第10話 温泉で女子トーク
ミーティングが終わり、女性三人はホールに来ていた。
宿泊施設は温泉とは別棟なので、渡り廊下を渡って温泉のある建物へ移動した。非日常の空間に渡り廊下で移動できる。講習と宿泊費を含めた参加料が異様に安いと思ったら、仕事もすることになっていたからなのだ。実務研修とはよく言ったもので、ここも人手不足なのかもしれない。
「今日はゆっくり温泉につかって、明日に備えようっ!」
舞が言うと、恵と穂香もうなずいている。
「そうね。今日だけは旅行気分を味わえるわね」
「毎日温泉に入れるなんて最高っ!」
とミーティングの終わりに三人で相談し、入浴することになった。
温泉施設は午後八時には終わるので、夕食の前に入った方がいいのだ。温泉には毎日入っていいことになっていたので、客の気分で暖簾をくぐる。脱衣所にはほのかに温泉の香りが漂い、ガラスの向こうには湯気とほんのり茶褐色に色づいた湯船が見える。私の弱点、お風呂が大好きだってことを知って勧誘したのかと思える。
「広いお風呂に毎日入れるなんて幸せ~~」
恵が感嘆の声を上げた。やはり恵も温泉は好きなようだ。
「食事付きで、しかもここに毎日入れるなんて、だいぶ得した気分ね」
百戦錬磨の穂香も納得する。
「アパートのお風呂とは段違いに広くて素敵。しかも温泉だし」
舞は感激した。だが、中でポーズを取ったり、自分の姿に見とれたりすることは他の人一緒に入る時は、控えなければならない。
おお、露天風呂もある。
露天風呂からは遠くの山が一望できる。ひんやりした空気も肌に心地よい。これぞ至福の時間だ。
当たり前のことだが、三人とも裸になった。特に見ようと思わなくても、人の裸は観察できる。
脱衣所で驚いたのは、穂香の下着と裸体だった。今にもはちきれんばかりの胸を申し訳程度に覆うブラジャーと、何のために履いているのか不思議なほど小さなショーツ。さりげなさを装いながら観察してしまう。女性と付き合う趣味があるわけではないが、舞はうっとりと見とれた。
やはり、どうしてこの合宿に参加しているのか、さらに気になる。出会いの場を求めているのだろうか。いや、そんなはずはない。彼女なら、会社でも街角でも並外れた容姿と抜群のプロポーションで、かなり男性の目を引くはずだ。う~む、素晴らしい。
それと対照的に、恵の方はほっそりして体にあまり凹凸がない。だが、痩せている方が有利な場合もある。さまざまなファッションを着こなしやすい。スリムな服の方が、スタイル良く見えるし、足りない部分は補うことが可能だ。ブラジャーにはいくらでもパットを入れることができる。痩せている体をふくよかに見せることはたやすいが、太っている体をやせて見せるのは至難の業だから。
三人並ぶと、自分は彼女たち二人の中間というところだろうか。胸元も程よくふくらみがあり、ヒップも大きすぎず、形もまずまずだわ、と舞は納得する。すると、こちらをちらりと見た穂香がいった。
「あらあ、舞さんスタイルいいわねえ。何かスポーツやってたの?」
「テニスを少々。だけど、テニスをしたからってスタイルが良くなるわけじゃないですよ」
「じゃ、元々スタイルがいいのね」
「……嬉しいです、穂香さんに褒めていただけると……」
湯船につかると、髪をアップにした穂香は肌がバラ色に輝き、そこだけが別世界の様に見える。外見で得をすることが多いだろうな、とうらやましくなる。
あまりの美しさに、思わず質問してしまった。
「穂香さん彼氏は?」
「今はいないの。そういう舞さんはどうなの?」
「いるように見えますか?……いません」
「恵さんは?」
「いたら、合宿に参加していません、きっと」
「まあ、そう?」
穂香はちょっと複雑な表情をした。恵さん、彼女の気持ちを傷つけたのではないかな。
「別に彼氏と合宿とは関係ないけど、でもやっぱり彼氏がいたら参加しないかな……わからないけど」
ウフフっと笑う。みんな彼氏はいないということか。裸の付き合いをした後で、冷たいものを飲んでいると、男性3人が男湯の暖簾の向こうから姿を現した。
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