第7話 初めての授業

 今日から授業が始まる。朝、みんなソワソワしながら布黒木先生が来るのを待つ。


「おはよう。今日から授業が始まる。緊張することはない。中学のときの内容が少し変わったくらいだ。リラックスしておけよ。それじゃあ出席をとるぞ。」


 布黒木先生がみんなを見回しながら言った。


「よし、今日も欠席者はいないな。元気なのはいいことだ。1時間目は現代文だ。現代文はでやるぞ。昨日配った教科書とノートを準備しておけ。これで朝礼は終わりだ」


 現代文の準備が終わった萌香は玖美と海浬と話をしていた。


「そういえば、夜月が言っていたんだけど、授業中にもあべこべ遊びが始まるときがあるらしいよ」


「えっ、それじゃあ授業中もあべこべ遊びのことも一緒に考えないといけないってこと?」


「そうなるね。大変だぁ」


 海浬からもたらされたちょっとどころではない嫌な情報に2人は不安に思う。


「夜月から本当はあんまり言っちゃいけないんだけどって言われたからあんまり他の人には言わないでくれよ」


「もちろん。でも何で私たちには教えてくれるの?」


 萌香が言った。


「2人になら夜月が言ってもいいよって言ってたのもあるし、玖実も萌香も俺の友達だから。」


「海浬……感動!!」


 玖実が泣きまねをした。


「でもいきなり名前呼びは吃驚した」


「あっ、それは私も」


 玖実に萌香も同意する。


「えっ、ダメか?」


 海浬が言う。


「ううん。私はいいよ」


「私も~。別にからかっただけ」


「からかうなよ!!」


 海浬がちょっと怒ったように言う。


 そんなことをやりながら先生が来るのを待った。





「お〜い、準備はできてるか?」


 チャイムと同時に布黒木先生が入ってきた。


「これから寺跡に移動するぞ」


「「「「!?!?!?」」」」


 布黒木先生の言っている意味がわからなかったのか生徒たちはみんな吃驚しながら頭に『?』を浮かべている。


「これはあべこべ遊びだぞ〜」


 布黒木先生が説明してくれる。


 黒板に昨日のオリエンテーションのときと同じようにそれぞれの漢字を書く。


 自席 寺跡


 自席に×、寺跡の◯をつけ、


「今回はこっちだ」


寺跡のほうを指しながら言った。


「それじゃあ行くぞ。適当に並んでくれ」


 みんな困惑しながら並んで寺跡に行った。





 布黒木先生は行ったついでと言って『ここは◯◯時代の寺の跡だ』とか『この寺を建てたのはかの有名な△△さんだ』とかの説明をして帰ってきた。


 余談だが、布黒木先生は国語科の先生なのに意外と詳しかった。


「もうお昼だね」


 玖実が呟いた。


「そうだね。1時間目からあべこべ遊びが始まるとは思わなかったなぁ」


 そう、帰ってきたらもう4時間目が終わる時間だったのだ。要するに、


 1時間目〜2時間目最初:寺跡に移動

 2時間目最初〜3時間目最初:寺跡の説明

 3時間目最初〜4時間目:学校に帰る


 という流れだったのだ。


「はい、お疲れ様。あと少ししたらチャイムが鳴るから、それまで教室にいるように。5時間目は1時15分からだからな。遅れるなよ」


「「「「は〜い」」」」


 生徒たちはこれからお昼なのもあり、結構息がぴったりだった。





 布黒木先生が教室を出て行ったあと、クラスは割と静かだった。なぜなら話す友達がいないから。


「みんな〜ちょっといいかな?」


 いかにもモテそうなイケメンの男子が言った。


「せっかく一緒のクラスになったから、ちゃんとした自己紹介しようよ。あべこべ遊びじゃなくて」


 「いいね」「そうだな」などの声が上がる。


「それじゃあ提案した僕からするね。僕は緋河瑠唯ひかわるい。出席番号は30番。よろしくね」


 最初はみんな誰から始めるかで静かだったけど、瑠唯がまとめて自己紹介が始まった。チャイムが鳴るまで続くのだった。

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