第8話 氷嬢様と初めてのお泊り会(前編)
7月、高校では終業式が終わり明日から夏休みが始まる。そこで教室では駿介が主税にある提案をした。
駿介「それで、明日オマエんちに泊まりに行っていいか?」
主税「ヤダね。」
駿介「何でだよ。どうせ家にはお前しかいないわけだ・・・・・・もしかして彼女とかか!?」
主税「いね~し!なんでそんな発想が出てくんだよ!」
駿介「いいじゃねえか。せっかくの夏休みなんだしさ。」
主税は顎に手を当てて考えていた。
主税「ちょっと考えさせてくれねえか。」
家に帰った主税は隣の住人である同級生の鈴女のインターフォンを押した。ドアの奥に缶が転がった音が聞こえた。
鈴女「鍛冶場さん?どうかされましたでしょうか。」
ドアを開けた鈴女はまだ制服姿だ。主税は鈴女の奥のゴミ屋敷を見ていた。
主税「あのさ、俺が最初に来た時よりもひどくなってないか?」
鈴女「そんなことは・・・・・・今、掃除をしていたので。」
主税「掃除って・・・・・・何からやったんだ?」
鈴女「まずは服の整理を・・・・・・」
主税「それで余計に散らかしたのか。お決まりの挫折するパターンだな。でも、なんで急に掃除を?」
鈴女「実は・・・・・・」
鈴女はその理由を伝えた。
鈴女「朱莉さんがお泊り会したいと言いまして、朱莉さんの家は両親と妹が住んでいるので・・・・・・」
主税「なるほど、それで氷堂さんの家に決まったのか。でも、この部屋のありさまだと・・・・・・」
鈴女「そう・・・・・・ですよね。」
主税は頭を掻いた。
主税「しゃあねぇな・・・・・・また俺が掃除してもいいか?」
鈴女「いいのですか?」
主税「いつ来るんだ。山吹さんは?」
鈴女「明日です。」
主税「じゃあ今やるしかねえじゃねえか!」
主税は鈴女の部屋に上がった。そして二度目の鈴女の部屋の大掃除が始まった。
主税「(服多いな、やっぱ女せ・・・・・・)」
主税の手に黒色のブラジャーが・・・・・・
主税「わぁあああああああ!」
主税はブラジャーを洗濯カゴに放り投げた。
鈴女「どうかしましたか?」
主税「いや・・・・・・なんでもねえ(サイズ・・・・・・Gって・・・・・・)」
意外に大きいなと思ってしまった主税だった。そんなことはさておき・・・・・・13時に始まった大掃除は18時までかかった。
主税「お・・・・・・終わった・・・・・・時間かかった・・・・・・」
鈴女「ありがとうございます。申し訳ございません。また片づけを頼んでしまいまして。」
主税「いいって、俺もちょうど用があってさ。」
要件を言おうとしたその時。お腹の虫が部屋中に響いた。
主税「俺じゃない・・・・・・ってことは。」
鈴女は涼しい顔でお腹を押さえていた。
鈴女「すみません。お昼ご飯を食べていなくて。」
主税「(そこは普通恥ずかしがるのに相変わらずの無表情・・・・・・さすがは氷嬢様。)」
主税はポケットからスマートフォンを取り出した。
主税「今日はデリバリーにすっか。たまには肉でもどうだ。」
鈴女「構いません。」
主税「決まりだな。」
主税は電話で注文をした。数分後、フライドチキンのバーレルが届いた。
主税「量多いな・・・・・・余裕だと思ったけど多かったら残していいから。」
鈴女「はい。では、いただきます。」
鈴女はフライドキチンを取ると、小さい口でかぶりついた。主税も一つとるとこちらは豪快にかぶりついた。
主税「ウマっ!これ、家ではなかなかできないからな。」
鈴女「こういうのも作ったりするのですね。」
主税「まあな。」
2人が無言でチキンをむさぼり続けて鈴女がチキンを食べながら主税に話題を振った。
鈴女「ところで、用って何ですか?」
主税「おっと忘れてた。俺、明日クラスメイトがウチに泊まりに来るんだ。それで明日はご飯作りに行けないことを伝えようと思ってさ。ほら、用事があるときは前もって連絡するように言ったからな。」
鈴女「そうですね、分かりました。楽しんでくださいね。」
主税「そっちこそ。初めてのお泊り会、楽しんで来いよ。」
鈴女「はい。ところでそのクラスメイトってどなたでしょうか?」
主税「同じクラスの風祭駿介だよ。バスケ部の。」
鈴女「そうですか・・・・・・すみません。あまりクラスメイトの顔と名前が一致していなくて。」
主税「しょうがねぇって。人見知りだし自分から話しかけるのも難しいだろ。」
主税はバーレルの中のチキンを取った。しかし量が妙に少ない。
主税「あれ・・・・・・俺まだ3本目だけど確か12本入りで残り3本ってことは・・・・・・6本目!?」
鈴女は無言で6本目のチキンを無言でかじりついていた。実は大食いだってことに驚いた主税だった。
次の日、朝10時に主税の部屋に駿介がやってきた。そしてもう一人・・・・・・
主税「なんで倫までいるんだ・・・・・・」
倫「駿介から話を聞いてね。急いで準備してきちゃった。」
主税「お前・・・・・・自分が女だってこと忘れてるだろ。」
倫「失礼ね。一応こう見えていろんなところが成長中なのよ。」
主税「それを堂々と言っているところが女を忘れてるってとこだろ!普通恥じらうだろ!」
倫「まあ普通は恥じらうわね。でも幼馴染だし。」
駿介「コイツの精神年齢小学生止まりだからさ。」
倫「誰が小学生よ!」
主税「へいへい、お前らの口喧嘩はもういいから昼飯どうする?」
駿介「チャーハン!」
{同時に言う}
倫「ラーメン!」
駿介と倫は互いに睨みつけた。
主税「いいぜ。両方とも作ってやる。」
駿介「さっすが主税!久しぶりに食えるぜ。チカラメシ!」
倫「楽しみだわ~!」
主税は愛用の赤のエプロンを着け、キッチンに向かった。
一方その頃、隣の鈴女の部屋では朱莉が遊びにやってきた。
朱莉「お邪魔しまーす。すごっ、広い部屋だね!」
鈴女「そうですか?一般的な広さだと思いますが。」
朱莉「十分広いよ!まあ私は一軒家だから比べられないけど。」
鈴女「そうですか・・・・・・」
朱莉はしんと静まり返っている雰囲気を壊すべく話題を出した。
朱莉「そうだ、お昼食べない?私、鈴女ちゃんが作った料理食べてみたいな~」
鈴女は無表情だが内心は少し焦っていた。
鈴女「ご飯、お外で食べませんか?天気もいいですし。」
朱莉「え~外食っていつでも食べられるじゃん。」
鈴女「私、友人と外食というのに憧れていまして・・・・・・」
朱莉「ふ~んそっか~それなら仕方がないな~」
と、朱莉は支度を始めた。鈴女は心の中で一息ついていた。
その頃、主税たちはお手製醤油ラーメンとチャーハンを食べていた。
駿介「これこれ、久しぶりに食ったけどホントうまいな!」
倫「あれ、いつも二人で食べてたんじゃないの?」
駿介「だって、コイツ自分で全部食うんだもん。」
主税「いや、俺の弁当だし。あげるために多めに作るわけねえだろ!」
倫「ふ~ん、意外とケチなのね。」
駿介「俺もそう思う。」
主税「お前ら・・・・・・こういうところは息ピッタリだな・・・・・・」
駿介「そういや話変わるけど、親父さんお盆休み帰ってくるのか?」
主税「親父か?確かその予定だけど。」
倫「今アメリカだよね。大変だね。」
主税「でも親父のおかげで今の生活できてるわけだし感謝しねぇとな。」
駿介「でも、こんな家事スキルあるから逆に奥さんになる人が苦労するよな。」
倫「それわかるかも。「私より家事ができるじゃん!」とか言われたりしてね。俺の指示通りにやれとか。」
主税「そんな面倒な性格じゃねえよ!!」
と3人でたわいもない話をしていた。
主税たちは談笑したりゲームで遊んだりで夕方6時まで過ごしていた。
主税「なんだ、もうこんな時間か。夕飯どうするか?」
駿介「俺ハンバーグ!」
{同時に言う}
倫「私ビーフシチュー!」
意見が食い違った駿介と倫は互いに睨みつけた。
主税「ほんとお前ら意見があったことがねえな・・・・・・」
主税は冷蔵庫の中身を見た。
主税「やべ・・・・・・肉が無い。これじゃハンバーグもビーフシチューも作れない。」
主税はエコバッグを持った。
主税「ちょっと近くのスーパーで買い物してくる。待っててくれ。」
倫「じゃあ私もついていく。荷物持ちもするよ。」
主税「バーカ。女性にそんなこと頼めるか。」
駿介「俺も行くわ。」
主税「いいけど、余計なものは買わないからな。」
倫「ケチ~」
主税たちが外に出ようとドアを開けると。
朱莉「え・・・・・・」
朱莉と鈴女の姿が・・・・・・どうやら外食そのままデパートで買い物をしていたのか、2人の手には紙袋がたくさんあった。
駿介「は!?氷堂さんと山吹さん!?」
倫「もしかして・・・・・・隣に住んでいるのって!」
主税「(タイミング・・・・・・悪すぎだろ・・・・・・)」
主税はおでこに手を当てた。
駿介・倫・朱莉「それで!2人はどういう関係!?」
急遽、主税の部屋で緊急会議が行われた。3人は主税と鈴女に質疑応答をした。
主税「別に俺たちはやましい関係ではないぞ!」
倫「でも、互いに隣に住んでいるのは知っていたのね。」
主税「まあ・・・・・・あいさつに行ったときたまたま。」
駿介「しっかし世間も狭いな。まさか引っ越し先のお隣が氷堂さんの部屋だなんて」
主税「俺も初めて会ったときびっくりしたかんな。」
朱莉「で~2人はもしかして付き合っているのかな~」
主税「そっ、そんなわけねえだろ!適当なこと言ってんじゃねえ!」
朱莉「声震えてるけど~」
すると今まで黙っていた鈴女が口を開けた。
鈴女「私と鍛冶場さんはお友達ですが。」
4人は驚きのあまり声を挙げた。
鈴女「あの・・・・・・どういたしましたか?」
相変わらず表情が変わっていないがキョトンとしているようにも見えた。
主税「いや、俺、友だちって思ってくれていたのに驚いてて・・・・・・」
鈴女「もしかして、迷惑でしたか?」
主税「いやいや俺嬉しいよ!そう思ってくれてるだけですごく嬉しい!」
と、慌てて訂正した。そして駿介と倫も
駿介「じゃあさ、俺とも友達になってよ!同じクラスだしさ。」
倫「私も、クラスは違うけど仲良くしてもらえると嬉しいな。」
鈴女「はい、よろしくお願いいたします。」
鈴女に新しく2人の友だちができた。鈴女は無表情だが友達ができて内心はとても嬉しかった。お泊り編はまだまだ続きます。
第8話(完)
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