第24話 サバイバルゲーム

 それから、俺達は男女に別れてマッサージをし合って疲れを極限まで落とした。俺は、長谷川さんの担当をして友美は森さんの身体をほぐしていた。


 そして、次の日が経過して俺達はフェミニスト君の指示で体操服に着替えて山の方へと集まる事になった。これからは、チームで協力をしてサバイバルゲームをやらなくてはならなくなった。ちなみに、このゲームの終了時間は夜の十時までとなっているそうだ。


「もちろん、男女と言う概念を忘れて四人で協力し合うんだよ」


 フェミニスト君は、そう言ってこのイベントの説明を始めた。このイベントは、拠点を築いたり食糧を調達したりして期限日までにどこまで生活をできているかによって判断されるそうだ。


 しかも、この場所は無人島なので人が住んだ形跡は一つも無いそうだ。それに、熊や猪と言った生物は存在しておらず、あくまでも昆虫ぐらいしかこの無人島には居ないとの事だった。ちなみに、この無人島の広さは東京ドームの約七十個分の広さだそうだ。


「なお、相手チームの邪魔をしても僕達からは何も言わないよ」


 フェミニスト君によると、相手チームから作り上げた拠点を壊されたり食料を奪われたりされても生活の一部として判断されるとの事だった。


「それに、自然はとっても恐ろしいからね。哺乳類は居なくても危険な昆虫類や危険な場所などもあるから皆んなで協力するんだよ」


 フェミニスト君は、そう言って食料品が支給されてる場所などが書かれている地図を各リーダーに渡して行った。俺は、その地図を見てどこに拠点を築いて良いのか分からなかった。


 しかし、それはチームで話し合って拠点を築く場所を決めたりその為の道具品の支給を受け取りに行ったりしなければならないとフェミニスト君から告げられた。それに、チーム分の拠点道具しかないので壊されたり盗まれたりされても予備は用意できないそうだ。


「そんな事も有りなのかよ」


「だからこそ、皆んなで協力するんだよ」


 そして、フェミニスト君は協力し合う為のお助けグッズとしてゲーム専用の連絡スマホを一人一台ずつ貰った。このスマホは、自分のチームメンバーだけではなく今回の参加者全員の名前が連絡先に登録されていた。


「そうだ! もしも万が一の事があってはいけないから監視用のヘリコプターが五台飛んでるからね」


「なんか、意外としっかりしてるな」


 俺は、このゲームの運営側がしっかりとしているのを聞いて少しだけ信頼度が高まった気がした。しかし、このイベントは生活する為の奪い合いなので気を引き締めなければならないと思った。


「よぉーし! では、早速始めるよ」


 フェミニスト君は、そう言ってイベント開始の合図をかけた。俺は、いきなり合図をかけられたので戸惑いながらも他のチームの人達が動き出したのを見て友美達にも声をかけた。


「どこに拠点道具の支給品があるんだ?」


「青い丸が描かれている所だ。そして、赤い丸が食料品の支給場所だ」


 俺が貰った地図には、支給品がある場所が青い丸と赤い丸で描かれていた。そして、六時間毎に食料品が支給されるので速く来た者から好きなだけ食料を確保する事ができるそうだ。


「青い丸と赤い丸が四つずつ描かれてるけど何処に迎えば良いんだ?」


「それは決まってないらしい。とにかく、近い場所から迎うぞ」


 俺は、地図の裏側にこのイベントの説明が詳しく描かれているのでそれを見ながら友美の質問に答えた。しかし、近くの支給品はとても足場が良過ぎてすんなりと歩けていた。なので、俺は友美にもう少し先の支給場所に行く事を提案した。


「確かに、その案は良さそうだな。他の連中も取りそうだしな」


「でも、そこって足場が悪いと思いますよ」


 すると、長谷川さんが自分で気付いた地図の特徴を俺らに教えてくれた。俺が目指そうとした場所は、黒色の円が何個も囲られている所にあった。しかも、その途中には食料の支給場所があった。


「ちょっと危ないけどそこにするか」


「でも、私はちょっと無理かもです」


 すると、森さんが少し自信がなさそうに俺らに訴えてきた。俺は、それを聞いて二人一組に別れる事を思いついて皆んなに提案した。


「それ良いかもな」


「そうですね。だとしたら、男女一名ずつに別れてみますか?」


「そうしましょう。なら、俺と友美はペアになって拠点道具と食料を確保します」


「それって、また平本君達が負担の大きい役回りになってませんか?」


「そうですよ。それなら、私が塚田さんと二人で食料調達をします」


「いや、そんな事はありません。長谷川さん達には、それこそ重大の任務を任せたいと思います」


 俺は、仲間思いの長谷川さん達に自分が任せたい任務を伝えた。それは、拠点を築く為の場所を確保する事だった。この仕事は、どんなに道具や食料を確保できても拠点を築く場所が無いと意味が無いと思ったからだ。


 それに、場所によっては敵側に情報が漏れて食料が盗まれたり拠点を荒らされたりされかねないのでこの仕事こそが大事になってくる事を伝えた。


「そうだったんですね。なら、私達もやり甲斐を持ってできますね」


 森さんは、俺が伝えた仕事にかなり満足した様子で長谷川さんと二人で拠点の場所を探す為に俺らの元を離れて行った。そして、万が一の事があれば連絡用のスマホで俺らに連絡する事も伝えて見送った。


「よし、後は俺達がしっかりと皆んなの為に道具を確保しなきゃな」


「なんか、武尊は逞しくなったな」


「そ、そうか? あ、あれだ。昨日のイベントで悔しかったから張り切り過ぎてるかもな」


「そうか……。でも、今頃、二人は武尊の事を褒めてるぜ」


「だと良いな。でも、これだけは間違い無いと思うけど、やっぱりお前と居ると自信が湧いてくるんだ」


 俺は、友美のお陰でこのゲームを乗り切ろうと頑張ってこれた。なので、俺はこの調子で友美と深い仲を築いていきたいと思っている。それに、この任務は若くて体力のある俺達が行かないとあの二人には荷が重すぎると思った。


「そんな事まで考えてたんだな。やっぱり、人って男女関係無く環境で変わるんだな」


「そうだな。俺も驚いているよ」


 俺は、そう言いながら足場の悪い場所に足を踏み込んだ。そして、俺はチームの為にも友美と協力して拠点道具と食料の支給場所に気を付けて迎う事に集中した。

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