第4話 ゴブリン森壊滅
「プリシラ、今日もアンデッド退治か」
「あれは疲れたから、ゴブリン退治にしましょ。それなら私も活躍できるし」
「まあいいけど」
ゴブリンの森に行った。
ゴブリンの森は古戦場と街を挟んで反対側だ。
古戦場近くの森に比べて、明るい陽射しが一杯の森だ。
鳥のさえずりも聞こえるし、職場としてはこっちの方が良いな。
冒険者が作ったのか、獣道なのか、とにかく道がある。
楽で良いな。
故郷の村を思い出す。
村は俺が12歳の時に盗賊の襲撃に遭った。
辺境の村ではよくある事だ。
キュウティナさんが助けに来てくれなかったら、村は全滅していただろう。
もっとも襲撃の後に廃村になったが。
俺は職を求めて、この街に来て、前のギルドマスターにスカウトされた。
素手で呪われた剣を触ったら驚かれたが、そんなに変か。
少し怠くなるだけだろ。
あんなの気合をいれれば一発で治る。
そういう時、俺はキュウティナさんの顔を思い浮かべて、何が何でも剣を作るぞと意気込むんだ。
それが俺の気合の入れ方。
「ゴブリンが来たわよ。見てて」
「おう」
プリシラがゴブリンに斬りかかった。
ゴブリンとはリーチが違うし、ゴブリンの得物は短い棍棒なので、優位に戦闘を進められている。
ほどなくして、ゴブリンは切り伏せられた。
「私が倒したんだから、魔石ぐらい採ってよ」
ええと胸のところだったな。
ナイフを突き刺して探るが、見つからない。
「冒険者、舐めてた」
「魔石採りで苦戦するようじゃ、まだまだね」
「レイスの方が簡単だった。くそっ、やってられるか」
俺は鞘付きの神剣でゴブリンの上半身を突いた。
ゴブリンの胴が消えて下半身と頭と魔石が残った。
最初からこうすれば良かったんだ。
討伐の証拠の耳を削ぐ。
「力技も良い所ね」
「鍛冶師に魔石取りの技量を求められても困る」
討伐しながら、道を進んだところ、ゴブリンの集団にぶち当たった。
「おー、うじゃうじゃいるな」
「おかしいわね。こんなに湧いているなんて」
奥に人の背丈の倍はあるゴブリンがいる。
「あれは?」
「ゴ、ゴ、ゴキ」
プリシラが絶句した。
「ゴキブリ」
「違う、ゴブリンキングよ。1000人の兵士でやっと敵う化け物なのよ」
「じゃあ片付けよう」
「ストップ。森には他の冒険者もいるのよ。力技は厳禁」
「知っているか。名剣は斬りたい物だけ斬れるんだぜ」
俺は神剣を鞘付きで横に薙ぎ払ったところ、ゴブリンの森が綺麗さっぱりなくなって、例によってレベルアップした。
さっぱりと言っても、切り株と倒れた木はあるけどな。
それと森にいた冒険者が見える。
さすが神剣。
人間は傷つけないように出来た。
だいたい鞘付きで斬れる方がおかしいんだ。
おそらくだけど、剣気で斬っていると思う。
物理的に斬るのだったら、森一つはなくならないよな
木も傷つけないように出来るのかな。
今度やってみよう。
「ちょっと、私の活躍の場は」
冒険者は必死に何かを拾っている。
そうか。
「それより魔石だ。拾え」
「偉そうにしないで」
暗くなるまで魔石拾いした。
儲かったが、冒険している感がない。
ギルドに帰るとギルドの連中が湧いていた。
何事?
「何かあったのか?」
受付嬢に聞いた。
「ゴブリン森の開拓がはじまるのよ。開拓すれば自分の土地に出来るの。地主よ、地主、大地主」
「なるほど」
神剣がなんかやっちゃいましたか。
「それだけじゃないのよ。木も伐採されたから、運び出せば儲かるわ。ウッドラッシュよ」
「なるほど」
「あんたがやったって言わないの?」
「あんたじゃないクラフトな。言わないよ、めんどくさい」
「大地主になりたくないの」
「なりたくはないな」
「じゃあ、あんたの目的は何?」
「あんたじゃなくて、クラフトな。究極の剣を作る事だったんだけど、それが叶ったから。今は剣を届けることかな」
「平凡な望みなのね」
「そういう、プリシラは」
「私? えへへ、秘密」
「気持ち悪いな」
「別にいいでしょ。夢なんて胸に秘めておくものよ。で、剣は誰に届けるの?」
「言いたくない。胸に秘めておくんだろ」
「男ならスパッと言いなさいよ」
口に出すと思い出が何か別の物に変わりそうなんで嫌だ。
ああ、嫉妬しているのか。
プリシラがキュウティナさんに憧れたりするのが嫌なんだ。
馬鹿だな。
キュウティナさんは俺の物じゃないのに。
「ビュティーヌ、なんで昨日来なかったんだ」
「ストカ、私に近寄らないでって言ったでしょ。職場まで押し掛けて、迷惑だわ」
受付嬢と男が揉めている。
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