現場検証
正気度チェックとは何か?
これはこのゲームにおけるキモとなる要素で、「正気度」とは、そのキャラクターの精神的なヒットポイントに当たる。
そのキャラクターが、例え英雄ヘラクレスのように強い体を持っていたとしても、人の心と言うのは、一度傷つくと、なかなか癒えるものではない。
このゲームでは、その心理的外傷、トラウマをモチーフに、キャラクターがショッキングな出来事に遭遇すると、精神的なダメージを受けるシステムがある。
正気度が下がり、精神的な死を迎えると、そのキャラクターは廃人となって使用不能となる。この正気度チェックとは、肉体的な死とは別の、抗えない心の死をプレイヤーに常に意識させる。
肉体的な死が迫り、それを乗り越えようとするプレイヤー。しかし調査すると次第に異常な自体が露わとなり、精神的な死がじわじわと迫りくる。
これがサスペンスを生み、このゲームに不気味な緊張感を与えるのだ。
そう、そのはずなのだが……。
「おっと、うっかり被っているバケツヘルメットを回してしまい、前がまったく見えなくなりましたぞ!」
「俺は金属加工で飛び散る鉄粉を目に受けたせいで、目が見えないんだ!」
「おほほ!わたくし、モノを見るのは、お付きのメイドに任せていますのよ!」
3人の操るキャラクターが、それぞれに無駄なあがきを始めた。
教授はともかく後の二人、もうそれ社会生活できないだろ。
GM: えー、つまり失明と。ルールブックによると、失明すると視力が関係する動作にマイナス80%の補正が付きますね。
「「目が見えるようになりました!!」」
こいつら……まあともかく正気度のチェックをさせるか。
GM:とりあえずダイスロールをどうぞ。目標値増減なし。現在の正気度以下のダイスの出目で成功です。成功は正気度は失いません。失敗は※1D6の正気度を失います
※1D6:1Dとは一回のダイスロール、6は6面体のサイコロを指す。つまり普通の6面体のサイコロを一回振って、その出目がそのまま正気度のダメージとなる。
PL1:正気度90なので目標値は90です、成功。
PL2:正気度85、成功。
PL3:正気度99ですわ。成功。
どうみても気が狂ってることしかしてないのが、一般人の正気度は50くらいなので、このバケツ頭どもは、常人より正気ってことになるんだよなぁ……。
納得いかねぇ。
まぁいいや。ゲームだし、とりあえず展開を進めよう。
GM:では探索者達は、この死体に対して特に衝撃は受けませんでした。この遺体に対して検死する場合は医学、または刃物の扱いのスキルが使えますね。
PL1:教授は医学の心得がありますな。
PL2:もうひとつの刃物の扱いも、俺ならできるな。
まあそういう風に作ってるからな。
全員がやるとパターンになって進行がダレるし、一人だと失敗したときが痛い。なので俺はいつもこういった判定は、参加者の半分以上ができるようにしているのだ。
二人はダイスを振り、判定に成功する。
なので俺は用意しておいた検死結果をプレイヤーの前で読み上げる。
GM:まず医学的観点から行こう。この死体の死因だが、外傷による出血性ショックで死亡したようだ。毒殺のあとに、死体を損壊したわけではなさそうだ。
GM:そして刃物の扱いをよく知るドミトリーは、これは細い鈎状のナイフを使って、何度も何度も執拗に切り裂いたものだと推測した。まるで獣の爪のように――
PL1:おっと、死体の顔を確認し忘れておりました。被害者はアルカス神父で間違いはないですかな?
お、するどいな。まだ死体としか言っていないことに気がついたか。
GM:そうですね。見た目はアルカス神父の面影が見えます。しかし乾いた血で汚れ、損傷していますので、確かなことは言えませんね。衣服は神父の衣装です。
PL1:なるほど、なるほど。
「ふむ、この死体はどうやら外傷による出血性ショックで死亡したようですな」
「まるで獣の爪でやったみたいだ。まさか、本当に人狼が?」
「とにかく街の人に、神父さんが死んでいることを伝えないのではいけなくて?」
「それもそうですな、しかし……」
PL1:教会の中を先に家探しするのはどうですかな?日記などを先に見つけないと、教会が現場保存のために封鎖されると、後々侵入することになるのでは?
PL2:それもそうだけど、証拠を残したら、オレたちが疑われるぜ?
PL3:ここはやはり、村を爆撃しましょう!
GM:爆撃は止めてください。第三次世界大戦になります。
PL1:ふぅむ、弱りましたな。探索すべきか、通報すべきか。
いいねぇこういう迷い、葛藤を見るのが、GMの何よりの楽しみなのだ。
くくく……苦しめ、もっと苦しめ。
PL2:うーん、ここは探索するべきだとおもうぜ。疑いがかかったとしても、早めに証拠を集めておいて、まずはヒントを集めたほうが良いと思うぜ。
PL3:私もそれに賛成ですわ!いざと慣れば、私のメイドと執事を呼びつけて、こんな村、焦土にしてみせますわ!!
一番の脳筋はPL3だったかー。
「いえ、ここはまず調べるとしましょう。アルカス神父は私の筆友達だったのですぞ、彼のためにも、犯人を探し出しましょう」
「まじかよ教授!まあ、面白そうだから良いけど!単位くれる?」
「ハハハ!単位は犯人を捕まえたら差し上げますぞ。まずは手掛かり探しますぞ。彼が日記か何か残していないか、神父の部屋を探してみるのです」
「なるほど、いい案ですわ!」
よし、このままシーンを進めて、「アレ」をプレイヤーたちに渡すとしよう。
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