第8話 浮気
それから、俺の次に塚田が呼ばれて裁判が行われた。しかし、塚田は柔道において男女関係無しに敵となった者は躊躇う事無く立ち向かっていた。
しかも、男女と言う壁を超えて友情を生み出しているので俺みたいにフェミニスト君から問い詰められる事は無かった。なので、塚田は無罪と判断されて100ポイントを貰った。
「塚田友美さんは、自立していて平本武尊君よりかなりマシだよね! じゃあ次!」
俺は、フェミニスト君の態度に苛立っていたが、塚田は俺の肩を軽く手を置いて慰めてくれた。しかし、フェミニスト君はそう言った後に今度は森さんを指名した。そして、森さんは俺の裁判を見たからなのか身体が震えながら教壇へと進んで行った。
「では! では! 『チーム・レッド』の森渚沙さんへ質問です! 貴方にとっての男女平等を教えて下さい!」
「わ、私の……。男女、平等は……」
森さんは、緊張強い物言いで自分にとっての男女平等を説明していた。森さんは、男女関係無しに実力で判断して駄目な時は平等に注意するべきだと述べた。
「なるほど! 貴方にとっての男女平等は、とっても都合が良いね!」
フェミニスト君は、森さんが説明してすぐに教壇の背後にある大画面に森さんが写っている写真を映し出した。それは、森さんと複数の男性が仲良く歩いている写真が沢山あった。
「いやぁぁぁぁ!!!!」
「あれれぇ〜? 森渚沙さん、どうしたのかなぁ〜?」
フェミニスト君は、森さんの浮気をしている証拠写真を映し出していた。俺は、フェミニスト君が外道野郎に見えたが、本人からすると男女平等にそぐわない事をしているので正義を実行しているのだと思った。
「視聴者の皆さん! これは、森渚沙さんの浮気証拠写真だよ! 本人が言った通り、女性だからと言って浮気や不倫は大罪だよね!」
当時の森さんは、高校生の時に複数の男性と恋人関係を築いていた。しかも、その一枚の写真には『チーム・イエロー』に所属している
「しかも、森さんの友達は『女の浮気は正義』とか『女を寂しい思いにさせた男が悪い』とか言ってるらしいじゃん!」
「違う……。これは違うの」
「どう違うの? ねぇ? 言ってみろよ」
フェミニスト君は、どんなに森さんが震えていても容赦無く問い詰めた。しかも、それを聞いている視聴者のコメントには森さんの誹謗中傷が書かれていた。そして、森さんはそんな事すら見る余裕が無く頭を抱えていた。
「ならさ、特別に彼氏だった山路晃誠君に弁明して貰おうよ。そしたら、貴方の罪が晴れるんじゃ無いかな?」
森さんは、フェミニスト君の助言を鵜呑みにして敵チームの山路晃誠に教壇へと立たせてしまった。俺は、この状況に不安が募りながら見守る事しかできなかった。
「ねぇねぇ。山路晃誠君はさ、森渚沙さんと付き合っていたんでしょ? どうだったの?」
「俺は、あの人の事が大好きで毎日LINEを送るほど好きでした。でも、あの人は俺を裏切ったんです。そして、あの人の友達から『寂しい思いをさせたから貴方の責任だね』と言われてショックでした」
「あれれぇ〜。これって、もう有罪確定じゃない? ねぇねぇ、森渚沙さんはこの事について弁明できるのかな?」
「いやぁぁぁぁ!!!!」
森さんは、山路晃誠の発言を聞いて叫びながら泣き崩れていた。しかも、フェミニスト君や視聴者の人達はこの状況を見て楽しんでいる様子だった。
「泣いてても仕方が無いよ。だって、貴方がやった行いなんだからね。それに……」
「もう辞めて!!」
森さんは、フェミニスト君の問い詰めに対して我慢ができない様子で泣きながら叫んで話を止めようとした。しかし、フェミニスト君は笑いながら森さんに反論した。
「はぁ!? なんで、君が悲劇のヒロイン気取りしてるのかな!? そこはごめんなさいが先だよね!? そんなのも分かんないの!?」
フェミニスト君は、森さんが泣いていても容赦せずに怒っていた。俺は、流石に見るのが限界で止めに入ろうとしたけど近くに座っていた北村に止められた。
「これは、そう言うゲームなのよ。目に焼き付けておきなさい」
「それでも、やり過ぎじゃねぇか!」
「仕方ないでしょ。それに、本人が仕掛けられる様な恨みを持たせたからこうなってるんだからね」
「それでも……。これは、やり過ぎだ……」
俺は、浮気に関しては何も言う事はできなかった。確かに、やってはいけない事はあるかもしれないが、フェミニスト君の問い詰め方はやり過ぎだと思った。
「じゃあさ、最後にこの動画も観てほしいな」
フェミニスト君は、そう言いながら大画面にとある動画を流した。それは、森さんが友達と男性の悪口を言っている動画だった。この動画は、誰かが森さん達の声が聞こえる感じで隠し撮りをしていた。これに関しては、とても酷い内容で俺は耳を塞ぎたくなってしまった。
「最後に、森渚沙さんから言う事はありますか?」
森さんは、フェミニスト君から最後の弁明をお願いされたが、泣き崩れていて何も言えない状態だった。
「くそしょうもな……。それでは! 判決を下すよ!」
フェミニスト君は、小声で森さんの悪口を言った後に判決を下した。それは、誰もが予想していた『有罪』と言う文字が大画面に映し出されていた。これは、俺も流石に同じチームとしてどう接すれば良いのか分からないでいた。
「でも、今までのマスコミやテレビがそうなる様に仕向けた事だからね。今度から気をつける様にだよ。じゃあ次!」
確かに、俺が小学生の頃はテレビ番組やニュースでは女性が男性の悪口を言う様な番組が放送されていた。なので、そう考えると多くの女性がそうなってしまうのも仕方ないとフェミニスト君は他人事の様に言っていた。
そして、俺らのチームは森さんに対して励ます事すらできなかった。俺は、そう感じながらチームに亀裂が入ってしまった事を感じる事しかできないでいた。
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