第15話 ドラゴンゾンビ

 見晴らしの良い街道に出ると、殺し屋は襲ってこなくなった。

 だが、確実につけられていると思う。

 奴らは執念深いと聞いている。


 ドラゴン山脈の森に入った。

 ビュティーヌの情報によればオークの生息域だ。

 オークは2メートルを超える巨漢で力が強い。

 だが、神剣の相手としてはザコだと思う。


 問題は殺し屋だ。

 どうやって始末をつけよう。


「斬」


 俺達の匂いを斬った。

 これでオークは俺達を見つけられないはずだ。


 殺し屋はオークに始末させよう。

 空間を斬りまくって俺は迷路を作った。

 これで殺し屋は迷うはずだ。

 そしてオークはその鼻で殺し屋を見つけるに違いない。


 迷路は帰りに壊しておこう。


 ドラゴン山脈の山頂を目指す。

 当然、空間を斬って、転移した。


 いきなり目の前に現れたのはドラゴンゾンビ。

 剣山のように体中に剣が突き刺さっている。


「グギギギャャ」


 体から剣が飛ぶ。

 俺は神剣を振るった。

 驚いた事に剣は軌道を変えてよけた。


「たぶんフライングソードね」


 ビュティーヌが動く剣の正体を見破った。

 神剣を何度も振るうがヒラヒラと避けられた。


 ドラゴンゾンビが大きな口を開く。

 ブレスを吐くつもりだな。

 ドラゴンゾンビをやろうとすると、フライングソードが、こちらに突撃する構えを見せた。

 どっちをさきに始末しよう。

 そこで思ったのはここなら鞘から抜いても平気だなと。


「斬」


 鞘を抜いて剣を振ると、フライングソードとドラゴンゾンビは塵に返った。

 空の雲は真っ二つに裂けている。

 恐ろしい力だ。


 でも抜かないという選択肢はなかった。

 ドラゴンゾンビが街を襲えば多数の死人がでることは確実だ。


「街は救われたのね」

「あんた、やるとは思ってたけど、凄いのね」


 あとは古戦場の問題だ。

 転移して空間の迷路に辿り着いた。

 オークは殺し屋を上手く始末したかな。

 空間を斬って正常に戻す。

 黒ずくめの死体がいくつもあった。

 倍以上のオークの死骸もあったが。


「出来れば心を斬ってやりたかった」

「仕方ないわよ。急ぎの仕事だったし」

「アンデッドの方が心配だわ。街に早く戻りましょう」


 そうだな、フライングソードは先兵みたいなものだ。

 本体の攻撃がこれから始まるに違いない。

 ドラゴンゾンビをやれたのは良かったと思う。

 敵の戦力を削れたから。


 転移して街に戻ると、街から煙が上がっていた。

 間に合わなかったのか。

 街に入る。

 一番近い、火事の現場に行った。


「斬」


 炎を斬ると、火はたちまち消えた。

 効果範囲が狭いけど、1時間もあれば全ての火が消せる。


 住民はなぜかパニックになっていた。

 火事だけじゃないのか。


 ほどなくして火事はなんとかなった。

 だが、パニックの原因はレイスだった。

 レイスを撃退しようとして火を使ったらしい。


 レイスは建物をすり抜ける。

 建物が邪魔だ。


「斬」


 怨念を斬ってみた。

 手ごたえはあったが、やはり範囲が狭い。

 一網打尽にするには、鞘から抜かないといけないのか。


 怨念だけ上手く斬れれば良いが。

 たぶん街が壊滅するように思う。

 そうか、呪われた剣は、アンデッドを引き付ける。


「呪われた剣を集めてくれ。ビュティーヌは冒険者へ。プリシラは鍛冶ギルドを頼む」

「任せて」

「ちゃっちゃとやりますか」


 俺の前に呪われた剣が積まれた。

 俺は封印のお札を剥いだ。

 やった、レイスが集まってくるぞ。


「斬、斬、斬」


 レイスを斬りまくった。


「レイスの発生源は鍛冶ギルドよ」


 プリシラが情報を持ってきた。

 鍛冶ギルドに行くと中はパニック状態だった。

 レイスを斬りながら発生源に向かう。


 発生源は懐かしの職場の倉庫だった。

 鈍い俺でも分かる。

 倉庫自体が呪われている。


 呪いの空間になっているようだ。


「斬」


 倉庫の呪いを斬って、中のレイスを斬る。

 これで一段落みたいだな。

 こんなになるまでダサックは放置したのか。


「ダサックはどこだ?」


 ギルド職員を問い詰めた。


「金目の物を持って逃げました」


 逃げやがったのか。

 許せん。


「アンデッドの大群が攻めてきたぞ」


 くそっ、展開が早いんだよ。

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