第34話 ゲーム終了後
「あら? 目が覚めたのね」
「武尊、お疲れ様」
俺は、目が覚めるといつの間にか寝室のベッドで横になっていたので少し動揺が隠し切れなかった。しかも、友美が隣のベッドで静かに佇んでいた。
「あれ? 何で俺らはここに居るんだ?」
「それがね、貴方が眠ってしまってからゲームが終了したのよ」
北村によると、最終イベントが終了するまで俺らは起きる事は無かったそうだ。それに、このイベントが終わった事で俺らが寝ている間に最終結果が発表されたそうだ。
「ごめんなさいね。武尊君のチームは最下位で終わっちゃったのよ」
「何だよそれ……。なら、長谷川さん達が居ないのはどう言う事だよ?」
俺は、北村が責任持って俺達を勝たせる約束をしたのにも関わらず負けた事に悔しさと苛立ちが同時に滲み出ていた。それに、俺らが負けたと言う事は長谷川さんと森さんは相手に引き取られたのでは無いかと嫌な予感がした。
しかし、北村は俯いたまま何も言い返してくれなかった。なので、俺は北村の反応で避けたかった事が起きているのだと確信した。
「そう言う事か……。お前は、最初から俺らを騙してあいつらと繋がってたんだな」
「確かにそう思うでしょうね。だけど、言ったでしょ? 私には狙いがあるとね」
「じゃあ、それは何だよ?」
北村は、ボクシング対決の時にも何か目的があると俺に語っていた。なので、俺は感情的になりつつも北村にその事を聞くと不気味な笑顔を見せながら答え始めた。
「ふふふ。それは、貴方が考えている事と同じ事よ」
「え? 同じ事?」
俺は、ふと我に返ってどう言う意味なのかを考えた。北村によれば、長谷川さんと森さんを相手から救いの手を差し伸べてこのゲームの運営委員会に参加させる事だった。
「それに、今回のゲームは没になったそうよ」
「は? 意味分かんねぇよ」
しかも、今回のゲームは問題点がいくつも見つかったそうなのでテレビやYouTubeには放送されないとの事だった。北村は、その一つとして派閥関係が荒れてしまうとの事で中止になった事を俺らに告げた。
「私は、あくまでも貴方達を手中に収める事が目的なのよね。だから、後の二人はこれから取り返しに行くのよ」
「と言う事は、今回のゲームはあいつらの目眩しの為に行ったのか?」
「そう言う事よ」
北村は、このゲームをする事で意味があると言っていたが、俺らには『時が来たら話す』と誤魔化して今は意味を話してくれなかった。しかし、嶺城家と園崎家に引き取られた長谷川さんと森さんを取り返しに行くと言う計画は俺らに伝えてくれた。
「なぁ、せめてこれだけ教えてくれよ。これから、俺らはどうすればいんだ?」
「そうね……。取り敢えず、貴方の親御さんが心配してると思うから会って今までの事を話すと良いわ」
それから、北村は俺と友美を家族の元に帰す為に使用人が乗っている車へと案内してくれた。そして、俺は自分の家が久しぶりなので恐る恐る外の扉を開けてインターフォンを鳴らした。
「た、武尊!?」
すると、母親が玄関を開けて俺の顔を見ると涙目になりながら飛びついて来た。なので、俺は母親の温もりを久しぶりに感じる事ができた上に安心して抱き返した。そして、母親は何も言わずに俺を家の中へと迎い入れてくれた。
「ごめん」
「ううん。武尊が無事で本当に良かった。本当に、生きててありがとう」
俺は、母親が顔をぐちゃぐちゃにしながらそんな言葉をかけてくれた事に救われた気分になった。そして、俺が襲われる前に祖母から言われた『俺の事を思っているからこそ注意をしている』と言う言葉に少しだけ納得できた。
「それで、どんな事があったの?」
それから、少し落ち着いてから母親に今までの事を聞かれた。俺は、北村からどこまで話して良いか分からなかったので自分が襲われた所以外は全て話した。
「だったら、何で前持って私に言わなかったのよ?」
「それは、俺が男だからだよ」
「何よそれ。答えになってないじゃん!」
「いや、母さんが昔から言ってる事だよ。『男なんだから我慢しなさい』ってね」
「そ、それは……」
「だから、俺は誰にも相談できずにゲームに参加する事になったんだ」
俺は、本当に言われた事を交えながら自分の気持ちを訴えた。何故なら、今の母親なら俺の気持ちを受け止めてくれると思ったからだ。それに、弱音を吐くのは男女問わず人間として必要な事なのだと俺は思っている。
「そうだったのね、本当に私が悪かったわ。今まで我慢させてごめんなさい」
俺は、母親に謝られた事で自分の気持ちを聞き入れてくれたのだと思った。それに、母親は俺が居ない間に自分の教育理念を押し付けて来た事に対して反省していたそうだ。なので、俺は自分の苦労が分かってくれた事に報われた気持ちになった。
「これからは、男だからとかじゃなくて私の息子として武尊が一人前の人間になれる様に心を入れ替えるわね」
「ありがとう。あ、それより、姉ちゃん達はどうしてたんだ?」
「え? 武尊が居ない間も普通に過ごしてたわよ」
「そうか……。なら良かった」
俺は、北村が俺の姉妹に復讐の牙を向けている事を急に思い出したので母親に尋ねた。しかし、そんな心配はしなくて良い程に何事も無く過ごしているとの事だった。
「あのね、他人の事よりも今は自分の体調を気にしなさいよ」
「そうだね。でも、姉達にも俺が経験したゲームに参加して欲しいと思ったからだよ」
「ん、どう言う意味?」
俺は、まず母親に男女平等ゲームについて説明した。このゲームは、男女平等について一人一人が理解できる様に教育型ゲーム形式になっている。なので、俺は男女平等を履き違えている姉達にも参加して貰いたい事を告げた。
「ん〜、こればっかりは本人達に聞いてみないと分からないわね」
「確かに本人の同意は必要だけど、ゲームで優勝すると一人一億円の賞金が支給されるからすぐに許可を得られると思うけどね」
「え!? 今なんて!?」
すると、母親が瞳孔を大きく広げながら俺に賞金について詳しく説明を求めて来た。このゲームでは、男女平等ゲームで一位を獲得した者のみが貰える賞金があり、俺はそれをチラつかせて母親に交渉を勧めた。
「だから、俺は興味本位で友美を誘って参加したんだ」
「そ、それで、どうだったの?」
「ごめん。それが、俺らは負けちまって賞金をゲットする事ができなかったんだ」
「そ、そうなのね。でも、そんなゲーム怪しいわね。なんか、信用できるまであの子達を参加させたくないわ」
「そうだね。それは、悪かったよ」
俺は、母親に疑いの目を向けられながらもこのゲームの話を終わらせた。そして、夕方になってから家族皆んなが帰って来たので俺は皆んなの前で謝罪をした。ちなみに、先程の男女平等ゲームは俺と母親だけの秘密となって姉妹達に話す事は無くなった。
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