第12話 氷嬢様と雨宿り

2学期が始まった。主税は夏休みの後半、クラスメイトと映画にカラオケにスポーツに遊びまくっていた。そして夏休みの宿題を最終日までためていた主税は鈴女の力を借りつつ徹夜で宿題を無事に終わらせることができた。学校に着いた主税は教室に突っ伏していた。


主税「ねむ~」


駿介「当ててやろうか。夏休みの宿題徹夜で終わらせたんだろ?」


主税「そだよ・・・・・・」


駿介「だと思った。でも一人でやるとは・・・・・・もしかして氷堂さんの力を借りたとか?」


主税「・・・・・・まあな。」


駿介「お前、成績優秀者の答えを写そうとかしてたんじゃないか?」


主税「最初、それをやろうとしたら鋭い目で睨み付けられた。」


駿介「こわ・・・・・・」


主税「まあ、鈴女さんが分かりやすく教えてくれたから間に合ったよ。」


駿介「ん?お前、いつの間に名前呼びに。」


主税「まあ成り行きでな。」


駿介「まさかそこまで進展があったとは。」


その時鈴女は自分の机で小説を読んでいた。


始業式が終わった後、9月に行われる体育祭の話し合いになった。体育委員の主税ともう一人の女子、陸上部でショートカットの黒髪が特徴の「富士宮 咲(ふじみや さく)」が進行することになった。


主税「とりあえず一人一つずつ競技が決まったことで最後にクラス対抗リレーのメンバーを決めようと思うけど誰か候補はいないか?」


男子生徒A「とりあえず鍛冶場は確定だろ。」


男子生徒B「確かに、陸上部よりも足速いんだから。」


女子生徒A「富士宮さんも陸上部のエースだし確定だね。」


残りの4人はくじ引きにより決まった。全体的に運動部出身が選ばれていたためよかった。一人を除いて・・・・・・


午前中で学校が終わり、午後からは下校することに。主税と咲は決めたメンバーをパソコンでデータを入れていた。


主税「これでよし。後は俺でやっておくから富士宮さんは部活行って来いよ。」


咲「助かるよ、じゃあ後お願いね。」


咲はカバンを持って教室を出ていった。主税は残りの仕事を終わらせ学校を出ることに。


主税「そうだ・・・・・・今日ガス点検で火が使えないんだっけ。メシどうすっかな?」


主税は今日の献立を考えながら帰り道を歩いていたら目線の先に鈴女が歩いているのが見えた。


主税「(鈴女さんだ・・・・・・お隣だし帰り道一緒だよな。このまま帰ったらストーカーみたいになるよな。コンビニにでも寄って時間潰すか・・・・・・)」


その時、空から雨の雫が落ちてきた。


主税「やべっ!夕立ちか!?」


雨が降り始め、主税は走り出した。そして走り出した鈴女に声をかけた。


主税「鈴女さん、バス停まで走れるか!?」


鈴女「主税さん?分かりました。」


2人は土砂降りの雨の中、屋根のあるバス停に避難した。


主税「降ったな~制服がびしょ濡れだよ。」


鈴女はスカートの裾を絞って水気を切った。


鈴女「天気予報では晴れと言っていたのですが外れましたね。」


主税「だな・・・・・・!?」


主税はカバンからタオルを出して鈴女に渡した。


鈴女「ありがとうございます。」


鈴女は自分の制服を見て服が透けて下着が見えていたのに気づいた。鈴女は主税に背を向けてタオルで濡れた制服を拭いていた。鈴女の顔が恥ずかしさで赤くなっていた。


鈴女「コンビニでビニール傘を買って帰りましょう。お風呂に入って温まりたいです。」


主税「ちょっと待て、今日はガスが止まっているからお湯が出てこないぞ。郵便見ていないのか?」


鈴女は無表情ながら冷や汗をかいていた。


主税「見てないか・・・・・・いや、あのゴミ屋敷に埋もれているか。どうすっかな?」


主税は考えていた。


主税「鈴女さん。一か所雨宿りできるいい場所があるんだけど」


鈴女「?」


主税の雨宿りができる場所とは、この先にある銭湯だった。主税は入口の戸を開けて中に入った。


主税「おばあちゃん、いるか?」


番台「いらっしゃ・・・・・・あれ、主税くんじゃない!?」


主税「雨に降られてね。それに今日家のガスが止まっているから入りに来たってこった。」


番台「そうかい、久しぶりに来てくれて嬉しいよ。」


番台のおばあちゃんは主税の後ろにいる鈴女に気づいた。


番台「ところで、そちらのべっぴんさんは誰だい?」


鈴女「は、初めまして・・・・・・」


番台「もしかして主税くんのこれかい?」


と恋人を表す小指を立てた。


主税「ばっ!違えよ!同じ学校のクラスメイトの氷堂鈴女さん!」


主税は顔を真っ赤にして恋人であることを否定した。


番台「そうかい、てっきりそうかと思ったけど。」


主税「それと、制服が濡れてるから風呂入ってる間鈴女さんの制服乾かしてくれないか?」


番台「いいよ、お安い御用さ。」


鈴女「ありがとうございます。」


2人はお金を払い、男湯、女湯の暖簾をそれぞれくぐった。


主税「(にしてもまさかまたこの銭湯に来ることになるとはな。)」


この銭湯は主税がまだ前のアパートに住んでいる時に家にお風呂場がなかったため毎日通っていた銭湯だった。主税は服を脱ぎ、浴場に入った。


主税「この銭湯独特のにおい、懐かしいな。最後に来たのが5カ月前だけど数年前のように感じるな。」


主税が懐かしんでいるその時、女湯では体にバスタオルを巻いた鈴女が同じタイミングで浴場に入った。体を洗い頭を洗った後、湯舟に浸かった。


鈴女「(ふぅ・・・・・・雨に濡れた体に温かいお湯が沁みます・・・・・・)」


鈴女は体を伸ばした。一方その頃、主税は他のおじいさんたちと昔話をしていた。


おじいさんA「にしても主税くん体つきがさらに良くなったんじゃないかい?」


主税「そうすか?まあ毎日筋トレはやってるんで。」


おじいさんB「若いのお~わしも若いころは主税くんみたいに筋肉があっての。」


おじいさんA「また始まったよ。じじいなんだから張り合おうとするなよ。」


おじいさんB「何じゃと!わしゃあまだまだ精神は若いぞい!」


と、おじいちゃん同士で言い争い始めた。


主税「(ほんと、今の家に移る前はこうして毎日じいちゃんたちとだべっていたな。コミュ力が上がったのはこれのおかげかもな。)」


主税はこのまま数十分お風呂に浸かっていた。


主税「いや~昼から入る銭湯はいいもんだな~」


主税は腰にタオルを巻いて浴室から出た。今から服を着ようとロッカーを開けようとした直前。


番台「主税くんいるかい!?」


番台のおばあちゃんが男湯に入ってきた。


主税「おばあちゃん!?どうしたんだ?」


番台「一緒に来ていた女の子が逆上せたんだ。わしら老人じゃ持ち上がれんから代わりにやってくれ。」


主税「・・・・・・は!?何言ってんの?俺が女湯に入れるわけないだろ!」


番台「今回はどうしようもないから主税くんしかいないんじゃ。」


主税「だけどよ・・・・・・」


少し考えたが、鈴女の安否確認が重要だと考えた主税は番台さんの後ろについて女湯に入った。女湯にはおばあちゃんばかりだったためキャー!とは言われずにぐったりしている鈴女のもとに向かった。番台のおばあちゃんがバスタオルを鈴女に巻いていたおかげで裸を見ずに済んだ。主税は鈴女をお姫様抱っこして浴場の外に連れ出そうとした。


鈴女「ん・・・・・・」


鈴女の意識が戻ったのか目を覚ました。


主税「鈴女さん、気づいたか?」


鈴女「主税さ・・・・・・えっ?」


鈴女は自分の格好に気づき、鈴女は女湯でキャ~!!と全体に響く声を出した。制服の乾燥が終わり、着替えた主税と鈴女はロビーでコーヒー牛乳を飲んでいた。


鈴女「申し訳ございません。助けていただいたのに叫んでしまいまして・・・・・・」


主税「いいって、それが普通の女子の反応だよ。いや・・・・・・生まれて初めて女湯に入ったけど罪悪感がやばいな。」


鈴女「・・・・・・この牛乳美味しいですね。」


主税「もしかしてコーヒー牛乳初めてか?毎回風呂上りに飲むんだけどこれがまた絶品なんだよ。」


鈴女「銭湯もコーヒー牛乳も初めての体験でとても新鮮でした。」


主税「こんなんで喜んでくれるなら連れてきてよかったよ。さて、雨も上がったし帰るか。」


鈴女「はい。」


主税と鈴女は空き瓶をごみ箱に捨てて銭湯を後にした。


主税「そういえば、飯どうするか。ガスがないから料理作れないけど。」


鈴女「デリバリーしますか?」


主税「しかないよな。何が食いたい?」


鈴女「ピザとかどうですか?」


主税「ピザか・・・・・・たまにはいいか。」


この後、主税の家で二人はLサイズの4種ピザを食べたのだった。


第12話(完)







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