第2話 ギャルとロミジュリ
静まりかえった部室。
羽賀さんと二人っきり・・・。
「ねぇ、他の部員はいつ来るの?」
部室を見回していた羽賀さんが質問してくる。
「あ、いや、部員はとりあえず僕一人です。」
「は?マジで?」
「はい・・・。」
「だって去年の学園祭の時ほかにもいたじゃん。」
「あれは僕以外全員3年生だったんです。だから今年は僕一人です。」
「一年は?」
「今のところまだ一人も。」
「マジか・・・じゃあ私とあんたで全部で二人ってこと?」
「はい。」
羽賀さんは目を見開いている。そうとうショッキングだったのかもしれない。しかしすぐに表情は戻った。
「まぁいいや。かえってやりやすいかもしれないし。」
「そ、そうだね・・・あ、羽賀さん、これ読んだことある?」
棚から一冊の本を取り出して手渡す。
「なにこれ?ロミジュリじゃん。」
「え!?知ってるの?」
「名前だけね。中身は知らない。なんかジュリエット死んじゃうんだっけ?」
「それとロミオも死んじゃう。」
「マジで?!超悲しいやつじゃん。」
「まぁ、一応悲劇だから。」
「ふ~ん。」
「じゃあシェイクスピアは知ってる?」
「知らない。なにそれ?」
「ロミオとジュリエットを書いた人。劇作家。」
「ふ~ん。そっか、分かった・・・それで?」
「え?」
羽賀さんがジッとこちらを見ている。
「だから、それで私は何すればいいの?このロミオをジュリエットを読めばいいの?」
「あ・・・まぁ、そうかな。あと腹筋とか発声練習とかやらなきゃだけど。」
「・・・どれをやればいいの?」
詰め寄られる。顔が近い。
「えっと、それじゃあ、とりあえずロミオとジュリエット読みましょうか?名作なんで。」
「分かった。」
羽賀さんは椅子にドカッと腰掛けて読み始めた―――――
―――――数十分、いや、数分たった。
「あ~~~全然分からん。無理。」
羽賀さんが顔に本をのせて天を仰いだ。
「ムズカシイ・・・コンナノサイゴマデヨメナイ。」
「ごめんなさい。」
「あのさぁ、これ読めなきゃ演劇できないの?」
「いや、そういうわけじゃないけど・・・。」
「え?マジで?読めなくていいの?」
「とりあえず戯曲っていうのに触れたほうがいいのかなって思って言っただけだから。」
「ギキョク?」
「えっと、簡単にいうと台本って思ってくれればいいです。」
「あっそう。分かった。戯曲ね。」
羽賀さんがそう言葉を口にしたあと嬉しそうな顔でほほ笑んだ。初めて見るその顔に一瞬ドキッとする。
「あとさ、名前教えてよ。」
「え・・・。」
「名前。いつまでもあんたじゃ嫌でしょ。」
同じクラスなのに覚えてないんですか?と聞きたくなったが堪えた。
「久原創一、です。」
「創一ね。私は羽賀りおん。りおんでいいから。宜しくね。」
「よ、よろしくお願いします。」
羽賀さんが手を出す。こちらもつられるように手を出し握手をする。
始めて女の子の手を握ったその感触はとても柔らかくて繊細な感じがした。
「あの、羽賀さん。」
「何?」
「演劇部に入って貰ったのは嬉しいんですが、問題が一つあるんです。」
「何?」
「部員最低でも5人集まらないと廃部になっちゃうんです。」
「マジで・・・。」
羽賀さんが僕の手を握る力が強くなった。
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