩はどうしてここに?」

愛香に聞かれた、正直に話す

「いや、バスケ部の親善試合がこっちで行われるから」

「そうなんですか。そういえば、先輩一人ですか?」

ぼっちかのように聞かれた、愛香はそんな感じで聞いてないのだろうが‥

「今は一人だけど、後で後輩に会う、あのとき会った繁だ」

そう説明した


新が愛香と抹茶店で会っていた頃、繁は通りの裏路地に向かっていた

「あ、いた」

繁の前には凪の姿があった

「お兄ちゃん、告白で問題が発生したんだけど‥」

繁と凪は兄妹である、そして凪は、繁の告白を成功させるためだけにここまで来ていた

「どうかしたのか?」

「うん、コスプレ店が衣装を貸し出せないらしくて‥」

予定では新に武士のコスプレをさせ、繁が姫のコスプレをして告白する予定だった

しかし、コスプレ衣装を貸し出してくれないので、仕方なく予定が崩れてしまった

「そうだ、それより大事なことがあるんだった」

凪は今思い出したことを繁に話した

「予定の場所への道、落石で通れなくなっていたんだ」

「え」

繁は驚いた、予定の場所とは告白する場所で、そこは池が鏡のように山々を映し出し、とてもきれいなところだった

そして、そこで告白したカップルは末永く幸せになると言われている告白スポットだった

「どうすれば、あそこって道一つしかなかったよね?」

「うん、今回ならお前の告白成功すると思ったのに‥」

凪は悔しそうだった

「仕方ない、今回は諦めるか‥」

前回は学校の飾り付けをした部屋で告白させる予定だった、しかしそれも準備中に新達と会ってしまい告白できなかった

「ごめんね、こんなところまで来たのに無駄足になっちゃって‥お兄ちゃん」

「いいよ、俺が勝手に来たんだし」

それは本当である、告白の手伝いに来たのだから

「じゃあ、私は先輩のもとに帰るね」

そう言って、繁は帰って行った

「そうだ、新が喜ぶものを調べれば、告白も成功しやすくなるかも」

凪は、新について調べることにした


新と愛香はまだ抹茶店で話していた

「これから、お前はどうするんだ? 仕事終わったんだろ?」

「ここまで来たし、ちょっと観光します、明日も手伝いを頼まれているので」

愛香は2日間手伝いがあったから休みをとっていたのか

「四時まで時間あるし、二人でどこか行かないか?一人でいてもつまらないから」

愛香に提案した

「繁と会うんじゃなかったんですか?」

「四時に会うと決めているから、それまで暇なんだ」

正直に話した

「なら、一緒に行きましょう。私、いきたいところがあるんです」

 

二人で通りの裏路地を歩く、愛香が行きたいのはとこなのだろうか?

こんなところに行きたい場所があるのだろうか?

「あと少しです」

曲がり角を右に曲がると、その先は突き当りだった

道の突き当りに、小さな祠があった

「この祠に宿る神様、この土地を守っているものらしいんです。その神様はいたずら好きらしいけど、この土地を何百年と悪いものから護っていた神様なんです」

詳しいな、俺なんか自宅の近くの神社の神様がなんの神様なんかも覚えていないのに

「なんでそんなこと知っているんだ? 抹茶店で聞いたのか?」

「まあ、そんな感じです。さ、お参りしましょう」

俺達はお辞儀を2回して、手を合わせ、心を込めて祈った

「お、久しぶりに人が来たな」

「「誰!?」」

祠の前に知らない人が現れた、白い服を身にまとい、神々しく輝いていた

「俺? そこの祠に祀られている神様のオンガだ」

神様だと? まあ魔族がいたり異世界に行ったりするこの世界ならいてもおかしくないか

「あれ、君あんまり驚いてない? 泣くよ」

面倒くさい彼女かな?

「いや、俺色々とあったんで神様ぐらいじゃ驚きませんよ」

神様ぐらい、自分で言ってから気づいたがかなり罰当たりな発言だな

「でも、彼女は驚いているじゃん」

横の愛香を見ると、確かに驚いていた

「ここでこんなことが起きるなんて‥」

だが、その驚いた状態も少し経つと解除された

「あの、神様、お願いです」

「この土地を、いつまでも守ってくれませんか?」

愛香は神様に懇願した、愛香は何故かこの土地にこだわっているようだ

「いいよ、その変わり‥」

「俺を楽しませてくれよ」

楽しませる、だと?

普通に楽しませればよいのか? そういう能力あんまりないんだが

「楽しませるって、具体的に何をすれば‥」

愛香が聞いた、俺もそのことは聞きたかった

「ま、お前らは自然体でいいさ、条件付きだがな」

条件? そして自然体? これでこの神様は楽しむのか?

「ま、やってやる」

神様が言うと、目の前が白い光で包まれた

「うわっ!」


眩しくて目を開けていられない、そして何かが変化しているように感じた

光は徐々に弱まった、しかしそこでは不思議なことが起こっていた‥

光が弱まったように感じたので、つぶっていた目を開けた

何だか目線が低い気がする‥

「小人化したのか?」

「いや、そんな面白くないものしねーよ」

でも目線は低い、例えるなら小学5年生ほどの‥

というか、愛香は大丈夫か?

辺りを見回した、そこで見てしまった

「俺が、前にいる‥」

目の前には俺が倒れていた、何が何だか分からない

そして、見回しても愛香はどこにもいなかった

「お前、愛香をどこにやった!」

「何言っているの、そこにいるじゃん」

神様は倒れている目の前にいる俺を指して言った

「あれ、何で私が目の前に?」

目の前で倒れていた俺はそのように言った

そのことで、多分だがこの神様が何をしたか理解した、だが、確証がないのでこの俺?に聞く

「お前、愛香か?」

「はい、そうですけど‥」

これで確実となった、目の前の俺?が自分は愛香だと言ったのだ

「お前、俺と愛香を入れ替えさせたな」

入れ代わりなんて、小説の中だけにしてほしい

「そうだよ、楽しそうじゃん」

この神様は悪びれる様子もなく言った

ただ自分が楽しみたいがために、俺達にこんなことをしたのか

普通に殴りたい、神様じゃなければ殴っていた

「ま、1日だけだから」

「今すぐ直せ」

冗談じゃない、明日は試合がある、愛香にはバスケ部の試合なんて無理だろう

「いや、それは無理。俺は直す方法は知らない、おとなしく1日楽しませろ」

この野郎、もう気がすまない

一発だけなら罰当たらないよな

「神代先輩、止めてください!」

突然、俺の体をした愛香が叫んだ、そのせいで殴るのを止めた

「この神様、一人ぼっちできっと寂しかったんですよ。神様の仕事をただ黙々とこなして、この土地を守ってきたんです。だから、きっと他の人と楽しみたかったんですよ、許してあげてください」

愛香の言葉に、殴る気持ちも落ち着いた

「は、そんな理由でするわけねーだろ俺様が!」

神様は必死に否定した、しかしこの顔、愛香の言ったことが正しかったのが分かった

「仕方ない、許してやる。ただし、明日には直るんだよな? なおらなかったら殴る」

そのことだけ言って、その祠を離れた

その後に思い出した

明日まで1日、どう過ごそう‥


新と繁が神様によって入れ替わっていた頃、繁は通りを歩いていた

「お土産、何がいいかな‥」

通りでお土産として買うものを探していたのだ、この通りにはお土産屋が多数あるので、悩んでいる

「とりあえず、一つ一つ見ていこう」

ウキウキとした気持ちでそこにあったお土産屋に入った

「いらっしゃいませ」

店員の声が響いた

「あれ、これ‥」

恋愛成就と書かれたお守り、目の前の商品だなに置かれていた

商品説明によると、この近くの祠の神様がいろいろなものを守る神様らしく、その神様によって、絆が引き裂かれることなく護られるようだ

「これを1つ」

迷わず購入した

これがあれば、先輩に想いを伝えられる‥

その後も、友達用、部活の先輩用、などなど色々と購入した

「ありがとうございました」

まぁまぁお金を使ってしまったが、お土産を買うことも旅行の醍醐味

そう考えて、ウキウキしながら集合場所に向かった


愛香達は、とりあえず路地裏から通りに出た

これ、さっきは怒りで気づかなかったけど、凄い違和感だな‥

体が入れ替わっているのだ、しかも男女で

違和感を感じないほうがおかしい

現に、愛香も同じように違和感を感じていた

「とりあえず明日までの辛抱か‥」

「そうだ、神代先輩、時間!」

愛香が叫び、それで近くの時計で時間を調べた

「え、もうこんな時間か!?」

時計の針は3時45分を指していた、集合時間は4時

今は集合場所からまぁまぁ遠くにいるので、今から歩いていかないと間に合わない

「よし、行くか」

「ところで、このこと繁に言ってもいいか?」

繁とは今日は二人でここを周ることになっている

そのため、繁と一緒に行動しなければならない

それなら、このことを伝えたほうが良いだろう

「いや、このことは二人だけの秘密にしてほしいです」

愛香は断った、確かに第三者にこのことを伝えられたくない、そう思っても不思議じゃない

「じゃあ、旅の途中で愛香と会ったから、ついでに愛香とも周るように誘っていてくれない?愛香に話振られたら、俺が近くで答えるから、それを言って」

繁はただの後輩だ、それに二人きりがよくてついてきたわけではない

そして、繁はそんなことを拒否なんてしない、優しい心の持ち主だ

「わ、分かりました」

愛香は物分りが良い、こんなことでも分かってやってくれる

本当はそんな面倒なことしたくないだろう、でも俺のためにやってくれる

愛香も優しい心の持ち主だ


その後は一緒に周るときの注意点(愛香は愛香の体の俺のことを愛香と呼び、俺は俺の体の愛香を神代先輩と呼んで、違和感をもたせないようにすることなど)を伝えて、集合場所に着いた

「先輩!」

優しい声で、紙袋を両手に持った繁が近づいてきた

「あ、繁‥」

愛香が俺を演じようとしているが、バレないよう完璧に演じきることはできない

それでも、何とか演じきれるようにしよう

「ところで、愛香‥だよね、前に会った。どうしてここにいるの?」

そうだよな、二人で周る予定のはずなのにいつの間にかもう一人加わっていたんだ

気になるのは普通だな

何とか言い訳しよう、幸い愛香と繁はあの日会っただけだろう

こっちは実際の愛香とは違うことを言っても疑われないだろう

「あ、私はたまたまここで神代先輩を見かけて‥ それで一緒に観光しようと思って‥」

実際、愛香と俺はたまたま出会っただけだ、そして、愛香が俺とどこか観光しようとしていたのも本当だ、もっとも俺から誘ったとはいえ

「でも、ここ長野県だよ‥何でいたの?」

そういえばここは長野県、愛香がこっちに住んでいることに最初しようとしたが、それだと学校で見かけたことに矛盾してしまう

そのため、もともと観光で来ていたことにしよう

「実は今日明日に、ここを観光しようと考えていたから‥それでここにいたんだ」

この発言に不自然なところはないだろう

「悪いけど、ちょっと一緒に観光してもいい?」

「いいよ、そっちのほうが楽しそうだから」

繁が簡単に了承した、やはり俺が予想していた通りだった

初対面のときも愛香と繁は仲良く話していた、そこも影響を及ぼしたのだろう


それから、通りから離れたところにあるガラス工房に向かった、その途中でもバレないように話を反らしたりして何とか着いた

他人を真似るのはこんなに難しいものなのか‥

ガラス工房では体験として、吹きガラス作りを行っていた、繁もこれ目当てで来たのだろう

三人分の体験を受付で申し込んだ

溶けたガラスを巻き取って色を付け、ガラスをふくらませて、その後もいくつかの工程を経てガラス容器を作る

作り方の紙を三人で何度も眺めた、そして作りはじめた

ガラス工芸は特に問題なく進んだ、30分ぐらいして、俺と繁は作り終わった

「先輩、あんなに悩んで‥そんなにこういうの好きだったんだ‥」

繁はポツリとつぶやいた、実際の俺はこういうやつはそこまで好きではない。というか美術的なやつは苦手だ

繁がこのようにつぶやいたのはあの状況を見たからだろう

俺と繁とは違って、愛香は色付けの下書きを何度も描いては直してを繰り返していた

愛香はもう20分ほどやっているのだろうか

愛香は抹茶の和菓子を作るときなど、こういう何度も模索することは大事と前に話した

だから何度も考えているのだが、今は愛香は俺の体だ

だから、繁は俺のことだと勘違いしていた

「ねえ、愛香」

愛香が終わるまでベンチに座って待っていると、繁が突然話しかけてきた

「何、繁」

「愛香ってさ、先輩の好きなものとか、知ってる?」

繁は本人にはあまり聞きたくないのだろう、しかし、今の愛香の体には俺が入っており、結局本人に聞いてしまっている

「好きなものね‥」

自分が好きなもの‥たくさんあった

しかし、これだけは譲れない

「俺が一番好きなもの、大事なものは‥」

「友達、かな」

俺はアイツをアンダス団に殺された、そんな悲劇は二度と味わいたくない、他人に味あわせたくない

「え、今俺って‥」

「あ、いや、気のせいだよきっと」

やばい、アイツのことを思い出していると今愛香の体であることを忘れてしまっていた

「そうだね、気のせいだよね」

繁はこういうことを、簡単に信じてしまう

今回はそのおかげで助かったが、いつか騙されて詐欺に会わないか心配だ‥

「終わったぞ」

繁と会話をしていると、後ろから声が聞こえた

愛香も作り終わったみたいだ、作ったグラスには美しい枝垂れ桜が描かれていた


グラスを作ったあと、時計は5時を指していた

「私ちょっとお手洗い行ってくるね」

繁がいなくなったので、二人だけで秘密の会話をする

「そういえば、愛香って元々どこ泊まる予定?」

俺はこのあと二人と別れてそこに行かないといけない

今のうちにどこに行くか聞いておく

「私は、カプセルホテル『水無月』に止まる予定だけど‥」

水無月、それって‥

「そこって、俺が泊まる予定だった温泉旅館の近くじゃん」

だが、近いからといってバスぐらいまでしか一緒には行けないのだが

「そういえば、これからの予定伝えておく」

俺が一緒にはいられない、この間に伝えておかないと旅館内で面倒くさいことになるだろう

「今日は、7時から食堂で夕食、その後は風呂の予定だがこれは諸事情で入れないことにしろ」

「風呂のあとは自由時間だから、風呂に入らずに先に寝ておけ、部のメンバーとの話に付き合っているとボロが出るかもしれん」

今日の予定はこれで全部だ、改めて見ると、食事中やそれまでにバレなければいいだけか

愛香なら何とかなるだろう、そう信じたい

「分かりました」

愛香も返事をした、大変だろうが頑張れ

「明日の予定はかばんの中のしおりをみてくれ」

今伝えてもよいが、伝えるとなると時間がかかる、明日のことだし今伝える必要はないだろう

「そういえば、私からも伝えたいことが‥」

「明日の手伝いは2時から3時半までだから、大変かもしれないけど、手伝ってきてください。流石にバックレるのは……。困っちゃうだろうから……。」

「分かった」


「あ、繁戻って来たみたいだ」

繁は早足で帰ってきた

「愛香はどこ泊まるの?」

「私は、神代先輩達が泊まる旅館の近くの旅館に泊まるよ」

観光で来ていると繁には言っている、カプセルホテルと言うより旅館に泊まると言ったほうがおかしくないだろう

「じゃあ、バス内でもお話できるんだ」

繁は嬉しそうだ、愛香と繁はこの前もだが仲がよい、親友という関係なのか

俺の親友‥

自分で思った『親友』というワードに、悲しさを感じてしまった


バス内では何とかやり過ごし、旅館がある街に戻ってきた

「私はここだから、じゃあね」

そこら辺にあった旅館の前で別れた、繁達は俺が泊まる予定だった旅館に去っていった

繁が完全に見えなくなったところで、目的のカプセルホテルに向かった

カプセルホテルに着く前に、コンビニに立ち寄った

愛香のお金でおにぎりを一個購入した

たとえおにぎり一個とはいえ、勝手に人の金で買ったと思うとなんか嫌な気持ちになる

後でお金返しておこう

カプセルホテルに着いたあとは、おにぎり食って寝た

俺は特に問題はなかったが、愛香は大丈夫だろうか‥

それだけを考えながら眠りに落ちた


一方、繁と(俺の体の)愛香は新と別れたあと、旅館にまっすぐ向かっていた

数分もたたないうちに、泊まる予定の旅館が見えた

扉をくぐってロビーに行く

愛香は、内装の凄さにびっくりした

「じゃあ、私は部屋戻るね」

「おう」

ロビーで繁と別れた、私も部屋に戻る

部屋番号は事前に聞いておいたので、マップを見ながらその場所に向かった

エレベーターに乗りその階に行こうとした

「お、お前どうだった?」

知らない中学生が話しかけてきた、「誰?」と聞こうとしたが、今は神代先輩の体だ

おそらく、神代先輩のバスケ部のメンバーなのだろう

だが、どうだった?とは何に対して言っているんだ?

「どうだったって、何が?」

仕方ない、ここで適当に答えるよりそれについて聞くほうがよいだろう

もしそのことについて前に彼が言っていたとしても、うっかり忘れてしまったことにしておけば問題ない

「何がって‥」

彼は言いかけたが、何かに気づいたらしくため息をついた

「え、俺なにかしたか?本当にごめん」

ため息をつかせてしまった、もしかすると忘れてしまっていた事に失望してしまったのか

神代先輩、勝手に人間関係悪くしてしまったようです

申し訳ありません

しかし、彼はその謝りに違和感を覚えた

「あれ、お前そんなに謝るキャラだっけ?」

キャラ、神代先輩のキャラ

警察署で仕事しているときのキャラは、正義感を持ち誰も傷つけずに悪を成敗するキャラだ

だが、学校でのキャラはわからない、見たこともない

どうしよう、このままここにいると彼にバレるかもしれない

そのとき、エレベーターが着いたらしく扉がたまたま開いた

そこで、私は一目散に走り去ってしまった


「バレなかったとはいえ、何か悪い子としちゃったな‥」

愛香は神代先輩の交友関係にヒビを入れてしまったのではないかと落ち込んでいた

実際はエレベーターで聞いてきた彼は新と繁の恋愛模様が知りたくて聞いただけであり、特に問題はなかったのだが

部屋に入ってからは、布団を引いたり、荷物の整理などをしていた

だが、7時まではまだ時間がある、周りの人達はスマホいじっていたが、神代先輩のスマホを勝手に使うのは‥と思ってしまう

「誰かトランプやる人いない?」

部屋にいた一人の男子が声をあげた

「急にどうした?」

「暇つぶしにトランプ借りてきたから」

トランプか‥暇つぶしになりそう

「わた‥俺もやる」

間違えて一人称を私といいそうになった、慌てて訂正する

トランプをしたいと集まったのは私を入れて4人だ、4人でできるトランプということで、ババ抜きをすることに決まった

「また負けた‥」

10回ほどやったが、8回は私が最下位だった

「お前弱いなババ抜き」

「顔に出ちゃってるぞ」

そう、私は顔にどんな状況なのかが出てしまっているらしい

ポーカーフェイスなんてできない、まわりの人達がしているのに私だけできていない

「もう一回!」

勝ちたい、優勝したい

最下位じゃなかった2回も最下位から2番目

優勝したいと思ってしまう

「いいぞ、どうせお前が‥」

何かを前の人が言いかけたところで

ゴーンゴーンゴーンゴーンゴーンゴーンゴーン

時計の音が響いた

7時になったらしい、トランプを片付けて、私達は部屋を出て食堂に向かった

なお、ババ抜きで優勝したいという思いは消えてはいなかった

帰ってから異少課メンバーや友達にしよう

そう考えていた


食堂ではバイキングが行われていた

「どれにしようかな?」

一通り料理を見る、今の時間はたまたま客もいないのであまり並ばずに取ることができた

唐揚げ、サラダ、麻婆豆腐、ご飯を取る

席に座って食べようとしたが、ここであるものがないことを思い出した

「抹茶、今持ってない‥」

彼女はかなりの抹茶オタクで、毎食粉末抹茶を料理にかけて食べている

外で食べるときも家から持ってきた粉末抹茶をかけて食べている

他人には変に見えるが、彼女にとっては抹茶をかけないと全然美味しくないらしい

しかし、今は粉末抹茶を持ってない

粉末抹茶を家から持ってきたのだが、その粉末抹茶は彼女の荷物の中、つまり新がいるカプセルホテルにある

机の上には醤油、塩コショウ、ソースなどの調味料が置かれていた

しかし、当然粉末抹茶は置かれてなかった

「すみません、この食堂に抹茶おいてありませんか?」

抹茶をかけて食べたいがため、食堂のスタッフに聞いた

「抹茶はないと思う」

そうあっさりと返された、よく考えればこの食堂で行われているバイキングには抹茶を使う料理はない

スイーツなども少し置かれているが、そこにも抹茶は使われていない

それなのに食堂に抹茶があったらおかしい

「そう、ですか‥」

抹茶をかけて食べられない、これを聴いて悲しくなった

「はぁ‥」

「もう、寝よう‥」

ひかれていた布団に横になり、彼女は眠った

なお、先に寝ることは伝えておいたので、部屋のメンバーは起こさないように静かに消灯の時間まで過ごしたのだった


夜の4時頃、彼女は目が覚めた

周りの人達は当たり前だがまだ眠っている

電気をつけずに何とか時計の近くに行って時間を確認した

「まだ、4時か‥ もう一度寝よ‥」

寝ようとする、そのときに気がついた

今なら先生も寝てるだろうから、抹茶買いに行けるのでは?

昨日の夕食のときは外で抹茶買いに行こうとしたが、勝手に外に出ることは先生に止められてしまった

朝食も抹茶無しなんて考えられない!

そのため、彼女は抹茶を買いに行った

まずはホテルの周りの店を探したが、抹茶を売っている店はすべて営業時間外で閉まっていた

どうしよう‥ そうだ

確かあの店なら‥

彼女が行こうとしたのは昨日手伝いをしたあの店だ

あの店は昼は抹茶店、夜はラーメン店として実質24時間営業している

あそこの主人から抹茶を買おう、そう考えて

彼女は外町通りへバスに乗って向かった


外町通りに着いた、夜の外町通りは半分ぐらいの店が閉まっており、昼間とは違う雰囲気だった

とりあえず目的の店に向かった

「はい、これでいい?」

「はい、ありがとうございます」

店で主人から何とか抹茶を購入することに成功した

今の時間はラーメン店なのに抹茶を買いに来たので、最初はびっくりしていたが、自分が抹茶大好きであることを伝えると売ってくれた

今は神代先輩の体だが、これぐらいなら勝手にしてもよいだろう

バス停に抹茶を持って戻る、その途中、人間ではない怪しい影を見た

大きい影、その先には2mほどのうさぎのような動物がいた

「これ、魔族だよね?」

普通の動物ではないことは明らかだった

そして、この魔族は手でコスプレをしている人を連れ去っていた

コスプレ衣装が足りていないと聞いたが、この魔族が原因だったのか

「絶対、攫われた人を取り返さないと!」

一人で意気込んだ、しかし今は戦えないことに気がついた

武器が、ない‥

今は入れ替わっている、私の短剣は今神代先輩が寝ているホテルにある

どうしよう‥

ふと目に公衆電話が映った

これなら、何とか短剣を手に入れられる

私は私のスマートフォンに電話をかけた


そのころ新は、こちらも目が覚めてしまい、二度寝しようと努力していた

一回起きてしまうと、全然寝れないことあるよな‥

彼は布団にくるまりながらも目を覚ました状態でいた

突然スマートフォンから電話がなった、取るか悩んだが、一応取っておくことにした

愛香にとって大事な電話かもしれないからだ

「もしもし?」

「神代先輩、助けてください!」

電話は愛香からかかってきた、愛香は何故か焦っているようだ

「どうした?」

その後、愛香から事情を聞いた

「だから、荷物に入っている短剣を持って、こっちに来てください、できるだけ早く。場所は……。」

「分かった、今から行く」

短刀を隠しながらホテルから出て、バス停に向かった

「待って!」

バス停からはちょうどバスが出ようとしていた、全速力でバス停に走る

「間に合った‥」

何とか間に合った、息切れが激しかった


新がバスに乗って外町通りに向かう頃、外町通りの愛香は魔族を追いかけていた

私が、ここで逃したら、この町が‥

彼女は魔族がどこに人々を連れ去っているのか、それを調べるために追いかけた

追跡し始めて少したった、近くの森に入ったところで魔族の動きは止まった

魔族は人々を穴の中に置いていた、魔族が離れたときに穴の中を見ると、穴の中にはたくさんのコスプレした人々がいた

かろうじて生きていた、だがこのままでは皆衰弱死してしまう

「もう少し待ってください、必ず助けます」

すぐにでも助けたかったが、仕方なくバス停に戻った


バス停に戻り少し待つ、バス停にバスが来た

降りる人の中から自分の姿を見つけた

「神代先輩!」

泣きながら神代先輩に抱きついた、傍から見たら中学校3年生男子が小学5年生の少女に抱きつく光景だった

そんなことには気づいていなかったが、新に止めてもらうよう言われ抱きつくのをやめた

「愛香がこんな感じになるのは珍しいな」

「すみません、私一人では何もできなかった、彼らを救えないから‥」

涙ながらに愛香は答えた、人の命がかかっているとはいえ、ここまで涙を流したことはない愛香が

新は愛香に連れられて、穴にまで来た

「これは、ひどいな‥」

穴の中から今すぐに助けないと、このままじゃ死んでしまう

穴の中から何とか出そうとした、愛香の短剣の瞬間移動、これでなんとかなるだろう

そう思い、出そうとした 

そのとき、後ろから禍々しさを感じた

後ろに見えたもの、それは魔族だった

「こいつ、ここに人々を連れ去っていた魔族‥」

魔族にバレずに助けたかった、無駄な戦闘は避けたかった

しかし、戦闘を避けることはできない、戦わないといけない運命のようだ





一方そのころ、旅館の前では

「ん、、あれは。」

そこにいたのは凪、凪は泊まるところを予約しておらず、町をぶらぶらしていた

そのときに外町通りを見た、そのときに何かに気づいたようだ。

凪は繁に電話する

繁は浅く眠っていたが、電話の音に目が覚めた

電話の相手が凪だと見て電話に出る

「どうかしたお兄ちゃん? もしかして告白する方法が分かった?」

繁は嬉しそうだ、しかし凪の言ったことで嬉しさを無くした

「外町通りの方で、魔族が暴れているみたいだ」

「‥分かった、行こう」

その繁の目には怒りがこもっていた

「すまんな、俺が一人で行ければ‥」

「お兄ちゃんは悪くない! お兄ちゃんは‥」

そのような電話をしたあと、二人はバス停に向かい、その道中で出会った

バス停で次のバスが来るのを待ち始めた


新と愛香は魔族と戦おうとする

この魔族の名前はオルク、見た目は緑色の大きな人間といったところだ

魔族には異世界の武器でしかダメージを与えられない、新は親善試合で剣を持ってきていなかった

「この短剣で倒すしかないか」

オルクに近づき倒そうとした‥

俺が攻撃する前に、オルクは円状に攻撃してきた

オルクの攻撃速度はそこまで速くないので、新も愛香も楽に避けられた

円状攻撃が終わったあと、再度攻撃しようとオルクに近づいた

穴の中の人を早く助けたい、そのためにこの魔族の急所を攻撃してすぐに倒さなければ‥

だが、オルクに全然近づけなかった

オルクの周りに行くと、何故か動きが遅くなった、しかもかなり遅くなった

「どうしてだ? どうして全く動けないんだ?」

この速度では全く近づけない、それでは攻撃できず、倒せない

「神代先輩! 下!」

後ろの方にいた愛香が叫んだ

言われるがままに下を見ると、地面に違和感を覚えた

地面の色が他の場所と比べそこだけ違った

何なんだ? 少し考え、結論が出た

結論から言うと、あの円状攻撃が原因だろう

円状攻撃の範囲内だけ土の色が変色していた

そしてこの土の色の変化、おそらく俺が全く動けないようにしたことと関係があるのだろう


動きづらかったが、何とか範囲内から出ることに成功した

しかし、オルクは俺を目掛けて攻撃してきた

「危ない!」

愛香が俺をかばった、その代わり愛香が敵の攻撃を受けた

かなり痛いだろう、

「なんで、そんな無茶を‥」

そう愛香に問いかけた、それに対し愛香は

「今は入れ替わっているんですから、私が守られるように、神代先輩を守らしてください!」

恩返し、というように答えた

「分かった、ありがとう。でも、無茶はするな」

今は俺の体とはいえ、痛みを感じているのは今の愛香だ

無茶してほしくない、攻撃は二人でやればいいけど、ダメージを受けるのは俺一人でいい


愛香はオルクの攻撃を受けたが、何とか動けるようだ

「オルク、こっちだ!」

今の愛香はオルクの攻撃を避けるのは難しいだろう、オルクを挑発して愛香が攻撃されないようにしなければ‥

オルクは俺の挑発に乗ってくれた、俺ばかり攻撃してきた

オルクの攻撃は遅い、負傷している愛香ならともかく、ほぼ無傷の俺なら円状攻撃の範囲内に行かないことだけ気をつければ、攻撃は喰らわない

だが、このままでは埒が明かない‥

オルクは円状攻撃で出来た謎のスピードダウンゾーンの真ん中から全く出てこない

たまに出てきたとしても、すぐに戻るかまた円状攻撃をしてスピードダウンゾーンを増やすかのどちらかだ

そうだ、こういうときこそ武器の力だ!


愛香の短剣の力は瞬間移動、これを使えばスピードダウンゾーンを通らずにオルクの近くにいき攻撃することができる

早速、瞬間移動を使おうとした

使おうとした‥ しかし、使えなかった

使い方が分からない、さっきは短剣を持ったまま行き先を思い浮かべ、そこに瞬間移動するよう願ったのだが、瞬間移動できなかった

この方法は俺が電磁の能力を使うときのやり方だ、しかし、この方法では無理みたいだ

「愛香、どうやって瞬間移動するんだ?」

それが分からないと使えない、先程大ダメージを受けた愛香だが、話すことはできるようなので聞いた


「あの、えっと、あの‥」

‥? 説明が難しいのか?

「どうした?」

「あの、使い方というか、いつも感覚で使っているので‥」

感覚、だからさっきは説明がやりづらかったのか

‥待てよ

使い方が感覚、そうなると

俺は使えないじゃないか

どうしよう、瞬間移動だけが唯一の倒す方法だと思ったのに‥

この方法も使えなくされた

今の愛香が使えればよいのだが、今の愛香は俺の体なので、使えない


前に石山さんにこんなことを聞いた

「ところで、この武器って誰でも使えるんですか?」

ふと気になった、もし誰でも使えるなら、色々な力を使って戦闘を楽にできそうだからだ

「いや、武器自体は使えるが、武器の力は誰かが初めて使ったときに、その人しか使えなくなるんだ」

どうしてだ? 

それでは武器自体が人を選んでいるようじゃないか

「‥?何で?」

「その人の生体エネルギーが関係しているみたいなんだが、良くわからん」

生体エネルギー、石山さんによると、一人一人に宿る力のようなものらしい

「とにかく、武器は初めて使った人しか使えない、覚えておけ」

これによると、今の愛香は俺の体だから使えないことになる

そして、これによりたった一つの倒す方法が消えてしまった


「神代先輩危ない!」

考え事をしていると、前からオルクが俺を攻撃しようとしていた

必死に逃げ出そうとした、しかし全然動けなかった

考え事をしていたので気づかなかったが、いつの間にか円状攻撃の範囲内に入ってしまったようだ

「やばい、殺られる」

今回な攻撃はさっきの攻撃より強そうだ、そして今は小柄な愛香の体

オルクは攻撃してきた、攻撃は遅かった

オルクの攻撃速度は遅い

だが、この遅さは俺が何かを感じ取ったからだろう‥


「燃えろ!」

後ろから突然声が聞こえた、そして目の前を炎が通過し、オルクはその炎に怯み、俺から離れた

それまではスローモーションに見えてたが急に戻った、スローモーションに見せていた死への恐怖が和らいだからだろうか

でも、誰が炎を使ったのか

少なくとも俺が知る中では炎を使える人はいない

本当に誰だ?

後ろを振り返ろうとした、だがその前に

「今助けますね」

その声が聞こえてすぐ、俺の体は宙に浮いた

空中ではスピードダウンゾーンの影響を受けないのか、すぐにスピードダウンゾーンからは出られた

出てすぐ、助けてくれた彼女が念の為彼女か確認した

最初の「燃えろ!」の声は死にそうな状況で覚えられなかったが、次の「今助けますね」

それで誰か分かった

この知った声、間違いなく彼女だろう

確認のため彼女の顔を見た、やはり彼女だった

「繁‥」

助けてくれたのは繁だった、今の時間に繁がいるのはおかしいが、そんなことは考えなかった

理由を聞くよりも先に言わなければならないことがあるからだ

「ありがとな」

「お安い御用です、愛香さん」

繁は笑顔で言った、そう言えば今は愛香の体だった、すっかり忘れてた

「大丈夫か?」

そこには凪もいた、二人でここに来たのだろうか

「私は大丈夫、でも先輩が‥」

俺は繁により助かったとはいえ、愛香はオルクの攻撃をくらった、大丈夫ではないのは確実だ

「分かった、ちょっと待ってて」

凪はそう言って愛香に近づいた、そして繁は

「貴様、許さん!」

目を見開いていた、怒りでいっぱいの目を

「燃えろ」

繁は手に銃を取り出した、そして燃えろと言いながら銃を撃った

この銃は見たことはない、だが

もしかしたら今までに繁が使っていたのかもしれない、それを気づかなかっただけかもしれない

そう、ふと思った


繁が銃を撃った、銃からは先程も見た炎が出た

やはり、先程俺を救った炎は繁が撃ったもののようだ

炎はオルクに命中した、しかしオルクはびくともしていないようだ

オルクは一度属性攻撃を受けたら数分間その攻撃に耐性ができる

そのため、先程は炎でひるんだが、今回は耐性ができてしまったらしくびくともしなかった

「繁、逃げろ!」

さっき、繁が銃を出した時点で、これなら倒せるんじゃ‥

と淡い希望を抱いた、そのため止めなかった

でもこれじゃ無理だ、繁の技でも無理だった

繁を逃さなければ、犠牲は俺一人でいい‥

「私の攻撃が、一つだけとお思いですか?」

一つだけじゃないのか? 炎を撃つ以外にも攻撃ができるのか?

繁は銃をもう一度構えた、でも、今回はさっきはしなかったリボルボーの回転をした

リボルバーを回転した、つまり、新たな弾に変えたと言うことだ

普通の銃ならどこもおかしくない、むしろリボルバーを回転させてから撃つのが普通だ

でも俺はおかしく思った、なぜならさっきはリボルバーを回さずに撃ったからだ

「凍れ」

そう繁が言うと、オルクとその周りは氷に包まれた

これは見たことがある、学校の異世界での戦いのときだ

あのときは繁が「凍れ!」と言った途端辺りが凍り、たくさん呼ばれた魔族がほぼ死滅した

あのときは繁が「凍れ!」と言っただけに見えたが、本当は繁はこの銃を持っていたのだろう


オルクは凍りつき、瀕死状態となった

「さあ、あとは頼んだよ」

繁は俺に頼んだ

「分かりました、やります」

繁に言われなかったら繁に止めを刺させてあげようとした、人の手柄は横取りしたくない、しかも俺にはこの手柄を横取りするメリットもないからだ(メリットがあっても横取りはしないが)

愛香の短剣を持ち、オルクに転ばないように近づく

繁が凍らせたおかげで、スピードダウンゾーンの効果は消えたようだ

その氷の上、転ばないよう注意してオルクの近くまで来た

「罰を受けろ」

淡々と言い、オルクに短剣を刺した

オルクはやられた、苦戦したオルクははぼ繁が倒したのだ


「終わったな、こっちも終わったぞ」

凪がやりきった表情でこっちに来た

「こっちも終わったって?」

凪に尋ねた、凪は愛香を避難させたのか?

「あ、ありがとう」

「いいからいいから」

目を疑った、俺の前には俺の体の愛香がいた

それだけならまだ普通だ、しかし

愛香は全くの無傷だった、さっきまでオルクの攻撃でかなりの傷があったのに‥

「傷ついてたから直した、薬飲ました」

傷薬でも飲ましたのか? それでもこの治りの速さは異常だが

でもこの世界は魔族と武器が異世界転移してきた世界

そういうものと納得した


あの後、穴の中の人を助けた

「こりゃ、酷いな 全員気を失ってやがる」

凪は冷静に状況を分析した

そして、全員に薬を飲ませ、

「これでしばらくしたら起きるだろう」

そしてバス停に俺らは向かった

根高兄妹のことはやっぱりよく分からない、初めて出会ったのはあんなにも前だというのに、愛香や翔と違う

コインですら表が見えるなら、裏は見えない

人間なんて裏と表の間も何百何千とある生き物なら、もっと分からない

人間は、自身を偽って生きているのだから

「神代先輩、どうしたんですか?」

愛香の二人に聞こえないような小さな声でふと我にかえった

「ああ、少し考えごとをな‥でも、終わったから」

こんなこと、どんだけ考え悩んでも分からないか

考えることを放棄し、普通の状態に戻った


その後は特に問題なくそれぞれ泊まるところまで帰った

凪以外は眠りに落ちた、凪はあの後も徹夜していたようだ

朝、愛香は普通に起き、繁は同室の女の子に起こされ、俺はカプセルホテルで誰も起こしてくれなかったので8時まで眠っていた

起きたときに元に戻っているのを願っていたが、現実はそんなに甘くなかった

愛香が抹茶をかけた朝食を食べたあと、新は旅館の前に愛香を呼び出した

「親善試合、どうする?」

親善試合は俺らバスケ部の伝統、ないがしろにはしたくない

だが、愛香は初心者だった

「あの神様に、何とかしてもらえないでしょうかね‥」

というかあの神様が勝手に入れ替わらしたんだ、早く戻せ

「仕方ない、怪我でもしたことにしろ」

「え、でもそれじゃ先輩が‥」

バスケ部で俺は大事なポジションを担っている、それが急に抜けてしまうと試合が成り立たなくなるかもしれない

でも仕方ない、愛香を試合に出して愛香が失敗してしまうと、愛香のことだからかなり落ち込んでしまうだろう

初心者なんだ、試合に出して赤っ恥かかせてしまうより理由を作って試合に参加できないことにしたほうがいい

「分かりました‥」

愛香は分かったようだ、でも何故か愛香は嫌そうだ

「どうした?」

「嫌なんです、私のせいで皆に迷惑がかかるのが」

確かにその考えは一理ある、皆に勝手に迷惑をかけてしまえば批判されるかもしれない

でも、だからといって出すわけにも行かない

「嫌かもしれないが、諦めてくれ」

「お前が今いるのは俺の体だ、俺自身が俺についてよくわかる」

愛香は同僚とはいえ他人だ、自分自身の問題は、自分自身で解決しなけりゃならない

幸い、俺らのバスケ部に急に休んだとはいえとやかく言うやつはいない

これが一番なんだ、これが愛香に何の苦痛も与えない一番の方法なんだ‥


「お、いいじゃんいいじゃん」

「お前‥」

上から話しかけてきた、この入れ替わりの犯人の神様が

そのせいで、朝は大変なことになった

入れ替わってなければ、愛香が短剣と瞬間移動を駆使してすぐに倒せただろうに‥

「というか、ちゃんと今日で戻るんだよな?」

少し怒りを加えて言い放つ、これで戻らなかったら、これから先色々とやばいことになる

そうなってしまうのは避けたい、いや

避けないといけない

「今日で戻るから、来年のだけど」

「は?」

来年となると、これから1年もこの体だと言うことか?

ふざけるな、明日までというからこれを許した

1年など、待ってたまるか

「殺す」

「どうぞ、神様なんて簡単には殺せないけど」

神様なら、確かにダメージは通らないかもしれない

でも、それでもこの体を元に戻せるなら

それに賭けたい

今は武器を持ってない、拳でやり合うしかない

痛みに降参してくれよ、そして元に戻せ

拳を構える、構え方なんて知らないが、そこは今回どうでもいい

辺りがシーンと静まり返ったように感じた

「お前な、何をしているんだ?」

突然目の前にもう一人神様が現れた

今回の神様は茶髪の20歳ぐらいの女性に見える神様だった

茶髪の神様は怒りながら、少しずつ入れ替わらした神様に近寄った

「あ、いや、その、彼らに入れ替わらしてほしいと頼まれて‥それで入れ替わらしてあげたというか‥」

いや、言ってないぞそんなこと

嘘ついてこの場から逃げようとしてないか?

「それは本当なのか?」

茶髪の神様は俺らに聞く

「いや、違います」

そういって、俺は全ての事情を説明した

事情を聞くごとに茶髪の神様の怒りは増していった

「とまあ、全部勝手にされてことです」

「そうか、うちのバカ部下がすまなかったな」

部下と言ってるあたり、彼女は上司的ポジションなのだろうか

部下に恵まれないタイプの人だなこれ

「さ、とにかく早く元に戻せ」

茶髪の神様が命令する、これは戻れるのではなかろうか

その予感は的中した、入れ替わらした神様は元に戻した

「さ、元に戻しましたし俺はこれで‥」

「おい何処へ逃げようというんだ? お前には罰を受けさせてやるよ強制的にな」

あ、これ神様終わったやつだな、まああっちが悪いし勝手にどうぞ

「じゃあ、私達は帰るな、本当にすまなかったな」

茶髪の神様は再度謝り、入れ替わらした神を連れて帰ろうとした

「ちょっと待ってください」

突然、今まで黙っていた愛香が声をあげた

「どうした?」

神様も立ち止まり、愛香に耳を傾けた

「あの、これからもここを守って、くれますよね」

「もちろんだ、それが私達護り神の使命だ」

「もっとも、こんな悪戯をする神は初めて見たがな」

そう言って、彼女らは去っていった


もとに戻った、あんなにも悩まされたのにやっともとに戻った

その後はバスケの親善試合だった、愛香も見に来てくれたようだ

「神代先輩、バスケのことはよく分からないけど、凄いプレーだったことは伝わりましたよ」

試合後、愛香が俺達のところに来た、ちなみにここは試合会場の外なので愛香と会っても特に問題はない

感想を伝えるためだろうか

「私は私は?」

後ろから繁が来た、繁は女子の中では一番上手い

まだ中1と言うのに選手として出られるくらい、いやもっと上手い

今回も相手をドリブルでたやすく抜き、スリーポイントシュートをバンバン決めていた

「繁も凄かったよ、特にあのスリーポイントシュート」

愛香にもそのことは分かったようだ

まあ、繁のバスケは上手いってレベルじゃないからな

「ありがとう、嬉しい」

繁は嬉しそうだ、愛香と同じような喜び方をした

この二人、年齢だけでなくかなり似ているような気がする

もちろん、繁が抹茶オタクというわけではないし、愛香がバスケが異常に上手いというわけでもないのだが、なんとなくだ

愛香と繁は二人で世間話を始めた、二人の邪魔はしたくないので、その場から離れた


「なあ、繁知らないか?」

肩を叩いて話しかけてきたのは凪だ、凪も兄として妹のバスケの試合を見に来たそうだ

この兄妹、本当に仲がいいな‥としみじみ思った

「繁ならあそこだぞ、でも今は行かないほうが‥」

愛香と二人だけで話していたいこともあるだろう、そこに行ってしまうと邪魔になってしまう

「え、何で‥」

凪は最初はなぜ行ってはだめなのか分かっていなかった、でも繁と愛香が二人で仲良く話しているところを見て悟ったようだ

「ああ、これは確かに突っ込むのはだめだな」

そのあとは、凪と俺で世間話をした、特にとりとめもない話だが、楽しい気分になる

やはり、親友って大事なんだな‥

雑談を終えた、繁と愛香の雑談も終わったようだ

話が終わったところで二人に近づいた

「繁、今日のプレーいつもより良かったぞ」

「ありがと、お兄ちゃん」

やはりこの兄妹仲が良いな

「あ、そういえば私はこれで」

愛香は時計を見て急ぎ足で去っていった、抹茶店のお手伝いがあるからだろう


「さ、帰るか」

荷物を持って旅館に戻ろうとした

しかし、荷物を持った途端スマホを落としてしまった

スマホは落ちた衝撃で電源が入った、画面にヒビが少し入ってしまった

「落ちたぞ」

凪はしゃがんで落ちたスマホを拾った、話は終わり繁達も戻ろうとしていたようだ

「ありがとな」

スマホにヒビが入ったとはいえ、スマホとして普通に使えた

落ち方が良かったのだろう、運が良かった

スマホの電源を付けると、通知が数分前に来ていた、異少課からのメールの通知だ

メール内容は帰ったらこっちに来いというもの、休みを今日とったのだが、まあ行くか


新達バスケ部員はバスに乗って帰った、思えば今回の親善試合、色々とあって疲れた

まず後輩と観光地巡っていたら同僚にたまたま出会う

そして彼女と一緒に路地裏に行くと体が入れ替えられ、それをばれないように過ごす

明日の早朝になると魔族を討伐し、その後茶髪の神様によって元に戻され、そして何とか親善試合をする

色々とありすぎた、これじゃ親善試合がオマケみたいだ‥

親善試合を楽しみにしていたのに‥


中学校に着くと、顧問の先生がこれからの目標を言った、だがその後子供の自慢話になったので急いでその場を離れた

先生少しは親バカ直してくれ‥

バスケ部の繁などの他メンバーは真っ先に家に帰った、でも俺は帰らない

警察署から呼び出されている、翔一人に2日間任務させていたわけだし、手伝ってあげたほうが良いよな‥


「神代先輩今帰ったところですか?」

警察署の前まで来たところで愛香に出会った、抹茶店の手伝いを終えたところだろうか

「ああそうだ、そっちは瞬間移動使ったのか?」

というか隣の県だ、しかも俺がバスに乗ったときも手伝いをしていたのだろう

そうなると、瞬間移動をしないと帰る方法がない

「はい、さっきまで抹茶店の手伝いしていました」

「で、何で呼ばれたんでしょうか?」

俺も分からない

警察署の異少課の部屋に入った、そこで翔に買ったお土産を渡そうと思ったのだが、翔はいなかった

「あれ、翔は?」

「アイツなら今任務中だ」

後ろから石山さんが現れた

任務中か、というか任務中じゃないのならわざわざ俺らを呼び出したりしないか

「ところで、なんで急に呼び出したりしたんですか?」

「任務だ、ここに行って魔族を倒してこい」

もう説明適当だな、まあ翔は任務中だから俺を呼び出したということは、早急に対処しないといけない魔族なのだろう

異少課に置いておいた俺の剣を手に取る、やはりこの剣が一番使いやすい

「愛香、瞬間移動でここ行けるか?」

「行けますよ、今から行きますか?」

愛香は念の為聞き返した、もちろんその答えは決まっている

「ああ、行くぞ!」

俺と愛香は瞬間移動でその場所に行った


新と愛香は親善試合前に入れ替わるなど散々な目にあった

一方、警察署に残っていた翔は‥

土曜日、朝10時頃

今日は師匠がいない、もう少し胸を大きくしてほしい愛香もいない‥

警察署の異少課の部屋のソファに座った翔は、ため息をついていた

俺も行きたかったな‥

「おい、任務だ」

石山さんはいつも通りの元気な声だ、対する俺は憂鬱だ

だが、それは任務内容を聞くまでだ

「今回の任務は長野県の外町通り近くに現れた魔族のオルクを退治することだ」

長野県? 聞き間違いか?

「今、長野県って言いました?」

「うん、言ったぞ、ちなみに行く費用やそこでの費用は経費だ」

長野県の外町通りは有名な観光地、楽しそうな任務になりそうだ!

「明日までに倒してこいよ」

俺も明日には中学校があるし帰らんといけない、でも2日は旅行だ!

「分かりました」


バスに乗って外町通りまで来た、師匠のため、お土産は絶対だ

だが今は12時、お腹が空いたな

外町通りには、人気の蕎麦屋があるらしい

そこで昼を食べよう

その蕎麦屋のところまで走っていった、席が混む前に食べたい

「ここ、本当に蕎麦屋か?」

外観が洋風な蕎麦屋、それで独り言が出た

でも調べると場所はここで合ってる、名前も合ってる

変わった蕎麦屋だな‥と思いながら中に入った

経費で出るから一番高い定食を頼んだ、やはり人の金で食べる料理は美味い

「ごちそうさまでした」

代金を払うとき、店員に伝えた

店員にはいつも「ごちそうさま」を伝えるようにしている

やはり、作ってくれた店員には感謝を伝えなきゃな

「ありがとうございました」

店から出たとき、店員が声をかけてくれた

その後は夜まで観光地を巡った、いいものが見れて大満足だった

任務は日曜日にやりゃいい、今日は楽しもう!

翔はやりたくないことは後回しにする性格だった

午後9時、一日楽しんだ俺はカプセルホテル水無月に泊まった

最初は高級ホテルに泊まろうとしたが、メールで財政難だからお金を使いすぎるなと言われ、仕方なくカプセルホテルに泊まった


日曜日、朝7時に目を覚ました

カプセルホテルをチェックアウトし、外町通りに向かう

正直面倒くさいが、任務だし金使いまくったし仕方ない

外町通りに行き、そこの近くの森を探す

石山さん曰く、オルクは夜行性らしい

まだ朝だが、今はオルクは寝ているらしい

その間なら、簡単にオルクを退治できる

俺は盾を使う、一応空気球を使えるとはいえ、師匠や愛香には力は及ばない

強くなりたいと願いながら、森を探した

オルクの特徴として、緑色で大きな人間のような見た目をしているということがある

森の木は背が低いものが多く、探すのは難しそうだな‥

森の中はそよ風が気持ちいい、半袖だからより感じられる

そのときいい方法を思いついた

空気球だ、それを使って風を起こせば地面近くの葉と枝を一掃できる

任務なので盾を持ってきていて正解だった

盾を振り回し、それにより生じた目に見えない球

盾の動きの量によって大きく強くできる、疲れない程度の大きな球を撃った

地面近くまで垂れていた枝が飛ばされ、視界が格段に良くなった

成功だった

そのあと、この方法に重大な欠陥があることに気づいた

これ、オルクに当たったら目覚めるよな‥

夜行性で寝てると言っても、流石にこの強さの風が当たると起きてしまう

ま、結果オーライか

でも、今後は使わないようにしよう


さらに数分が経過したあるとき、大穴を見つけた

「何だこれ?」

中に何かあるわけではない、でも怪しい

穴の中を探索しようとも思ったが、中に入ってしまうと二度と出られなそうな深さなのでやめた

「これ、オルクに関係あるのか?」

少なくとも人間がこの穴を作ったようには見えない

だが、その穴より大事なものが近くにあった

「これ、オルクだよな‥?」

穴の近くにオルクはいた、しかしおかしなことに死体となっていた

何故だ?

オルクじゃない可能性もあったので、メールで石山さんにこの死体がオルクのものか聞いた

しかし、返信が遅かったため、少しの間俺はオルクの死体の近くにいる羽目となった

いつも魔族退治しているとはいえ、死体の近くにまあまあ長い時間いるのは堪えるな‥


突然、そこに中学生のように見える男が現れた

え、これ‥

魔族のことは他人に言わないようにされている

どうしようどうしよう

頭の中で考え、一番何とかなりそうなごまかし方を思いついた

ズバリ、森に住み着いていた新種の獣と言うことにしちゃおう作戦

内容は作戦名のとおりだ

「あの、これは‥」

俺が誤魔化そうとしたのと同時に、彼も口を開いた

「お前がこれをやったのか?」

彼の目には怒りがこもっていた、ここで俺がやったことにするとやばいことになりそうだ

「いや、やってない」

これは誤魔化しているのではなく、本当だ

「本当か?」

「本当だ」

そのことを聞くと、オルクの死体に近寄り、そのことを調べ始めた

俺はその様子をただ見ていた、逃げることはできなさそうだった

調べごとが終わったのか、また俺の近くに近づいてきた

「お前の言うことは本当だったみたいだな、疑って悪かった」

彼はそう言い、その場を去っていった

そして、石山さんから返信がやっと来た

この死体はオルクで間違いないようだ

謎はかなり残ったが、バスに乗り遅れそうなことに気づいてバス停まで急いだ

そして俺は帰った、帰る途中でも考えていたが、結局分からず諦めてしまった


「オルクを殺したやつ、あれは絶対に人間の仕業だ」

「とりあえず分かったことをまとめよう」

オルクが殺害された現場には炎と氷の技を使ったあとがあり、殺害された直接の死因は首を斬られたこと

そして、死亡推定時刻は午前3時から5時

あの盾の男は怪しかったが、わざわざ現場に戻る必要がないし、あの盾で斬れるとは思えないので犯人ではないだろう

犯人は、誰なんだ?

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