第15話 山路の性癖

 それから、俺達は合計で二十問の問題を答えた。結果としては、二十問中十二問も正解する事ができた。しかし、北村チームは一問も間違えずに最高得点の『200ポイント』を貰っていた。そして、山路のチームは『190ポイント』を獲得しており、嶺城のチームは『170ポイント』を獲得していた。


「それじゃ! 次のイベントに行く前に順位を発表するよー!」


現在の順位

第一位 チーム・ブルー  900pt

第二位 チーム・イエロー 890pt

第三位 チーム・レッド  420pt

第四位 チーム・グリーン 270pt


俺らは、フェミニスト君によって出された現在の順位を見る事になった。すると、最下位の嶺城との差は僅か『150ポイント』しか点差が開いて無かった事に気付いた。


「これは、まずいですね」


「あ、長谷川さんも気付いたんですね」


「はい。残念ですが、最下位との点差はたったの150ポイントしかありません」


「だけど、次のイベントで頑張るしか無いですよ」


「そうしたいんですが、僕だけでは何とも言えませんよ」


 長谷川さんは、そう言った後に泣き崩れている森さんの方を眺めていた。森さんは、今回のイベントで女性としての尊厳やプライドが崩れ去っている気持ちだと言う事が俺にも分かる程に塚田から慰められていた。


 俺は、北村達に勝って一位を取りたい気持ちがあった。しかし、開幕からずっと一位をキープしている北村のチームとの点差は『480ポイント』と歴然としていた。


「あれれ? 森渚沙さん、どうしたの?」


 すると、森さんと塚田の所にフェミニスト君が現れて森さんに声をかけに来た。しかも、塚田に注意されたのにも関わらず森さんにまた揶揄いに来ていた。


「またお前か」


「その言い方は酷いなぁ〜。僕だってね、心配ぐらいするんだよ」


 フェミニスト君は、そう言って森さんに話しかけていた。しかし、塚田は森さんを庇いながらフェミニスト君から距離を取っていた。すると、フェミニスト君はいじけながら俺らが自主的にこのゲームに参加した事を告げた。


「は、はぁ!? お前は何言ってんだよ!?」


「え? 何って君達がこのゲームに参加したいから来たんでしょ? なのに、現実を叩きつけられたからって被害者ヅラするのはおかしいよね?」


「被害者ヅラも何も、この……。私達は知らないままここに来てんだよ!」


「塚田友美さん、でたらめな事を言っちゃ駄目だよ。このゲームは、あくまでもここに居る全員が参加したいからやってるんだよ」


 すると、フェミニスト君はそう言いながら大画面でこのゲームに参加する為の必要な書類が映されていた。しかも、その書類には俺の字で書かれているので見覚えがないまま立ち尽くしてしまった。


「しっかりと証拠があるんだからね。嘘をついたら駄目だよ」


 俺は、北村が仕掛けたのだと言う事が頭に過ぎったので北村と顔を合わせた。しかし、それは長谷川さんと森さんも同じ事であり、お互いが心当たりがある人達を睨んでいた。


 しかし、フェミニスト君はその事を知っていないかの様な立ち振る舞いで最後のイベントに向けて説明を始めた。最後のイベントは、『育児対決』と言って育児がどんな物なのかを体験する為に開設したイベントだそうだ。


 このイベントは、チーム専用の部屋に戻って各自に与えられた機械化の赤ちゃんの世話をすると言うイベントだった。そして、チームの皆んなで協力して赤ちゃんの幸運値を高めて競い合うと言うイベントであった。


「ちなみにだけど、昨日の生活態度も得点に繋がってるんだよ」


 フェミニスト君は、そう言って大画面に昨日の得点が映し出された。これは、百点満点を基準に査定したそうだ。俺らのチームは、大画面に『89点/100点』と映し出されており、第二位とかなりの高ランキングを知らずに叩きつけていた。


 その他のチームは、第一位に北村のチームが『91点/100点』と俺らより三点も多く獲得していた。そして、第三位に嶺城のチームが俺らより少なめな『71点/100点』を獲得していた。


 しかし、山路のチームだけが『21点/100点』と30点にも満たない点数だった。なので、フェミニスト君は点数の理由を言った。


 それは、山路ともう一人の男性である園崎奏太そのざきそうたの二人が規定された家事を行なっておらず、残りの女性二人に何もかも押し付けていたとの事だった。


「そんな言い方は無いよ。ね?」


「はい。全く持ってその通りです」


 すると、園崎奏太と言われていた男性が山路の左腕を組みながら同じチームの女性二人に問いかけていた。そして、その女性二人は嫌な顔を一つもせずに園崎の事を肯定していた。


「あれれ? でも、女性二人は掃除や料理を全部やらされてたんでしょ?」


「違います。正式には、『やらせて頂いた』の方が正しいです」


 フェミニスト君に弁明していた女性は、江頭美優えがしらみゆと言う名前をした女性だった。江頭は、園崎に脅されていると言う事を感じさせない表情で語っていた。


「それにしても、山路晃誠君と園崎奏太君の二人はその間は何をしていたの?」


「ふん。何も言わなくても分かるくせに」


 山路は、昨日の夜にチーム内でどんな活動をしていたのかフェミニスト君から聞かれたので呆れながら答え始めた。しかし、それは俺らが反応に困る内容の事だった。


「男同士で……。性行為、だと?」


 俺は、思わず声に出して反応してしまった。しかも、それに似た様な反応は他の人達もしていた。しかし、園崎と女性二人は何事も無かったかの様な表情をしており、山路も周りを気にする事なく話を続けた。


 チーム・イエローは、江頭ともう一人の福永恵麻ふくながえまと言う女性の二人が山路と園崎が男性同士で性行為をしている最中に運営に指定された分担をこなしていた。しかし、山路と園崎がチームメイトの女性陣に全て任せた状態で二人だけで夜の営みをして楽しんでいた事が原因で最低点数を取ってしまった。


「昨日のイベントは、男女が協力して家事を行う事を目的としていたからね。男性だけに任せたり女性だけに押し付けたりすると点数は低くなるよね」


 フェミニスト君は、そう言いながら山路達の行いを減点して『911点』から『800点』になってしまった。しかし、山路達は悔しい表情は一つもしていなかった。そして、俺達の点数も昨日のイベントで得た点数が加算されているのを俺達はフェミニスト君によって発表された。


「それでは、部屋に戻ってね。すると、赤ちゃんが居るからその子を皆んなで幸せにするんだよ。最悪な場合、死んじゃうからね」


 フェミニスト君は、さらっと重要な事を言った後に俺らを無理やり部屋へと戻そうとしてきた。俺らは、いきなりの事で慌ただしくなりながらスタッフに背中を押されて部屋の前まで辿り着いた。


「赤ちゃんの泣き声がしますね」


 俺らは、恐る恐る扉を開けるとリビングの方から赤ちゃんの泣き声が聞こえた。そして、俺達はこの赤ちゃんを協力して幸せにしなければならなくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る