第32話 ボスとリーダー

 それから、北村に頼まれたメンバーは着々と武器を手に入れて戻って来た。そして、北村のチーム色である青色の銃は四つ揃ったそうなので武林は先に敵地へと攻め込んでいた。


「あれ? 牧野の分もあるのか?」


「あるわよ。ただ、牧野の分は武林がバレない様に渡すから気を付ける様に伝えてあるわ」


「そうか……。なら、後は俺らの銃だけだな」


 俺は、自分達の銃が友美の分だけしかゲットできていない事に心配していた。しかし、友美の分だけでも見つかっているので不思議と焦ってはいなかった。それに、長谷川さんは嶺城達の銃を一つ確保したので嶺城達が全員で銃を使う事ができない事に成功した。


「何とか、この調子で行ってくれ」


「あら? 武尊君は、祈るだけかしら?」


「でも、北村が俺らは動かない方が良いって言ってたじゃないか?」


「それでも、武尊君にはやる事があるわよ」


 北村は、そう言いながらスマホで友美達の現在地が表示されている地図を見せて来た。この地図は、ジャージに付いているGPSで居場所が把握できるアプリだそうだ。


「これで、私達を含めた参加者全員の位置が全て分かるのよ」


「それで? 俺はどうしろって言うんだ?」


「簡単な話よ。これは、私の権限で相手の位置まで把握できるのよ」


 北村は、このゲームに深く関わっている事を利用して運営や相手に悟られない様にハッキングしていた。そして、それらを監視しながら友美達に電話を繋げて指示を出す事を北村から提案された。


「と言う事は、これを利用して友美達に指示をしろって事か?」


「そう言う事よ。嫌かしら?」


 しかし、俺は気が引けてすぐに頷く事ができなかった。何故なら、このゲームで失敗ばかりしているのに責任が重い役割ができる訳が無いと思ったからだ。それに、現場に居ない者が偉そうに指示を出すのは納得がいかなかった。


「それなら、実際に現場に行ってみたら?」


「でもよ、リーダーの俺が出ると一番に狙われるんじゃ無いか?」


「リーダーだからこそよ。取り敢えず、私がボスの役目を果たすわ」


 北村は、俺が現場に行って北村の指示を聞きながら皆んなを引っ張って行くと言う役目を俺に伝えてきた。それに、俺のチーム専用の銃がまだ見つかっていないのでそれらを探すと言う役割も含まれていた。


「良く分からねぇけど一度やってみるよ」


「そうね。私が全てを監視しているから大丈夫と思うのだけれど、万が一の事もあるから現場には行ってみるべきね」


 北村は、俺が現場に迎う事で現場に居る人達の団結力が強くできると考えを伝えてきた。もし仮に、俺が武器を獲得できずに相手と対面してしまったらいけないので俺の武器が見つかるまで予備として北村の銃を使う事になった。


「それじゃあ、私といつでも話せる様に通話しておきましょ」


「分かった」


「それと、万が一の為に私の声が周りに聞こえない様にイヤホンでもあげるわ」


「え? そんな物まであるのか?」


 北村は、サバイバルイベントで獲得した拠点道具の中に連絡用スマホと接続できるワイヤレスイヤホンを俺に渡してきた。なので、俺はそれを受け取って外に出た。


「うわ、色んな所に電気が付いてるのか」


 俺は、外に出ると色んな所に電球が辺りを照らしている事に気が付いた。なので、サバイバルイベントの時よりも明るくなっている事に安心しながら北村が指示する場所へと迎った。


 しかし、つい先程まで雨が降っていたので地面が濡れて足元が滑りやすい状態だった。それに、足音や足跡が目立ちやすいので相手に勘付かれる可能性も考慮しなければならないと頭がよぎった。


「そこを、左に曲がると塚田さんと出会えると思うから確かめてみてくれる?」


「分かった。だけど、少し暗くて視界が悪いから遅くなるかもしれねぇ」


「良いわよ。ゆっくりで構わないから敵にバレない様に頼むわ」


「あぁ、任せろ」


 北村は、俺に現場の状況を尋ねながら最善策を模索していた。北村によると、俺の居場所から一番近いのが友美だった。なので、北村は友美と合流して次に嶺城達の背後を狙う為に回り道をして欲しいと伝えてきた。


「でもよ、他の連中は大丈夫なのかよ?」


「そうね。今の所は、誰も接触は起きてなさそうよ」


 北村によれば、このイベントが始まって一度も戦闘が起きていないそうだ。しかし、嶺城のチームである川添と赤坂が不規則な動きばかりしているので北村は警戒していた。そして、嶺城と高宮、園崎、山路の四人はエリアの端の方で何かしているそうだ。


「何でしょうね。こう、武器とか探している様には見えないのよね」


「分かった。取り敢えず、友美と合流してからその事を伝える」


「えぇ、頼むわ」


 そして、俺は歩き続けていると北村から友美が居るのか質問された。しかし、辺りを見渡すと人が居る気配を感じなかった。なので、俺はその事を伝えると北村は少し取り乱した感じで友美が近くに居る事を訴えてきた。


「可笑しいわね。もしかしたら、相手に捕まって位置情報が分からない様にされているのかもしれないわね」


「そう言えば、サバイバルイベントの時もそんな事があったな」


 俺は、サバイバルイベントの時に友美が嶺城達に捕まったてGPSだけ抜き取られていた事を思い出した。なので、不安感が強くなるのを感じながらも念頭に探し回った。


「誰だ!?」


「うぉ!?」


「武尊!?」


「友美!?」


 すると、友美がいきなり出てきて俺に銃口を向けてきた。しかし、友美は俺だと言う事が分かった途端に持っていた銃を下ろして俺の側へと来てくれた。


「良かった……。友美、無事だったんだな」


「そうだけど、なんで武尊が居るんだよ?」


 友美は、自分達の色をした赤色の銃を見つけてからその場で隠れていたそうだ。しかし、俺がここに来る事を聞いていなかったので混乱していた。なので、俺は北村が友美の位置を把握して俺に行かせた事を友美に伝えた。


「そうだったのか。それなら、良かったぜ。仲間が来てくれた事で少し気持ちが楽になった気分だ」


「確かに、こんな暗闇の中で一人で居るのは怖いもんな。だけど、これから俺らで動く事になるから余計に気を配らなくちゃいけないぞ」


「あぁ、分かってる。それより、なんで青色の銃なんだ?」


「これは、俺らの銃が見つかるまで北村に借りているんだ」


「理由は分かった。とにかく、先を急ごうぜ」


「あぁ、分かった」


 このイベントは、日が明ける午前五時頃までを目安としているとの事だった。なので、俺らはそれまでの間に最下位を脱出する事を目標として攻め込む事を誓った。

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