第12話 復讐
それから、俺はフェミニスト君の合図で北村と二試合目を始める事になった。俺は、北村とこんな形で争うのは初めてで少し気が引けているのを感じた。しかし、北村は俺に復讐の牙を向けるかの様な目つきで俺に質問してきた。
「武尊君、そう言えば貴方は女性に囲まれた環境に育ってるわよね?」
「それがどうした?」
「いや、それなら女性の良い所も知ってるんじゃないかなぁって思っただけよ」
「そう言うお前だって男性に囲まれてるじゃねぇかよ」
「そうよ。だからこそ、貴方とは育った環境が似ていると思ったのよ。なのに……」
「ちょっとぉ〜。関係ない話は後回しにしてよね」
フェミニスト君は、北村と俺の言い合いが少しずれ始めているのを察知して横から注意を挟んできた。しかし、北村は表情を変える事なく俺に父親の話をした。
「私の父親はね、男手一つで私達を育ててきたのよ。でもね、私の母親は間男と暮らす為に私達を捨てた後に私達北村家の悪口を周りに言いふらしたのよ」
北村は、母親がやってきた行いが女性特有の間接攻撃であると語った。確かに、男性は直接攻撃を特有としてるのは分かっているが、女性はリスクを背負わずに相手を苦しめるのを特有としていると言う事は改めて理解した。
「それが、女性の悪い所だと思ってるわ。私は、あの女の様にはなりたくないわね」
「だけどよ、それだと男性の良い所が分からないな」
「そうね。でも、男性の場合は女性と違って平和を願っているからこそ直接的になっちゃうのよ」
「なら、そう言うデータでもあるのかよ?」
「データを出さなくても有名な話なのよ。知らないの?」
北村は、俺が求めているデータをあしらって挑発した。確かに、冷静になればこの情報は俺も納得できる。しかし、俺はどうしても北村と争うのは勝てる気がしなかった。
「男性はね、戦争を起こしたんじゃなくて戦場に行かされただけなの。それなのに、戦争に負けると犯罪者扱いなのよ」
「まぁ、そうやって物語る奴らはテレビでよく見るから否定できない」
「素直で良いわね。それに、平和だからこそ女性が輝くのよ」
「でも、平和運動は男女でやってるからな。男性の良い所には繋がらないと思う」
「そうかしら? 女性解放運動だって、男性の理解が無いと成り立たないでしょ」
「そうだな。でも、女性だって男性を支えて来たじゃないか。そう考えたら、女性は居なくてはならない存在だと思う」
「そりゃ、男性だって居ないと人類成り立たないでしょ。それこそ、当たり前すぎて女性の良さが伝わらないわね」
俺は、北村の指摘に図星を突かれた感覚になってしまって何も言えなかった。北村は、男女が共に支え合っていく事は生きていく上で当たり前な事だと主張してきた。
「確かに、そうだけどよ……」
「それに、男の友情は女よりも固くて女性の好物なのよ」
「何だそれ。聴いた事ねぇよ」
「終了ー!! 時間が経ったから判定に移るよー!!」
フェミニスト君は、そう言って勝負の判決を言い渡した。結果は、北村が俺の得点を上回っていたので北村のチームに100ポイントが追加された。
俺は、北村との勝負に気が引けていたので頭が回らず勝つ事ができなかった。しかも、視聴者のコメントには女性の良さが全く伝わらなかったと指摘が入っていた。
「塚田……。すまない」
「まぁ、負けてしまったからには次で挽回するしかないよな」
塚田は、俺が無様に負けても塚田なりに励ましてくれた。しかし、俺達は北村のチームに200ポイントも許してしまったので後は長谷川さん達に任せる事しか思い浮かばなかった。
「塚田さんと平本君、お疲れ様です」
「なんか、情けない負け方で申し訳ないです」
「いえいえ、そんな事は無いですよ。相手が一枚上手だったってだけです。それに、こちらは仕掛けられてるので明らかに不利です」
「確かに、そうですよね。でも、悔しいです」
「まぁ、取り敢えずは僕に任せて下さい」
長谷川さんは、そう言って次の三試合目に向けて心の準備をしていた。すると、フェミニスト君は俺のチームから男性のくじを引いた長谷川さんと北村のチームから女性のくじを引いた
「さぁて! 一回戦三試合目! 開始!」
それから、長谷川さんは相手になった武林に男性の良さを伝え様とした。しかし、武林は長谷川さんの主張を聞かずに降参する事をフェミニスト君に示した。
「えー!? 降参するの!? 何で何で!?」
フェミニスト君は、誰よりも驚いて武林に降参した理由を伝えた。しかし、武林は少し濁した感じで長谷川さんには勝てる気がしないとだけ伝えて踵を返して行った。
「なんか、気味が悪い終わり方ですね」
「そうですね。多分ですけど、これは絶対に北村の指示で動いたと思います」
俺は、武林を気味悪く感じている長谷川さんに北村の指示ではないかと推測した。北村のチームは、北村を中心に構成されてると思っているのでこの降参が北村の指示だと俺は感じていた。
「それでは! 一回戦最終試合を始めるよ!」
フェミニスト君は、そう言った後に視聴者向けのアナウンスで森さんと北村のチームである
しかし、森さんは罪晒し対決の時から戦う気力が全く無い様子だった。俺らは、情けない事に森さんに何も励ます事ができないでいた。それに、森さんは今でも倒れそうなぐらいに身体が震えてるので俺は塚田と長谷川さんに降参させる事を提案した。
「確かに、その方が森さんの為になるかも知れないよな」
「でも、降参させても逆に森さんの為にならない気がします」
すると、塚田は森さんを呼び止めて今から試合を始めようとしているフェミニスト君に少しだけチーム全体で話し合いをする時間を要求した。
「ねぇ、森さん。このゲームって、平等を意識しすぎて面倒くさいですよね」
「な、何が言いたいんですか?」
塚田は、森さんとこのゲームの厳しさを共感しようとしていた。しかし、森さんは誰も請け合おうとはしないと決めている様な口調で塚田の質問を返していた。
「言いたい事は一つ。それは、貴方に降参を発表してほしい」
「え、何でですか?」
「今の貴方には、荷が重すぎると思ったからです。そして、復讐するならここでは無くて別のイベントでやってほしい」
「でも、理由を聞かれたらどう言えば良いか分かりません」
「それは、私が指示したと言って下さい」
塚田は、森さんの事を想って降参する事を指示した。しかも、俺が提案したのに塚田は責任を取るかの様な勢いで森さんに相談した。すると、森さんは塚田の指示をすぐに聴いて実行する事を伝えた。
「私は……。皆さんを信じます。そして、次のイベントで気持ちを入れ替えていきます」
森さんは、俺達の前で堂々と決意を語った後に試合に戻った。そして、俺は森さんの背中を見て武運を祈る事にした。
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