第7話 罪晒し対決
それから、俺達は『チーム・レッド』として会場に集まった。会場には、クイズ番組みたいなセッティングやチーム専用の待合スペースなどが設置されていた。
「うへー。凄いな」
「あぁ、流石は国が運営しているだけの事はありそうだな」
俺は、塚田達と共に会場の雰囲気に呑み込まれていた。すると、スタッフらしき人が俺達を待合室まで案内してくれた。待合室には、テーブルの他に着替えスペースやくつろぎスペースなどが設置されていた。
俺は、部屋の壁に張り紙としてこのゲームの詳細が書かれている紙を思い出した。このゲームは、日本が男女平等を目指す為に開催された国運営のゲームだそうだ。
そして、今までの日本のマスコミやメディアが間違った男女平等を教えていた事もあり、それをしっかりと正していく為に全国放送でこのプロジェクトをやっていると書かれていた。
「いよいよだな、塚田」
「お、おう。とにかく、頑張ろうぜ」
俺達は、そんな感じで緊張しながら本番に向けて心構えをしていた。そして、フェミニスト君に呼ばれて俺達は待合室から本部の方へと足を運んだ。
「このゲームをご覧の皆さん! お待ちかねのゲームが始まるよー!」
フェミニスト君は、そう言いながらこの配信を観ている人達に明るく声をかけていた。これから、この四チームで男女平等をテーマにしたバトルをしていく事になる。
優勝したチームには、優勝賞金で一人あたり一億円の金額を貰う事ができる。そして、最下位になったチームには三億円の借金を背負う事になると言うとんでもないデスゲームだと一般市民に伝えた。
俺は、このシステムで批判が来るのかと思っていたが、そんなコメントは一つも無く寧ろ賛成の意見が大多数で驚いていた。視聴者の多くは、人がするよりAIが審査する事で男女問わずに評価が平等にされるので信頼があるとコメントを残していた。
「だからと言って、本人の許可が無いのに参加させるなよな」
「あら? 本人の許可書は、ちゃんと本人の字と印鑑で通ってるわよ」
「は? 嘘だろ?」
俺は、フェミニスト君の説明に疑念を独り言で呟いていた。しかし、隣に居た『チーム・ブルー』の北村は俺の独り言に割って入って否定してきた。しかも、俺が知らない所でそんな隠蔽工作が行われている事に驚いて声が出なかった。
「貴方のチームは、全員から目を付けられてるわよ。気を付けてね」
「うるせぇ。お前が仕組んだんだろ」
「私が仕組んだのは貴方だけよ」
「は? 何言ってんだよ?」
「まぁ、取り敢えずは頑張って最下位を避ける事ね」
北村は、そう言いながらフェミニスト君の方に目線を向けた。俺は、北村の言葉に疑念が混ざったままフェミニスト君の説明を聞く事になった。
「さぁて! 早速、第一イベントを始めるぞー!!」
そんな感じで、これから最初のイベントがフェミニスト君の掛け声と共に始まった。最初のイベントは、『罪晒し対決』と言って個人が行った男女平等に相応しく無い行為を晒していくと言うゲームだ。
しかし、このゲームはしっかりと男女平等に沿って行っていれば晒される事は無くポイントを獲得できると言う仕組みになっている。もし仮に、AIが調べた結果が男女平等に沿った行為をしていると判断されると一人につき『100ポイント』が贈呈される。
「では、まず最初に『チーム・レッド』のチームリーダー平本武尊君から行くよー!」
「え、俺から?」
「そうだよ。ほら、視聴者さんが待ってるから早くしてよ」
俺は、フェミニスト君に促されながら指定された教壇へと進んだ。すると、まるで裁判が始まるかの様にフェミニスト君は物事を進めていった。
「それでは、まず最初に平本武尊君に質問します」
「は、はい」
「平本武尊君は、男女平等と言う意味は知ってますか?」
「はい。知ってます」
「なら、貴方にとっての男女平等を説明して下さい」
「分かりました」
俺は、フェミニスト君に言われて自分が知っている限りの男女平等について説明をした。俺が知っている男女平等は、女性優遇と言う生優しい物では無くて男女問わず権利と責任を持つ事だと考えている。
「その通りだよ! 大正解! 男性だろうが女性だろうが上に立つ代わりに責任と義務が課せられるんだよ! これを見てる視聴者さんはこの事を覚えておいてね!」
フェミニスト君は、俺が説明した事を肯定して俺を褒めていた。しかし、その途端にフェミニスト君が声を変えて俺に問い詰めてきた。それは、俺が北村と付き合っていた時に女性だからと言って北村を優遇した事だった。
「でも、それは北村と付き合っていたから女性としてもてなしたかったと言うか……」
俺は、反応に困った。確かに、中立の立場なのに彼女の北村の事を優先して俺の事は後回しにしていた。でも、それぐらいで罪扱いにされるのは理不尽だと思った。
「この世の中は、どんな時でも男女平等が必要不可欠だよね。それを守れないってどう言う意味なのかなぁ?」
フェミニスト君は、俺を煽っているかの様に質問をしてきた。この世の中は、男女が平等となって優遇するなら優遇される事も視野に入れなければならないし、一方的な感情だけが押し通されるほど世の中は甘くないと改めて理解した。
「当時の北村さんは本当にもてなされたかったのかな?」
「ごめんなさい……。確かに、俺が甘えさせて気持ち良くなってました」
「だよねぇ〜。本人の確認はしてなかったんだよね」
これに関しては、北村が運営側に伝えた事なのだと思った。俺は、北村と付き合っている時に北村に向けてレディファーストを積極的に行ったり奢ってあげたりなどしていた。
しかし、今思い出すと北村から頼まれていないのに良い気分になっている自分が恥ずかしく思えてきた。それに、女性全員がもてなされて喜ぶ人達だけでは無いとフェミニスト君に諭された。
「僕は、恋愛なんてした事ないから分からないんだよね。でも、このルールではどんなに恋愛でも一方的に優遇は許されないよ」
「だと言う事は、優遇をしてない者も有罪に当たるのかよ?」
俺は、北村と付き合っていた時に北村から男だからと言って顔を立てて貰った事は一度も無かった。それなら、俺が女として見ているのに北村は男として見ていない事も有罪に当たるのかと質問した。
「そうだねぇ〜。よくさ、恋愛は戦場だって言うじゃん。だから、そう言うのが無くて気軽に居れる関係こそが良いと思うんだよね」
「な、何が言いたいんだよ?」
「だから、要するに相手が優遇されてばかりで気を使ってばかりだから気軽に居れるのかなって思ってるんだよ」
フェミニスト君は、どんなにプライベートや仕事でも中立な立場から意見を話していた。なので、俺が好きな女性にもてなす事は本当に男女平等として扱われ無いと俺に問いただしてきた。
「ご、ごめんなさい」
「それでは、判決に行くよ!」
俺は、納得がいかないままフェミニスト君から判決を下された。その結果は、『有罪』と言う文字が大きな画面へと映し出された。
「マジかよ……」
「平本武尊君は、有罪に決定したよ! だから、ポイントは0ポイントのままだね!」
どうやら、このイベントは0ポイントか100ポイントかのどちらかになる仕組みらしい。なので、有罪判決を貰った俺はポイントが貰えずに教壇を散る事になった。
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