第9話 係決め

 阿部小部高等学校に入学して1週間。だんだんと新入生たちも学校に慣れてきた。……あべこべ遊び以外は。


 そんな新入生たち。友達もできてきて教室も入学当初よりは賑やかになってきた。それは萌香たちの2組も例外ではない。


 むしろ他の組よりも教室が賑やかになるのが早かった。それは瑠唯がやろうと言った、ちゃんとした自己紹介のおかげだ。


 瑠唯本人はそんなつもりはなかっただろうが瑠唯はクラスの中心的存在になってきている。それが確固たるものに今日これから始まるLHR(ロングホームルーム)でなるとは瑠唯はもちろん知らない。


「それじゃあLHR始めるぞ。今日は係決めを主にやる。時間が余ったら親睦でも深めてればいいんじゃないか。まぁ、今日のLHRはそんな感じだから」


 布黒木先生が今日は何をするか説明する。最近はあべこべ遊びもなく、普通の高校の授業をしている。


 まぁ、最初のほうはあべこべ遊びをやる頻度がおかしかっただけで、これが普通くらい。そのことにまだ新入生は気づいていない。


 そんな感じでLHRが始まった。


「まずはこのクラスの委員長と副委員長と書記2人を決める。誰かやってくれる人」


 誰も手を上げない。委員長とかは面倒くさいから誰もやりたがらない。


「先生〜、これって他薦もありですか〜?」


 1人の生徒が質問した。


「ありだぞ。経験上他薦もありにしないと決まらないからな」


 謎の説得力があった。過去他薦をなしにしたときに決まらなかったのだろう。


「じゃあ緋河くんがいいと思います!」


 誰かが言った。それに乗るように


 「いいと思う!」「いいんじゃね?」「此の間もみんなをまとめたてしね」などと声が上がる。


「という声が上がっているが緋河はどうだ?」


「え!?絶対無理です!僕にはできると思いません!」


 瑠唯は全力で否定した。


「大丈夫だよ!緋河くん、この前まとめるのうまかったから!」


「そうだな。このクラスがここまで仲良くなれたのは緋河のお陰だしな。自信持てよ!」


 などの賛成意見に押し切られ緋河は言った。


「……わかったよ。みんながそこまで言うなら頑張ってみるね。でも自信ないからみんなも積極的に助けてくれると嬉しいな」


 瑠唯は意外と早く折れた。


 委員長が決まった。


「はい!私副委員長やってみたい!」


 玖実が手を挙げて言った。萌香も海浬も驚いていたが、


「まぁ玖実ならできるんじゃねえの?」


「そうだね。玖実ちゃんなら出来ると思うよ。誰とでも仲良くなれると思うし」


 そんな萌香と海浬の言葉を聞いて他のクラスメイトも「いいんじゃない?」という声が上がり、玖実が副委員長に決まった。


「あとは書記だな。誰かやりたい人はいるか?」


「はい」


 萌香が手を挙げた。


「高校に入って新しいことの挑戦したいです!」


 大声で志望動機を言った。それを聞いて、


「じゃあ俺もやる」


 海浬も手を挙げた。


「え?海浬、字上手なの?」


 結構失礼なことを玖実が言った。


「失礼な。人並みにはちゃんと書けるぞ。それに知り合いがいたほうがいいだろ」


 心外だと言わんばかりに海浬が言った。


「他にやりたいやつはいるか?いなかったら2人にお願いするぞ」


 布黒木先生がみんなに確認した。誰も異議を唱えなかった。なので書記は萌香と海浬の2人に決まった。


「これからはクラスで何かを決めるときは委員長と副委員長で仕切ってもらうぞ。今日から頼む。これが今日他に決めないといけないやつだ」


 そう言って布黒木先生はメモを瑠唯に渡し教室の後ろのほうに移動した。


「それじゃあ他に決めないといけないものも決めようか」


 こうして係決めが瑠唯主導のもと行われた。

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