第18話 本当のゲーム
それから、次の日が経過して俺達はフェミニスト君に呼ばれて会場に集まる事になった。俺達は、昨日の間に育児や家事などを森さん以外の三人で終わらせて夜中の二時に寝る事ができた。しかし、塚田は赤ちゃんが夜泣きをして朝方の五時ぐらいから目が覚めていたらしいので全く寝れてないと俺らに告げてくれた。
「塚田、ごめんな。お前に育児を任せっきりで本当にすまん」
「いや、構わないさ。だって、武尊は慣れてない料理を一生懸命にやってたからな。こんな状況だし仕方ない」
塚田は、疲れている顔を一つもせずに笑顔を俺に向けてくれた。なので、俺は報われた感じがして少し嬉しかった。しかも、森さんが精神的に病んでいるのを気にかけたり長谷川さんを励ましたりしていた。なので、俺は塚田に癒されているのを感じていた。
「それではー! 昨日のイベントの結果発表を行うよ!」
フェミニスト君は、そう言って昨日の育児対決と言うイベントの結果発表を始めた。俺らのチームは、塚田が赤ちゃんの面倒をずっと見ていてくれたお陰で幸福値が『139点/200点』とかなり高いと思える点数を叩き出せた。
「塚田、ありがとう」
「いや、何でだよ。皆んなもやってくれたからだろ?」
「確かに、塚田さんの言う通りですよ。僕と塚田さんが外でポイントを稼いでる間に森さんと二人で面倒を見ていてくれたからですよ」
長谷川さんは、俺が塚田のお陰だと言う事を嬉しい言い方で反対してくれた。なので、俺は納得して森さんにも頑張りを讃えようと思って声をかけた。
「いえ……。私は、何もできませんでした」
しかし、森さんだけは暗い表情をして一緒に喜べていなかった。森さんは、夜は一人だけ寝室でゆっくりしていた。俺達は、それでも森さんの頑張りも含まれている事を告げた。
「まぁ、俺は誰だってミスはあると思うし俺だって昨日の料理は失敗ばかりしたんですよ。でも、それだけ頑張ってんだから少し誇っても良いと思いますよ」
「うぅ……。それでも、辛いんですよ……」
「だったら、その辛さを俺達にも分けて下さいよ。仮にも、俺達はこのゲームの仲間じゃないですか」
俺は、森さんにも自分の良さを誇って欲しいと告げた。確かに、俺達は自分の意思でこのゲームに参加した訳じゃないのでネガティヴになってしまうのも分かっていた。
しかし、俺はいきなり連れて来られた事に関して何も言えない状況を作られているからこそ見返してやりたいと思った。なので、俺は北村達に勝って見返してやると皆んなに決意を表明した。
「良いですね。平本君の言う通りですよ」
「確かに、武尊達も辛い状況だからな。だからこそ、森さんも頑張れとは言わないけど辛いならどんどん言葉にして欲しい」
「は、はい……」
俺達は、森さんに昨日の状態から少しでも回復できる様に気持ちを伝えた。森さんは、俺らの気持ちを理解してくれたお陰で少し表情が柔らかくなった。
「あのぅ〜。もう良いかな?」
すると、フェミニスト君がチーム全体の結果発表が終わったので声をかけてきた。俺は、いきなりの事で訳が分からなったが、フェミニスト君の背後にある大画面に他の三チームの点数が映し出されているのを見て理解した。
北村のチームは、『189点/200点』と俺らよりも高得点を獲得していた。そして、山路のチームは『151点/200点』と言う得点を見て俺達がこのイベントの最下位である事に驚いてしまった。嶺城のチームは、『142点/200点』と俺らより少し得点が高くなっていた。
「俺らが最下位じゃん」
「確かに、私達だって頑張ったのにな」
俺は、塚田と一緒に小声で自分達が最下位の点数を獲得している事に脱力感を覚えた。すると、フェミニスト君は次に各チームの赤ちゃんが記録した俺らの評価を一チームずつ話し始めた。
まずは、俺らのチームは森さんが精神的に病んでしまって担当から外れた事をきっかけに俺ら三人が協力して家事と育児をこなした。しかも、塚田が一人で赤ちゃんを見守っていた事が今の得点に繋がったと理由を述べられた。
しかし、他のチームはメンバー全員が協力して家事と育児をこなしていた。なので、俺らは森さんが欠けた事で減点されて今の点数になったそうだ。
「やっぱり厳しいな、このゲーム」
「そうだな。でも、逆に言えば誰かが具合悪くなった時に協力できたから今の点数に繋がってると思うな」
俺は、ふと本心が口から漏れてしまった。しかし、塚田は俺を励ましながらも森さんを庇っているかの様に述べていた。
そして、フェミニスト君は三日目のイベントに向けての説明を始めた。三日目のイベントでは、今までとは違って身体を動かすのがメインになっているそうだ。
「とりあえず、これからのイベント表を出すね」
男女平等ゲーム(三・四日目)
・ボクシング対決
・サバイバル対決
・チーム対抗戦争対決
フェミニスト君は、そう言って俺らにイベント表を大画面に映し出した。その途端、会場が暗くなってフェミニスト君の周りだけに照明があてられた。
「んな!? 何で暗くなったんだ!?」
「ふっふっふ。実はね、ここからが本当の男女平等ゲームなんだよ」
フェミニスト君は、そう言って大画面から一つの動画を流した。それは、女性が兵士になって男性と共に戦場に駆り出されている風景が映された動画だった。
これは、数年前に他の国が戦争をする事になった時の事だった。俺は、この時に起きた戦争の事を覚えているが、一番驚いたのが兵役経験のある者が男女問わず招集された事に驚いていた。
「こんな感じで、今は世界がどんな時でも男女を平等に扱っている事が分かるよね。でも、今の日本は女性を甘やかしすぎなんだよ。だからこそ、今からのイベントが大事になってくるんだよ」
フェミニスト君は、そう言いながら不気味な笑い声を発していた。すると、大勢のスタッフらしき人物が俺らを別の所へと無理やり連れ出そうとしてきた。
「それでは、別の場所でまた会おう!」
フェミニスト君は、その言葉を残して姿を消し去った。俺は、大勢の人混みに揉まれながら別の場所へと連れて行かれるのを必死に抵抗した。
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