第6話 ゲーム二日目

 それから、俺達はチームリーダーを俺に決めて各々の仕事に取り掛かる事にした。正直に言うと、俺は『チーム・レッド』のチームリーダーになるとは思ってなかった。しかし、他の三人は俺がリーダーだと言う事を受け入れてくれた。


「長谷川さんはどんな感じですか?」


「トイレとお風呂の掃除は終わりました。洗濯物は、まだ出てないのでこれで終わりです。何か手伝いますよ?」


「ありがとうございます。なら、モップ掛けを手伝って下さい」


 俺と長谷川さんは、掃除担当なのでお互いが担った役割を一所懸命にこなしていた。そして、長谷川さんは自分のやる事が終わったので俺の担当を少しだけ手伝ってくれた。


 そんな感じで、俺と長谷川さんは協力しながら部屋の掃除に取り組んでいた。部屋は、かなり広くて掃除機だけでも10分はかかってしまっていた。しかも、それだけでは無くてテレビの裏側とかソファの下など物をどかしてやっているので意外と体力は使うと幻滅していた。


 しかし、料理担当の二人は何か楽しそうに料理を作っていた。料理担当は、作ったご飯の写真を撮って材料などの詳しい事を審査書類に書かないといけないので俺からすると面倒くさそうに見えていた。


 それでも二人は、女子会みたいな感じで笑いながら作っていた。俺は、塚田の事を見ていると初めて女の子みたいに思ってしまった事に驚いていた。


 俺は、小学校二年生の頃に塚田と同じクラスになった事がきっかけで仲良くなった。しかも、塚田は俺や他の男達が好きな少年漫画本ばっかりに興味が湧くから一緒に居て楽しく感じていた。


 すると、俺はある日の事を思い出した。それは、クラスの女の子が塚田を通じて俺の事が好きだと言う気持ちを伝えようとしてきた事だった。しかし、俺はその女の子が嫌いだったので塚田の事が好きだと言って断る事を塚田に伝えさせる事にした。


 だが、塚田はその事にびっくりして俺を殴り飛ばしてきた。あの時は、ムカついていたけど今になって分かってきた気がする。それは、あの頃の俺の好きだと言う気持ちと塚田を通じて俺に伝えようとしていた女の子の気持ちは全く違うからだ。


「おーい! できましたよー!」


 すると、俺が過去の事を思い出している間に塚田と森さんは料理を完成させていた。そして、掃除担当の俺達は料理担当の二人の元気な声を聞いて駆けつけた。すると、二人が作っていたカレーがリビングの机に姿を現して来た。


「すげぇー! めっちゃうまそー!」


「僕達も頑張った甲斐がありますね」


「そうですね。塚田の料理は、人生で初めてかもしれません」


 俺は、塚田の手料理を食べる事は今まで無かった。塚田は、母親の手伝いで料理はすると言っていたけど俺は塚田が料理をする所を見ていなかったと改めて思った。


「美味しい!!」


「良かったです」


 森さんは、俺の感動の言葉に嬉しそうに答えてくれた。しかも、長谷川さんは女性の手料理を食べた事が無かったそうなので俺以上に感動していた。料理担当の二人は、沢山の食材が三袋ずつ用意されてるのを見てとても感動してしまい、張り切って作ってしまったそうだ。


 それから、ご飯を食べ終わって料理担当の塚田は食器を洗って台所の床掃除などは俺がする事になった。そして、審査書類の記入は森さんが担当になり、長谷川さんは一番最初にお風呂に入った。


「なぁ、武尊。今日のカレー、美味しかったか?」


「めっちゃ美味しかったぞ! お前の手料理なんて初めてだぜ!」


「そ、そっか! それは良かったぜ!」


 塚田は、俺の感想に顔を真っ赤にしながら喜んでいた。しかし、俺はこう言う塚田の一面を見れた事で少しでも塚田との距離が縮まれた事を心より感謝している。


「明日は、頑張ろうな!」


「お、おう。私の足を引っ張るなよ」


「それは、塚田もだろ」


 塚田は、俺との会話で今まで以上に嬉しそうになっていた。しかし、俺は塚田の初めての一面を見た事で一つ疑問が浮かんできた。


「てか、何でお前が北村に負けたんだ?」


「い、いや!? 北村さんには負けてないからな!? その周りにいた奴らが強すぎたんだよ!?」


「そ、そんなに慌てなくても良くね?」


 俺は、塚田が何か焦りながら言い訳をしている様にしか見えなかった。しかし、確かに複数の奴らが相手となると塚田もそこまでは難しかったのだなと改めて納得した。


 そんな感じで、俺達はお風呂や寝る準備が終わって四人用のベッドに寝る事になった。俺と塚田は、流石に抵抗があるのでなかなかベッドに寝れずに立ち尽くしていた。


「あの〜。早く寝てくれます?」


 俺と塚田は、森さんに警告されてもなかなか足が進まずに立っていた。俺は、塚田と寝るなんて思っていなかったし、寝るとしても別々の布団が用意して欲しかったと思った。


「もう! 焦ったいですね!」


「ひゃあ!?」


 すると、森さんは塚田の手を引っ張ってベッドに乗らせた。そして、長谷川さんもベッドに向けて俺の背中を押してきた。しかし、何でか知らないけどベッドに乗ってしまえば、なんて事は無かった。


「さぁ、電気を消しますよ」


 長谷川さんは、そう言って電気を消した。俺は、ドキドキする事は無かったけど塚田の心臓が爆発音みたいに聞こえてくる。そして、顔が真っ赤で俺の方を向きながら丸くなっていた。


「塚田、なんか久しぶりだな」


「あ、あぁ……」


「塚田、おやすみ」


「お、おやすみ」


 俺は、塚田を揶揄って緊張をほぐしてやろうかと思ったが、長谷川さん達に迷惑がかかるので一言だけ残して逆方向に顔を向いて寝る事にした。


 それから、次の日になった。俺は、目が覚めると長谷川さんが起きていた。そして、森さんと塚田が台所で何か作業をしていた。


「皆さん……。おはようございます」


「おはよう。平本君」


「平本さん、もうすぐご飯ができますよ。顔を洗ってきて下さいね」


「は、はい」


 俺は、皆んなから元気良く挨拶をしてくれたお陰で家にいる時よりも気持ち良く朝が起きれて感動した。普段は、次女の姉か母親が起こしに来るが、俺が男だからと言って無断で部屋まで入って殴って来るのだ。でも、三人は俺を無理やり起こさずに待っていたので少し嬉しかった。


 そして、朝食も食べ終わって着替えているとテレビの画面からフェミニスト君が現れた。俺と長谷川さんは、リビングで着替えていたので気付いたけど森さんと塚田は洗面所で着替えていた。


「やっほー! 参加者の皆さん、おはようございまーす!」


 すると、フェミニスト君がとても明るい声で俺達に挨拶をしてきた。この放送は、リアルタイムで他の三チームも聴いており、しかも全国放送でYouTubeやテレビから配信しているとの事だった。


「これは、一般市民も観ているので言葉には気を付けてね」


 俺達は、いきなりの事で理解が追い付いていなかったが、フェミニスト君は気にせずに説明をしてきた。ちなみに、リアルタイムで観れなかった人でも一週間の間ならいつでも見れる様にYouTubeで投稿されるとの事もフェミニスト君は告げた。


 これから始まるイベントは、一番最初に集まっていた広場で始まるとの事だ。しかも、イベント内容は四チームが争ってポイントを稼いでいくスタイルだと説明しながらイベント表を見せてきた。


二日目のイベント

・罪晒し対決

・男女共尊競り合い対決

・どっちが上?クイズ

・育児対決


 俺と長谷川さんは、これを見てどんなイベントなのか全く分からなかった。だけど、フェミニスト君はイベントが始まってから改めて説明するので大丈夫だと伝えていた。


「とりあえず、準備が終わったらいつもの場所に来てね! 待ってるよ!」


 フェミニスト君は、そう言いながら画面から消え去った。そして、森さん達も途中からだったので理解できていなかったそうだ。しかし、俺と長谷川さんも理解できなかった。


「まぁ、準備して会場に行きましょうか」


「そうですね。その方が、今まで以上に理解できるかもしれませんね」


 俺達は、森さんの提案に賛成して会場に行く準備をした。俺は、これからどんな事が起きるか予測ができずに不安で胸が張り裂けそうだった。

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