キャンプファイアー
おかしい、何かがおかしいぞ。
なぜ教会に放火する流れになっている?
いや待て、PL3には、バチクソに深い考えがあるのかもしれん。
まずは何がしたくて、それをするのか?
それを確認するべきだ。
GM:ちなみに一体どういう意図で火を放つおつもりで?
PL3:決まってますわ!教会に火を放てば死体を始末できますし、財閥の監視衛星から私たちの異変を探知するはずですわ!
だめだこいつ、完全にオリジナル設定を作り出して、このシナリオを乗っ取ろうとしている!早くなんとかしないと……!
さすがにこんな異常行動、他のプレイヤーも止めに入るだろう……。
PL2:なるほどな、じゃあオレのライターを使いな!
PL3:ありがとうですわ!
もうどうにでもな~れミ☆
「教会に火を放てば、財閥の衛星がそれを異常として感知するはずですわ。そうすれば機動部隊を送り込んで、村人を皆殺しに出来ますわ」
「よしじゃあ、さっそく火を放つとするか!ほれ、ライターだ」
「ホッホッホ! 若いっていうのは良いですなぁ。パッションですぞ」
不味い。事態が勝手に動き出している。
いや、待てよ? 俺には最後の砦、ダイスロールがあるじゃないか。
厳しいペナルティのある判定をさせて、シナリオの壊滅を防ぐのだ!
いくらハチャメチャな行動をしようとしても、ダイスの出目は絶対だ。
ここで奴らを金縛りにする!!
GM:では上手に放火出来たかどうか、そうですね、あれやこれやの計算をすると――逃げるのも含め、成功率はマイナス50%くらいでしょうか。あ、放火に失敗すると死にます。
ふん、ここまで言えば、まさか燃やそうとは思うまい。
PL2:ルールブック上では、俺の技能、金属加工の副次効果で、俺が協力すると、火を使う行為はすべて自動的に成功ですね。なので成功しました。
ルールブックさん?ルールがルールの役目を果たしていないんですが?
いやまて、逃走を含めた行為と俺はいったはずだ。
なんとしてもここで探索者たちのトドメを刺す。
既になんか目的がすり替わっている気がするが、ここを越えられたら、もう止められない気がする!
GM:では自動成功で教会は燃え上がりました。脱出のための判定を――
PL1:お待ち下さいGM。消防法によれば、書斎にはこの位置に避難用出口があるはずですぞ。これなら自動的に避難は成功するはずです。
クソ!コイツ!ここでも扉を作り出しやがった!!
まさか旅籠での一件は、これが狙いか?!
なんという狡猾な計画だ……最初からこれを狙ってたとでも言うのか?
PL1:まさか消防法に反した建築をしているはずがありますまいな?リアリズムが失われますぞ!
全身をフルプレートメイルで固めて、ひなびた村にやってこようとしたコイツにだけは、リアリズムを語られたくない。
しかしここで言い争ってもしょうがない。
TRPGでは、ダイスの出目は絶対だ。しかしそれよりも、ルールブックのほうが優先される。おしまいか? こいつらの言いなりになるしか無いのか?
いや、こういった場合に使うルールがあるじゃないか!
こういった「ある」「ない」の水掛け論が発生したときには、それを解決する、クールなたった1つの方法があるのだ。
幸運にもそれが「ある」ことにする、「幸運判定」という方法だ。
これはどういうルールか? つまり都合良くそこに道具があったとか、扉があったとか、そう言うのを判定するルールだ。
この「幸運判定」に成功すれば、どっかの吸血鬼だらけの島のように、地面から刀が生えるし、軽油や丸太が都合よく手に入る。まさに神の力だ。
困った時はだいたいこの「幸運判定」をすれば、なんとかなる。
GM:では、その消防法に適合した非常用出口とやらが教会にあるか、幸運をロールします。代表者どうぞ。
PL1:では振らせていただきましょう。
ダイスロール!クリティカル!!
チクショオオオオオ!!!
GM:「えーでは、なんということでしょう!炎上する教会は、今まさに燃え落ちようとしていますが、偶然、書斎には外に続く扉があります」
PL1:「ではその扉をくぐって避難するとしましょうぞ」
PL3: 「さすがですわね」
逃げ道を確保せずに全てを焼き払おうとした、お前の脳みそが流石だわ。
クソッ!どうすれば、どうすれば良い?
本来ここで死体が見つかり、次の展開につながるサブプロットもあった。
しかし教会自体が焼け落ちてしまうと、それも出来ない。
仕方がない。教会が焼け落ちれば、村の人間の目に入らでも入るはずだ。
日誌に登場するはずの人物。疑わしいが探索者たちを助ける役目をし、物語を引っ張る役目を持つNPC(ノンプレイヤーキャラクター)をここで登場させるとしよう。
彼がこのシナリオを進行させる、最後の希望だ。
GM:では炎上する教会から逃れた、三人の探索者たち。あなた達の目の前に、目を丸くして燃え上がる教会を見上げる人物がいます。その人物は――
PL2:殺すぜ!釘を使ったナイフで喉元を突いて、声を上げられないようにして始末する。不意打ちルールで自動的成功のはずだ!
PL1:流石ですな。目撃者は一人残らず始末ですぞ。
PL3:同然ですわね。こんなもの見られたら、生きて返すことは出来ませんわ!
「目撃者だな!悪いがそのまま黙っていてもらう!」
「相変わらず素晴らしい手並みですな」
「ドミトリーのナイフ術はさすがですわね。財閥にも欲しいくらいですわね」
お前の財閥の名前、幻影旅団とかじゃねぇの?
「よし、死体はこのまま教会の中に投げ込んで始末しよう。コイツを犯人ということにすれば、オレたちがなにかしら証拠は残らない。『消毒』は終わりだ」
「フフ、我がゼミの生徒ながら、末恐ろしいですな」
クソッ!自覚があるのに何故犯罪を犯すのか?
これがわからない。
ともかくこれでシナリオは完全に迷子になった。
マジでどうすれば良い……?
ルールブックは何も答えてくれなかった。
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