第19.5話 壮絶な戦い

 それから、フェミニスト君はチーム・レッドの代表者である平本武尊が過度なストレスで倒れた事により、二試合はチーム・レッドの不戦敗として幕が降りた。


「じゃあ、チーム・ブルーが勝ったので次はチーム・グリーンと対戦して貰います」


 フェミニスト君は、そう言ってチーム・グリーンの代表者二人を準備させた。チーム・グリーンの代表者は、リーダーである嶺城慶太と川添龍之信の男性二人だった。


 嶺城は、高校生の時からスポーツジムに行くなどして恵まれた体格を鍛えているが、他に習い事は何一つしていなかった。しかし、喧嘩も強い方で複数人を相手に一人で立ち向かう程だった。ちなみに、川添も習い事は何もしておらず嶺城と共に不良グループを率いていた。


 しかし、今ではその不良グループは嶺城の父親が牛耳っている暴力団と合併していた。しかも、東京都の警察は手が出しづらくて苦しんでいる程に巨大化しており、その権力を活用して北村家を支えている。


 嶺城は、今の組長の後取りとして数年間は組織を支えていた。しかし、ある時に不登校にさせた長谷川が普通に社会復帰している情報を耳にした。嶺城は、その事が気に食わなくなってしまい、もう一度長谷川を虐めて社会復帰させない程に苦しめる事にした。


 それから、嶺城は第二回戦の相手である武林とリングで対面する事になった。武林は、先程の試合で体力をあまり使わなかったので調子が良いままだった。そして、嶺城は先程の試合を観て少しだけ勝つ気が失せていた。


「なぁ、お前らもチーム・レッドの奴らを虐める為に居るんだろ? それだったら俺らと協力しようぜ」


「お前は、確か『嶺城会』の次期会長だな?」


「そうだぜ。お前も北村家を支持する一族なんだから返事は考えて分かるだろ?」


「そうだな。だが、何でお前はあの長谷川と言う奴が憎いのか?」


「気に食わねぇんだよ。だから、俺はあいつをこのゲームに参加させたんだ」


「ふん。だが、お前もプライベートの一部始終を晒されてたじゃねぇか?」


「いやぁ、あんなのはクソどうでも良い情報なんだよ。まぁ、俺が指示して出させたんだがな」


「面白い奴だ。しかし、お前も北村家を支える一族なら分かるだろ? そんな事に付き合ってる暇は無いとな」


 武林は、何一つ動じる事なく無表情のまま嶺城の提案を拒否した。嶺城は、武林の返事を予想していたので北村香苗の狙いが何なのかを確認する事ができた。


 嶺城は、このゲームに参加する前に北村と園崎の三人で打ち合わせをしていた。北村は、二人の兄弟の復讐を果たす為と言う名目で武尊を参加させた事を嶺城と園崎に話していた。


 しかし、嶺城は北村から不思議なオーラを感じており、復讐以外にも計画がある事を予測していた。なので、嶺城は武林の拒否反応を聞いて嶺城家や園崎家にも恨みがあるのだと言う予想が当たったと感じた。


「それでは、第二回戦一試合目を始めます」


 そして、フェミニスト君によってゴングが鳴り響いたので二人は先程の会話を忘れて試合に集中した。武林は、塚田を戦闘不能にさせた拳で嶺城に攻撃を仕掛けた。嶺城は、その攻撃に素早く反応して避けた。


「おっと! 危ねぇ……」


 嶺城は、武林の攻撃の速さに驚いて少し距離を取った。しかし、武林は躊躇う事なく距離を詰めて攻撃を仕掛けた。すると、嶺城を殴った音が響いて周りの驚いた声も響いた。そして、嶺城が武林の重い拳を何度も受ける事で身動きができなくなり審判が中断させた。


「レディーファイッ!!」


 すると、試合が再開して武林は距離を即座に詰めたが、嶺城はそれよりも速く距離を詰めて武林に一矢報いろうと拳を振り上げた。嶺城が殴った音は、武林が鳴らした音よりも凄まじく響いた。そして、武林はその攻撃をまともに受けて少し蹌踉けてしまった。


「うぐっ!?」


「おら! もっとやるぞ!」


 嶺城は、先程の一撃で自信が身に付いて余裕が生まれた。しかし、武林は嶺城の様子に油断が生まれたと判断して強烈な一撃を放った。すると、嶺城は顔面に直撃して地面に尻をついてしまった。


「おっとぉー! 試合終了だぁー!」


 こうして、武林は嶺城の攻撃に痛みを感じながらも嶺城を撃破した。嶺城は、悔しい気持ちを堪えながらゲームスタッフに案内されて自身のチーム専用スペースに移動した。


 そんな感じで、もう一人の代表者の牧野も対戦相手である川添を圧倒した。そして、チーム・ブルーはチーム・イエローの代表者である江頭にも勝つ事ができた。しかし、福永だけは牧野を一発KO勝ちをしてチーム・ブルーの全勝を防いだ。


 それから、嶺城はチーム・イエローの代表者である江頭と試合をする事になった。江頭と福永は、園崎家を守る為に作られた家庭で育っており、小さい頃から対人戦の戦闘を叩き込まれていた。なので、嶺城と川添は英才教育を受けてきた二人には歯が立たなかった。


「慶太、お疲れ様」


「あぁ、梢か……。ありがとう」


 嶺城は、中学生の時から同級生として仲が良い高宮梢にタオルを貰った。高宮は、嶺城の妻を含めてチーム・グリーンのメンバー全員と仲が良く中心に居る存在だった。しかし、高宮は嶺城の妻と共に長谷川が虐められる様に仕組んだ犯人であった。


「私達って一位になれるかな?」


「それは無理だろ。もし仮に一位になっても北村家が黙っていられないだろうな」


 高宮は、一般家庭で育ったので嶺城の様な貴族の馴れ合いがあまり理解してなかった。しかし、それでも高宮は一位にならなくても長谷川が最下位になって嶺城の奴隷になれる事を企んでいた。


「それでは、今から二時間の休憩を挟みますので皆さんはお休み下さい」


 すると、フェミニスト君から休憩のアナウンスが流れた。なので、嶺城は同じメンバー全員を連れて自身達の楽屋に戻った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る