第21話 斑鳩豪と所長が知り合いだった!

「今日は特別ゲストがいるんだ」


 パソコンの授業を受けているところへ所長の神崎がやってきた。神崎の後ろから、一人の男性がついてきているのだが……なぜ、どうして!


「この人です、僕の大学時代の友人の斑鳩豪さん。皆さんよろしく」


 前髪をさらりとかき揚げ、涼しい顔で登場した。なぜ、私がここにいると知ってきたのか。


「……ぐえっ」


 舞は、思わずカエルを踏み潰したような声を出してしまった。神崎がちらりと舞の顔を見たが、なぜか知らん顔。


 ど、ど、ど、ど、どっ、どうして私の前に来るのよ~~~!


 と舞は、叫びにならない叫び声をあげる。もちろん心の中でだが。いったい何をしに来たんだろう。まさか、講師だなんていわないで。


「僕はITの技術は皆さんに教えられませんので、経済のことについて少々お話をします」


 と、あまり聞きなれない用語を駆使して話し始めた。ここにいるメンバーは理解できるのだろうか。すると、今度は不動産関連の話に移った。なんとなくわかるようになり話は三十分ほど終了した。


「僕の話はこれで終わりですが、皆さん心を強く持ってチャンスをつかんでください」


 最後だけは、気の利いたことを言って終わった。


ああ、これで退場なのね、と思ったのも束の間、神崎がいった。


「じゃ、ゆっくりしていってくれ」

「げっ」


 舞はまたカエルのような声を出してしまった。


「どうしたんだい、八雲さん。具合でも悪いの?」

「違います」


 私と斑鳩豪の相性が超悪いことや、彼の会社で私をいびっていたことは言っていないのだろうか。そんなはずはない、あれほどひどいことを言ったんだから、彼だってひどい社員だったと悪口を言ってるはず。


「昼休みにしてください」


 終わって周囲の五人は、テキストを持ち食堂へ急いでいる。よほどお腹が空いているのね。食堂へ入りトレーをテーブルに置き、六人そろって食事を始めたところに斑鳩がやってきた。


 ああ~~、また顔を合わせなきゃいけない。


「ご一緒しますね」


 と隣のテーブルの一番近い場所にトレーを置き、食事し始めた。すると何かが足りないことに気が付いたのか、舞を呼んだ。


「ちょっと、そこの女性」

舞が知らん顔をして味噌汁をすすっていると、再び。


「ほら、今味噌汁を飲んだそこの彼女」

「ぶっ」

 と舞は味噌汁を口から噴出した。


「おお、味噌汁を吹き出すなんて、まことに面白い人。だがっ、前の人ははなはだ迷惑だ」

「私っ、わざとやったわけではありません。斑鳩さんが、急に脅かすから」

「いやはや、人のせいにするとは、何たることですか」

「だから、違いますって」

「まあ、いいから。お茶はどこにあるのですか。できたら持ってきていただきたい」

「お茶はセルフサービスになっていまして」

「そんな簡単なこともやっていただけないのですか」


 簡単なことだったら自分でできるでしょうが。


「わかりました。はい、はい、ただいまお持ちいたします。わたくし、そんなにケチではございませんので」

「そう来なくちゃね」

「はあ……」

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