第3話 体力測定
「おい! 武尊! 大丈夫か!?」
「つ、塚田……。何でお前が……?」
俺は、目が覚めると塚田に膝枕を施されていた。しかし、塚田だとあまり興奮しない事に驚きながらも俺は上半身を起こした。
「すまん。私は、武尊の事が心配で後を着けてたら襲われてるのを見てしまったんだ。だからよ、武尊を助けようとしたけど返り討ちに会ってしまったんだ」
「塚田としては珍しいじゃん。喧嘩が得意のが塚田友美だったんじゃ無かったのか?」
「そうだな……。すまん」
「謝らなくても良いよ。それより、ここはどこなんだ?」
俺らは、体育館の様な場所に複数の男女と共に佇んでいた。しかし、俺は何で塚田が居るのかが分からなかった。しかも、肝心の北村は俺が知らない人達に囲まれながら何かを待っている様子だった。
「皆さーん! お待たせしましたー! 僕が、噂のフェミニスト君だよー!」
すると、少年の声にベタな女性用の洋服を身に纏った縫いぐるみが俺らの前に立って喋り出した。俺らは、これから『男女平等ゲーム』と言うゲームに参加する事になっているそうだ。このゲームは、日本政府が作ったAIの監修の元に行われるゲームであり、男女平等を進める為にも必要なプログラムだそうだ。
「君達には、これから楽しい楽しい『男女平等ゲーム』に参加して貰うよ」
フェミニスト君は、そう言って俺らにゲームの説明が載っている画面を見せた。このゲームは、応募した男女がチームとなってこれから起きるイベントを協力して乗り越えていくと言うルールだった。
しかし、そのイベントは男女で分けずに能力に見合うと言う理由で代表を決めて行かなければならないと言うこのゲームならではのルールが画面に表示されていた。
「このゲームをやっている際は、男女だからと言う理由でイベントに参加させる事を禁止にするよ。もし、その様な事が発覚すればそのチームには差別と見做してポイントを引きます」
このゲームは、各チームにポイントが加算されると言うルールが適用されている。フェミニスト君が言った通り、もしも男だからと言ってイベントに参加させると莫大なマイナスポイントがチームに課せられる。しかも、それを判断する為に色んな場所に防犯カメラや盗聴器が設置されていた。
「それでは! 早速、登録されたチームに分かれてイベントをする準備をしよう!」
フェミニスト君は、そう言って登録チーム表を画面に表示させた。チームの決め方は、各チームに男女が四人ずつ配置されており、合計で四チームが争う事になっている。ちなみに、俺のチームは塚田の他に知らない人が二人も同じチームに組み込まれていた。
しかも、俺のチーム名は『チーム・レッド』と言う赤色のチームに属していた。そして、北村は『チーム・ブルー』に属しており、他にも『チーム・グリーン』と『チーム・イエロー』と色ごとにチームが作られていた。
そして、何より一番怖いのは最下位になったチームは一人三億円と言う借金を背負わなければいけなくなり、逆に一位になったチームには一人あたり一億円の賞金が貰う事ができる。
「塚田の下に書かれている人は誰なのか分かるか?」
「すまん。私も知らない」
「あの……。僕達の事ですよね? すみませんけど、よろしくお願いします」
俺らに話しかけた人は、俺らと同じで知らない間にここへと連れて来られた人だそうだ。そして、もう一人も同じ理由だったので四人で自己紹介をやる事になった。
一人目は、
そして、もう一人は
「本当に最悪です。しかも、私の彼氏は見当たらないんですよね」
「それは、困りましたね。でも、僕も推し活をしてる最中だったので腹が立ってます」
長谷川さんと森さんは、人生を謳歌している時にいきなり襲われたそうだ。なので、この状況が何なのかも分かっていなかった。しかし、俺も北村と一緒に下校していた時だったのでその事を伝えると二人は共感してくれた。
「とにかく、最下位にならない様にする事が俺らの解決方法だそうですね」
俺は、三人にそう伝えてこれからの作戦について語り合った。フェミニスト君から言われたのは、複数のイベントを行う為にまずは能力検査をして貰うと伝えていた。
なので、俺らは軽く自己紹介をした後にフェミニスト君から指定されたスペースへと移動した。そのスペースは、握力を計る器具や体重を測る器具などがズラリと並んでいた。そして、他にも上体起こしや50m走などのスペースもしっかりと設置されていた。
「うへー。私は、こう言うの得意なんだよな」
「知ってるよ。塚田は、毎回の様に驚く程の記録を更新するからだいぶ慣れたけど」
「そ、そうなんですね。僕は、高校卒業してから全く運動してませんから自信がありません」
「それなら、私もですよ」
塚田は、中学生の時から体力測定で一般男性よりも高い記録を更新している。しかし、長谷川さんと森さんは高校を卒業してからは全く運動してないので心配していた。
ちなみに、長谷川さんは高卒で自動車工場に勤務している二十八歳だそうだ。そして、森さんは大学生二年生で今年から二十歳になるそうだ。そして、各チームが測っているのでそれを見て自信に満ち溢れた塚田が張り切って測定しに行った。
塚田友美の記録
・身長185cm ・体重83kg ・座高94.7cm
・握力41kg ・反復横跳び64回
・上体起こし39回 ・長座体前屈36m
・50m走6.01秒 ・立ち幅跳び219.39cm
そして、塚田の記録が紙で届いたのでチームの皆んなで見る事になった。長谷川さんと森さんは、塚田の記録を見て驚きと共に期待を寄せていた。
「これで、体力勝負は私に任せれるな!」
「任せるも何もお前しか居ないだろ」
三人は、俺の冗談に笑ってくれた。それから、俺や長谷川さん達も続けて体力測定をやる事になった。俺は、塚田みたいな記録は出す自信は無いが、チームの為にも全力を出せる様に尽力した。
平本武尊の記録
・身長183cm ・体重79kg ・座高86.7cm
・握力36kg ・反復横跳び47回
・上体起こし26回 ・長座体前屈25m
・50m走7.68秒 ・立ち幅跳び101.67cm
そして、俺の記録が届いた。俺の記録は、塚田の記録より少し下で情けなく見えたが、一般男性の平均値に近い記録だと塚田から聞けたので安心する事にした。
「平本さんも記録が出たんですね。そう言えば、私と森さんも記録がもうすぐ出ますよ」
「本当ですか。結果が楽しみです」
「でも、あまり期待しないで下さい」
俺は、長谷川さんの記録を楽しみにしていたけど本人は期待していなかった。しかも、森さんも測定が終わって俺らの所に来て自信が無い事を伝えた。
「あ、記録が来ました」
「うぅ、私は全く自信がありませんよぉ」
「長谷川さんも森さんも大丈夫です。落ち込まないで下さい」
俺は、二人を励ましながらも二人の記録を覗いた。二人は、俺の記録より下の数字だったけどフェミニスト君はこれだけで勝負が決まるとは言っていなかった。この測定は、イベントが始まる上で必要になるそうだ。
長谷川尚輝の記録
・身長171cm ・体重92.8kg ・座高83.6cm
・握力28kg ・反復横跳び30回
・上体起こし17回 ・長座体前屈18m
・50m走9.68秒 ・立ち幅跳び99.98cm
森渚沙の記録
・身長162cm ・体重49kg ・座高78.7cm
・握力21kg ・反復横跳び23回
・上体起こし26回 ・長座体前屈24m
・50m走13.21秒 ・立ち幅跳び96.37cm
これで、俺のチーム測定が終了した。フェミニスト君は、他のチームも測定が終了した事を伝えて次の能力検査へと移る事になった。
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