第13話 どちらが上か

 それから、森さんは塚田の指示通りに降参宣言を発表した。そして、想像していた通りにフェミニスト君が質問責めを森さんに繰り出していたが、森さんは塚田の指示に従ってその場を切り抜ける事ができた。


「これで、一安心ですね」


「でも、これも北村の思惑通りな気がします」


「まぁ、そんな気はしますけど一番は森さんの気持ちを整える事が先ですよ」


 俺は、北村が森さんを降参させる事を誘導する為に敢えて武林を降参させたのかと疑念を抱いた。しかし、長谷川さんはそんな事よりも森さんの体調を整えた方が良いと仲間思いの提案をしてくれた。


 そして、第一回戦が終了して次に嶺城のチームと山路のチームが対決する事になった。俺らは、その間に第三イベントに向けて休憩する事になった。


「どうやら、このイベントは一チーム一戦までだった様ですね」


「はい。ちゃんと最後まで説明して欲しいと思いましたよ」


 俺と長谷川さんは、チーム専用の楽屋でちょっとした雑談を交えていた。振り返ると、先程の戦いで俺らは100ポイントしか獲得する事ができなかった。しかも、相手が諦めたポイントなので俺らは納得できなかった。


「とにかく、次のイベントに向けて作戦でも練りませんか?」


 俺は、少し静かに過ごしている女性二人にも話をして絆を深めようと提案した。すると、塚田と長谷川さんは予想していた通りに乗ってくれたが、森さんまでもが俺の提案に乗ってくれたので少し驚いてしまった。


 次のイベントは、チーム対抗戦のクイズ形式になっていると楽屋に置いてある説明書に書かれていた。この説明書は、塚田が置いてあると気付いてくれた。


「しかも、クイズの内容はまた男女の事の様ですね」


「どんな感じの内容なんですかね。例えば『空間認識能力は男女のどちらが上ですか?』みたいなかんじかな?」


「この問題の内容でいくと男性って答えなくちゃいけませんね」


 俺は、説明書に書かれている内容で何となく自分の頭の中で考えて例え話を言ってみた。長谷川さんは、俺が例え話で出した問題を予想しながら答えてくれた。しかも、俺と長谷川さんの会話が良かったのか残りの二人も理解した感じだった。


 それから、時間が経過して嶺城のチームと山路のチームの試合が終わったアナウンスが聞こえてきた。聞こえる限りだと、山路のチームが三対一で勝利している様子だった。そして、第二イベントが終了したので現時点での結果表が楽屋にあるテレビ画面に映された。


現在の順位

第一位 チーム・ブルー  700pt

第一位 チーム・イエロー 700pt

第三位 チーム・レッド  300pt

第四位 チーム・グリーン 100pt


 俺らは、北村のチームと山路のチームとの差がかなり離れている事に焦りを覚え始めた。しかも、最下位の嶺城のチームとの差はそんなに変わらないので次のイベントで上位に入れる様に皆んなで決意を語り合った。


「すみません。次の準備をお願いします」


 すると、このゲームのスタッフみたいな人が俺らに次のイベントに向けて準備をお願いしてきた。俺達は、それを合図に指定された場所へと移動する事にした。


 次は、チームで話し合って一つの答えを出すと言うクイズイベントであり、リーダーが纏まった責任を持って表示すると言う仕組みであった。


「それでは! 皆さんが席に着きましたので早速イベントを始めますよー!」


 これから、俺達はクイズボックスと言うチームの色で分かれた指定席に座ってフェミニスト君から出題される問題を答える事になった。


「第一問! 男と女、どちらが子供に対する虐待率が上なのでしょうか? 一分間、話し合って答えを決めてね!」


 早速、フェミニスト君から難しそうな問題が出題された事に思わず驚いてしまった。この問題は、日本政府が実際に報告された虐待件数を調べた物であり、母親と父親のどちらが多いのかを当てろと言う問題だった。


「早速、難しい問題ですね」


 これに関しては、俺だけじゃなくて長谷川達も同じ様に悩んでいた。俺は、男性が良くテレビで虐待している報告を目にしてるので父親の方が多いと思った。


 しかし、長谷川さんだけはテレビの情報を疑って悩んでいた。長谷川さんによると、男性よりも女性の方が感情的になりやすいので虐待率は女性が多いのではないかと推測していた。


「でも、それだけでは情報が足りないと思いますよ」


 すると、長谷川さんの意見に森さんが主張してきた。しかし、長谷川さんは嶺城のチームに女性の記者が女性にとって都合の良い情報を流していると言う事を覚えていた。なので、このままいくと男性と答えて騙されるのではないかと思っているそうだ。


「終了でーす! それでは! チーム代表の方は一斉に答えを出して下さい!」


「後は、平本君に任せます」


 俺らは、考えている時にフェミニスト君から終了の合図が出たので焦ってしまった。長谷川さん達は、チームの代表である俺に任せると言葉を残してくれた。ちなみに、他の代表者は北村と嶺城と山路の三人であった。


 そして、俺はそう言われて解答用のプレートに『男性』と答えを出した。理由としては、北村と言い合っていた時に男性は直接攻撃を得意としていると頭に浮かんだので女性よりも男性の方が目立った虐待が多いのではないかと思ったからだ。


「まずは、チーム・レッドの平本武尊君から理由をお願いします」


 すると、フェミニスト君から理由を聞かれたので先程の理由を語った。しかし、他のチームの解答を見ると全員が『女性』と解答されていた。


「ふーん。そんな感じなんだね」


 俺は、フェミニスト君から嘲笑されてしまったので『男性』と解答した事に恥を掻いてしまった。それだけでなく、俺は長谷川さんが言っていた嶺城のチームに居る女性記者の高宮に騙された感じがして苛立ってしまった。しかも、嶺城は高宮の記者として知っているデータを元に判断をしていた。


「それでは、発表するよ!」


 フェミニスト君は、そう言った後に答えを表示した。答えは、女性が一番多いらしく58.5%と男性よりも32.7%高いとフェミニスト君から語られた。


「まじかよ……。長谷川さん、すみませんでした」


「いえ、私も後押しができてなかったです」


 俺は、長谷がさんの意見に従っていれば正解できていた。なのに、長谷川さんはあたかも自分が悪いかの様に謙虚な反応だったので更に申し訳なく感じた。


「とにかく、次の問題こそは頑張って当てましょう」


「そうですね。答えは、どっちかしかありませんから張り切っていきますよ」


 俺らは、長谷川さんに励まされたので塚田と森さんの二人と共に気持ちを切り替えていくと心に誓い合った。

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