第6話

配送方法はドローンだろうけど翼竜みたいなやつも鬼みたいなやつもそこらにいるような区域への配達はとんでもない期間遅れることがあるのだ。一人暮らしでステイホームなら食料品を大量に詰めとけばあとは気長に待つだけだから忘れていた。


武器を探さなくてはならない。この家の中から。幸か不幸か武器になり得るものがありそうな汚い部屋だ。粗大ゴミや家電のゴミを中心にあれでもないこれでもないと探していると、良さげなものを見つけた。


とりあえず折ってみた時計の長針と包装されたままで一度も使った形跡のないステンレス製フォーク。短い、あまりにも短いこの二つが、なんとなく自分にとってしっくりくる。もしゴブリンだったとして、頭をハンマーで叩き潰すのは気持ち悪いから鈍器はなし。あと重くて室内だと取り回しが悪いだろうから。


防具は段ボールと発泡スチロールとかをテープでぐるぐるにして関節を埋めないようにガードにしてみる。胸元には古くなった木製のまな板に左胸にゴム製のマウスパッド。ダサい…ダサいがこれで多少なり、ましになっただろうか。


そんな作業をしている間にもゴソゴソと音がする。唸り声みたいな音も聞こえるのでやはりモンスターなのだろう。


隣部屋、隣部屋と考えていてふと思い出す。隣部屋には鍵がかかっているだろうか。隣部屋が出て行ったであろう日はドコドコと大きい音がなっていた気がする。自分の部屋のように建付けが悪い扉なら力尽くで開けられるだろうが、その場合には絶対に物音で気付かれてしまう。


…まあ、その時に考えるか。


一応遺書みたいのも書いてみた。

「隣の部屋に遺体があるかもしれません」

それ以外は思いつかなかった。



防具OK、武器OK、遺書?OK、突入方法その時に考える。


よし、行ってみようか。

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彼の武器は心か棘か 空っぽの無能 @honedachi

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