第8話 クラスのまとめ役

 僕の名前は緋河瑠唯。阿倍小部高等学校の1年だ。つまり新入生。


 阿倍小部高等学校に入学して分かったことがある。それはこの学校はヤバいってこと。


 何がヤバいかって?それは全部だよ。唯一同級生はヤバくない。


 この学校、急にあべこべ遊びっていうよくわからないものが始まるし、先輩たちはもう慣れちゃったのかわからないけど普通にしてるし、先生たちも積極的にあべこべ遊びやろうとしてるみたいだし。もうヤダ。泣きたい。


 そして今日、ついに授業じゃなくて午前中ずっとあべこべ遊びという事件が起こった。



 え?授業は?高校って青春と勉強をするために行くものだよね?そうだよね?僕がおかしいの?ねぇ!



 ふぅ。一旦落ち着こう。冷静じゃなくなったら負けだ。ウッドロウ・ウィルソンも一つの冷静な判断は、性急な千の会議にまさるって言っていたじゃん。冷静に判断しよう。うん、そうしよう。


 そんなわけで午前中はずっとあべこべ遊びをしていた。終わって学校に帰ってきたら少し時間があった。これからこのヤバい学校に通わなくてはならないんだ。少しでも仲良くなっておこう。


「みんな〜ちょっといいかな?」


 勇気を出して声をかけてみた。


「せっかく一緒のクラスになったから、ちゃんとした自己紹介をしようよ。あべこべ遊びじゃなくて」


 「いいね」「そうだな」などの賛成の声が上がった。よかった。僕あんまり大声出すの得意じゃないんだよね。大声出したかいがあったよ。


「それじゃあ提案した僕からするね。僕は緋河瑠唯。よろしくね」


 自己紹介って何歳になっても慣れないなぁ。緊張した。でも次に自己紹介してくれる子がいない。泣きそう。


「じゃぁ出席番号順にやっていくのはどう?」


 あぁ、でもいつも出席番号順で自己紹介とかやってるだろうから反対するかも。そしたらどうしよう。


 そう思っていたら


「そうだね。1番は慣れてるからいいよ」


 と1番の子が言ってくれた。マジありがとう!!


「ありがとう。じゃあ出席番号順でいいかな?」


 「いいよ〜」「そのほうがわかりやすいしな」「いんじゃね?」「賛成〜」などなどの声が上がった。


「それじゃあ1番の子よろしくね」


「オッケー」


 快く引き受けてくれた。


「出席番号1番の逢田華那あいだかな。よろしくね」


「「「「よろしく〜」」」」


 こんな感じでチャイムまでクラスメイトと親睦を深めた。


 そのあと午後は普通に授業をした。午前中の1時間目からあべこべ遊びが始まったから少し身構えてしまった。先生に


 『緋河、そんなに身構えなくても大丈夫だぞ。午前中丸々全部あべこべ遊びに費やしちまったから午後は普通に授業するぞ。高校生活、勉強全てあべこべ遊びじゃないぞ、さすがに』


 とまで言われてしまった。みんなの前で。めっちゃ恥ずかしたった。顔には出さなかったけど。『はい。わかりました』ってすまし顔で言ったけど。

 

 そのあとは特に何もなかったかな。普通に5時間目の授業をして、6時間目の授業もして、終礼して帰ってきたな。


 あ!でも帰り際逢田さんが話しかけてきたな。え~っと、確か『これからもクラスをまとめるの頑張ってね』って言ってたかな。僕、クラスまとめる気ないんだけど。っていうか出来ないし。


 まぁ、それは置いておこう。今度確かHR(ホームルーム)のときに係決めするって言ってたな。そこでは絶対委員長に立候補しないからまとめ役になることはないな。うん。ないよな。……なんか心配になってきた。これが所謂嫌な予感というものか。


 はぁ~、もういいや。なるようになるだろ。もう寝よ。何か疲れた。明日以降もしばらく何もありませんように。

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