第29話 就職先

「あ、目が覚めたわよ」


「おい!? 武尊、大丈夫か!?」


 俺は、気が付いたら友美と北村に見守られながら気絶していた事が分かった北村は、俺が崖崩れに飛び込んだ後に気を失っていた事を告げてくれた。しかし、俺はいつ気絶したのか記憶に無かった。


「それより、森さんは?」


「森さんは、あそこで元気に回復してるわよ」


 俺は、森さんがどうしていたのか気になったけど元気を取り戻していたので安心した。それに、俺が崖崩れに飛び込んだ後は皆んなで探し回ったとの事だった。そして、武林が先に俺らを見つけたので園崎達にバレない様に立ち去ったそうだ。


「そうか……。良かった……」


「武尊君のお陰よ。ありがとう」


 北村は、森さんを取り返した事ができたのは俺のお陰だと言ってくれた。しかし、その後に俺が崖崩れに飛び込んだ事を咎めてきた。北村は、俺が死んでいないかと心配してずっと探していたそうだ。


「す、すまない」


「そうだぜ、武尊。お前が死んじまったら私達は一緒に居れなくなるだろ?」


 友美は、俺が目を覚ますまで北村から何があったのか聞いていたそうだ。なので、友美は俺が無茶をした事を聞いて自分の不甲斐無さを嘆いていた。


「友美、本当にすまない。お前がいつまでも帰ってこなかったから心配になってよ……」


「いや、私が悪いんだ。私がしっかりしていれば武尊がこんな目に会わなかったんだ」


「何をクヨクヨしてるのよ!」


 俺らは、お互いに心配をかけてしまったので謝罪をし合っていた。すると、北村がそんな俺らに喝を入れてきた。北村は、俺らが結婚を考えている関係を知っているからこそ俺らに怒声を浴びせているそうだ。


「これからは、夫婦として頑張らなきゃいけないんだからね! しっかりしなさい!」


「な、なんで知ってるんだよ?」


「すまない。この事を言ったのは俺なんだ」


 友美は、北村が俺らの関係性を知っている事は驚いていた。しかし、北村に話してしまったのは俺なのでその経緯を友美が理解できる様に意識しながら説明した。


「そうだったのか……。でも、私達は北村さんの所有物になるのは抵抗があるな」


「あれは、言葉の綾みたいなもんよ。実際は、私の管理下に置きたいだけなの」


 北村は、俺らが結婚するに連れてこれからの計画も北村と共に考えていきたいと言う事だった。それに、北村は俺をこのゲームの運営係員に就職させたいと言う事も告げていた。


「まぁ、悪い様にはしないと約束するわ」


「あぁ、約束してくれ。武尊の姉妹もできれば悪い様にはしないでくれ」


「それはできないわ」


 北村は、俺の姉妹がしてきた事を友美に説明した。友美は、俺の姉妹が北村の兄弟にしてきた罪を聞いて黙っていた。しかし、北村はこのゲームを通じて世の中の男女の在り方を学ばせる為の復讐だと伝えた。


「とにかく、武尊君と塚田さんには何も悪い事はしないと約束できるわ。でもね、武尊君の姉妹だけはやらないといけない事があるのよ」


「そ、そうなのか……。だ、だけどよ、武尊はそれで良いのかよ?」


「まぁ、あいつらがやった事だからな。俺もあいつらのせいで女性が嫌いになっちまったからな」


 俺は、家の中で女性が優遇される環境が大嫌いだった。それに、その環境で調子に乗った瑠璃達が他の人達にまでも迷惑をかけているのでこのゲームで教育させる事を考えていた。


「そうか。武尊が良いならそれで良いや」


 友美は、あくまでも姉妹がこれからを生きて行く上で教育させる為にこのゲームで復讐すると言う北村の意思を尊重していた。しかし、それが行きすぎてしまわない事だけが気がかりになっていた。


「なら、塚田さんも武尊君と一緒に就職しないかしら?」


「えぇ!?」


 北村は、友美が心配していたので運営係員に就職する事を勧めていた。友美は、それを聞いて気になるなら自分で確かめた方が良いと判断したそうだ。俺は、友美の就職先も決まった感じがして少し癒されていた。


「ふふふ。これで、平本夫婦は未来安定だね」


 北村は、自分もこのゲームが終わったら運営委員会の一員になると俺らに伝えていた。それに、北村は自分の計画が少しずつ進んでいる事に安心しているそうだ。


「取り敢えず、このゲームが終わったら今後の事について話し合いましょうね」


 北村は、その言葉を残して俺ら二人の時間を渡してくれた。そして、北村は席を外した後に俺は改めて友美に気持ちを伝える事にした。何故なら、俺が気絶している間にずっと側で看病をしてくれたからだ。


「何を言ってんだよ。武尊も私を心配してくれてたから北村さんに助けを求めたんだろ?」


 友美は、自分から長谷川さん達を助けると言っておいて相手の策略に引っ掛かってしまった事を根に持っていた。しかし、俺は友美の事がかっこ良く見えたので別に情け無いとは思っていない事を伝えた。


「武尊にそんな事を言ってくれて嬉しいよ。ありがとな」


「こちらこそありがとな。まぁ、これからは無理をしない様にしろよな」


「なるべくそうするよ」


「そう言えば、俺らの拠点道具はどこに行ったんだ?」


「あ、忘れてた」


 俺は、友美と一緒に見つけた場所に拠点道具と食料品を置きっぱなしにしていた。しかも、俺はその事をいきなり思い出して友美に問いかけると友美も忘れていたそうだ。


「取りに行かなくちゃいけないな」


「友美、今度は二人で行こうな」


「分かってる。でも、北村さんに言っておかないといけないだろ?」


 そして、俺は起き上がって友美と二人で食料と拠点道具を取りに行く事を北村に伝えた。北村からは、二人で行くよりも牧野をボディーガードとして連れて行く事を勧められた。


「じゃあ、行って来るわ」


「もう外は暗いから気を付けて行きなさいよ」


 こうして、俺らは拠点道具を取りに行く事になった。しかし、外はもう夜の八時を過ぎているので真っ暗だった。なので、牧野をボディーガードとして連れて行く事になり、ライトを一人二個持たされる事になった。


「北村って、意外と過保護なんだな」


 俺は、そう思いながらも友美と牧野の三人で暗闇の中を進む事にした。

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