第3話

健康的な生活に必要なものは何か。挙げるとしたら3つ。「環境」、「睡眠」、「食事」だと思っている。環境は特に大切なものだ。残りの2つにも大きく関わる。衣食住という環境、自身を取り巻く人間環境、自分の趣味を満たすための環境など、一口に環境といっても多くの要素がそこには絡んでいる。環境は基盤であり目標である。それさえ整えることができるなら、他2つを行う上で大きなハードルを感じることはないだろう。睡眠に関しては、睡眠に障害があるような状況でもない限り、自然と襲い来る眠気に逆らわなければ、眠れるだろう。睡眠の環境を整えることはもちろん大事だが、最悪コンクリートの地面であろうと人は眠ることができる。


問題は「食事」である。これに関しては金と意欲さえあれば解決する問題であるが、肝心なその意欲が僕には欠如している。金に関しては、娯楽などほとんど触れることがないために家賃とこれまでの生活費分を除いて、仕送りがかなり残っている。調理器具は一通りそろっているが、炊飯器以外をまともに使った試しがない。親から送られてくる仕送りはかなりの額だ。両親は放任主義というものらしく、ほとんどの干渉をしてこないが毎月送られてくる仕送りは相当なもので、見放されているわけではないと感じている。いや、そんなことはどうでもいい。とにかく金はあり器具は揃っているのだ。幸い、親は放任主義とは言えどもある程度生活についての基礎的な知識は詰め込んでくれた。そのままのたれ死んでも困るからといっていた。そのおかげで調理についても問題なく行うことができる。ただ、意欲がわかないだけなのだ、食欲も料理という行為にも。


ステータスの有用性というものに気づいてから、軽く運動をするようになった。それを続けていて気付いたのがステータスと身体そのものの質は系統が違うということだ。即ち、身体は本体、ステータスは装甲だったり武器だったり、そうした外部の取付機能であることが分かった。なぜそれが分かったのかは何となくそう思ったというのもそうだが、テレビから得られる情報の中に、ステータスが世の中に浸透する前から筋トレなどで身体を鍛えている人と、全く体を鍛えていない人とでは、ステータス上の数値が同等であっても岩を持ち上げたり、剣を振るったりといった動作には明確に差が感じられたからだ。ステータスが身に付けるものであるならば、そもそもの体の動かし方を知っている方が優位になるのは至極当たり前のことではあると感じた。ステータス至上主義みたいな文化は生まれずに済んだらしい。むしろ、筋トレなどは長期間に渡って続けることで効果を発揮するものであり、ステータスによって効果を感じやすくなったことも相まって、自分磨きを行う人が世界的に増えているらしい。ステータスと違って共通のしづらいスキルに関しては、もしかするとそうした差別が生まれてしまうかもしれないという懸念はあるけれど、それは僕が考えることでもない。それに、ステータスを整えて身体を実直に鍛えていけば他者を圧倒することができる以上、そうした愚かな真似を行うやつは早々いないと信じたいものである。


話を最近の身体作りに戻すと、身体作りに大切なものは運動と食事だろう。どれだけ運動をしていても必要な栄養素を満足に摂れていないのでは身体は作られない。死んだように暮らしていた毎日にはもちろん満足の出来る食生活などない。あるものをそのまま食べて、とりあえず空腹を紛らすという肉体的にも精神的にも極めて不健康な食生活であった。


身体作りをするといっても、インターネットで調べられるような「筋肉に適切な飯」とかそういうのを食べることはしない。あくまでも、食生活を今よりも改善するだけだ。三食摂るのは厳しいけれど、1日に1食はきちんと主食、副菜のようにいくつかの品目で構成された食事を摂りたいと思っている。

栄養バランスも食事が習慣になるまでは二の次だ。食事も運動も続けなければ意味がない。日常の一コマとして筋トレや食事が送られるようにすることが自分磨きの秘訣だと僕は思いたい。


さて、翻って今日の晩御飯の様子を見てみよう。ごはんと味噌汁、ほうれん草のおひたし、キャベツの浅漬けというなんとも和な光景だ。


なぜ晩御飯なのかと言えば、慣れない食事の準備に予想外に手間がかかったから。昼頃から初めて作り終わったのは夕方。少し早いが晩御飯という形だ。

キャベツの浅漬けはかなりの量を作ったので冷蔵庫に入れて明日の朝ごはんに回す。明日になればもっと美味しくなっているはずだ。なんせ本当に短時間しか漬けていないからまだ味が染み込んでいないのだ。


そして、これは本当に興味本位で手にいれた魔物の肉。これは本当にどのように調理すればいいのだろう。そもそも料理初心者が買っていいものだったのだろうか。

栄養は満点らしいし、豚肉や牛肉、魚といった動物性たんぱく質の取れる食材の中では最も価格が安かったから買ってみたのだ。この肉は某RPGの二足歩行の豚に似た見た目にあやかって#豚鬼__オーク__#と名付けられた魔物の肉だ。味の想像もつかなかったから焼いて塩を振っただけ。シンプルな調理法だ。


では、改めていただきます。


..............


あ、おいしい。


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