第28話 園崎の企み

 それから、俺達は友美と長谷川さんを北村の拠点に置いて牧野と小田部に看病を任せた。そして、俺と北村と武林の三人で園崎が牛耳っているチーム・イエローの拠点に迎った。


 チーム・イエローの拠点は、嶺城の拠点より更に西側に歩いた先にあった。しかし、その場所は俺と友美で築いた拠点よりもかなり位置が高い場所に建てられているそうだ。


「はぁ……。はぁ……。こんな悪天候でこんな坂はキツすぎる……」


「武尊君、もうすぐ着くわよ」


 北村は、そう言って俺の背中を押して歩かせた。俺は、重すぎて止まりかけた足が自然と動ける様になったのを感じて北村の優しさに気付いてしまった。


 そんな感じで、俺らは森さんが連れ去られた場所に着いた。そこは、拠点が強風などで崩れない為に周りの木を縄で固定しており、広場みたいなスペースも見受けられた。


「ここに森さんが居るんだな」


「えぇ、そうよ。嶺城さんに教えて貰った通りで助かったわ」


 北村は、嶺城にチーム・イエローの居場所を事前に教えて貰っていた。しかし、北村は嶺城から情報を聞くので疑いながら脅して問い詰めていた。なので、それが成功して事実な情報を聞ける事に安心していた。


「でもよ、これってダミーとかじゃないだろうな」


「まぁ、嶺城さんにもダミー情報を伝えていると言う可能性はあり得るわね」


 北村は、そう言いながらも先頭に立って堂々と立ち尽くしている拠点に入ろうとした。すると、そこには下着姿で気絶している森さんが一人だけ居た。なので、北村は慌てて森さんに寄り添って自分のジャージを羽織らせた。


「今すぐ、ここから立ち去るわよ」


 北村は、危険を察知したかの様に焦りながら俺らに警告していた。なので、俺らも森さんを抱えた後に立ち去る事を選んだ。しかし、拠点から出た先にはチーム・イエローのメンバーが全員待ち伏せていた。


「こんにちは、皆さん。どうして、こちらに来たんですか?」


「そんな白々しい反応してないで本性を表したらどうかしらね?」


 すると、山路と腕を組んでいた園崎が北村に言われた事ですぐに目の色を変えてきた。そして、園崎は福永と江頭に森さんを取り返す様に指示した。


「北村さん、困りますよ。仮にも、僕は園崎家の次期家主なんですよ?」


「ふふふ。でも、そんな貴方が女性を拐う様なみっともない事をしていて宜しいのですか?」


「そうですか? 少なからず、男性を拐って無理やりゲームに参加させた貴方と同じ事をしているまでなんですがね」


 北村は、園崎の言葉に何も返せなかった。確かに、北村達のやっている事は立派な犯罪行為なので俺も北村の味方にはなれなかった。しかし、今では協力関係にあるので北村には言い返してほしかった。


「取り敢えず、彼女を返して下さい」


「それは、こっちのセリフだ!」


 俺は、同じメンバーである森さんを福永があたかも自分の物みたいな言い方をしているのが気に入らなかった。なので、福永に苛立って問い詰めようとしたが、武林に肩を掴まれて後ろに下げられた。


 すると、福永が俺に向かって回し蹴りを仕掛けてきた。俺は、こんな悪天候の中でも体勢を整えれる福永の体幹に驚かされた。それに、武林が止めてくれたお陰で当たる事は無かったと思うと鳥肌立ってしまった。


「北村さん、貴方は約束しましたよね? 僕の計画に邪魔をしないとね」


「それは、このゲームが終わった後の話をしていませんでしたかしら?」


「はぁ……。貴方は間違ってますよ。このゲームが終わった後にレッドの方達が借金を背負わせる様に協力するんですよ?」


「その事と悪天候の中で女性を下着姿で気絶させておく事の何が関係しているのかしら?」


「女性だからいけないんですか? だったら男性なら良いんですか?」


「そ、そう言う事じゃないわよ」


 北村は、園崎に苦戦しながらも森さんを抱えている俺に逃げる様に促してくれた。なので、俺は森さんが風邪を引かない様に急いで北村の拠点まで逃げる事にした。


「そうはさせませんよ」


 すると、江頭がそう言いながら俺の逃げ道を塞いで来た。俺は、驚いて踏み止まろうとすると躓いで地面に尻を付いてしまった。そして、江頭が俺の顔面に目掛けて蹴り飛ばそうとしてきたので思わず目を閉じてしまった。


「おい! 今のうちだ! 逃げろ!」


 俺は、声が聞こえたので目を開けると武林が江頭の動きを止めていた。なので、俺は起き上がると逃げる事にした。しかし、今度は福永が北村を押し返して俺の前に立ち塞がった。


「くっ! 流石だわ……。武尊君、良いからここは私に任せてくれる?」


「で、でも、お前……。めっちゃ泥だらけじゃないか」


「滑って転んだだけよ。私を見くびらないでくれるかしら?」


 北村は、片腕を抑えながら俺に対して強がっていた。しかし、顔はかなりキツそうな状態なのが分かる程の表情をしていたので安易に逃げる事はできなかった。それに、山路と園崎も森さんを取り返そうと俺に近付いてきた。


「お前は、森さんに何をさせたいんだよ!?」


「貴方には関係ない事だよ」


「今は、チームメイトだから関係あるんだよ」


 しかし、園崎は俺の質問に答える様子を見せてこなかった。そして、園崎は江頭を呼んで俺から森さんを取り返す様に指示してきた。なので、俺は近付いて来る江頭から離れる為に近くにある崖まで走った。そして、俺は江頭に追いかけられながらも思い切って近くにある崖崩れに飛び込んだ。

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