第5話 イベント開始
俺達は、部屋に入ると四人分の部屋とは思えない程の広い部屋に入った。部屋には、玄関からリビングに繋がっている廊下にトイレや洗面所などが設置されていた。そして、リビングに入るととても立派な台所に大きな冷蔵庫が二つも設置されていた。
「うわぁー! すげぇー!」
俺は、塚田の感動している掛け声と共にその部屋を見て同じ様に感動した。他にも、一階のリビングとベランダに挟まれている居間室には四人分の大きなベッドがあった。
「ここで、俺達が寝るのか!?」
勿論、俺達は出会ってばかりの二人を含めて一緒に寝るのはやり過ぎだと思った。しかし、塚田はともかく長谷川さんと森さんは承諾していた。
「僕が見ていると、平本君と塚田さんは仲が良いので二人を挟んで僕が平本君の隣で寝た方が良いと思います」
「そうですね。そして、私は塚田さんの隣で寝れば解決と言う事ですね」
「「ま、待て待てぇーい!!」」
俺と塚田は、いきなりの事で頭が混乱して叫んでしまった。長谷川さんが言うには、長谷川さんと森さんはお互いの事が知らない仲なのでいきなり隣で寝ると言う事はできないと言う事だった。
「た、確かに、そうかもしれないけどよ。俺と塚田だって、寝た事は小学生以来で中学から全く無かったんだよ!」
「そ、そうだよ! それに、小学生の時と言っても親がお互いに居たからね! ね!」
「知りませんよ。なら、私が平本さんの隣で寝れば良いですか?」
「それは、もっとだめぇー!!」
「どっちなんですか……?」
俺は、どんなに男女平等だと言ってもお互いの気遣いは必要だと思った。なので、運営のこのやり方は何が何でもやり過ぎだと思った。
「とにかく、今日はこう言う風に寝ましょ?」
俺と塚田は、森さんの言葉に黙るしか無かった。確かに、長谷川さんと森さんは出会ったばかりでお互いに恥ずかしくて寝れないと思った。なので、そこは幼馴染の俺達が腹を割って寝る事にした。
「別にさ! 武尊と隣で寝たってときめかねぇし!」
「はぁ!? 俺だって、お前にときめいた事は一度もねぇよ! だけどよ、何でか知らないんだ。何でか知らないけど緊張するんだよな」
俺は、塚田の事を女性として見た事が全く無かった。確かに、失礼な言い方にはなったけどそのお陰で塚田と楽しく過ごしてるし、男女の中でも友情は芽生えるんだなと思った。
そう考えると、塚田には感謝している。塚田は、俺の他にもたくさんの男達と楽しく遊んでいた。なので、俺が思っている女性としての固定観念が塚田のお陰で素敵な物へと変わっているのだ。
しかし、だからと言って塚田といきなり隣で寝ると言う事は考えていなかった。一応ではあるが、俺は塚田の事は女性だと思っている。なので、塚田の赤くなっている顔を眺めていると照れ臭く感じてしまう。
「まぁ、仕方ありません。元々、私達は誰かの引き金でこうなってるんですから」
「やっぱり、森さん達もこのゲームに参加するのは不本意なんですね」
「そうですね……。それより、今から作戦会議でも始めませんか?」
森さんは、俺達に何かを隠しているかの様に話を逸らした。しかし、誰もがそれを指摘しづらくて気不味い中、俺らはリビングの真ん中にある机の上に置かれている役割分担表を囲って話し合った。
役割分担表には、料理担当と掃除担当の二つだけが書かれていた。しかし、その二つにはやる事が枠内にびっしりと書き詰められていたのでプレッシャーを感じていた。
「やる事がいっぱいだな……。取り敢えず、俺は料理はできないから掃除担当にする」
「僕も平本君と同じ掃除担当が良いです。今まで料理なんて作った事が無いので……」
「分かりました。なら、私と塚田さんで料理担当をやります。塚田さんはそれで良いですか?」
「は、はい」
塚田は、長女として母親の手伝いをしているので料理や掃除はできるとの事だった。しかし、塚田はあまり自信が無さそうにしていたので俺は心配して声をかけた。
「え、何とも思ってないぞ? ただ、決まるのが早かったなぁって驚いてるだけだ」
それから、料理担当の二人と掃除担当の俺達で細かい分担を話し合った。俺は、ゴミ出しと掃除機掛けとモップ掛けの三つを受け持つ事になった。そして、長谷川さんは残りのトイレ掃除とお風呂と洗濯物を受け持った。
そんな感じで、俺ら四人は役割分担を無事に決める事ができたのでこれからは森さんから順番に悩みを話し合う事にした。
森さんは、高校生の時から付き合っていた彼氏とデートの途中に何者かによってこのゲームへと連れて来られた。しかし、森さんの彼氏はこのゲームには居なかった。森さんは、化粧直しで彼氏さんと少し離れた時にタイミング良く襲ってきたとの事だった。
「だけど、私の元彼は居たんです」
「え!? なら、このゲームに参加してるって事ですか?」
「はい。黄色のチームに居ました」
「なら、森さんの元彼が仕組んだと思って良いかもしれませんね」
俺は、森さんの話を聞いていると元彼が仕掛けているのだと思った。しかも、塚田や長谷川さんも同じ事を思っていたそうだ。
「だとすると、このチームは全員が仕組まれた被害者だと言う事ですね」
「え? 長谷川さんも誰かに仕組まれたんですか?」
「はい……。緑のチームに僕の知ってる人が居ました」
長谷川さんは、敵チームである『チーム・グリーン』に中学生の時のクラスメイトがチームになっている事を俺らに伝えた。しかも、長谷川さんはそのクラスメイトによって虐められて不登校になった事も伝えてくれた。
「僕は、あいつらから全裸にされて写真を撮られてネットに上げられると言う仕打ちを受けました。しかも……」
「あの! あんまり、無理に話さなくて良いですよ」
長谷川さんは、森さんから止められた事で嫌な頃の記憶を話さなくて良くなった。それに関しては、長谷川さんは森さんに感謝しながら話すのを辞めて別の事を告げた。
「だけど、そんな時に父親が僕の部屋に無理やり入って来たんです」
長谷川さんは、虐められて不登校になった後の事を伝えてくれた。その時は、部屋に引き篭もって何日も部屋から出て来なかったので父親が痺れを切らして無理やり引き出した。
しかし、そのお陰で両親とちゃんと話し合って無理に学校に行かずに家庭教師に頼んでしっかりと勉強を取り組んだそうだ。そして、高校は通信制の学校に通う事にして父親の知り合いに頼んで仕事をする事ができた。
「なので、個人的には克服できたと思ったんですけど……。やっぱり、本人を前にすると震えが止まりません」
「そりゃ、無理も無いです。でも、話してくれてありがとうございます。俺達は、そんな貴方を見離したりはしません」
「あ、ありがとうございます」
俺は、長谷川さんに悲惨な過去を打ち明けてくれた事を感謝した。何故なら、この事で少しでも仲を深めてこのゲームに勝とうと思ったからだ。
「後は、平本君と塚田さんだけですね」
「その事なんだけど……。私は、武尊が元カノと久しぶりに下校しているのを聞いて不安に思ったんだ。だから、後を着けてたら武尊が襲われてて……」
「それで、俺を助けてくれたのか?」
「あ、あぁ。でも、結局は捕まっちまったけどな……。ハハハ……」
塚田は、森さんに質問されて今回の事を伝えてくれた。俺は、知らなかったけど塚田は俺が元カノの北村と下校する事が嫌な予感がしたので後を着けたそうだ。
すると、黒服にサングラスをかけた男性達が気絶していた俺を北村と共に大きめの車に乗せている所を目撃した。だけど、人数が多かったので返り討ちにあってしまったそうだ。
「俺達は……。やっぱり、後の三チームに仕掛けられてるんだな」
俺は、塚田と一緒に北村が居る『チーム・ブルー』に嵌められて此処に居る事が分かったが、それは俺だけじゃなかった。長谷川さんや森さんは、残りの二チームによってこのゲームに参加させられたのだと分かった。
「とにかく頑張って、このゲームを勝って乗り越えましょ!!」
「「「おー!!!」」」
俺らは、俺の掛け声と共にこの意味の分からない『男女平等ゲーム』を勝ち抜く事を決意し合った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます