第27.5話 緑の暴走

「おら! 話しやがれ!」


 嶺城慶太は、一人で長谷川尚輝を助けに来た塚田友美を同じチームメンバーと協力して捕縛する事に成功した。そして、友美のジャージを脱がして森の茂みの中に捨てた後は拠点道具の中に入っていた縄を使って手足を縛った。


「早く話さないと楽になれねぇぞ!」


 嶺城は、そう言いながら身動きが取れない友美に覆い被さって顔面を殴った。友美は、嶺城から自身達が築き上げた拠点場所と平本武尊の居場所を脅されながら質問されていた。


 しかし、友美は武尊を守る為にどんな痛みも黙って耐え忍んでいた。このイベントは、敵チーム同士の争いが許可されているので参加者が重症にならない限りは続行される。


「このイベントはな、お前が死ななければ俺らは反則にならねぇんだよ」


 嶺城は、殺人が起きた場合にゲームが中断されて勝敗が分からなくなると仕組みを友美に伝えた。そして、嶺城は友美に自身の内部事情を一部伝えた。


「俺には、バッグに大きな組織があるんだ。それはそれは、大きくて警察では手がつけられない程にな。だから、このまま言わなかったらこのゲームが終わった後にお前らが社会復帰できない程にしてやるぞ」


 友美は、嶺城の脅しにかなりの恐怖心が芽生えてしまった。何故なら、友美はこのゲームが終わって武尊と結婚を考えていたからだ。しかし、嶺城の言っている事が本当になると武尊との結婚以前に学校生活の事や家族との関係も危うい事になってしまうと頭がよぎった。


「さぁ、話せよ。話して楽になれよ。そうしたら、お前らはいつも通りに暮らせるんだぜ」


 嶺城は、友美がこちら側に来る事を予測して待ち伏せをしていた。なので、背後を狙って襲う事で友美に少しずつ恐怖を感じさせる事ができていた。


「私は、お前なんかに負けねぇからな」


「無駄口叩くな!!」


 嶺城は、友美の言葉に苛立ちを覚えて何度も顔を殴った。友美は、嶺城の脅しに屈しない様に手を強く握りしめて恐怖心を抑えていた。しかし、嶺城は友美が少しずつ恐怖に耐え切れなくなっているのを感じていた。


「ふん。まぁ、強がる女は嫌いじゃねぇな」


 嶺城は、そう言いながら友美の太腿を触り始めた。友美は、嶺城が自身の身体を触る事で鳥肌が立つのと同時に声を荒げた。しかし、嶺城は抵抗を始める友美を抑え込む為に川添龍之信と赤坂美知瑠の二人を呼んだ。


「おい!? 辞めろぉ!? そんな事をしても武尊の居場所なんか言わねぇからな!?」


 友美は、嶺城達に身体を抑え付けられながらも必死に抵抗した。しかし、嶺城は川添と赤坂の他に高宮梢を呼んで三人係で身体を必死に抑え付けた。そして、嶺城はそんな友美を弱らせる為に川添に棍棒を持って来させて身体を傷み付けた。


「おら!! 黙れぇ!! おらおら!!」


「うがぁぁ!!」


 嶺城は、声を荒げる友美を見て興奮を覚えながら腹部と顔面を交互に棍棒を振っていた。そして、徐々に弱って来た友美を見ると嶺城は近くに座り込んでいる長谷川を来させた。


「長谷川!! 早く来い!!」


 こうして、長谷川は嶺城に脅されながら弱っている友美の側に行かされた。すると、嶺城は長谷川に友美の身体を舐める事を強要した。そして、嶺城は抵抗した長谷川の顔面を殴って脅迫した。


「お前が奴隷にならねぇとよ! こっちがめんどくせぇ事になるんだよ!」


 嶺城は、そう言いながら長谷川を従わせようとした。長谷川は、自身の背中が赤く傷付いて出血してしまう程に痛め付けられていた。それでも、長谷川は嶺城の脅しに抵抗して友美から遠ざけようとした。


「くそが!! お前ごときの分際が調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」


 嶺城は、怒り叫びながら長谷川の背中に棍棒を叩き付けた。すると、友美は長谷川に自身の身体を舐める様に伝えた。


「がはは!! マジかよ!! お前は、こんな奴に舐められてぇのかよ!?」


「ちげぇよ!! お前が脅すからだろ!!」


 友美は、眼前で長谷川が痛め付けられている姿を見せられる事で耐え切れなくなった。なので、その事を嶺城に言う事で屈しない姿を見せつけた。しかし、友美の勇姿に気に食わなくなった嶺城は長谷川の髪を引っ張りながら友美の身体に近付かせた。


「おらぁ!! 長谷川、やりやがれ!!」


 嶺城は、怒り狂いながら長谷川の頭を友美の身体に押し付けた。友美は、長谷川の顔が身体に触れてしまう瞬間に怯えて目を瞑りながら耐えようとした。


「そこまでよ!!」


 すると、北村香苗が大きな声で嶺城達の脅迫を止めに来た。しかも、北村と共に武尊が一緒に友美を助けに来た。北村は、武尊に助けを要求されたので協力して探した。そして、嶺城達が築いた拠点から大声がしてきたので一斉に駆け付けた。


「友美!! 大丈夫か!?」


「武尊……。良かった……。良かったよ」


 武尊は、倒れている友美の上半身を抱えて声をかけた。友美は、そう言いながら武尊の胸の中で安心して気絶した。武尊は、安心そうな顔で気絶した友美を見て涙が止まらずに優しく抱きしめた。


「ちょっと、嶺城さんはやり過ぎなんじゃ無いかしら?」


「ちっ! こっちだってな、本気でやらねぇといけないんだよ」


「だからってよ! ここまでやらなくても良いだろ!」


 武尊は、嶺城が自身のメンバーを傷付けた事に怒り狂って叫んだ。しかし、嶺城は怒り叫ぶ武尊に苛立って手にしている棍棒で武尊を殴り飛ばした。武尊は、勢いが強すぎて思わず抱きしめていた友美を手放してしまった。


「もう辞めなさい。武林、お願い」


「はい」


 北村は、興奮状態になっている嶺城を止める為に背後にいる武林を呼んだ。そして、嶺城は武林が止めに来た事で潔く焦る感情を鎮める事にした。


「とにかく、問題になる様な行動とか発言は辞めてくれるかしら? このイベントは、生放送じゃないけれど放送はされるのだからね」


 北村は、今回のイベントが編集されて放送される事を伝えつつも嶺城に指摘した。嶺城は、抵抗ができない北村家の時期家主である北村香苗に言われた事で冷静になった。


 そして、嶺城は盗んだジャージなどを本人の手元に返した。武尊達は、嶺城から捕らえられていた友美達を解放された事で急いでその場から立ち去る事にした。


「あれ? 嶺城さん、森渚沙さんはどこへ行かせたのかしら?」


「さぁな。ただ、一つだけ言える事があるぜ。それはな、園崎家には気をつける事だ」


 その刹那、武尊と北村は森渚沙がどこに居るのかを把握する事ができた。それは、山路晃誠達の所に連れて行かれたと言う事だった。なので、武尊達は嶺城の不気味な笑い声を聞きながら山路達を探す事にした。

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