第33話 敵襲
俺は、友美と無事に合流したので次に敵地を二人で乗り込む事になった。北村によれば、もう一人の特攻隊員である武林が牧野にさりげなく武器を渡す事ができたそうだ。
「今の所、順調に進んでいるな」
「武尊君、そう思うのは良いのだけれど福永と江頭がそちらに近付いてるから気を付けてくれるかしら?」
「警戒を怠っているつもりはない。それで、どの方角から来ているんだ?」
「東側の方角」
「分かった。あいつらとは、なるべく戦闘を避ける事にするけど異論はあるか?」
「無いわ」
こうして、俺らは北村の指示に従って江頭と福永を避けながら敵地へと進んだ。すると、江頭と福永が俺らの方へと近付いている事を耳にした。なので、俺は友美と一緒に江頭達から逃げる為に全力で走った。
「うがぁ!?」
「友美!? 大丈夫か!?」
すると、一緒に走っていた友美が足を滑らせて転けてしまった。なので、俺は泥だらけになった友美に肩を貸して起こした。しかし、友美は足を挫いて動けそうになかった。
「二人とも!! 急いで!!」
俺は、北村が焦った声が耳から響いた事で焦りと共に背後を見渡した。すると、そこには黄色のジャージを着た江頭と福永が俺らに銃口を向けていた。
「うわぁ!?」
俺は、咄嗟の判断で友美を庇いながらしゃがみ込んだ。しかし、黄色の液体が俺と友美の身体に何発も当てられた。そして、その反対側には川添と赤坂が立ち尽くしていた。
「これで、チーム・レッドは終わりだな」
川添は、そう言いながら俺らに銃口を向けてきた。俺は、恐怖に怯えている感覚に襲われながらもしっかりと友美を抱きしめて銃口を向け返した。しかし、相手は銃口を向けながら少しずつ近付いて来ていた。
「お前ら! 観念しな!」
「観念するのはお前だ! 川添!」
すると、青色の銃を持っていた武林と牧野が姿を現して川添達に警告していた。そして、武林と牧野は川添達に発砲して俺らとの距離を取らせた。
「平本! 今だ!」
「お、おう!?」
俺は、武林の掛け声と共に友美に肩を貸しながら武林の方へと足を運んだ。そして、武林と牧野は川添達に攻撃を仕掛けながら俺らを匿うかの様に近付いて来てくれた。
「平本、香苗様がお呼びだ。今すぐ、拠点に戻れ」
「あぁ、分かった」
俺は、武林から耳元で北村からの情報を聞いたので拠点に戻る事にした。しかし、友美の足首が赤く腫れていて俺の肩に寄らないと歩けそうになかった。それに、地面が濡れているので俺までもが滑りそうな感覚に襲われていた。
「友美、大丈夫か?」
「あ、あぁ、武尊、すまない」
「何を言ってんだよ。早く急ぐぞ」
俺は、友美が気を遣っているのを感じながらも急いでいた。それに、銃弾戦での流れ弾が俺らの周りに落ちていくので自然と焦りも募ってしまっていた。
「すまない。やっぱり、おぶって行くぞ」
「え、あ、はい?」
俺は、友美のペースに合わせながら肩を貸して行く事に苛立ちを覚えたので友美をおんぶして自分のペースで走る事を選んだ。しかし、友美は驚きながらもこの流れになった事を受け入れている感じだった。
それから、俺は北村の指示に従いながら必死に逃げ続けた。そして、気付いたら逃げた先に北村が拠点の前で待ってくれていた。
「武尊君、お疲れ様」
「あ、あぁ、すまない。全く駄目だった」
「別に良いのよ。一つでも自分達の武器を手に入れて帰ってきた事が一番の収穫よ」
北村は、そう言いながら俺達を拠点の中に案内してきた。なので、俺は泥だらけになった友美を近くの椅子に座らせて手当てする準備をした。そして、北村から救急箱を俺の所に持って来てくれた。
「友美、大丈夫か?」
「あ、あぁ、すまない」
友美は、顔を真っ赤にしながら俺の手当てを眺めていた。俺は、遠慮気味の友美の様子が気になりつつも声をかけながら怪我している箇所に消毒して包帯を巻いた。
「友美、怪我はどんな感じだ? もう痛く無くなったか?」
「あ、あぁ、お陰様で……。それより、迷惑かけちまってすまないな」
「何言ってんだよ。これから、俺だって迷惑をかけるんだからお互い様だろ」
「何だよそれ」
俺は、友美とこれから一緒に生活する上で夫として迷惑をかけるかもしれない事を冗談混じりで伝えた。友美は、こんな状況でも俺の冗談に付き合ってくれたのでお互いに癒される雰囲気を味わう事ができた。
「邪魔して悪いけど、先程の状況を詳しく聞いて良いかしら?」
すると、北村が気まずそうにしながら先程の状況を俺に聞いてきた。俺が感じたのは、相手側も北村と同じ様に細工をしているのではないかと実感した。それに、そうでないと辻褄が合わないと思う程に相手も俺らの居場所を追及できていた。
「言われてみれば、確かに都合良く探知出来てたわね」
「やっぱり、あいつらも北村と同じ様な事をしてるんだろうな」
「でしょうね。それに、相手側の主要人物達も何やら変な動きをしているわね」
北村によると、嶺城と山路、園崎の三人が運営委員会が居る本部の近くでずっと動いてないとの事だった。しかし、俺はそんな事を聞いても何をしているのか分からなかった。
「そうね。でも、後は私達に任してくれると助かるわ」
「あぁ、分かった」
北村は、そう言いながら俺と友美に温かいコーヒーミルクを注いで持って来てくれた。なので、俺らは北村の言葉に甘えてこのゲームが終わるまで拠点でゆっくりする事にした。
「それにしても、何でこの飲み物なんだ?」
「ふふふ。思い出があるからよ」
俺は、北村の不気味な笑顔に不信感を抱きながらもコーヒーミルクを少しだけ飲んだ。味の方は、北村の思い出が詰まっている事を聞いたせいなのか不思議といつも以上に甘くて美味しく感じた。
「ふぅーっ。疲れたぁ〜」
「そうね。時間になるまでゆっくりして行くと良いわ」
「だけどよ、何で俺らのメンバーは全員寝ているんだ? しかも、さっきまで起きてた友美まで寝てるしな」
「ふふふ。皆んな、疲れてるんでしょうね」
俺は、その事が疑問に思いながらも少しずつ眠くなって行くのを感じていた。しかし、北村は俺が眠るのを待っているかの様に遠い目で俺を眺めていた。そして、俺は眠気に逆らえずにそのまま眠る事にした。
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