第9話 シャドウキング
Side:ストカ
僕は最近大事な物を失ったようだ。
それがなんなのか思い出せない。
足が勝手に冒険者ギルドに向く。
まるで通い慣れた道だとでも言うように。
たしかに冒険者ギルドには何度も足を運んだ。
その理由が思いつかない。
行ってみればわかるだろう。
冒険者ギルドにはカウンターがあって受付嬢が5人座っている。
僕の目はその中の一人に吸い寄せられた。
脳内にスパークが散る。
彼女だ。
そうだ、名前はビュティーヌ。
彼女と親しそうに話す男がいる許せない。
「【隠蔽】」
僕はスキルを使い、男の後をつけた。
男は鍛冶ギルドに入っていく。
会話から男がダサックだと知った。
冒険者ギルドには仕事で行っていたようだが、僕の目は誤魔化せない。
ダサックはビュティーヌに気があるに違いない。
僕は鍛冶ギルドを監視した。
ダサックと男が荷車を引いて鍛冶ギルドから出て行く。
荷車には献上品の旗がある。
何の献上品だろうか。
僕はそこに黒い思惑を嗅ぎ取った。
分からないように後をつける。
荷車はやがて森へ入っていった。
おかしいな。
この先は古戦場しかないはずなのに。
荷車はどんどんと進んで行く。
アンデッドが出てきてもお構いなし。
どうやらアンデッドは道へは入ってこられないようだ。
そして、荷車は古戦場に入って行った。
陰謀の匂いがする。
荷車が停まった。
「ダサックの旦那、もうやばいんじゃないですかね」
「何がだ?」
「いえね、この廃棄している場所の呪いの力が、だんだん強くなっているような気がするんでさぁ」
「じゃあ、もっと奥に行くか?」
「それもごめんですぜ。この道の効果が行けば行くほど、薄まっているような気もしますんで」
「では仕方ないな。作業に掛かるぞ」
ダサックと男は、剣を投げ捨てる作業を始めた。
あの剣はなんだろう。
僕は剣にお札が貼られているのに気がついた。
呪われた剣だ。
浄化せずに捨てているんだな。
これは凄い弱みを握ったな。
「ふひひ」
「誰だ」
危ない危ない、隠蔽スキルでも声は隠蔽できない。
「旦那、アンデッドの笑い声じゃないですか」
「そうだな。どうも過敏になっていたようだ」
ダサックが何気ない足取りで僕のそばにくる。
そして僕を押した。
「密偵だ。つけられていたぞ」
僕は道から外れたようだ。
僕にアンデッドが群がる。
「ダサックめ。許さん。許さんぞぉ。呪ってやる」
体中が呪いに蝕まれるのが分かる。
そして、動けなくなった。
「旦那、なんで密偵のいる所が分かったんで?」
「アンデッドの視線が見ていたのだよ。アンデッドが注目するのは生者しかない」
「なるほどですぜ」
次は失敗しないぞ。
僕は飢えを感じた。
絶え間ない飢えだ。
体黒い影のようになっている。
どうやらアンデッドになってしまったようだ。
打ち捨てられた呪われた剣から出る呪いの波動が心地いい。
動けるようになった。
「もっとだ。もっと」
僕は呪われた剣のお札を剥がそうと指で摘まんだ。
静電気にも似たピリッとした感覚が伝わる。
無視してお札を剥がした。
剣からもれる呪いが強くなった。
これで良い。
僕は捨てられている剣のお札を全て剥がした。
周りにいるアンデッドも喜んでいるようだ。
スケルトンが強くなっていくのが分かる。
ゴーストが呪われた剣に取り憑いて、フライングソードになった。
スケルトンは呪われた鎧を装備し始めた。
良いぞ、もっと進化しろ。
ローブを着たスケルトンが挨拶にきた。
「王におかれましてはご機嫌うるわしく」
「俺が王?」
「シャドウキングになられています」
「ふはははっ、王か?」
僕は何だっけ。
そうかダサックに復讐しないといけないんだった。
その前に、戦力増強だ。
「フライングソード達よ。山脈まで飛んでいきドラゴンを狩れ。ドラゴンゾンビを作るのだ」
フライングソードが編隊を組んで、山脈の方に飛び立った。
これで良い。
スケルトンの生まれる速度を加速させるには。
「スケルトンナイトよ、隊列を組め。巡回してスケルトンを起こすのだ」
スケルトンナイトが剣を掲げて、僕に応える。
僕は森まで行くとネズミをゾンビにした。
それを斥候として街へ放った。
街は聖なる力で覆われているのは知っている。
ネズミゾンビなら入れるだろうが、普通のアンデッドは入ることが出来ない。
ほころびを見つけるのだ。
墓地とかには呪いの力が溜まり易い。
前線基地として使えるはずだ。
内と外に戦力を作り一斉に蜂起しよう。
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